はじめに
今回ご紹介するのはキヤノン独自のコーティングによって生まれる、独特でとろけるようなボケ味が魅力のRFレンズ「RF85mm F1.2 L USM DS」です。
410,850円 (税込)
中古: 293,700円 (税込)~
デザイン・仕様
左:RF85mm F1.2 L USM 右:RF85mm F1.2 L USM DS
全長は117.3mm、重量は約1.195g。同一の開放F値と焦点距離の「RF85mm F1.2 L USM」とはサイズも形状も同じで、違いはボディに刻印された「DEFOCUS SMOOTHING」という表記のみです。この「DEFOCUS SMOOTHING(DS)」コーティングというのがキヤノン独自の特殊な蒸着技術の名称で、レンズの中心部から周辺に向けて徐々に透過率を下げながら光を遮ることで、通常のレンズ描写と比べてボケの輪郭がやわらかく、なめらかになるという特徴を持っています。
最短撮影距離は0.85m。82mmのフィルター径を持つ開放F1.2の大口径単焦点レンズのボケ味というだけでもため息が出るほどの美しさですが、このDSコーティングによって、ピント面のシャープさとボケのやわらかさが絶妙なバランスで成立しています。防塵防滴性能を有していますが手ブレ補正機構は搭載していないため、ボディ内手ブレ補正を搭載したカメラと組み合わせるのがオススメです。
RF85mm F1.2 L USMとの違い
「RF85mm F1.2 L USM DS」はDSコーティングによってレンズ周辺部の透過率が下がるため、絞り開放時の露出は約1.3段分暗くなります。同じ焦点距離と開放F値を有する「RF85mm F1.2L USM」と同一条件で撮影するとその違いは一目瞭然です。
▼RF85mm F1.2 L USM (F1.2 1/250秒)
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/250sec F1.2 ISO100 WBオート
▼RF85mm F1.2 L USM DS (F1.2 1/250秒)
同じ露出では手前の猫の置物が若干暗い印象に。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/250sec F1.2 ISO100 WBオート
▼RF85mm F1.2 L USM DS (F1.2 1/125秒)
シャッタースピードを一段分落とすことで「RF85mm F1.2 L USM」とほぼ同じ結果を得られました。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/125sec F1.2 ISO100 WBオート
手ブレ補正機構が搭載されていないので、撮影条件によってはこの1.3段分の差が響く場面もあるかもしれませんが、開放F1.2という明るい絞りから生まれる大きなボケを楽しむ分にはさほど気にすることはないでしょう。
日常スナップにも大活躍
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/100sec F1.2 +1/3EV ISO1000 WBオート
85mmという焦点距離で活躍する撮影シーンというと、やはりポートレートをイメージすると思います。特にDSコーティングによる滲むようなボケが醸し出すやわらかな空気感と、最新の工学設計によって生み出される高解像度な描写の組み合わせは、人物撮影において他のレンズとは一線を画す世界観を創り出してくれることでしょう。デュアルピクセルCMOS AFとレンズ制御の最適化によって高精度なAFを実現していることから、スナップシーンでの活躍も大いに期待できます。
実家近くの神社の節分でのワンシーン。大黒さまが見物人に御福分けの五円玉を放る瞬間も高速AFのおかげでしっかり捉えられました。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/3200sec F1.8 ISO4000 WBオート
F1.2の大きなボケで五円玉をキャッチしようと手を上げる人たちを前ボケとしてフレーミング。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/3200sec F1.2 ISO2500 WBオート
恵比寿さまが釣り上げた鯛もバッチリ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/3200sec F1.8 ISO8000 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/3200sec F1.8 ISO2000 WBオート
母が見事ゲットしていた五円玉。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/1250sec F1.2 ISO100 WBオート
祖母宅の屋上が大好きな姪っ子。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/3200sec F1.2 +1/3EV ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/640sec F1.2 + 1 2/3EV ISO100 WBオート
目の前のシーンに合わせて撮りたいフレーミングを探して被写体との距離を測るのも、スナップ写真の面白さのひとつです。前述した通り、「RF85mm F1.2 L USM DS」の最短撮影距離は0.85mとそこまで寄れませんが、寄ったり引いたりを繰り返して自分の好きな被写体との距離感を見つけるのも楽しいと思います。
雪の降った翌日、少し溶けかけたシャーベット状の雪をパチリ。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/200sec F1.2 +2EV ISO100 WB蛍光灯
せっかくなので雪だるまを作って記念写真。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/640sec F1.2 +2EV ISO100 WBオート
開放F1.2とDSコーティングが魅せる世界
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/320sec F1.2 +2EV ISO100 WBオート
DSコーティングによって生み出されるボケ味は絞りを開けるほどボケの輪郭がやわらかくなることで、メインの被写体の存在感がより引き立ちます。屋外で撮影した場合の木漏れ日の玉ボケなどはため息が出るほど美しいです。同時に中望遠域の圧縮効果を生かした前ボケはよりボケが大きくなるため、DSの特徴であるボケの輪郭のやわらかさを最大限生かすことができると思います。
紅梅を前ボケにして背後の木立に彩りを添えました。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/200sec F1.2 +3EV ISO100 WBオート
ガラス越しに招き猫を撮影。ガラス面の反射がやわらかく滲む描写が印象的でした。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/320sec F1.2 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/100sec F1.2 +1 1/3EV ISO125 WBオート
今回「RF85mm F1.2 L USM DS」を使って一番心が躍ったのは海を撮影した時でした。海というある意味ひとつの被写体が見せる画面手前から奥までの表情の変化を、なめらかな描写によって一枚の写真の中で再現できたことで、このレンズの良さを最大限感じられたように思います。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/100sec F1.2 +1 1/3EV ISO125 WBオート
波のなめらかな描写は息を呑むほどに美しかったです。
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/500sec F1.2 ISO100 WBオート
まとめ
■撮影機材:Canon EOS R6 Mark II + RF85mm F1.2 L USM DS
■撮影環境:1/400sec F1.2 +3EV ISO100 WBオート
キヤノン独自の「DEFOCUS SMOOTHING(DS)」コーティングによって独自の世界観を持つRFレンズ「RF85mm F1.2 L USM DS」はポートレートに留まらず、さまざまなシーンで活躍してくれるレンズです。従来の「RF85mm F1.2 L USM」と比較すると若干価格が高価な点と1.3段分の光量落ちという特性を踏まえても、他のレンズにはないシャープな描写となめらかなボケ味のマリアージュは非常に魅力的といえます。この感動をぜひ一度味わってもらいたいと思います。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。