富士フイルム GF23mmF4 R LM WR レビュー|もう後戻りできない「More than Full Frame」の威力

八島和浩

01_富士フイルム GF23mmF4 R LM WRで撮影した作例.jpg

はじめに

 私は、GFX100に続いてGFX100Sの登場に心躍ったのを今でも鮮明に覚えています。なぜならば、1億画素の性能を最大限生かすことを前提に設計された高精度・高解像度GFレンズとの組み合わせで、私の追い求める写真が撮れると思ったからです。今回、GF23mmF4 R LM WRをGFX100Sに装着した写真と共にレビューさせて頂きます。

 GFX100Sの登場が2021年2月25日(木)になりますので、この組み合わせで私の撮影フィールド青森県の紅葉作例は珍しいのではないでしょうか?それでは、GF23mmF4 R LM WRの主な仕様をご覧ください。

主な仕様

02_富士フイルム GF23mmF4 R LM WRの製品画像.jpg
型番 フジノンレンズ GF23mmF4 R LM WR
レンズ構成 12群15枚
(非球面レンズ:2枚、スーパーEDレンズ:1枚、EDレンズ:3枚)
焦点距離 f=23mm (35mm判換算:18mm相当)
画角 99.9°
最大口径比(開放絞り) F4
最小絞り F32
絞り形式 羽根枚数:9枚(円形絞り)
ステップ段差:1/3ステップ(全19段)
撮影距離範囲 38cm – ∞
最大撮影倍率 0.09倍
外形寸法:最大径×長さ(約) ø89.8mm x 103.0mm
質量(約) 845g
フィルターサイズ ø82mm

外形寸法:先端よりマウント基準面まで
質量:レンズキャップ・フード含まず

特性を理解して超広角レンズを使いこなす

 超広角レンズは扱い方が非常に難しいレンズです。ただし、うまく使いこなし理想の写真が撮影できた時は、その体験をした者にしか分からない万感の思いが到来します。具体的には、超広角レンズは人間の視野角以上の写真が撮影できますので、「異次元の視点で捉えた写真」が撮れます。その反面、撮影する被写体をどう表現するかイメージをして撮影しなければ満足な結果は得られません。私は超広角レンズを使いこなすポイントとして、以下2点を心がけて撮影しています。

1.引きで撮影の場合:「主役のスケール感が分かるように比較対象物を入れる」
2.寄りで撮影の場合:「主役を大胆に入れ込み異次元の視点で構図を考える」

 冒頭1枚目の作例をご覧ください。紅葉のピークを迎えた十和田湖に夜明け前からカナディアンカヌーに乗り込み、普段徒歩では踏み入れることが出来ない湖上から手持ちで撮影しています。GF23mmF4 R LM WRは、フルサイズ換算で18mm相当の画角で手ブレ補正機能がない単焦点レンズになりますが、GFX100Sにボディ内手ブレ補正機能が搭載されたことでこのような条件でも安心して撮影できるようになりました。

 湖面に向かって真っ赤に染まった紅葉が突出している光景を、画角99.9°のGF23mmF4 R LM WRの特徴を最大限に引き出すために1の考え方で撮影をしています。1の考え方でカナディアンカヌーを構図の中に入れ込むことで、この光景のスケール感が伝わってくると思います。階調が豊かでヌケの良い空気感のある仕上がりとなっています。ズームレンズとは異なり単焦点ならではの解像力です。画角99.9度ながら歪曲を極限まで抑制したという通り、倍率色収差がしっかり抑制され画面全域での高解像を実現しています。

撮影最短距離38cm、異次元の視点を手に入れる!

