第3回フィルムカメラを始めよう!ハッセルブラッド×富士フイルムの融合:GX645AF Professional編
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第3回として、Hasselblad(ハッセルブラッド)と富士フイルムから生まれた中判カメラGX645AF Professional(以下GX645AF)とともに、6×4.5cmフォーマットの魅力を紐解いていきたいと思います。
中判カメラとは?その歴史に触れてみよう
中判カメラとは120フィルムと言われる、写ルンですなど一般的に使われる135フィルムと比べ、大型のフィルム(ロールフィルム)を使うカメラを指します。今回紹介する6×4.5cmにはGX645AFやPENTAX 645シリーズなどがあり、6×6cmは真四角サイズでHasselbladや二眼レフがあります。6×7cmといえばバケペン(PENTAX 67)が有名ですよね。6×8cm、6×9cmは過去、富士フイルムからGWシリーズカメラが出ていたことで有名です。単純に写るフィルムの領域が大きく、引き延ばしてプリントをしてみた場合にもとても精細な描写を得ることができるという特徴があります。
120フィルムの歴史は古く、誕生は1901年にまでさかのぼります。最初に使われたカメラはKodak社のブローニーカメラで、そのカメラの名前を取って今でも120フィルムを「ブローニーフィルム」と呼んでいます。この時期のカメラの主流は6×9cmで、中判フィルムカメラのフォーマットの中でも最も大きな部類に入るものでした。1920年代に入り、標準的なフレームは6×6cmが主流になります。いわゆる蛇腹カメラや二眼レフカメラが台頭してくる時代です。二眼レフで有名な機種と言えばローライフレックスがありますが、本機は1929年に登場し6×6cmの正方形フォーマットの確立に貢献しました。
今回取り上げる6×4.5cmフォーマットは中判フィルムの中では小さいフォーマットとなり6×9cmのおよそ半分の面積になります。ですが、135フィルムと比較するとなんと2.7倍もの面積となり、写真の解像度や詳細感、暗い部分から明るい部分まで写る広いトーンレンジには圧倒されることでしょう。特にフィルムの値段が上昇しつつある昨今、6×4.5cmフォーマットはフィルム1本で15~16枚撮れるとあって非常に経済的だと考えます。しかも2023年10月にはなんとLomographyの120フィルムが10~30%ほど値下げとなるなど、後押しもバッチリ。6×4.5cmフォーマットに限らず、中判フィルムを始めるチャンスが到来していると言えるのではないでしょうか。
Hasselblad×FUJIFILMの融合GX645AF
星の数ほど中判カメラはありますが、ここで取り上げるのは非常にマニアックなカメラ、GX645AFです。これは富士フイルムが2003年に発売したカメラで、Hasselbladと共同開発して生まれたまさに夢のようなカメラです!カメラ界のクロノ・トリガーと言ったところでしょうか(古い?)。Hasselblad銘ではH1という名前でリリースされており、こちらはHシリーズとして長年後継機が作られ続けていましたが、最終モデルのH6Dシリーズも2022年に生産終了となっています。
2003年のフィルムカメラは、その歴史の中でも最後期にもあたり、デジタルカメラの波がすぐそこまでやってきていた時代です。20年以上と年数は経っているカメラになりますがAF性能、正確な測光、素早いレスポンスなど、どれをとってもストレスを感じることが少ないカメラだと言えます。そもそもがプロのスタジオ撮影の現場などを支えたカメラでもあり、各パーツが分解でき、それぞれで購入できる、また、デジタルバックをつけてデジタルカメラ化することができるなど、まさにフィルムとデジタルの進化の過程にあるカメラと言うことができるでしょう。そのスペックは次の通りです。
富士フイルム GX645AF Professional
形式 | 6×4.5cm判レンズシャッター式AF一眼レフカメラ |
使用フィルム | 120ロールフィルム16枚撮り、220ロールフィルム32枚撮り |
レンズマウント | GX645専用マウント |
使用レンズ | スーパーEBCフジノンGX645AF HCレンズ |
ファインダー | 交換式AEファインダー、視野率:97%(フォーカススクリーン上で100%) |
フォーカシングスクリーン | 交換式ブライトアキュートマットD全面マット式(標準装備)、 方眼マット式(別売)※アキュートマットは、ミノルタ株式会社の登録商標です。 |
シャッター | 電子制御式レンズシャッター、18時間~1/800秒 |
露出制御 | プログラムAE、絞り優先AE、SS優先AE、マニュアル露出 |
測光方式 | TTL測光(スポット測光、中央部重点測光、平均測光) |
露出補正 | ±5ステップ(1/3EV刻みに切り替え可能) |
多重露光 | 可能 |
