キヤノン EOS R8と歩くフランスの田舎町|大橋 愛
はじめに
こんにちは。大橋愛です。昨年末、アフリカエコレースの準備のお手伝いでフランスに行ってきたので、その時に撮ったスナップを紹介します。お供に連れて行ったのはキヤノン EOS R8。約461gという軽量ながら高画質で写しとることができるフルサイズミラーレスカメラです。普段は一眼レフを使うことが多い私ですが、このミラーレスはどんな使い心地だったのか??フランスでの生活とともにお話ししていきたいと思います。
お喋りするように
フランスの24時間耐久レースで有名なルマンから1時間ほど、田舎町Telochéを基点に後半はモナコまで、今回約1000キロの車移動!!移動はほとんど車、しかも観光地じゃないので、なんだかフランスで生活するような旅でした。目的はアフリカエコレースに出場する選手のご飯やお洗濯や買い出しのお手伝いなので、アフリカに向かうフェリー乗り場(セット港)まででお別れです。
スナップを撮るときには歩いて被写体を探してっていう人が多いけれど、私は車の移動中からも窓を開けて撮影したり、撮りたいものがあればなんでも撮っていたような気がします。でもこう撮ったら綺麗とか面白く見えるとかでなく、本当に自由に日記を書いたり、友達にこんなに面白かったんだってお喋りするようにシャッターを切りました。
好きなように好きなものだけ撮っていたけど、写真をまとめるとやっぱりこれが私の目なのかな??って感じるところがありますね。無意識に端っこを注意していたり、東京では撮らないけどちょっと子供を撮影してみたり。ワンコや子供を撮るのはどの国もなかなか難しいけど、やっぱり良い表情が撮れたりいいタイミングで撮れると、人を撮るって面白いなって思います。R8はサイレントシャッターモードがあることも、そんなふうに思わせてくれたひとつかもしれません。
フランス散歩
モナコから近いマントン。すぐそこはイタリアです。
冬のフランスは南でも雲が厚い日が多くなかなかカラッと晴れませんが、港から見る街並みはカラフルで伝統的なレンガ作りや可愛い建物が並んでいます。海の穏やかな波と建物の両方を入れて撮るにはもう少し広いレンズが良いかな??と撮影している時には思いましたが、写真を並べてみるとちょうどいいと思えました。肉眼ではやはりもっと広く調整してしまっているので、広角に慣れてしまった自分を少し反省しました。
これは革を使った椅子の張り替えをしてくれる工房に行った時に、サンプルで飾ってあったもの。
カラフルでとても可愛く、店内はそんなに明るくなかったので感度を上げて撮影したカットです。ズームしてみても革のテクスチャーが出ているし、色のコントラストもいい感じに出ています。
海外に行くと本当に色の組み合わせが勉強になるなと思います。お店の壁面も家具や洋服まで、こんな組み合わせが合うのか!!と思うことがありますが、着物の色の組み合わせにも通じるなと考えることもあったり。こちらの写真は赤と紫の壁もインパクトがあるけど、ちょうどよく白の車を入れて、そしてまたちょうどよく黄色のフォークリフト!!とてもいいバランスで写真的なものが撮れた1枚です。
今まで行けば撮れるものって避けてきましたが、コロナで行けなくなるなんて考えもしませんでした。だからカメラも軽くなったけど、私の撮り方もとても軽くなったって自分で感じました。なんでも綺麗で、なんでも興味深く、なんでも新鮮に見えるので、カメラは軽いものを選んで本当に正解!機材と気持ちがリンクすると、なんて心地よいんだ!!って思いました。
だから、逆にじっくり撮影する被写体は重いカメラやフィルムにして正解だったんだって、考えさせられた旅でもありました。
ちょうどクリスマスシーズンで、お城のあちこちがクリスマスの飾り付けで素晴らしくてキラキラしていました。でもこの傾いたもみの木が考え事をしているみたいで、とっても可愛く見えました。
ちょうど年越しの31日に南のセットという港町で1泊しました。夕飯を食べて帰り道まだまだあちこちのお店が開いていて、あちこちから音楽が聞こえて、みんな飲んだり踊ったりしているカフェがあり、これが大阪だったらカウントダウンで海に飛び込む人がいるかな??なんて少し期待しつつ、2件目のカフェで友人とお酒を飲んで踊って、案の定次の日の朝が辛かったことを、この写真は静かに思い出させてくれます。
ルマンのクリスマスマルシェに行った時。教会の見学に行ったり古い街並みを見たり夕飯の買い出しをしていたら、少しお腹が減ったので蕎麦粉のクレープを食べた時に撮影させてもらったカットです。フードトラックだからキッチンがめちゃくちゃ高いのだけど、R8はバリアングル式なのでモニターの向きを変えると両腕を伸ばした高さまで撮影することができるので、焼いている手元まで入れて撮影することができました。また食べたいな。
滞在していた田舎町の唯一のスーパー(コンビニくらいのサイズ)。小さなスーパーだけどフルーツがめちゃくちゃ豊富!!冬は日本と同じでみかんにそっくりなオレンジがとても美味しいのです。必要な個数だけで売ってくれるのも、とってもありがたい。