 次に先に述べた2の撮影方法で撮影した作例をご紹介します。GF23mmF4 R LMWRは、最短撮影距離38cmと被写体に寄れるレンズです。主役を大胆に構図の中に入れ込むことができます。作例をご覧下さい。青森八甲田のブナ林に幹の形状が1回転して空に向かって伸びているブナがあります。この形状を最大限表現するために、主役である樹が1回転している部分を大胆に入れ込み異次元の視点で構図を考えて撮影しました。この時の私は、人間の視点ではなく自分が小動物になった視点でこのブナを見上げているイメージで撮影しました。

03_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100S + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F22 | 1/6 sec. | ISO100

 いかがでしょうか?主役を大胆に構図に入れ込むことで、ブナの生命力が伝わってくると思います。GF23mmF4 R LM WRは最短撮影距離38cmと被写体に寄れるだけではなく、GFX100Sとの組合わせによって得られるこの解像力が最大の魅力です。ブナの葉が雨を集めて漏斗のように枝から幹へ筋状に雨水が垂れて来ます。これを樹幹流(じゅかんりゅう)と呼びます。作例は、その樹幹流をしっかりと捉えて実物を目の前で見ているかのように解像しています。まさに空気感が伝わってきます。後述しますが、ナノGIコーティングによる万全の対策の恩恵があるからだと実感できます。

レンズの逆光耐性とラージフォーマットの恩恵

 私のように風景撮影がメインになる方は、超広角レンズで撮影を行う場合に逆光のシチュエーションが多くなると思います。逆光撮影時には、「ゴースト」「フリンジ」「フレア」に気を付けなければいけません。作例をご覧ください。作例を見る限りこれらの現象は皆無です。これはナノGIコーティングによる万全な対策を施しているからこその納得の結果です。

04_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100S + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F13 | 1/240 sec. | ISO100

 これだけではありません。作例中央下部の人物2名に注目です。拡大したものがこちらです。撮影時は、「白つぶれ」「黒つぶれ」にならないようにヒストグラムを確認しながら撮影をします。

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 太陽をまともに入れての逆光撮影ですので、暗部は真っ黒に潰れているようになります。暗部を持ち上げてPCで拡大した時に思わず笑ってしまうくらい驚きました。カラーノイズが殆ど感じられず、人物2名の服装まで分かるくらい情報がしっかりと残っています。ナノGIコーティングによる万全な逆光耐性をはじめとした光学技術を駆使した高精度・高解像度GFレンズの性能。そして、GFX100Sのラージフォーマットの恩恵であるダイナミックレンジが広いことで明暗差に強いことがこれらの恩恵を生み出していると実感できます。まさに「More than FullFrame」たる所以ここにありです。

実際に体験して分かる防塵防滴性能

 前回のレビュー記事でも同じことを書きましたが、この話をする前に私の撮影フィールドである青森県について紹介したいと思います。私は、2016年に仕事で訪れるようになった青森の風景に魅了され写真を撮るようになりました。今もそうですが埼玉県在住なのに青森県以外の撮影地では、全然スイッチが入らず青森県でしか風景を撮影していません。青森県には「奥入瀬渓流」「十和田湖」など美しい景勝地がありますが、なぜかと問われれば「自然環境の厳しさ」と答えると思います。

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 太平洋と日本海に囲まれ強風の日が多く、一年の半分を雪で覆われます。特に冬期の八甲田山での撮影においては、-10~15°Cで且つ暴風雪という天候続きで快晴と言う日が殆どありません。今回の撮影期間中にも悪天候の日が続きました。雨・風が強くしっかりとした防塵防滴性能がなければ撮影を断念しなければならない状況でした。この様な状況下でも普段通りに問題なく撮影することができました。防塵防滴性能に助けられるシチュエーションは、必ずしも悪天候の時だけではありません。私は、よく水面ギリギリの際どいところで撮影します。そのようなシチュエーションで撮影した作例を2枚ご紹介します。

07_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100S + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F6.4 | 1/6 sec. | ISO800

 初秋の奥入瀬渓流になりますが、水面ギリギリのところで撮影する場合は視点が低くなりますので、渓流と森をバランス良く構図に入れるために超広角レンズGF23mmF4 R LM WRが必須アイテムになります。渓流の流れは一定のリズムで流れてはくれませんので、水しぶきや水がレンズに丸かぶりしてしまうこともあります。そのような状況でもしっかりとした防塵防滴性能を備えているので、安心して撮影に集中することができます。

