キヤノン RF100mm F2.8 L MACRO IS USM レビュー|八木千賀子
はじめに
カメラは人の目では見えない世界を写し出してくれますが、その中でもマクロレンズはとても小さな世界に迫ることができ、通常のレンズでは写しきれない小さな被写体をクローズアップして撮影することができます。
通常のレンズよりも被写体に思い切り近づくことができ、肉眼で見ているよりもディテールをクリアに写しとれます。花や小さなものを写すのに威力を発揮してくれますが、遠くを写すこともできるので通常の単焦点レンズとしても使用が可能です。
RF100mm F2.8 L MACRO IS USM について
RF100mm F2.8 L MACRO IS USM は、キヤノンが 2021 年 7 月に発売した RF マウント用のマクロレンズです。このレンズは、最短撮影距離 26cm、最大撮影倍率 1.4 倍(ワーキングディスタンス 8.6cm)と等倍以上の高いマクロ性能を備えています。被写体に非常に近い距離からの撮影ができ、細かいディテールをクリアに写し取ることができます。
マクロレンズは小さな被写体に寄って撮影するためピント合わせがとても敏感で、微小なズレでもピントが外れやすいため、正確なピント合わせが必要になります。そのため手持ちで撮影すると撮影者自身の手ブレにより撮影の難易度は上がりますが、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM にはハイブリット IS が搭載されており、角度ブレとシフトブレのふたつの手振れを同時に補正する手振れ補正機構が働くため、レンズ単体ではシャッタースピード 5.0 段分、R5 などボディ内手ブレ補正を持つカメラと組み合わせた場合は協調制御により 8.0 段分と、強力な手振れ補正で手持ち撮影がしやすくなっています。
キヤノンとしては初めて採用された「SA コントロールリング」は、球面収差をコントロールすることができ、前ボケや後ろボケを変化させることができるのも特徴です。フィルターを使わずにソフトフィルター効果を得ることもでき、まるでオールドレンズのようなバブルボケもこのレンズ1本で叶います。
このようにRF100mm F2.8 L MACRO IS USM は、マクロ撮影に特化した高性能なレンズであり、被写体のディテールをクリアに写し取りたい方におすすめのレンズです。
等倍を超える 1.4 倍が写し出す世界
マクロレンズというと等倍マクロ(1.0 倍)をイメージすることが多いですが、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM は最大倍率 1.4 倍(最短撮影距離 0.26m)での撮影が可能になったおかげで、等倍マクロと比べてさらに小さな被写体も繊細なディテールや迫力ある一枚を撮影することができます。
小さなコガネムシについた水滴さえも鮮明に写し出し、まるでそこにいるかのような質感です。1.4 倍のマクロレンズは非常に浅い被写界深度を持つため、背景のボケがとろけるように美しく写ります。この背景でより被写体が際立ち美しい写真を撮ることができます。
こちらの写真は最大撮影倍率 0.5 倍(最短撮影距離 0.35m)のハーフマクロレンズRF85mm F2 MACRO IS STMで撮影しています。1.4 倍の RF100mm F2.8 L MACRO IS USM と比べると少し距離があるのがわかります。
ハーフマクロの RF35mm F1.8 MACRO IS STM と RF100mm F2.8 L MACRO IS USM で同じ被写体を撮影していますが、1.4 倍だとここまで大きく雫を写すことができるので、水滴の中のアジサイを主役にすることができます。
小さな被写体も主役にして魅力を引き出すことができる
普段見過ごしてしまうマクロな世界ですが、マクロレンズを使用することでその繊細で美しい世界を表現することができます。わずか 1cm ほどのテントウムシと 1~2mm ほどしかないアブラムシ。マクロレンズを使い近距離から撮影することで、昆虫の身体の微細なディテールや色彩をとらえています。通常のレンズでは見ることのできない細部までクッキリと写し出し、とろけるようなボケによってそっと虫たちの世界を覗いているかのようです。
