キヤノン EOS R7 レビュー|野鳥写真家がおすすめカスタムを解説
はじめに
今回は現在使っているCanon EOS R7について、私の思うところを書かせていただきます。私はデジタルになってからEOS 7D、EOS 7D Mark IIと歴代の「7」のナンバーを使い倒してきました。そしてミラーレス機になってある意味、満を持して登場したEOS R7を使い倒し途中ですが「じゃじゃ馬」ぶりを実感しています。
ハイコストパフォーマンスなAPS-Cマシン
ミラーレスEOSのフルサイズ上級機種に比べてできないことも確かにあります。しかし、EOS 7D Mark IIでは考えられないような機能が標準装備されているだけではなく、EOS 7D Mark IIの発売当初の価格がだいたい「20万円」ぐらいだったのに対して8~9年も経ってなお「20万円」を切っていることにまず着目していただきたい!センサーサイズがAPS-Cで同じとはいえ、実質値下げのようなこの価格は驚きとしかいえません。
EOS R7のAFシステムは組み合わせで使うべし
オートフォーカスに関してはAFエリアの選択、AF動作、検出する被写体、瞳検出、プラスアルファで被写体追尾(トラッキング)を使用します。これらの組み合わせで、狙う鳥の行動や動きに合わせて設定を変えることになります。「これ1つでOK」という設定はありません。ここからは私のAF設定を説明しましょう。
飛翔撮影時の設定
青空を飛翔する場合
AFエリアの選択・・・全域
AF動作・・・サーボAF
AF特性・・・Case2(粘る)
検出する被写体・・・動物
瞳検出・・・する
被写体追尾(トラッキング)・・・OFF
メカシャッター・・・高速連続撮影+(秒間15コマ)
フォーカスリミッター・・・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMの場合3m~∞に設定
シャッター速度は1/2000秒以上を推奨
以上で簡単に飛翔撮影ができるはずです。
群れ飛翔する場合
AFエリアの選択・・・フレキシブルゾーンAF1
AF動作・・・サーボAF
AF特性・・・Case3 (敏感)
検出する被写体・・・動物
瞳検出・・・する
被写体追尾(トラッキング)・・・OFF
メカシャッター・・・高速連続撮影+(秒間15コマ)
フォーカスリミッター・・・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMの場合3m~∞に設定
青空を単独飛翔の場合、遮蔽物のない空を飛翔するので「AFエリアの選択」は全域AFがそつなくファインダーの全域で鳥を捉え、サーボAF+サーボAF特性Case2(粘る)が追ってくれます。一方で群れ飛翔の場合、「AFエリアの選択」をフレキシブルゾーンAF1にしています。理由は全域AFになっている場合、フレームの端の鳥にピントが合ってしまうとその鳥を追い続けてしまい、本来狙いたい中央の鳥を追ってくれないから。それどころか中央に戻したくても戻ってくれない!
群れ飛翔の写真の場合、人間の目は中央の個体にピントが合っていると全体的にピントが合っているように見えるので「AFエリアの選択」を全域AFからフレキシブルゾーンAF1を選択しています。青空飛翔はサーボAF特性Case2(粘る)に設定しますが、群れ飛翔ではCase3(敏感)にしてあるのは、常にAFエリア内の一番手前に来た鳥にピントを合わせ続けるようにしているからです。中央手前の鳥にピントが来ている=全体にピントが来ているように感じるのです。
※ここでは被写体追尾(トラッキング)をOFFにしてありますが、単独飛翔でも動きが読みづらい&フレームから外れやすい場合はONにした方がいい。
※なぜ電子シャッターではなく、メカシャッターを使うのか?
