キヤノン RF70-200mm F4 L IS USM レビュー|望遠ズームの常識を覆すコンパクトさ

GOTO AKI

005_作例.jpg

はじめに

 こんにちは。写真家のGOTO AKIです。昨年の夏頃から毎月レビューを書かせていただいておりますが、RFレンズのラインナップが増えるにつれて、「どのRFレンズを選んだらいいのか?」というお悩み相談も増えてきました。私の主な撮影フィールドである「自然風景」では、旅行先への移動距離や現地での歩く距離が長いことが多いため、荷物はなるべく小さく、軽くしたいという声をよく聞きます。

 今回は「小さく・軽く」のご要望にお応えして、小三元のズームレンズである「RF70-200mm F4 L IS USM」のインプレッションを作例とともにご案内したいと思います。それでは、早速はじめましょう!

デザイン・外観・操作感

001_RF70-200mm.jpg

 まずはサイズ感からチェックしていきましょう。「RF70-200mm F4 L IS USM」は全長119mm、質量695gで、カメラバッグに垂直で入る大きさです。標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」のサイズ、全長107.3mm、質量700gとほぼ同じですので、かなりコンパクト。望遠ズームレンズは大きくて重いから嫌だなぁと思っていた方にも気楽に持ち運びいただけるレンズです。

 同じ焦点距離で比較すると「EF70-200mm F4L IS II USM」が、全長176mm、質量780gですので、長さにして57mm、質量も85g軽くなっています。カメラバッグのスペースに余裕ができる分、もう一本別のレンズを入れたり、フィールドで必要な水や食料を持ち運べる点も大きなメリットです。一方、焦点距離を伸ばすエクステンダーは装着不可ですので、焦点距離200mm以上で撮ることが多い方は確認が必要です。

 私が愛用しているカメラ、EOS R5に「RF70-200mm F4 L IS USM」を装着しても、標準ズームレンズをつけているようで、重いなぁという感覚は皆無です。

 登山などの撮影現場で、焦点距離をテレ側(望遠側)で撮影する時は、ズームが伸びて最長約174.7mmの長さになりますが、ズームリングを回せば1~2秒で119mmのコンパクトサイズに戻ります。ズームが勝手に伸びないようにロックスイッチがついているので収納も簡単。移動中にEOS R5にレンズをつけたままカメラバッグに突っ込む時も、レンズの長さを気にしなくてよいため取り回しがとても楽です。

 リュックタイプ、ショルダータイプやスリングタイプなど、みなさんがお使いのカメラバッグの種類を選ばず、実用的で使いやすいのも評価したいポイントです。

002_レンズ側面.jpg

 「RF70-200mm F4 L IS USM」は小型軽量ですが、そこは伝統のLレンズ。手に取った時に伝わってくるしっかりとした質感、防熱効果のある白塗装、AF/MFの切り替えスイッチやイメージスタビライザーなどのスイッチ類も他のRF同様の使いやすい配列です。マウント部は防塵防滴仕様でゴムのガスケットがついているため、自然風景のフィールドでもホコリなどが入りにくい構造になっています。

ズーム全域で高解像

 先に携帯性の素晴らしさをお伝えしましたが、もちろん描写力も全焦点距離でシャープで満足な仕上がりです。海で撮影した作例をワイド端とテレ端それぞれでご覧ください。

 焦点距離70mm、手持ちで撮影した一枚。岸壁のゴツゴツした質感が夕暮れ時の斜光でより立体的に描写されています。「RF70-200mm F4 L IS USM」は開放からシャープな写りですが、F8~F11前後が微細に被写体の細部を写します。手持ち撮影の時はイメージスタビライザーは基本的にONのまま使用しています。

003_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F11 1/160秒 ISO100

 焦点距離200mm、こちらも手持ち撮影です。望遠レンズの切り取り効果で被写体を大きく捉えて岩肌の質感をよりダイナミックに描写しています。EOS R5でピクチャースタイルを「スタンダード」で撮影し、DPP(Digital Photo Professional)でそのまま出力した作例です。もっと柔らかい描写が好きな方は、絞りを開放、ピクチャースタイルを「ニュートラル」で撮影すると少しやさしい感じになります。

004_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F11 1/125秒 ISO100

 焦点距離200mmで冬の森を撮影。木々の細かな線と淡い色彩が詳細に捉えられた一枚です。質感描写とRFレンズの相性は抜群!

