はじめに

風景写真家として、常に追求しているのは、被写体の持つ息吹をありのままに表現すること。
特に、遠景の細部までくっきりと捉え、奥行きのある写真を撮りたいという思いは、私にとって大きなテーマでした。

そんな私の願いを叶えてくれたのが、キヤノン「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」です。
このレンズは、高い解像度と美しいボケ味を両立しており、遠景の雄大さと、手前の花の繊細さを同時に表現することができます。
風景写真における表現の幅を大きく広げてくれた、まさに頼れる相棒と言えるでしょう。

レンズの紹介

RFレンズらしい洗練されたデザインで、操作性も抜群です。先端から順に、ズームリング、ズームロック、各種スイッチ類、フォーカスリング、三脚座、そしてコントロールリングが配置され、直感的な操作が可能です。軽量コンパクトなボディながら、100mmから500mmという幅広い焦点距離をカバー。遠くの被写体を大きく捉えることができます。

従来のEFレンズと比較して、大幅な軽量化を実現。長時間の手持ち撮影も楽々で、撮影の楽しさをさらに広げてくれます。ズームリングを回すと前玉が繰り出す全長可変のズーム方式を採用。これにより、軽量コンパクト化と500mmという焦点距離の両立を実現しています。
また、RFマウントならではの設計により、高画質かつ高速なAF性能を実現。一瞬のシャッターチャンスも逃しません。

さらに、エクステンダーを装着すれば、焦点距離を600mmから1000mm相当まで伸ばすことができ、より遠くの被写体にも迫ることができます。従来の黒いレンズフードから、白色へとデザインを一新。洗練された印象を与え、カメラとの一体感を高めています。

ズームリングを回すと、レンズがスムーズに伸び縮みする全長可変式を採用。ズームリングには、操作性を高める「SMOOTH⇔TIGHT」調整リングが付いており、撮影状況に合わせて、軽く回せるスムーズな状態か、誤操作を防ぐための固定感のある状態に調整できます。

各種スイッチ類は、構えたときに左手に自然に届く位置に配置。フォーカス範囲の切替え、AF/MFの切替え、手ブレ補正のON/OFFやモード切替えなど、必要な設定を素早く行えます。

レンズフードは、レンズ本体と同色の白色を採用。PLフィルターを回転させるための窓も設けられており、撮影の幅を広げます。三脚座は、1/4インチネジ穴とガイドピン用の穴を備え、カメラ本体にしっかりと固定できます。また、クランプ式なので、撮影中に素早く着脱可能です。

5倍のズーム比と高画質

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」は、100mmから500mmという幅広い焦点距離をカバーする、まさに万能な1本。 風景全体をダイナミックに捉えたいときも、遠くの被写体を大きくクローズアップしたいときも、このレンズ1本で対応できます。まるで、様々なレンズを持ち歩いているかのような自由度を味わえるでしょう。

キヤノンLレンズならではの卓越した光学性能は、このレンズにも惜しみなく注ぎ込まれています。遠方の被写体もクリアに捉え、細部までくっきりと描き出す、高い解像力。そして、被写体を美しく際立たせる、自然なボケ味。まるで絵画のような、美しい写真の世界が広がります。

広角端の100mmでは、まるで自分の目で見ているかのような、広大な風景をダイナミックに切り取ることができます。
写真の中央にそびえ立つ富士山と、その麓に広がる雲海。美しい光景が目の前に広がります。

望遠端500mmで切り取った、富士山の雄姿。広角とはまた違った、富士山の荘厳で神秘的な魅力が伝わってきます。
まるで目の前で富士山を見上げているかのような、圧倒的な迫力と臨場感が生まれました。

ASCにより、逆光によるフレアやゴーストの発生も抑制

このレンズには、スーパーUDレンズやUDレンズといった特殊なレンズが多数組み込まれており、これらが複雑に組み合わさることで、ズーム全域において、画面の中心から周辺まで、色のにじみを極限まで抑え、クリアで美しい画像を描き出すことを可能にしています。
さらに、ASCと呼ばれる特殊なコーティングを施すことで、逆光時のフレアやゴーストの発生を効果的に抑え、よりクリアな画像を実現しています。

