富士フイルム GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR|GFX用望遠ズームレンズレビュー
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は富士フイルムGFXシリーズ用の望遠ズームレンズである「GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR」をレビューします。ラージフォーマット用の望遠レンズというととても大きく重いイメージがありこれまで敬遠してきましたが、実際に使ってみるとその解像力と適度な焦点距離、そしてポートレート撮影にも最適なレンズであることが分かりました。GFX50S IIとの組み合わせで東北と北海道の桜を撮影した作例を中心に紹介させていただきます。
このレンズの特徴
フルサイズ換算焦点距離 | 79mm-158mm相当 |
レンズ構成 | 13群20枚 |
開放絞り | F5.6 |
最小絞り | F32 |
絞り羽枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.6m(広角側)/1.6m(望遠側) |
最大撮影倍率 | 0.2倍(広角側) |
フィルター径 | 67mm |
重量 | 1,050g |
メーカー希望小売価格 | 271,500円(税別) |
1.大きさ
大きさは89.5×183mmと小さくはないですが、重さに関してはその見た目からするととても軽い印象を受けました。約1kgという重量は他社フルサイズミラーレスカメラの最新の70-200mmF2.8レンズと同等です。
2.画角
望遠側の200mm(フルサイズ換算158mm)は望遠レンズとしては少し物足りない印象もありますが、GFXには35mmフォーマットモードが搭載されており、それを使うとフルサイズ換算200mmでの撮影も可能です。加えて、テレコンバーター「GF1.4X TC WR」にも対応しているので、装着して35mmフォーマットモードを使うと280mmまでの撮影に対応します。また、ポートレート撮影でよく使われるフルサイズ換算で85mmや135mmといった画角もこれ一本で撮影することができます。
3.ボケ味
このレンズはズーム全域でF5.6固定でありながらも、ラージフォーマットの恩恵もあり思ったよりも背景が綺麗にぼけてくれます。
4.手ぶれ補正
レンズ単体で5段分の補正効果があり、GFX50S IIやGFX100Sなどのボディ内手ぶれ補正との協調制御で5.5段分の補正効果が得られるとのことです。
5.その他
防塵・防滴・-10℃の耐低温構造になっているので雨天などの撮影にも安心して使うことができます。また、フードにPLフィルターなどを回転できるように小窓が付けられているのも何気に嬉しい部分です。
解像度テスト
奈良の世界遺産「薬師寺」です。レンズの解像度をテストするために異なる絞り値で撮影し、塔の先端部分を切り出してみました。条件により多少の違いはあると思いますが、F16~22あたりが一番解像感が高く感じられる結果となりました。
作例
このレンズとGFX50S IIを持って東北と北海道に桜撮影の旅に出かけてきました。関西に住む人間として東北は1000km以上の距離があり桜の時期に訪れたいと常々思っていましたが、今回初めて桜の時期に行くことができました。飛行機で行くと早いのですが、あえて車でその距離感を感じながら旅しました。
関西から東北へのルートはいくつかありますが日本海側を走るのが渋滞も少なくおすすめです。途中夕日のスポットはたくさんあるのですがここは数少ない日の出の人気撮影地です。肉眼では気づきませんでしたが、望遠側で撮影すると太陽に立山連峰がシルエットで写り込んでいるのが分かりました。
富山県はチューリップの球根の出荷数が日本一で、いろいろなところにチューリップ畑が広がっています。チューリップと菜の花と桜と立山というなんとも贅沢な風景が一同に見られる朝日町では、桜は遅かったですが綺麗なチューリップを見ることができました。望遠レンズならではの圧縮効果を使って撮影しました。
新潟県の山間部ではちょうど残雪の残る冬と春の間の景色を楽しみました。夕方の光に照らされた新緑が浮き立ちながらも背景の残雪の諧調もうまく残ってくれました。
東北に向かって新潟県を北上していると白鳥の大群が見えました。このレンズは解放F値5.6でありながら大型センサーのおかげで70-200mmF2.8クラスのレンズで撮ったかのようなボケ味が得られました。彼らはちょうどシベリアに帰る前に一休みしているのだとか……
