キヤノン RF15-35mm F2.8 L IS USM レビュー|想像以上の高い汎用性が魅力
はじめに
2019年9月に発売された「RF15-35mm F2.8 L IS USM」を使いはじめてから約2年。EF16-35mm F2.8L III USM、EF16-35mm F4L IS USMからの買い換えで使い始めた当初は、ちょっと重いなぁと思いながらも、広角側が1mmワイドに広がった喜びと画質の良さで納得したことを思い出します。
この期間にメインカメラはEOS R からEOS R5へと変わり、協調手ブレ補正でさらに撮りやすくなりました。今日のレビューではこの2年間に撮影してきた写真や動画をご覧いただきながら、レンズの魅力をお伝えしていきたいと思います。
デザイン・外観
長さ126.8mm 、重量約840g、EF16-35mm F2.8L III USMよりも50g重いのですが、撮影が始まると重量の違いはすぐに忘れるぐらいのもの。RFレンズシリーズ共通のコントロールリングやスイッチ類もおなじみの外観です。フィルター径はEF16-35mmF2.8L III USMと同じ82mmですので、フィルター資産をそのまま活かせるのもメリットです。
広角域だけでない幅広い表現
広角ズームレンズというと、どうしても広角域に注目してしまいがちですが、私の場合は、15mmから標準域近くの35mmまで満遍なく使っています。ボディ内手ブレ補正機構があるミラーレスカメラとレンズのイメージスタビライザーを活用して、手持ちで撮れる範囲がぐっと広がっているのもお気に入りのポイントです。
北海道のオンネトー湖から撮影した阿寒富士と雌阿寒岳の一部。焦点距離15mmで撮影。広角レンズで広い風景を撮ると、ただ広いだけの写真になりがちですので、シャドウ部を活かして、メリハリが生まれるように心がけて撮影しています。
上の写真と同じ場所から焦点距離を35mmで足元の湖の一部を切り取った作品。焦点距離35mmの場合は、情報が入りすぎないように四隅を確認して、切り取る意識で撮影します。
細かな枝の表情が繊細に描写された一枚です。焦点距離15mmですと広角レンズによる歪みを気にする方も多いと思いますが、RF15-35mm F2.8 L IS USMは四隅のピントは流れず、自然な描写力が魅力です。色収差や回折収差などを補正して、描写を最適化してくれるデジタルレンズオプティマイザがデフォルトで有効になっているので、キヤノンの純正現像ソフトDPPでの現像がおすすめです。
こちらは焦点距離35mmで撮影した早朝の森のシルエットです。シャッター速度は1/20秒、手持ち撮影しています。EOS Rとの組み合わせでは約5段、EOS R5の場合は約7段分の手ブレ補正効果があり、スローシャッターでも気楽に撮影できるようになって、ブレているかも?という不安が激減しました。
最短撮影距離
次に最短撮影距離を知って、さらに表現の幅を広げましょう。RF15-35mm F2.8 L IS USMの最短撮影距離は28cmです。レンズ面からですとおおよそ15cmぐらいまで被写体に近づけます。実用上、広角ズームレンズでここまで寄れたら十分という距離感です。
岩場の氷柱を手持ち&AFで撮影。焦点距離は33mm。
これは筑波山の登山道で撮影した巨木です。RFレンズらしく質感描写も繊細に。焦点距離27mmで撮影。
広角域は狭い場所、小さな場所で威力を発揮
広角域のメリットは何でしょう?