005_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO400

 夕方の砂浜です。RFレンズはどれも逆光に強いですが、「RF70-200mm F4 L IS USM」の描写力も素晴らしいクオリティ。

006_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F4 1/4000秒 ISO100

最短撮影距離

 最短撮影距離は被写体までどれぐらい近づけるかの数値です。「RF70-200mm F4 L IS USM」では、最短撮影距離がズーム全域に渡って0.6mという驚異的な近距離からの撮影ができるようになりました。「驚異的」というのは大袈裟に聞こえるかもしれませんが、先ほど触れた「EF70-200mm F4L IS II USM」の場合1mだったことを考えるとその差は歴然です。レンズ面からの距離ですと被写体まで約425mmの近距離でピントが合う計算になります。望遠ズームで遠景を撮影した直後に足元の近景を撮影することが簡単にできる距離感です。撮影倍率が0.28倍で、擬似的なマクロ撮影も楽しめる一本です。

 焦点距離200mmで撮影。望遠ズームで撮ったとは思えない近い距離感が特徴です。

007_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F4 1/50秒 ISO800

強力な手ブレ補正

 EOS R5やEOS R6で使う場合は、ボディ内手ブレ補正と光学補正の協調制御で最大7.5段の補正効果があります。EOS RやEOS RPでは補正効果は最大約5段分です。暗い時間帯など、シャッター速度が低下するようなシーンでもブレることなく手持ちで撮影が可能なスペックです。作例として遅めのシャッター速度で手持ちで撮ってみた写真をご覧ください。

 冬の夕方、光量が少ない時間帯の撮影で、シャッター速度が遅いためイメージスタビライザーをONで撮影しています。焦点距離は70mmで1/20秒の遅めのシャッター速度です。富士山の山肌がブレることなくシャープに写っています。

008_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F4 1/20秒 ISO400

 同じ時間帯に、焦点距離200mmでシャッター速度は1/4秒という手ブレしてもおかしくない条件で撮ってみました。山肌の質感を描写したかったので絞り数値はF8です。手持ちの場合、いままでは開放F値でシャッター速度を稼ぐかISO感度を上げるかしか方法はありませんでしたが、強力な手ブレ補正を利用して、光量の少ない時間帯でも絞りを深くして撮影することが可能になりました。(とはいえ、適当に撮るとブレますので、この作例は息を吐きながら自分がブレないように丁寧に撮っています。)

009_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F8 1/4秒 ISO400

フィルター径

 地味ながら、いいなぁと思ったポイントがフィルター径です。「RF14-35mm F4 L IS USM」、「RF24-105mm F4 L IS USM」、「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」などと同様にフィルター径は77mmで、フィルターを共用できるので便利です。

 可変NDフィルター(ND2-64)を使っての作例です。岩肌はシャープに、流れている水は滑らかに描写しています。

010_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F16 2.5秒 ISO100

 NDフィルター(ND1000)使用の作例です。2分間の露光時間で雲や波など動いている被写体を全て滑らかに表現した一枚。

011_作例.jpg
■撮影機材:Canon EOS R5 + RF70-200mm F4 L IS USM
■撮影環境:F16 120秒 ISO50

動画

 水風景の動画を繋いでみました。カメラはEOS R5で、三脚を使用。焦点距離の長い望遠レンズで不要な被写体が写らないように切り取っています。望遠ズームならではの描写です。

まとめ

 今回レビューした「RF70-200mm F4 L IS USM」は、RFレンズらしい高画質な描写力も魅力ですが、何といっても携帯性の良さ、収納時にコンパクトなサイズになることと軽さが最大のウリではないかと感じました。荷物を小さくしたい方、撮影中に重いレンズを持ちたくない方には大推薦のレンズです。

 これからあたたかい季節が始まりますので、お気に入りの望遠レンズを手に是非フィールドへお出かけください。

■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。

その他の商品はこちらから

関連記事

人気記事