【オールドコンデジ】20年近く前のコンデジの実力は?スーパーCCDハニカムHR搭載 富士フイルム「FinePix F11」
はじめに
今回は2005年に発売されていたコンパクトデジカメ、富士フイルム「FinePix F11」をご紹介します。実家を整理していたところ発掘されたカメラの内の1点になります。この頃のデジカメセンサーの主力はCCDセンサーで、現在の主力であるCOMSセンサーとは異なるセンサーを使用しています。
特にこの時代の富士フイルムのデジカメは、独自構造の「スーパーCCDハニカム」を採用しており、高感度と高解像度を実現していていました。そんな20年弱前のコンパクトデジカメがどんな写りをするのかご紹介します。
FinePix F11の基本スペック
「FinePix F11」の実力を紹介するにあたり、まずは基本スペックの確認です。現在のデジタルカメラと比べてしまうと、非常に頼りないスペックに思われますが、2005年に発売されたコンパクトデジカメのラインナップを調べてみると、大体600万画素前後の画素数を有しているものがメインに発売されているので、当時としては標準的なスペックを持ったコンパクトデジカメになります。
また、焦点距離はワイド側が36mm(35mm換算)スタートで、広角側が足りないと感じる方も多いと思いますが、この頃のコンパクトデジカメでは標準的な画角です。
発売日 | 2005年10月 |
センサーサイズ | 1/1.7型 |
センサー | スーパーCCDハニカムHR 原色フィルター採用 |
有効画素数 | 630万画素 |
レンズタイプ | フジノン光学式3倍ズームレンズ |
F値(開放) | F2.8(ワイド端時) -5(テレ端時) |
焦点距離 | f=8.0mm~24.0mm(35mm換算:36mm~108mm相当) |
フォーカスモード | シングルAF/コンティニュアスAF |
フォーカスエリア | センター固定AF/オートエリアAF |
ISO感度 | 80/100/200/400/800/1600、Auto |
絞り | F2.8~F8 |
シャッタースピード | 15秒~1/2000秒 |
撮影モード | プログラムAE/シャッター優先AE/絞り優先AE |
シーンポジション | ナチュラルフォト/人物/風景/スポーツ/夜景 |
モニター | 2.5型 TFTカラー液晶モニター 約15.3万画素 |
出力形式 | DCF準拠、圧縮:Exif Ver.2.2、JPEG準拠/DPOF対応 |
記録メディア | xD-ピクチャーカード |
連続撮影 | 最短約0.45秒間隔で連続3コマまで |
バッテリー | 充電式バッテリーNP-120(リチウムイオンタイプ) |
質量(g)(本体のみ) | 155g |
ボディサイズ (幅×高さ×奥行) | 92 x 58.2 x 27.3 mm |
今回実際に使用するにあたり、10年以上使っていなかったと思われる「FinePix F11」ですが、案の定バッテリーの劣化、充電器の紛失、使用しているメモリーカード「xDピクチャーカード」を読み込む為のカードリーダーが無いなどの前途多難なスタートでした。
まずは充電式バッテリーNP-120(リチウムイオンタイプ)と充電器の手配。もちろん現在では純正品を手配する事は不可能なので、ネット通販でNP-120互換バッテリーと充電器を購入しました。
充電器が届いたところで、もともとあった純正の充電式バッテリーNP-120を充電してみましたが、さすがに20年近くも前の充電池はまったく反応することなく使用不可である事が分かり、改めて新規に購入したNP-120互換バッテリーを充電しカメラにセット。無事に「FinePix F11」が起動し一安心。カメラにセットしてあった「xDピクチャーカード」に記録されていた当時の画像も無事確認することができました。
古いコンパクトデジカメを中古市場で購入する場合には、バッテリーもそうですが使用するメモリーカードにも注意が必要です。バッテリーが現在も購入可能な機種か?使用するメモリーカードは現在も手配する事が可能なのか?メモリーカードを読み込むためのカードリーダーがあるか?など、使いたい古いデジカメによっては注意が必要になります。
今回紹介している「FinePix F11」は、使用しているメモリーカードが現在は生産されていない「xDピクチャーカード(2010年に生産終了)」なので、新品を購入することが出来ないメモリーカードでした。
古い富士フイルムのデジカメを中古市場で購入する際には、特に使用するメモリーカードに注意が必要です。2009年6月に発売になった「FinePix Z300」からは、SDHC/SDメモリーカードになっていますが、それ以前のカメラは「xDピクチャーカード」や2002年頃より古い機種では「スマートメディア」を使用しており、これらのメモリーカードは入手が難しくなってきています。
また、パソコンなどに取り込む際に使用するメモリーカードリーダーも、「xDピクチャーカード」に対応していないものが多くなっているので注意が必要かもしれません。
FinePix F11の特徴
「FinePix F11」の特徴は、現在ではあまり見られない「CCDセンサー」を使用している点と、メニューで選べるFinePixカラーの「Fクローム」モードが選べる点にあります。