オートフォーカス | TTL位相差検出方式 |
ISO設定 | ISO6~6400 |
内蔵フラッシュ | TTL調光自動制御 |
セルフタイマー | 電子制御式、2秒~60秒 |
データ記録 | 画面外の撮影データ写し込み(最大37文字) |
ミラーアップ機能 | 有り |
電源 | リチウム電池CR123A 3本 |
本体外形寸法 標準セット | 145.0×130.0×200.0mm |
質量(重さ)標準セット | 1940g(F2.8/f80mmレンズ込み、電池、フィルム別) |
GX645AFを支えた要因のひとつにHCレンズシリーズがあります。標準レンズHC80mmF2.8は小型ながら高い描写性能を誇るレンズで、富士フイルムが誇るスーパーEBCコーティングが施されたものになります。中古で購入する場合、このレンズがついてくることがほとんど。35mm換算で50mmとなる標準レンズですので、使いやすく筆者もこれ1本のみを使用しています。今回の作例はすべてこのレンズでの撮影となるので、購入時の参考にしてみてください。
実は富士フイルム公式からGFX用にH MOUNT ADAPTER GというHCレンズをGFXボディにつけるためのアダプタが発売されており、MFにはなってしまうもののGFXでもその描写を体験することができます。すでにGFXをお持ちの方も資産を活かせるのはメリットだと考えています。
まずはポートレートメインの作例を見ていきましょう。F値はF5.6を中心に開放F2.8からF11程度までさまざまに撮っています。
GX645AFの購入について
GX645AFを購入する場合は中古品になるので、購入方法やモデルの違いについても解説していきます。先に触れたようにGX645AF及びH1の二機は名前こそ異なりますが同モデルで、フィルム以外にもデジタルバックの利用も想定されています。最も安価かつ台数が多いのはGX645AF及びH1となり、マイナーチェンジとして2005年に発売されたH2も市場ではよく見かけることができます。H3からはH3Dとなり、基本的にデジタルバックと一体になっています。GX645AFは第一世代のみで修理受付なども終わってしまっており、不具合が出た場合、そのパーツを中古市場から購入することでリカバリーするという運用になります。特にファインダー内表示(SS、絞り値、露出補正値等)の液晶が劣化しやすいため注意が必要ですが、グリップ部分にすべての情報が表示されるため困ることはありません。その他パーツの故障はあまり聞かないので、購入時はファインダーの状態はよく確認しておきましょう。
GX645AFとH1/H2についてはデジタルバックを使った利用も可能です。使用できるデジタルバックで代表的なものにフェーズワンのデジタルバックP25があります。2005年に発売、2200万画素で16bit記録ができるコダック製CCDセンサーを持ち、センサーサイズは48×36mm。GFXやHasselblad Xシリーズのラージフォーマットセンサー44×33mmよりも若干大きなセンサーを持つのも魅力です。その他IQシリーズというデジタルバックも使用可能で、より大きなセンサー(645フルサイズ)を使うことができます(その分価格は非現実的にもなってしまいますが…)。デジタルで使うのも悪くないですが、やはり20年ほど前のデジタルバックとなるのでレスポンスや高感度耐性は現在のカメラと比べると雲泥の差。筆者のおすすめはあくまで120フィルムでの利用ですので、参考程度に捉えていただければと思います。ここからはスナップや風景を中心に、中判フィルムがもたらすその描写力を見ていただきましょう。
まとめ
Hasselbladから1億画素のラージフォーマットミラーレスカメラ907X & CFV 100Cも発売され、デジタルとともにフィルムの利用も見直されている昨今、6×4.5cmは枚数が多く撮れるという意味でも最もおすすめの中判フォーマットと考えています。ラージフォーマットと比べてもサイズが大きく、その描写の違いを肌で感じることができます。中判フィルムの価格が下がった今こそ始めるチャンスです!GX645AFやH1はやや入手しにくいところもありますが、富士フイルムGS645シリーズやPENTAX 645シリーズなど入手しやすい機種も沢山ありますので、是非使ってみてください!これらについては後ほど記事にしたいと思っています。
また、2024年5月には国産中判フィルム展という筆者も出展する写真展も都内で開催されますので、是非足を運んでみてください。実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!
■写真展情報
国産中判フィルム写真展
開催日時:2024年5月31日(金)~6月3日(月)
場所:Hubase
東京都文京区水道2-13-4ビクセル文京103
http://lili-hanare.com/
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。