Telochéのベルエール通り(Rue de Bel air) に長く滞在していましたが、名前の意味の通り美しい空気の場所で、街並みも綺麗でお庭もみんな綺麗にお手入れされていました。けれども、やはり冬だから花はあまり見かけることができなかったのですが、散歩中このバラが小さく咲いていてハッとして撮った一枚です。赤の微妙なグラデーションが心地よく、背景のなだらかなボケ具合もフルサイズならではでないでしょうか。
少し離れたお家で一際すごかったお庭。あちこちから車で見に来る人もいたり、これが個人宅なんてびっくりです。よく見るとクマさんの家だったり、ちゃんと場所ごとにテーマが感じられてパワーを感じるディスプレーです。毎年楽しみにしている人がたくさんいるんだろうなと感心しました。これは撮らずにはいられません。
ここでは買いませんでしたが、やはりパン屋さんはどこも可愛いし素敵な外観、内装をしています。そしてどこも美味しいのです。日本はお米がどこも美味しいのと一緒ですね。外から見ると建物同士が繋がって見えるし昔の長屋方式なのかな??素朴で可愛い建物はどこを切り撮っても絵になるから困ります。シムカ1100も止まっていて、本当に可愛いし困ったものです。
ルマンという街は24時間耐久レースで街中を走ったり、ちょうど去年は100周年だったので大きなイベントがあったり、博物館には歴代の優勝した車が展示してあります。車のペイントもとても個性的で刺激的です。ジャン・ロンドーが運転した車両。イナルテラ・LM。
丸の中をよーーーく見てください。小さな子供と男性が写っていて、彼はこれからアフリカのレースに向かうライダー。こんなお守り靴下があれば頑張るしかないですよね。写真ってすごいパワーがあるし、やっぱりいいなって思います。
この人はトマチェックさん。とても大きなトラック、カミオンのドライバー。しかも一人で運転してナビもしてタイヤがパンクしたら大きなタイヤも一人で交換するのです。この写真からは大きさは分からないけど、とっても穏やかで笑顔が素敵な方です。
スケボーしてた人に声をかけて撮らせてもらったら、ワンコも降りてきました。飼い主が運動神経いいとワンコも運動神経いいのですね。この後すごく褒めてもらってとても喜んでいました。私もうちの犬に会いたくなってしまったよ。トラッキング性能のおかげで、ワンコにもちゃんとピントを合わせ続けてくれました。
サポートの車もやはり砂漠や、岩のたくさんある凸凹道も走るのでそれなりの整備が必要です。準備をしていると雨上がりの水たまりに映った車がカッコよく見えました。泥の質感もリアルです。
時間軸で書いていないのであっちこっち行っているみたいに見えますが、そんなに移動はしていません。この写真はルマンに時々行って買い物をしていると素敵な光に出会える時があった、その時の一枚。格子状の階段に光が差してとてもグラフィックな影ができて、ヨーロッパっぽい強い光を忠実に再現しています。
ガラスが割れているのを見るとオノヨーコさんの「A HOLE GO TO THE OTHER SIDE OF THE HOLE」を思い出します。
街中の光や人や建物も素敵だけど、田舎町はやはり木々の生命力が感じられて好きです。雨が降って土や埃の匂いがすると思ったら、木や落ち葉のいい香りも心地よく漂ってきました。雨上がり、散歩をしていると枝が春の準備をしているようでした。
朝はお天気が悪いと9時頃にならないと陽が出ません。陽に照らされると濡れた土が霧になり幻想的な風景が見られます。深呼吸をすると、とっても冷たい空気を肺に入れてスキッと目覚めます。この木々達も同じように深呼吸をしているようです。
数日泊まっていた友人の家の窓からの風景がもう懐かしいです。雨が降っても絵になるし暗い部分のカーテンのディテールも綺麗なグラデーションになり、弱い光で湿度のある好きなカットが撮れました。カーテンを開けて毎日この景色が見られるなんて本当に贅沢。
好きなものを好きなように撮る
最後はこのカットって決めていました。20日の滞在中で、この日だけ夕焼けが見られたのです。驚くほど赤く焼けてエプロンをつけたまま近所で撮影をしました。近所の奥様も窓から顔を出して見ていたので、撮ったものを見せたら「綺麗ね」と褒めてくれましたよ!!街灯の星も光って本当に綺麗でした。
三脚があった方が良かったな??と思うことも何度かありましたが、今回はなんでも好きなものを撮って楽しむ、そして撮りたいものは考えないで撮るって決めていたので、三脚を立ててじっくりっていうのはしなくてよかったです。
毎日持ち歩いても苦にならないサイズと重さ、これって本当に大事。でもバッテリーが小さいから、ゴリゴリ撮影したい人はスペアのバッテリーは絶対に必要です。
さいごに
携帯でも十分と考える人もいるかもしれないけど このR8はミラーレスで軽いし、フルサイズなのでなんと言っても画質が良い。そして一眼カメラはこちらで機能をコントロールできるのが楽しい!!
旅する人や、webで記事を書く人、ルポライターさん、自分で何か作って発表している人、一眼カメラを使ってみたい!!と思っている人におすすめのカメラです。
■写真家:大橋愛
神奈川県生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。写真作品活動のほか、企業広告、雑誌、出版等の分野で活動。個展、グループ展多数。写真集『お裁縫箱』、HeHeより発売中です。