後で詳しく書きますが、EOS R7の電子シャッターで飛翔写真を撮る場合、ローリングシャッター歪みが出て翼が変な曲がり方をしてしまうため。
動きの少ない鳥の場合
AFエリアの選択・・・全域
AF動作・・・サーボAF
AF特性・・・Case2(粘る)
検出する被写体・・・動物
瞳検出・・・する
被写体追尾(トラッキング)・・・OFF
電子シャッター・・・高速連続撮影(秒間15コマ)
※鳥が近い場合はフォーカスリミッターをFullにする
■手前に葉や枝など邪魔なものが多くAFでピントが来ない場合
AFエリアの選択・・・領域拡大AF上下左右・1点AF・スポット1点AF
AF動作・・・サーボAF
AF特性・・・Case2(粘る)/CaseA
検出する被写体・・・動物
瞳検出・・・する
被写体追尾(トラッキング)・・・OFF
電子シャッター・・・高速連続撮影(秒間15コマ)
※鳥が近い場合はフォーカスリミッターをFullにする。3m~∞だと鳥が3m以内にいるとピントが合わない
鳥の周りに木の枝など邪魔なものが多い場合は、そちらにAFが引っ張られ手前にピントを合せてしまいます。これを回避するには狭い範囲でピント合わせをしやすいようにAFエリアを変更すればOK。そこで私は領域拡大AF上下左右・1点AF・スポット1点AF、この3つのAFエリアで対応しています。
サーボAF+AF特性Case2(粘る)の組み合わせにすれば、捉えた鳥の動きをAF追従した場合に、一瞬被写体の前に障害物があっても追い続けてくれます。場合によってはCaseAも優秀なのでCase2(粘る)から切り替えて試すのもありです。
※CaseA:被写体の動きの変化に応じて「被写体追従性」および「速度変化に対する追従性」を自動で変える設定。
私の設定はおおむねこんな感じですが、鳥の動きや状況などで逐時設定を変えて対応をしています。EOS R7のAFがよくわからないと感じている方はぜひこの設定を試してみてください。
ボタンカスタマイズでAFを自分流に
私は以前からシャッターボタン半押しでAF作動することを中止して、カメラの右上にある「AF-ON」ボタンを親指で押すことで全域AF+瞳AFをスタート、離すことでストップさせています。そのためシャッターボタンはレリーズだけにカスタムしています。
また、AEロックボタン(*ボタン)にAFスタートを割り当てています。これで何ができるのか?鳥の周囲に邪魔なものが多かったり、輝度の高い目立つものがある場合、全域AFが狙っていない部分にピントを合せてしまう可能性があります。そんな時、隣のAEロックボタンを使いAFスタートに切り替えます。この時、AFエリアを領域拡大AF上下左右・1点AF・スポット1点AFのどれかにしておけば狭いエリアでのピント合わせができる訳です。
ここで一つ裏技というかテクニックを教えると、全域AF+瞳AFでピントが来ない場合、AFスタートを割り当てたAEロックボタンを使い中央エリアで鳥にピントを合せます。この後ふたたびAF-ONボタンを親指で押すと、全域AF+瞳AFは今まで合わなかった鳥の目にピントが合わせる事が多くなります。
これはEOS iTR AF Xのなせる業で、ピント位置をカメラが学習しているからです。ピントが合ったらそのまま撮影してもいいし、構図を整えて撮影してもいい。これが上手くいかない時は従来通りの撮影スタイルに戻し、AEロックボタンを使いAFエリアを移動させて構図重視の撮影をすればいいと思います。
戸塚のAFボタンカスタマイズ
AF-ONボタンを押すことで全域AF+瞳AFスタート、離すことでOFF
AEロックボタン(*ボタン)を押すことで任意のAFエリアのAFスタート、離すことでOFF
■シャッター半押しでのAF動作を止める方法
メニューから上の右2番目にあるオレンジのカメラアイコンを選択。
3番目のタブに移動したら「ボタンカスタマイズ」に合わせてセットボタンを押す。
一番上のシャッターボタン半押しを選択すると、デフォルトでは「測光・AF開始」になっているので中央の「測光開始」にする。
こうすることでシャッターボタンを半押ししても、全押ししてもAFは作動しなくなる。
続いてAF-ONボタンに全域AF+瞳AFスタートを設定する。
カスタマイズ画面でAF-ONボタンを選択し、たくさんあるアイコンの中から瞳AF(目玉+AFのアイコン)を選択してセットボタンを押せばOK。
続いてAEロックボタン(*ボタン)にAF開始を割り当てる。
AEロックボタンを選択したら、たくさんあるアイコンの中からAF開始を選択してセットボタンを押せばOK。
この時、任意のAFエリアを設定しておく。全域AFを設定してしまうと意味が無いので領域拡大AF上下左右が無難
3つのシャッター方式、どれがいいのか?