SA コントロールリングの活用方法
キヤノンとしては初めて搭載された「SA コントロールリング」は、レンズ一番手前にあるリングを回すことで球面収差を変えられるようになっています。真ん中にある状態は通常のマクロレンズで、左右に4つの目盛りが割り振られています。右側の「+側」に回すと、ピント位置よりも手前のボケが柔らかくなり、後ろのボケの輪郭が硬くなります。左側の「-側」に回すと、ピント位置よりも手前のボケが硬くなり、後ろのボケの輪郭がやわらかくなります。
SA コントロールリングの効果を大きくすると、どちらもソフトフィルターをかけたかのような柔らかな写真を撮影することができます。ただしピントの合っている部分のシャープさも失われるため、シャープさを保ちながらボケを調整したいのであれば、少しだけ回転させて SA コントロールリングの効果を写真に加えるのがオススメです。絞り値が小さいと効果はありますが、絞っていくと効果は少なくなります。また撮影距離にも影響されるので、SA コントロールリングの効果を得るためには絞り開放で、ある程度近づいて撮影します。
SA コントロールリングを使用しない場合は LOCK することができるので、不用意に触ってしまい意図しない失敗を防ぐこともできます。オールドレンズで撮影しているかのような雰囲気になるので、オールドレンズをお好きな方も楽しめるレンズではないでしょうか。
強力な手ブレ補正機構
マクロレンズ撮影では被写体が小さいため近づいて撮影することが多く、三脚を立てることが難しかったり、わずかな風や撮影者自身の手ブレによりピントが合わないことがよくあります。RF100mm F2.8 L MACRO IS USM は最大撮影倍率 1.4 倍なので被写体が大きく写る分、被写界深度はとても浅く少しのブレでピントが合いづらく、写真のように複数の水滴にピントを合わせる場合は、少し絞って撮影しないとボケている部分が多すぎてしまうことも。そんな時は少し絞り、脇を締めしっかりとカメラを持ち連射で撮影するのがオススメです。
このレンズはレンズ単体でシャッタースピード 5.0 段分、R5 などボディ内手ブレ補正を持つカメラと組み合わせた場合は協調制御により 8.0 段分と強力な手振れ補正が強い味方になってくれます。
単焦点中望遠レンズとしての活用
100mm の中望遠レンズとしても使用できるので、風景の一部を切り取る使い方もできます。開放絞りから解像力が高くとてもシャープで鮮明な写りをするので、単焦点レンズとしてもどんどん使いたくなるレンズです。夕暮れ時、山の中で出会った鹿にも瞬時にAFが合い、強力な手ブレ補正のおかげでブレることなく手持ちで撮影することができました。
F2.8 と明るいレンズなので、夜景撮影にも使うことができます。焦点距離が長いので美しい部分のみを切り取ることができます。 星景撮影もできますが、中望遠レンズなので長時間露光になるため、地球の自転により星が動いてしまい星が流れたように写ってしまうので、星を止めて撮るよりは流して撮影する方が良いと思います。
マクロレンズだけとしてではなく単焦点望遠レンズとしても優秀な RF100mm F2.8 L MACRO IS USM は風景だけではなく、とろけるようなボケと高い解像度、立体感を生かしポートレート撮影でも威力を発揮してくれます。
まとめ
このほか RF100mm F2.8 L MACRO IS USM は防塵・防滴性能にも優れており、フッ素コーティングもされているのでマクロで水滴などを生かした屋外での撮影にも適しており、フルタイムマニュアルなので複数被写体がある場合も瞬時にピントを合わせることができます。コントロールリングに機能を割り当てることもできるので、虫などの撮影時もファインダーから目を離さず設定を変えたりと、至れり尽くせりの1本になっています。
フィルター径も 67mm で女性の手でも取り扱いやすいのも魅力です。ぜひ最大撮影倍率 1.4 倍の世界を覗いてみてください。
■写真家:八木千賀子
愛知県出身。幼い頃より自然に惹かれカメラと出会う。隻眼の自分自身と一眼レフに共通点を見いだし風景写真家を志す。辰野清氏に師事し2016年に【The Photographers3 (BS 朝日)】出演をきっかけに風景写真家として歩み始める。カメラ雑誌、書籍など執筆や講師として活動。