キヤノン RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM|心地よいボケ味の高倍率ズームレンズ
はじめに
今回ご紹介するレンズはキヤノンの高倍率ズームレンズ「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」です。APS-CモデルのEOS R7とR10のキットレンズでもあるこのレンズは35mm換算でおよそ29-240mmと、レンズ交換の手間なく一本で幅広い撮影シーンに対応できます。広角から望遠までカバーできるレンズとなると旅先などで活躍するイメージですが、今回は日常使いでもその良さを遺憾なく発揮してくれました。
デザイン・仕様
全長は約84.5mm、重さは約310gと、近い焦点距離のRF24-240mm F4-6.3 IS USMと比較しても長さは2/3程度、重さも半分以下でより携行性の良さが光ります。この点もAPS-C対応レンズの強みと言えるでしょう。またEOS Rシリーズのフルサイズ機にも装着は可能なので(その際は撮影画面中央がAPS-Cサイズ相当の画角にクロップされます)旅行に行く際の機材の軽量化にも一役買ってくれます。
繰り出し式のため望遠時はそれなりにレンズ全長が長くなるので、手前の被写体を前ボケにしたい時などはレンズ前玉がぶつからないように気を付けたいですね。また「センターフォーカスマクロ機能」によって、マニュアルフォーカス時の最短撮影距離が広角側18~24mm時は0.12mに、最大撮影倍率は0.59倍(35mm時)になり、かなりの接写撮影が可能になります。この時の描写は通常のマクロ撮影に比べて画面周辺部のボケが大きくなるのが特徴です。
遠景だけじゃない、室内で望遠撮影
RFレンズの登場によって200mmを超える焦点距離のレンズもEF時代に比べればかなり軽量コンパクト化されましたが、その中でもRF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMはよりスリム化を実現していて、室内の撮影でも重宝します。
おうちのペットを撮りたい方の中には、ペットがカメラやレンズの大きさが怖くて撮影が苦手という方もいらっしゃるかもしれません。そんな時は少し遠くから撮るのがオススメです。RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMのテレ側ならペットがカメラやレンズを意識しないぐらいの距離からでも良い表情をバッチリ捉えることができます。
暗い室内でも安心の手ブレ補正と描写力
RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMの光学式手ブレ補正は4.5段分です。ボディ内手ブレ補正機構を搭載したEOS R7との協調ISでは7.0段分の手ブレ補正効果を得られます。望遠側の開放F値は6.3と決して明るくはありませんが、これらの組み合わせで暗い室内でも手ブレを気にせず撮影に集中できますし、ボディ内手ブレ補正が搭載されていないR10などでもレンズ側の手ブレ補正機構だけでかなりのブレを防止することができます。
逆光で魅せるやわらかな世界とシャープな造形美
RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM のテレ端は35mm換算で240mmとかなり長い焦点距離になります。前述した通り開放F値はそれほど明るくありませんが、この焦点距離が見せてくれるボケ味は非常にやわらかく、逆光撮影時のふんわりとした世界観が個人的にとても気に入りました。また、画面上に太陽をフレーミングした強い逆光条件でも不自然なパープルフリンジが出ることはなく、目で見た通りの光の強さが生きる写真を撮ることができました。
ひとつの世界の違った表情を楽しむ
高倍率ズームの一番の特長は広角と望遠という異なる世界をひとつのレンズで捉えられることです。そして、雨や雪などのレンズ交換が難しい撮影条件の時もズームレンズが一本あれば安心していろいろな表情を楽しむことができます。
今年初めて東京に積もるほどの雪が降った日、RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMを連れて近所を歩きました。まだあまり人が歩いていない道に残る足跡や突然強くなった雪が舞う姿など、刻一刻と変わる風景を狙った通りに写し留めることができたのはこのレンズの力が大きいと思います。ただし、RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMは防塵防滴非対応なので雨天の撮影時はレインカバーを使うなど、濡れない工夫をすると安心ですね。
さいごに
今回RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMを使ってみて、このレンズは高倍率ズームに求める良いところをぎゅっと詰め込んだ一本という印象を受けました。18mmから150mmという広い焦点距離を持ちながら、描写力も申し分なく、それぞれの焦点距離の開放F値でのボケ味も心地良いものでした。フルサイズ機に対応可能な点も、携行性の良さなどから普段フルサイズのRシリーズをお使いの方にもぜひ一度試してもらいたいレンズとしてオススメしたいです。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。3/19まで小伝馬町のMONO GRAPHY CAMERA&ARTにて個展「1/fのゆらぎ」を開催中。