ヨーロッパのフォトスポットを巡る旅|三田崇博 海外撮影記【後編】
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回はヨーロッパ撮影記の後編です。前編ではベルギーとフランスのフォトスポットを巡りましたが、今回はスペイン、ポルトガル、ドイツのフォトスポットを巡ります。
海外旅行の現状について(2022年10月現在)
2022年10月より水際対策が緩和され、ワクチンを3回接種していれば海外旅行に行くハードルはかなり下がったと言えます。ただ円安の影響で海外での滞在費が高くなってきています。今回の旅ではマルチクッカーという電気調理器具を持参して、宿でパスタなどを自炊して食費を浮かせました。また、複数人で行動する場合はバスなどよりレンタカーのほうが安くつくこともあります。ただしガソリン代は日本よりかなり高いのでご注意を。
飛行機に乗り遅れる!?
なんと、フランスからスペインに向かう飛行機に乗り遅れてしまうというトラブルが発生。空港行きのバスが待てども待てども来ず。ようやく乗れたと思ったら大渋滞。飛行機は飛んでしまい、次のフライトは3日後……。仕方なく目的地とは違う聞いたことのない町に行く飛行機に急遽搭乗しました(もちろん追加料金を払って)。
その飛行機の向かった先は、スペインのアリカンテという町。有名なリゾート地とのことでしたが本来の目的地とは1000km以上も離れていました(涙)。
まったく予定していなかった場所ですが、せっかくなので紹介します。さすがにパリから1000km以上南下してくると一気に南国ムードが漂います。
メインストリートのタイル模様がとても特徴的だったので、思い切って超広角で遠近感を強調してみました。
昼間のみの撮影でしたが、なかなか絵になるところでした。
さて、ここからは当初の目的地を目指してレンタカーで移動します。せっかくなので道中も寄り道しながら撮影することにしました。
まずは約350km走ってグラナダへ。世界遺産のアルハンブラ宮殿は「赤い城」を意味し、13世紀に建造されたイスラム文化の遺産です。中心地から少し距離がありますがサンニコラス展望台からの眺めが最高です。
その後はスペイン南部の白い街を巡りました。最初に訪れたフリヒリアナは何気ない土産物屋さんも、とてもフォトジェニックでした。この町はどこを撮っても絵になります。逆に言うと「ここぞ」というスポットがないので、歩きながらポイントを見つけるのが楽しい場所でした。
次に白い街といえばここ、というほど有名なミハスにやってきました。白い服の女性をモデルに撮影しましたがGF100-200mmF5.6 R LM OIS WRはボケ味も綺麗で、人物撮影にも適したレンズです。
少し暗くなるのを待って撮影しました。無人のカットも撮影しましたが、人物が入るとワンポイントになり写真の印象が変わります。
この時期にスペインに来た最大の目的がアンダルシアのひまわりを撮影することでした。しかしアンダルシアといっても広大で、年によって植え付ける畑が変わるため「ここ」というポイントもありません。着いた日はとにかく車でいろいろな道をひたすら走り、止まってはロケハンを繰り返しました。とにかく大地と空の広さを実感しました。
刈り取りをしている作業機械をポイントにして撮影しました。日本では見られない光景です。
何か所かポイントを決めましたが、夕日のいい時間に撮れるのは一か所のみ。最後に見つけた場所で夕日を待つことにしました。もちろん他に撮影している人はおろか、見に来ている人すらいませんでした。輝度差の大きな条件でしたが白とびすることなく、やわらかな光に包まれた雰囲気を出すことができました。
陸路でポルトガルへ
シェンゲン協定加盟国同士は特に国境というものがなく、車やバスで簡単に行き来することができます。気が付いたら隣の国に入っていたということも。ただ国によって交通ルールなどが微妙に違っていたりすることもあるので注意が必要です。スペインではほとんどの区間で無料だった高速道路も、ポルトガルでは有料に変わりました。しかも支払方法が複数あり、料金所でのレーンを間違えると大変なことになります。というか、なってしまい次の日に追徴金を支払うはめに……。
ポルトガルに入って向かった先はユーラシア大陸の最西端にあるロカ岬。ここで大西洋に沈む夕日を撮影する予定でした。しかし到着直前に雲に覆われてしまい残念な結果に。翌日は晴れたので再びやってきました。太陽の光条を出すためにF22まで絞って撮影しています。この時は記念碑から少しだけ太陽が顔を出すアングルで撮影したのがポイントです。