特にこの頃の富士フイルムのデジカメには、独自のハニカム構造のCCDセンサーが使用されており、他のメーカーとは違ったセンサーを持ったデジカメになっています。このスーパーCCDハニカムは、CCDセンサーが八角形になっており、CCDセンサーを45度傾けて配置することで、集光面積が広がり、高感度、低ノイズ、高ダイナミックレンジを得られるとされている技術です。また、理論上では同一画素数のノーマルCCDよりも高い有効画素数を記録することが可能なCCDセンサーです。
「FinePix F11」が発売になっていた当時では、「CMOSセンサー」よりも「CCDセンサー」のほうが、自然な色合いの描写が得られるとか、映像が鮮明だと言われており、CMOSセンサーは影像に滲みのようなものが僅かに発生して鮮明さが落ちるという評価で「CCDセンサー」が優位の時代でした。
ですが、近年デジタルカメラの世界では「CMOSセンサー」が主力になり性能も飛躍的に進化しています。当時のCCD採用のカメラとCMOS採用のカメラで撮影した画像を比較すれば、前述のような自然の色合いや鮮明さなどを確認できるかもしれませんが、当時のCCD採用のカメラと現在のCMOS採用のカメラで比較しても、画像処理エンジンの絵作りの影響が大きく、比べることは無意味だと思います。
しかし、今回十何年ぶりに使った「FinePix F11」は、撮影前に想像していたよりも自然な色合いの描写をし、解像度も高く撮影できていた事に驚きを感じました。また「Fクローム」モードに関しては、この頃にすでに機能としてあった事に今更ながらびっくりです。今や富士フイルムのデジカメの代名詞である「フィルムシミュレーション」ですが、この「フィルムシミュレーション」の元祖にあたるものが「Fクローム」モードになります。
「FinePix F11」に搭載されている、「Fスタンダード」モードと「Fクローム」モード、そして「FB&W」モードでどのような表現の違いがあるか撮り比べてみました。
Fスタンダード | 本機の標準設定(コントラスト・色味) |
Fクローム | コントラスト、色が強めに撮影されます。風景(青空や深緑)や花などがより鮮やかに撮影され効果を発揮します |
FB&W | 撮影した画像を白黒にする時に設定します |
「Fスタンダード」モードは「FinePix F11」の通常撮影モードですが、色味は落ち着いた濃厚な表現をする感じです。それに対して「Fクローム」モードは、コントラスト・彩度が上がって撮影されるので現代的な写りをする表現になっています。特に青空などの色表現は大幅に変わる傾向にあります。
古いコンパクトデジカメとして楽しみたい場合は、「Fスタンダード」モードで撮影。現代的な撮影を楽しみたい場合は、「Fクローム」モードで撮影する事を楽しむことができるカメラです。
「Fスタンダード」モードでスナップ撮影
実際に、FinePix F11の「Fスタンダード」モードでスナップ撮影を楽しんでみました。率直な感想を言えば、20年近く前のデジカメってこんなによく写ってた?と言う感じです。自分の当初のイメージでは、600万画素しか無く解像度も低い表現力の浅い画像になると思っていました。
しかし実際に撮影したデータを見ると、ハイライト部分の階調不足やパープルフリンジの発生、広角側で樽型収差といったものが見られるものの、全体的にはしっかりとした解像度と濃厚な色表現がされており少し驚きを感じました。
「Fクローム」モードでスナップ撮影
次に「Fクローム」モードでの撮影を楽しんでみました。「Fクローム」モードは、「Fスタンダード」モードよりも少し鮮やかでコントラストが高くなり、現代的な色合いの味付けになります。特に青色の表現が「Fスタンダード」モードとは大きく異なるので、青空などが入る構図などでは大きな違いが発生します。そういったシーンなどでは個人の色の好みもあると思うので、可能であれば「Fクローム」モードと「Fスタンダード」モードの両方で撮影しておくのがおすすめです。
上の様な写真の場合で、輝度差が激しい部分ではパープルフリンジが大きく発生しています。
下の2枚の広角側で撮影した写真では、樽型の収差が発生しているのが分かると思います。こういったシーンは少し苦手なカメラのようです。少し離れて焦点距離を望遠側にして撮影するなどの対策が必要になります。
「Fクローム」モードでの撮影は、20年ほど前のカメラである事を忘れてしまうような錯覚を感じました。現代的な色表現というかスマホで撮影した画像ですと言っても分からないくらいの画像です。
まとめ
「FinePix F11」は今から20年弱前のコンパクトデジカメです。階調表現の部分では最近のデジタルカメラには劣りますが、解像度や色表現など、現代でも日常的に使うには十分に通用するレベルの表現力を持っていると感じました。今回は新たに購入した互換バッテリーを使用して撮影をしていましたが、バッテリー容量の大きさがあることとセンサーの消費電力の少ない事も相まって、1日撮影していても余裕のバッテリー状況であった事も魅力のポイントです。
ただ難点を言えば、使用するメディア「xDピクチャーカード」。もし「FinePix F11」を中古市場で購入するのであれば、「xDピクチャーカード」がセットになって安価で購入できるものを探したいところです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師