EOS R5&6は電子先幕をメーカーが推奨している。EOS R3は電子シャッターを推奨している。ではEOS R7はどうなのだろう?メーカーはどちらとも言ってないようですが、私は通常撮影は電子シャッター、飛翔はメカシャッターと使い分けています。
連写時のブラックアウト(連写時にファインダーが暗転する)が無い電子シャッターを常用にして、飛翔時には翼の歪みが無い(バックに建物や電柱がある場合も歪みが発生する)メカシャッターに切り替えるのが私のスタイル。電子先幕はメカシャッターとの違いが感じられないので使用していません。
メカシャッターの場合は高速連続撮影+で秒間15コマにしていますが、電子シャッターでは高速連続撮影+にすると秒間30コマも切れてしまうので、高速連続撮影15コマを選択しています。これは不必要にたくさん撮れてしまうと後でセレクトに困るため。ちなみに、キヤノンのミラーレス機でのローリングシャッター歪みの影響はEOS R3<R5<R6<R7となります。価格に比例するのは仕方ないとまぁ諦めるしかないかな。
▼ローリングシャッター歪みの例(電子シャッター撮影)
EOS R7の気になるところ
小型軽量化で女性には使いやすい大きさかもしれないが、私のようなごつい手にはやや小さすぎてボタン操作がしにくいと感じることがあります。とはいえ中高年には軽いという事は実にありがたい。
小さい以外の見た目では、今までのEOSと違ってサブ電子ダイヤルが中央右から左上に移動したことが大きな特徴で、これに慣れるとすごく楽!私のようにAF操作を右親指で行う身にとって直線的に使えるのは便利でいいですね。
EOS R7はAPS-Cなので焦点距離がフルサイズの1.6倍相当(キヤノンの場合)になる=近づくのが難しい野鳥撮影に向いています。ただ残念なのはセンサーサイズがAPS-Cの場合、フルサイズと比べてどうしても高感度ノイズには弱い特徴があります。合わせてEOS R7は3250万画素と高画素なので、こちらも高感度ノイズには弱い特徴が重なりますよね。しかし明るい場所で、ISO400以下の撮影画像の美しさは「さすがは高画素機だ」と納得するはずです。
高感度ノイズに関しては撮影後の現像で対応できます。RAW撮影に限定されますが、AdobeのLightroomやPhotoshopのAIノイズリダクションを使えばかなり救済ができるので、「ここ一番」ではためらわずISO感度を上げてチャンスに強くなってほしいです。
さいごに
今回の作例はRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMで撮影していますが、これから野鳥撮影を始めたいという方にはまずRF100-400mm F5.6-8 IS USMをおすすめします。F値が暗いのですが、ここはミラーレス機のいいところで、ファインダーで明るさを調整できるので「覗いた時の暗さ」はカバーできます。RF100-400mmは低分散のUDガラスを使用していることから、軽くてコンパクトなのに驚くほどきれいな描写をしてくれますし、「もう少し大きく撮りたい!」と感じる時はEXTENDER RF1.4xを併用すれば35mm換算で400mm×1.6=640mm×1.4倍=896mm相当の手持ち撮影も可能になります。
EOS R7は上位のフルサイズ機と比べてできないこともありますが、軽い・(AF)速い・小さいと三拍子揃っただけでなく、高機能なのにリーズナブルな事を考えればすごい1台だと思います。
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP) 会員