大口径マウントとショートバックフォーカスという先進的な設計を採用することで、レンズの設計の自由度が大幅に向上し、これだけの高性能をコンパクトなボディに収めることが可能になりました。

手ブレ補正でシャッターチャンスを逃さない

望遠レンズは、遠くの被写体を大きく捉えることができる反面、手ブレの影響を受けやすいという特徴があります。特に、500mmという超望遠域では、ほんのわずかな手ブレでも写真に大きく影響してしまうため、安定した撮影が求められます。

このレンズは、レンズ単体で5段分の強力な手ブレ補正機能を搭載しています。これは、例えば、手持ちで撮影する場合、シャッタースピードを5段分遅くしても、ブレずに撮影できることを意味します。夕焼けや、光量が低い早朝など、暗いシーンでの撮影でも、三脚がなくても美しい写真を撮影できます。

さらに、EOS R5やEOS R6といった、ボディ内手ブレ補正機能を搭載したEOS Rシステムのカメラと組み合わせることで、最大6段分の手ブレ補正効果を発揮します。これにより、より暗い場所での撮影や、より長い焦点距離での撮影を可能にし、風景写真の表現の可能性を大きく広げます。

夕暮れ時、湖面が風によってさざ波が立ち、夕焼けの光がキラキラと輝いていました。この美しい瞬間を逃すまいと、1/60秒というシャッタースピードで撮影。水面にできる波紋を表現するため、あえて手持ちで撮影に挑みましたが、レンズの強力な手ブレ補正のおかげで、ブレることなくシャッターチャンスをモノにすることができました。

画質

色彩

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」は、自然な色彩を忠実に再現し、高コントラストで美しい描写を行うことが可能です。特に、花や風景の撮影において、その真価を発揮します。このレンズで撮影された桜の写真は、春の訪れを感じさせる、美しく繊細な一枚となっています。

ボケ味

500mmの望遠レンズで切り取った、一枚の葉っぱ。背景を大きくぼかして、主役の葉っぱを際立たせました。まるで宝石のように輝く水滴が前ボケとなり、柔らかな秋色に包まれた葉っぱとのコントラストが美しい。このレンズのなめらかなボケ味は、被写体をより一層際立たせ、幻想的な世界観を作り出します。

解像度

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」の高い解像度が、紅葉の細やかな美しさを余すところなく描き出しています。木漏れ日が葉を照らし、生まれる陰影が、奥行きのある立体的な世界観を生み出しています。柔らかなボケ味とシャープな描写のバランスが絶妙で、木々が、静かに語りかけてくるようです。

周辺減光

広角端100mm、絞り開放という条件下で撮影してみると、周辺減光が非常に少ないことに驚きました。一般的に、広角側は周辺減光が発生しやすい傾向があるため、このレンズの光学設計の優秀さが際立っています。加えて、カメラ側の画像処理による補正効果も相まって、隅々までクリアで美しい描写を実現しています。

500mm望遠端、絞り開放で撮影。周辺減光はほとんど見られません。このレンズの光学性能の高さを裏付けるものです。特に、周辺部の色味やコントラストが中心部とほぼ変わらず、自然な立体感が得られる点は、風景写真などにおいて非常に大きなメリットとなるでしょう。

風景写真での実写レビュー

広角端での撮影

広角端の100mmで撮影した一枚。夕日が海を黄金色に染め、荒々しい波と磯のコントラストが印象的です。100mmという焦点距離は、遠近感を強調し、被写体を大きく捉えることができるため、ダイナミックな風景写真などに適しています。例えば、この写真のように、海と磯の立体感を際立たせ、奥行きのある風景写真に仕上げることができます。

望遠端での撮影

500mmという焦点距離は、まるでその場にいるかのように、遠くの被写体を大きくクローズアップし、その細部まで克明に描写できるのが魅力です。雪面や岩肌のゴツゴツとした質感まで鮮明に写し出されており、まるでそこに触れるかのような臨場感があります。望遠レンズによって主題が明確になり、撮影者の雪山のその美しさに対する感動が伝わります。

