キヤノン RF100-400mm F5.6-8 IS USM レビュー|中西祐介

中西祐介
キヤノン RF100-400mm F5.6-8 IS USM レビュー|中西祐介

はじめに

 キヤノンがRシステムを発表した当初、次々とRFレンズが発表される中で、Lシリーズではない手の届きやすい価格帯のRFレンズはなかなか姿を表していませんでした。しかし、最近はレンズのラインナップが増え、Rシステムを使用するユーザーの選択肢が大幅に拡充されています。そして、待望の普及価格帯の超望遠ズーム「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」が登場しました。テレ側は400mmで、気軽にスポーツ撮影を始めてみたい方におすすめしたいレンズです。

 超望遠帯をカバーしながらコンパクトなサイズにまとまっており、EOS R7やEOS R10など比較的ボディサイズが小さい製品にもベストマッチしそうなこのレンズは、超望遠の世界をより身近に感じさせてくれると思います。

 今回は馬術を被写体に選び撮影してみました。色々とトライした感想の中から、気になる画質や使い勝手を中心にレビューしたいと思います。

■撮影機材:キヤノン EOS R7 + RF100mm-400mm F5.6-F8 IS USM
■撮影環境:1/2000sec F8 ISO1600 WBオート

小型軽量でコストパフォーマンスに優れた400㎜をカバーするズームレンズ

 現在発売されているRFズームレンズのラインナップの中で400mmをカバーするレンズは、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMとRF100-400mm F5.6-8 IS USMの二つがあります。スポーツ撮影の多くは撮影場所から被写体までの距離が遠く、被写体に寄って撮影しようと考えると400mm以上の焦点距離が必要になることが多くあります。

 一つ目の選択肢としてRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMがありますが、Lレンズの高画質が素晴らしいのはよくわかっていてもレンズの大きさや重量、そして何よりも価格を見て躊躇してしまう方もいらっしゃると思います。もっと気軽に楽しめる400mmが欲しいと思われる方には、もう一つの選択肢であるRF100-400mm F5.6-F8 IS USMをおすすめします。

 RFレンズはEFレンズ時代より、ラインナップ全体でレンズ性能が大幅にブラッシュアップされています。RF100-400mm F5.6-8 IS USMはRF100-500mm F4.5-F7.1 L IS USMよりも一回り以上小さく、質量は635gです。今回はEOS R7に装着して撮影していますが、400mmをカバーするズームレンズとは思えないほど軽いです。

 本レンズはズーミングの際に鏡筒が繰り出すタイプのため400mm時に全長が長くなりますが、重量バランスが良いためアンバランスに感じることはありませんでした。APS-Cセンサー搭載のカメラボディに装着するとテレ側は640mmとなり、被写体に迫って撮影するにも十分な焦点距離になります。

 小型軽量のため手持ちで撮影することも容易ですので、三脚や一脚が使用出来ない場所でも問題なく撮影が出来ます。焦点距離が長くなると手振れが気になることが多くありますが、レンズ単体のIS効果で5.5段分の手振れ補正効果が期待出来るのはとても心強いです。低速シャッター使用時はもちろんのこと、高速シャッターを使用した際も手振れは無縁ではありませんので、手持ち撮影時はIS機能が大きな安心材料です。

■撮影機材:キヤノン EOS R7 + RF100mm-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:1/1600sec F8 ISO4000 WBオート

シャープで高い解像感

 レンズを使用する上で一番気になるのは画質です。特に普及価格帯のレンズでは価格相応の画質と言われてしまうレンズが過去にはありました。しかしRFレンズはそうではありませんでした。今回撮影した率直な感想は、想像以上にシャープだなという印象でした。

 馬術の撮影時は、毛並みの質感描写や馬の目の輪郭付近などの解像感に注目していますが、RFレンズらしいシャープさとその場の空気を写し込むような情報量の多い解像感が心地良い写真となりました。ワイド側(100mm)からテレ側(400mm)まで、どの焦点距離をとっても満足のいくものでした。

 一つ気になる点があるとすれば開放F値がテレ側でF8と少し暗いかなという印象がありますが、開放F値を明るくすることでレンズの重量が増し、大きさ、価格のバランスが崩れてしまうかもしれません。それよりもカメラボディの優れた高感度性能を生かしながら共存するのが一番いい選択なのではないかと思います。

