【オールドコンデジ】豊かな色表現を楽しむ「FUJIFILM X10」の魅力を再確認
はじめに
富士フイルムXシリーズは2010年に発表されたFinePix X100を皮切りにスタートし、FUJIFILM X10はその翌年2011年にXシリーズ第2弾のコンパクトデジカメとして登場しました。
X100の流れを汲むクラシックなデザインと操作感、高品質な画質の両立を融合したオールドコンデジとして人気が再燃しているモデルの一つです。今回は私が長らく愛用している本機をご紹介いたします。
FUJIFILM X10の特徴
X10はそのデザインと画質のバランスから、多くのカメラファンに支持されました。初期のXシリーズならではの小ささとカメラらしいデザインで、わたしもお気に入りの一台です。今も手放さず大切に手元に置いています。
ボディ天面と底面はマグネシウム合金、モードダイヤルやレンズリングはアルミ削り出しで作られており、外装は合成皮革によるレザー調。質感はもちろん、操作時のクリック感や重みについても細部にわたりチューニングが施されており、物理的かつ直感的な操作感から、まるでアナログカメラを使っているかのような感覚を味わえます。
富士フイルム独自のカラーフィルター配列を用いた、2/3型1200万画素EXR CMOSセンサーが搭載されており、高感度・低ノイズ優先/ダイナミックレンジ優先/高解像度優先に切り替えて撮影できるなど、高画質撮影を実現しています。
また、露出/ISO感度/ダイナミックレンジ/フィルムシミュレーションと、連続撮影できる4種のオートブラケティング機能、画質優先の低感度100から、わずかな光源でも撮影できる超高感度12800までの設定など、コンパクトデジカメとは思えない高機能で、一般的なコンデジとは一線を画す仕様です。
搭載されているフジノン4倍ズームレンズは、焦点距離7.1mm〜28.4mm(35mm判換算28mm〜112mm相当)で開放F2.0-2.8。広角端も、望遠端も、コンパクトデジカメとしては非常に明るい開放F値で、暗所・低照度の環境でも高品質の写真を撮影することできます。焦点距離の長さも魅力で、手元から遠景まで多様なシーンに対応でき、日常から旅行まで幅広く活躍してくれます。
▼広角端:7.1mm(28mm相当)
▼望遠端:28.4mm(112mm相当)
高屈折ガラスプリズムと非球面レンズ3枚を採用した、視野角の広い明るく見やすい光学ファインダーもあります。ズームに連動し、タイムラグ無く見たままにシャッターを切ることができます。撮影時のパララックスはあるものの、ファインダーをのぞいて撮影する行為もまたカメラらしい魅力のひとつでしょう。
二つのマクロモード
小さなセンサーの恩恵を受けるのがマクロモードです。マクロモードに切り替えると、広角端で約10cm、望遠端で約50cmでの撮影が可能になります。また、スーパーマクロモードも装備されており、約1cmまで(広角端のみ)近接できます。ただし、1mより遠くにはピントが合わなくなるため、モードを切り替えるのを忘れないように。
4倍ズームに加えて二つのマクロモードがあることで、身の回りのほとんどの被写体が撮影できてしまいます。
彩りを楽しむヨコハマスナップ
発売当時、コンデジにはなかった豊かな色表現が、X10を選ぶ理由の一つとして多くのユーザーに支持されていました。写真用フィルム設計のノウハウが息づくフィルムシミュレーションにより、カラーリバーサルフイルム調の色彩再現を可能にしたVelvia/PROVIA/ASTIAと、3種類のフィルター効果(コントラストを高めるモノクロ専用フィルター)を使った撮影を含めて8種類のモードから設定できます。
今回はフィルムシミュレーションやアドバンストフィルターを使いながら、港町ヨコハマをスナップ。色再現だけでなく、雰囲気づくりも得意なカメラであることがよくわかると思います。
低照度ならRAW現像でカバーも
写真撮影を本格的に楽しみたいユーザーに向けたエントリーモデルとして登場したX10は、RAWフォーマットでの撮影にも対応しています。
〝JPG撮って出し〟が基本の富士フイルムの色ですが、オールドコンデジとなった今なら、撮影後のカメラ内現像はもとより、PCでの編集・調整作業でフィルムシミュレーション以外の好みのプリセットをあててみるのもいいかもしれません。RAW現像編集時にノイズ低減でカバーもできるでしょう。編集時に細かな調整ができる点もメリットです。
夜間撮影は基本的に「P」プログラムモード、オート感度設定(上限ISO1600)、RAW+JPGで記録撮影しています。シーンによっては多少ノイズが乗りますが、ISO1600でも個人的には問題ない範囲だと感じました。
Adv「アドバンストフィルター」で表現を広げる
撮影モードダイヤルにあるAdv=アドバンストフィルターは、いわゆるカメラ内のデジタルフィルター同様の機能で、撮影時に特殊な効果を活用してクリエイティブな表現を楽しむための機能です。初心者でも簡単にユニークな効果を加えられ、撮影シーンや被写体によって、ハマるととても楽しい撮影方法です。コンパクトデジカメならではの表現として、ぜひ試してみてください。
トイカメラ
あえて画像周辺を暗くして、独特のレトロな雰囲気を演出。暖かい日差しにもぴったりです。
ミニチュア
画面の一部だけにピントが合い、その他をぼかす効果でジオラマ風に。
ポップカラー
カラーの彩度を強調し、鮮やかでインパクトのある仕上がりに。
HiKey
全体的に階調を明るくし、コントラストを抑え柔和な印象に。
ダイナミックトーン
HDR風の仕上がりで色彩を豊かに表現。
継ぎ目の無いパノラマ写真が撮影できる「ぐるっとパノラマ360」
広角端で水平を保ち、カメラを水平に一定の速度でスライドさせながら撮影することで、360°全方位が撮影できる撮影ができる機能です。今ではスマホカメラにも搭載されている機能ですが、結構忘れがちですね。
山頂や展望台などの高所や、開けた景色を目の前に撮影してみると、その場の光景がぐるりと包囲できて、なんだか動画撮影に替わる感覚を覚えました。今見直して改めて使ってみたいと思った機能です。
おわりに
FUJIFILM X100のコンセプトを受け継ぐモデルとしての人気の高さもさることながら、このカメラにできないことは意外と少なく、なんでも撮れてしまう感覚で、名機と言われる所以を随所に感じられます。Adv.フィルターも、ぐるっとパノラマ機能も、今使ってみるとかえって新鮮に感じられました。
普段からカバンに忍ばせて持ち歩きたいカメラですが、旅先でもこれ一台で特に困ることはなく、気軽に出かけられることは間違いないでしょう。わたしもまた、このX10を時折連れ出してみたいと思っています。これからも長く愛され続けて欲しいと願うカメラです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。