最短撮影距離での撮影

「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」は、遠くの風景だけでなく、思いがけない身近な被写体も美しく捉えたいという、あなたの願いを叶えてくれるレンズです。

このレンズには、「ナノUSM」と呼ばれる高速で静かなモーターが搭載されており、ピント合わせが驚くほどスムーズに行えます。そのため、遠くの風景はもちろん、近くの花や昆虫など、様々な被写体に素早くピントを合わせ、シャッターチャンスを逃しません。

さらに、「電子式フローティングフォーカス制御」という特別な仕組みを採用することで、超望遠レンズでありながら、驚くほど近くまで寄って撮影することができます。例えば、100mmの焦点距離で撮影する場合、レンズからわずか90cmの距離まで近づいて撮影が可能。まるで被写体に近づいて観察しているような、臨場感あふれる写真を撮影できます。

この機能は、風景写真においても、思わぬ発見をもたらしてくれるでしょう。 遠くの山々を撮影している時、ふと足元に咲いている小さな花に気がついたことはありませんか？ このレンズなら、そんな瞬間も逃さずに、美しい写真として残すことができます。

「RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM」の近接撮影性能を生かし、わずか90cmの距離から紅葉の葉を撮影しました。一枚一枚の葉の繊細な色合いと、背景のボケ味が、まるで絵画のような美しい一枚に仕上がりました。

超望遠の圧縮効果

望遠レンズを使用すると近景と遠景が重なって見える現象を「圧縮効果」と言います。望遠になるほど圧縮効果は強くなり、近くの被写体のすぐ後ろに遠くのものがあるような写真を撮影することができます。この効果によって、写真に奥行き感が生まれ、ダイナミックな印象を与えることができます。この写真では、望遠レンズの圧縮効果により、仏像と桜が近くに感じられ、一体感が生まれています。仏像が桜の中に溶け込み、幻想的な世界観を作り出しているのです。

様々なシチュエーションでの撮影

RF100-500mmの遠望性能を生かし、冬の樹木に隠れるリスのシルエットを捉えました。500mmの迫力ある構図で、リスの小さな存在感が際立ち、まるで絵本から飛び出したような幻想的な世界観が広がります。

雄大な海を舞台に、夕陽が水平線を染める中、ザトウクジラが力強くジャンプする瞬間を捉えました。潮を吹き上げ、悠々と海を泳ぐ姿はまさに生命の躍動そのもの。EOS R5の高感度性能とRF100-500mmの組み合わせにより、夕暮れの暗い海の中でもクジラをクリアに撮影することができ、その力強い生命力が写真に凝縮されています。

太陽の光を浴び、虹色に輝く滝を舞台に、ツバメたちが軽やかに舞う姿。水しぶきが舞い上がり、虹色のヴェールに包まれた滝は、まるで夢幻の世界が広がっているかのようでした。その圧倒的なスケールに心を奪われ、シャッターを切り逃すまいと息を凝らしました。EOS R5の高感度性能とRF100-500mmの組み合わせにより、高速で飛び回るツバメの姿を捉え、滝の虹と鳥のシルエットを鮮やかに写真に収めることができました。

まとめ

圧倒的な光学性能と、多彩な撮影機能を兼ね備えた「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。風景写真だけでなく、野生動物や野鳥撮影など、幅広いジャンルの撮影でその真価を発揮します。特に、超望遠域での手ブレ補正性能は特筆もので、遠方の被写体もクリアに捉えられます。近距離撮影にも対応し、花や昆虫など、身近な被写体の撮影も楽しめます。この1本があれば、あなたのカメラライフがさらに充実すること間違いなしです。

　

　

■写真家：八木千賀子
愛知県出身。幼い頃より自然に惹かれカメラと出会う。隻眼の自分自身と一眼レフに共通点を見いだし風景写真家を志す。辰野清氏に師事し2016年に【The Photographers3 (BS 朝日)】出演をきっかけに風景写真家として歩み始める。カメラ雑誌、書籍など執筆や講師として活動。