他にはない独特な色使いが特徴の世界遺産シントラにあるペーナ宮殿。まるでおもちゃのようなその外観とはうって変わって、内部は 豪華絢爛でした。
ペーナ宮殿を望む十字架の丘にやってきました。遠くから見るとますますブロックで作ったお城のように見えてきました。
首都リスボンにある有名な発見のモニュメントです。先頭にはエンリケ航海王子の像がありますが、よく見るとその先に飛行機が写り込みました。航海王子が飛行機を見てびっくりしているようで少しユーモラスな作品になりました。
日本でもよくお世話になるファーストフード店も、とてもおしゃれでした。
世界遺産に登録されているバターリャ修道院です。到着が夜だったため少し不気味でもありましたが、超広角レンズでも全体が入りきらないほど巨大でした。
同じく世界遺産のアルコバッサ修道院では修道院内部を撮影しました。三脚が使用禁止だったので手持ち撮影でしたが、手ぶれ補正と明るいレンズのおかげでそれほど感度を上げずに撮影することができました。
大学の町コインブラ。時間があったので立ち寄りました。目当てだった美しい図書館は予約が取れず入れませんでした。取材当時ポルトガルはまだ外国人観光客の受け入れが始まって日が浅いにも関わらず、観光地は結構な人出でした。
ポルトガル第二の都市ポルト。ここは旧市街地が世界遺産に登録されています。あいにくの雨模様でしたか霧に包まれた町並みを撮影することができました。夜には雨が降り出しましたが防塵・防滴のボディとレンズだったので問題なく撮影に没頭できました。
再びスペインへ
実は当初のフライトで向かう予定だったのはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラでした。ここは巡礼路として有名で、ローマやエルサレムと並びキリスト教の三大巡礼地と言われています。現在でもその行程を歩く旅行者も多く、大聖堂の前では多くの巡礼者が記念写真を撮っていました。乗り遅れからたどり着いた見知らぬ町から、なんと2300kmも車を運転して目的地に着きました。ある意味、自分自身もようやくたどり着いたゴール地点に感動していました。
ドイツへ
暑かったスペインから飛行機に2時間乗ってドイツ中部の町メミンゲンに移動しました。一気に気温が下がり、夜は肌寒いくらいになりました。
町自体には見どころがないので車を借りて早速移動。装飾が見事な世界遺産「ヴィース教会」です。20年以上前に訪れて感動した場所なので、ぜひ再訪したいと思っていました。当時はフィルムとデジタルカメラの併用でしたが、当時のデジタルカメラの記録画素数を見てみるとなんと120万画素……時代の進化を感じました。
ノイシュバンシュタイン城へ向かう途中に夕方のいい光が差し込んできたので、遠くの景色を撮影しました。PLフィルターとハーフNDフィルターを使い明暗差を整えています。
堂々とそびえるドイツで最も美しいと言われるノイシュバンシュタイン城はやはり絵になります。膨大な建設費用のため国の財政悪化を招いたほどの豪華なつくりで残念ながら内部は撮影禁止ですが、外観を見ても他の城とは一線を画す豪華さでした。
近くに建つホーエンシュヴァンガウ城も見下ろすことができます。こちらはノイシュバンシュタイン城を建築したルートヴィヒ2世が幼年時代を過ごした場所です。斜光が右側から差し込んできたので城を左端に配して撮影しました。
ノイシュバンシュタイン城のあるフュッセンから北に約350kmの地点にあるハイデルベルク。この町の旧市街はまさに中世そのままの佇まいです。
ドイツではちょうど格安で乗り放題になる期間限定のチケットが販売されていたので、移動には鉄道も使いました。ハイデルベルクからの帰りに夕日が差し込む瞬間があり、旅情をそそる写真が撮れました。
帰りの飛行機は夜9時の出発でした。この時期(6月)のヨーロッパはこの時間帯がちょうど夕暮れにあたるので、旅の最後に黄金色に染まる空を撮影することができました。
まとめ
2回に分けてヨーロッパのフォトスポットを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。ヨーロッパは交通網が発達しているので鉄道やバスでもほとんどの場所を回ることができます。今回は3週間で4か国と少し駆け足での撮影旅行でしたが、じっくりひとつの国に滞在するのもいいと思います。夏のヨーロッパは昼の時間が長いので思ったよりもたくさん撮影することができます。今回APS-CのX-T4とラージフォーマットのGFX50S IIをメインに撮影しましたが、機動力と画質を上手く両立できたのではないかと思います。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師