はじめに

こんにちは！写真家のGOTO AKIです。

キヤノンの「RF28mm F2.8 STM」は、軽量でコンパクトなレンズとして、アマチュアからプロまで多くの写真家に人気のレンズです。今回はこのレンズを使って撮影した自然風景の写真とともに、スペックと表現の両方からその魅力を探ってみたいと思います。

スペックとデザイン

まず、「RF28mm F2.8 STM」のスペックについて触れておきましょう。このレンズは、全長わずか約24.7mm、質量約120gという超小型・軽量設計が特徴です。そのため、旅行や長時間のハイキングなど、自然風景の機動力が求められるシーンで特に活躍します。フルサイズミラーレスカメラで使用した際にも、小さくて持ち運びに便利です。重量のストレスはゼロといっていいでしょう。長時間の撮影でも負担が少なく、手持ちでの撮影がしやすい点が魅力です。

構造はシンプルで「MF・コントロール・AF」の切り替えスイッチのみなので、直感的な操作が可能です。また、フルサイズカメラとAPS-Cカメラを併用している方は、フルサイズ機では28mmの広角レンズとして、EOS R10などのAPS-C機では焦点距離が45mm相当の標準レンズとして使い分けることが可能です。カメラを替えるだけでレンズの用途が広がるのも魅力的です。

広角域の臨場感

28mmという焦点距離は、超広角レンズと比べると狭めですが、標準と比べると広がりと奥行きがある画角です。実際の視野に近い自然な広さといってもいいでしょう。地平線が広がるシーンなど、被写体との距離がある場合は風景全体を余すことなくフレームに収めることができる一方、森の中では自然の壮大さやその場の空気感や臨場感を伝えるのに有効です。

こちらは曇りの天候の中、フィルターなしで、水面ギリギリの岩の上にカメラを置いて撮影しました。広角28mmでカメラ前の水面から滝まで、奥行きのある描写です。

必要十分な解像感

自然風景の写真では、細部のディテールが鮮明に描写され、木々の葉や岩肌の質感がくっきりと再現されます。レンズの値段を考えると、中央部から周辺まで必要十分な解像感です。作例にあるような木々の反射が池に映り込むシーンでは、微細な葉の描写や水面の光の揺らぎが非常に美しく表現されています。

色彩表現も自然で素直な描写です。自然の緑、水や空の青が忠実に再現され、目に映る景色そのままの美しさを写真で表現することができます。現実の風景をそのまま写真に封じ込めるような感覚で、撮影者の意図する表現がダイレクトに伝わりやすいレンズです。広角レンズとしては歪みが少なく、風景写真でありがちな水平線の曲がりや、建物のゆがみが目立たないため、後処理も楽なレンズです。

カメラのホワイトバランスは「太陽光」の設定で撮影しています。

F2.8で星景写真を撮ろう

開放F2.8という明るさは、星景写真の撮影でも活躍します。撮影の準備と操作は簡単です。カメラの液晶モニターで拡大して、マニュアルフォーカスで星にピントを合わせるだけ。あとはブレないようにタイマーでシャッターを切ります。撮影はRAWデータで記録し、キヤノンの純正現像ソフトDPP（Digital Photo Professional）で現像するとより良好な画質が得られます。デジタルレンズオプティマイザをオンにしましょう。

山に行く時など標準レンズやマクロレンズ、望遠レンズでカメラバッグがいっぱいの時でも、すっと隙間に入る「RF28mm F2.8 STM」は大変重宝するレンズです。

逆光耐性は？

「RF28mm F2.8 STM」は、Lレンズと比べたら逆光耐性なども弱いのは当然として、よく皆さんが口にされる「普通に綺麗」という感覚がピッタリくるレンズです。軽いレンズでスナップ感覚の楽しい撮影で、この解像感とコストパフォーマンスの良さは高い次元でバランスが取れています。

上の作例はわざと太陽光をレンズに入れた写真と、通常の逆光状態で撮影した写真です。

最短撮影距離は0.23m

「RF28mm F2.8 STM」の最短撮影距離は0.23mです。背景をぼかして被写体を際立たせるだけでなく、作例のように開放から2-3段絞って適度に被写界深度をコントロールし、主題とのバランスを取ることも簡単です。「ボケ＝開放値」ではないので、皆さんの表現意図に合わせてF値をコントロールしましょう。ボケの形状は、やや丸みを帯びた柔らかな印象です。

STMで静かな動画撮影

STM（ステッピングモーター）によるオートフォーカスは、静音性とスムーズさに優れています。自然風景は鳥などの素早く移動する被写体と比べるとフォーカスを合わせやすく、風に揺れる草木など動きのあるシーンでも簡単に撮影を楽しめます。作例はタイムラプスと普通に動画撮影をしたクリップが続きます。

まとめ

「RF28mm F2.8 STM」のインプレッションはいかがでしたでしょうか。軽量でコンパクトながら優れた性能を発揮するかわいいレンズです。自然風景の撮影においては、広角の視野、色再現性、シャープネス、そして軽快な操作性が気楽に楽しめます。広がりのある自然風景を必要十分な解像感で軽快に捉え、豊かな表現力を発揮します。この小さなレンズに秘められたポテンシャルを、是非皆さんも体感してみてください。標準～望遠レンズを主に使用している方にとっては、広角のパンケーキはサブレンズとしても活躍するでしょう。

　

　

■写真家：GOTO AKI
1972年 川崎生まれ。1993～94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。日本大学芸術学部 准教授・武蔵野美術大学造形構想学部 非常勤講師・キヤノンEOS学園東京校講師。