広い空間を広々と捉えるのはもちろんですが、狭い空間を広く見せるというのが、広角域の最大のメリットです。不動産屋さんのサイトを見ると、狭い部屋でも広く見える写真を見たことがある人は多いハズ。風景においても、狭い場所や森の中などで広角域は有効です。
洞窟のトンネルの外側の景色が白飛びしないように、露出はマイナス2.33で撮影。DPPの現像でシャドウ部を明るく調整しています。焦点距離15mmで、手持ち撮影です。絞りはF4.5ですが、RFレンズがすごいなぁと思うのは、岩肌の質感描写。開放に近い絞り値でもここまでシャープな表情を捉えてくれます。
海岸の岩場で撮影した直径50cmくらいの小さな水たまりです。カメラ位置をギリギリまで下に置いて、前ボケを作り、遠近感を強調することで実際よりも広くみえるような効果を狙っています。
F2.8で星空を捉える
EOS R5などのミラーレスカメラでは、高感度の撮影でもノイズが目立たなくなったこともあり、星景撮影ではISO1600~3200をよく使っています。私自身はF2.8であれば星空はOK、開放F4だとちょっと暗いなという認識があります。今後さらに高感度が強いカメラの登場で変わってくるかもしれません。下の作例はそれぞれ焦点距離15mmと35mmで撮影した星空の写真です。
風の強い草原にて、流れる雲と共に。焦点距離15mmで撮影。
こちらは朝の5時過ぎ、空が明るくなり始めた頃の早朝の星空です。F2.8で肉眼で見えている以上に星が写ります。焦点距離35mmで撮影。ちなみに星空の撮影では、星を点で止めて撮影する基本知識「500ルール」(計算方法は500÷撮影焦点距離=露光秒数)で撮影しています。
ND2000・ND32000との組み合わせ
レンズの解像感の高い描写力は上に書いた通りですが、撮影の現場ではフィルターワークも重要です。ダイナミックな雲の動きと空の表情を捉えたい時には、RF15-35mm F2.8 L IS USMにNDフィルターを組み合わせて撮影します。
最近のお気に入りは、昼間でも11段分の光量が落ちるND2000と15段分の光量が落ちるND32000を愛用しています。フィルターそのものも濃いサングラスのようで反対側が見えないぐらいです。これほどまでに濃いNDフィルターは、データの色としてはややマゼンタ被りの傾向がありますが、DPPなどの現像ソフトでグリーンへ寄せて、ものの数秒で簡単に調整できるのが嬉しい点です。
ND2000を使用し、焦点距離17mmで撮影しました。撮影時間は夕方の16時過ぎの夕暮れの頃。ISO400のままで90秒の露光時間です。
ND32000で午後13時頃に撮影した一枚です。広角ズームレンズとNDフィルターの組み合わせで、明るい日中でも超スローシャッターが楽しめます。
使用した道具のご紹介です。NDフィルターとホルダーはNiSiフィルターの100mm角形フィルターホルダー「V7」、フィルターはケースにそれぞれND2000とND32000が入っています。
タイムラプス
カメラ(EOS R5など)のタイムラプス機能で、夕方や早朝の露出の変化が激しい時間帯でも簡単にタイムラプス動画が撮影できます。タイムラプスは連続する静止画を自動的に繋いで動画を生成してくれる便利な機能です。目で見ていると動きが遅いような雲の動きも、ダイナミックに移動していることがわかります。広い範囲を捉えるRF15-35mm F2.8 L IS USMは、タイムラプスの撮影で大活躍するレンズです。定点で撮影するため、三脚を必ずご用意ください。
水中でも活躍
RF15-35mm F2.8 L IS USMは、陸上だけでなく、私の水中風景撮影でもメインのレンズとして活躍しています。
EOS R5とRFレンズで水中風景の質感を描写しました。ダイビングライセンスを取ったのは30年ほど前ですが、今は主に素潜り中心です。RF15-35mm F2.8 L IS USMの高い描写性能を陸上だけで使うのはもったいなく、水中にも連れ出しています。
EOS R5のAF性能は水中でも陸上と同じように鋭く反応してくれます。浮遊する葉を捉えた一枚。
水中ハウジングはSEA AND SEAを長年愛用しています。ハウジングはレンズ部分の中間リングを変えれば他のレンズでも使用可能です。
まとめ
今回は、撮影焦点距離に応じて幅広い撮影が楽しめるRF15-35mm F2.8 L IS USMをご紹介させていただきました。焦点距離の変化や撮影距離に応じて、「広角ズーム」という言葉以上に幅広い写真が楽しめるのが特徴です。皆さんの表現したいフィールドに合わせて、広角ズームの世界をお楽しみください。
■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。
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