 様々な制約の中でここまでの高画質を実現出来たのはRFレンズ全体が進化している証だと思います。今回は使用しませんでしたが1.4x、2xのエクステンダーに対応している点からも画質への自信が伺えるレンズです。
  

■撮影機材:キヤノン EOS R7 + RF100mm-400mm F5.6-F8 IS USM
■撮影環境:1/2500sec F8 ISO2500 WBオート

Lレンズと遜色ないAFスピード

 今回撮影した馬術は上下左右の動きやスピードの急加速、急減速を繰り返すため、動きの要素が多くAFへの負荷が大きくなります。しかし被写体にフォーカスする初動スピード、追い続ける継続スピードや正確性など、AFに対してはストレスを感じません。動作の変化がある時にフォーカスが外れても速やかにリカバリーします。

 これは組み合わせるボディによっても変わりますが、動きの変化に対しての対応がとてもスムーズで快適でした。レンズが小型化しても、ナノUSMモーターのパワーが発揮されて被写体を捕捉しているようです。EOS R7での組み合わせではスポーツ撮影に十分対応できると感じています。

■撮影機材:キヤノン EOS R7 + RF100mm-400mm F5.6-F8 IS USM
■撮影環境:1/2500sec F8 ISO3200 WBオート

手に馴染みやすいRFレンズ

 RF100mm-400mm F5.6-8 IS USMを初めて手に取った時の第一印象は、ズームリングの掴みやすさや指が届きやすいコントロールリングの位置など、手に馴染みやすい質感を備えているという点です。これはスペックには表れない部分ですが、レンズを選ぶ際にとても重要な要素になります。ズームリングを回してみると表面のゴム素材が程よく指を捉えてくれて、スムーズな回転を助けてくれます。

 そしてRFレンズに多く見られる、ズームリングに段差が設けられていることもとても気に入っています。これは開発者がユーザーの使い勝手をしっかりと考えてくれている証拠であると思います。撮影中は頻繁にワイド側とテレ側を往復しなくてはなりません。その過程で指には力が入り、疲労していきますが、この小さな心使いがそれを最小限に抑えてくれます。EFレンズではこのようなものがありませんでしたが、RFレンズではよりユーザー視点に立った操作系を実現してくれました。痒いところに手が届くとはまさにこのことだと思います。

 また本レンズには別売となりますが、レンズフード(ET-74B)が装着できます。レンズフードはレンズ内に入りこむ不要な光をカットするだけでなく、万が一レンズに衝撃があった際にレンズを保護してくれる役割もありますので、装着することをおすすめします。レンズフードで一番困るのは撮影中に緩んでしまい気づかず外れてしまうこと。ET-74Bはロック機構がしっかりしているのでそのような心配はありませんでした。これも嬉しいポイントです。

まとめ

 ひと昔前は普及価格帯の超望遠ズームは価格と引き換えに性能がイマイチという印象を持っていましたが、今回RF100mm-400mm F5.6-8 IS USMを使用してそれは過去のものだと実感しました。妥協のない画質、快適なAF、細かい部分まで配慮のある使い勝手、その全てが備わった上で手頃な価格を実現したレンズは新しい時代に入ったことを教えてくれました。

 RFズームレンズには400mm以上をカバーする2つのレンズが存在します。小型軽量を必要とするのか、更なる高画質を求めるのか、異なる要素を持つ二つのレンズがあることは、ユーザーにとって悩ましくも嬉しい選択肢になりそうです。

 

 

■撮影協力:日本大学馬術部

■写真家:中西祐介
1979年東京生まれ 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。講談社写真部、フォトエージェンシーであるアフロスポーツを経てフリーランスフォトグラファー。夏季オリンピック、冬季オリンピック等スポーツ取材経験多数。スポーツ媒体への原稿執筆、写真ワークショップや大学での講師も行う。現在はライフワークとして馬術競技に関わる人馬を中心とした「馬と人」をテーマに作品制作を行う。

・日本スポーツプレス協会会員
・国際スポーツプレス協会会員

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