こちらも詳細な場所は覚えていませんが道中で出会った一本桜です。少し遅めのシャッター速度でしたが、このレンズについている手ぶれ補正は強力なので手持ちで十分撮影できました。このような偶然の出会いものんびり旅の魅力ですね。
自宅から1000km以上走り最初の桜撮影の目的地である武家屋敷で有名な角館に到着。満開前ではありましたが5分~7分咲きのピンク色に染まるタイミングもいいですね。何よりも有名な場所は満開時には人も車もいっぱいになるのですこし前の方がゆっくりと撮影することができます。
翌日は人の少ない早朝に訪れました。少し雨の降る天気でしたがそれがかえって妖艶な雰囲気を醸し出していました。このレンズは望遠レンズに分類されますが、広角側はフルサイズ換算で79mmなので標準レンズに近い画角での撮影もできます。
角館に近いところに水芭蕉の群生地があるという情報を得て向かいました。あまり期待していなかったのですがこれほどの水芭蕉が咲いている光景は初めてみたような気がします。望遠の圧縮効果で密集して咲いている様子を表現してみました。
みちのく三大桜名所のひとつでもある北上展勝地です。今年のライトアップは一部分のみだったので残念でしたが、ちょうど満開のタイミングに訪れることができました。
そしていよいよ今回の旅のメインである弘前に到着。到着時にはまさに満開散りはじめで有名な花筏が作られていく様子をとらえることができました。花びらを写しとめるためにあまり絞り込まずに撮影しましたが花びらの一枚一枚まできちんと解像していました。
堀にはたくさんのボートが出ていたので長時間露光でなるべく目立たないように撮影しました。人が多くて三脚が使えない状況だったので橋の欄干にカメラを置いての撮影となりました。このレンズには三脚座がついていて、GFX50S IIとの組み合わせではそのまま自立させることができます。
弘前にしばらく滞在するか迷ったのですが、函館の五稜郭にも足を延ばしてみることにしました。弘前が散りはじめの頃に満開を迎える函館の桜、早朝の水面への映り込みが綺麗でした。
青森から函館にはフェリーを利用しましたがちょうど夕方の便にあたり、約3時間の船旅も無駄なく撮影に当てることができました。逆光の太陽の入る構図は比較的シャッター速度は速いですが、それでも手ぶれ補正がついているのは安心できます。最望遠側であってもしっかりと諧調の残る高画質が嬉しいです。
北海道から再び弘前に戻ると花筏は最盛期を迎えていましたが、桜はかなり散っていました。満開の桜と花筏を見るには本当にタイミングが難しいことを実感しました。
もう一か所東北で撮りたい桜があり向かいました。ここは牧草地に一本だけ咲く桜、そしてその背後には雪をかぶった山々が広がるとてもフォトジェニックな桜の名所です。前日が大雨で天候が不安でしたが昼前から青空が現れてくれました。
岩手県から夜を徹して一気に茨木県まで南下しました。ネモフィラの花で有名になった国営ひたち海浜公園では人物撮影も行いましたが、標準域から中望遠まで、このレンズ一本でほとんどの撮影をこなすことができました。
帰りは一日中雨の日もあり桜から滝の撮影に切り替えました。雨の降る中でしたがこのレンズは防塵・防滴・-10℃の耐低温構造になっているので濡れながらの撮影でも問題ありません。また、フードが深いので雨粒がレンズに付きにくいのも助かります。
旅の最後にチューリップと桜の共演を撮影することができました。ゴールデンウィーク初日ということもあり、人の途切れる一瞬を狙いましたが、三脚に乗せた状態でも三脚座を回転させることによって瞬時に縦と横位置を切り替えることができるのも何気に便利です。
まとめ
このレンズはGFXシリーズの唯一の望遠ズームレンズとなります。大きさや価格は決してお手頃とは言いづらいですが、画質面では妥協のない仕上がりのレンズになっています。今回は手持ちで撮影をしなければいけないシーンも多かったのですが、手ぶれ補正がよく効いていてかなり遅いシャッター速度でもブレずに撮影することができました。
単焦点レンズではGF110mm F2 R LM WRやGF120mmF4 R LM OIS WR Macroなどの更なる画質を求めるレンズもありますが、1本で広範囲をカバーできる本レンズは風景はもちろん、ポートレート撮影にもおすすめできるレンズです。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師