 次にさらに防塵防滴性能が必要とされる滝を撮影した作例になります。滝の迫力を切り撮るために滝壺の近くで且つ、ローアングルでの撮影になります。水の流れがさらに激しく不規則になるため、この作例撮影した後にレンズに水が丸かぶりしてしまいました。しかし、防塵防滴性能がしっかりとしているので全く問題なく撮影を続けることができました。

08_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100S + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F4 | 1/6 sec. | ISO200

GFX100Sとの相性の良さでさらなる高みへ

 ここまでGF23mmF4 R LM WRのレンズ特性に焦点を当ててレビューしてきましたが、カメラとの相性の良さにも触れてレビューしていきたいと思います。富士フイルムのカメラは、長年フィルムメーカーとして培ってきた色の再現性に定評があります。私もこの色の再現性に魅力を感じています。

 この色の美しさを表現するために様々な機能があります。富士フイルムと言えば、表現の意図に合わせた色調表現や階調表現を、フィルムを選ぶ感覚で設定することができる「フィルムシミュレーション」が有名だと思います。この他の機能として「カラークロームエフェクト」を活用した作例をご紹介していきます。

09_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100S + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F8 | 1/250 sec. | ISO100

 「カラークロームエフェクト」は、GFX50Sで初めて搭載された機能になります。高彩度な被写体を撮影する時に効果が絶大で、陰影がつきにくくベタッと塗りつぶしたような色飽和状態で描写される現象を軽減してくれます。赤・黄色系統に作用して色飽和を防ぐことでより立体的に表現することができます。効果は「弱(WEAK)」「強(STRONG)」の2段階で設定ができ、私は、「弱(WEAK)」に設定して撮影をすることが多いです。

 今回、GF23mmF4 R LM WRのレビューで「カラークロームエフェクト」機能を紹介する明確な理由があります。作例のように超広角レンズを用いて引きの構図、そして朝焼けの陽光を浴びた紅葉を撮影する場合に色飽和を起こしやすくなります。そこで、前述した「カラークロームエフェクト」機能を使うことでより自然に立体的な紅葉の森を表現することとしました。いかがでしょうか?1億画素を超えるGFX100S 、高い解像力を誇るGF23mmF4 R LM WR、そして「カラークロームエフェクト」の掛け合わせによって、赤・黄色に染まった木々がより自然に階調豊かに水面に映り込む紅葉までも立体的に表現することができました。

10_富士フイルム GF23mm F4 R LM WRで撮影した作例.jpg
■撮影機材:FUJIFILM GFX100s + GF23mmF4 R LM WR
■撮影環境:23mm | F8 | 1/250 sec. | ISO100

 次に「カラークロームエフェクト」の青色版である「カラークロームブルー」機能を用いた作例をご紹介します。「X-Pro3」の登場の際に発表された機能で、青空を撮影する際に非常に効果的です。こちらもGF23mmF4 R LM WRのレビューでこの機能を紹介する明確な理由があります。

 普段であればPLフィルターを用いるところですが、今までの経験から超広角レンズでは偏光にムラが生じることがありました。そこで、この機能を利用して撮影することとしました。私は、GF23mmF4 R LM WRのような超広角レンズを用いて広大な風景をする場合に「奥行き」の表現を意識しながら撮影します。青に特化した「カラークロームブルー」は、空の青い色部分に作用して意識している「深み」と「奥行き」、自然な鮮やかさを加えることができました。ただし、この機能の効果はとても強力な印象があり、「強(STRONG)」で撮影する場合はシチュエーションを選ぶ必要があると思います。

まとめ

 GF23mmF4 R LM WRは、画角99.9°と人間の視覚を超越したダイナミックな写真を私にもたらしてくれました。GFX100Sの1億画素のポテンシャルをフルに発揮するためには、レンズ性能も同様に優れていなければ自分が思い描いた理想の1枚は撮れないと改めて実感することができました。GF23mmF4 R LM WRは、現在のところ最も広角なGFレンズとなります。先日の「X Summit PRIME 2021」にて2022年に最広角ズーム20-35mmの製品開発発表があり、その登場が待ち遠しいですが、単焦点ならではの空気感を写し込む高い解像力を有しているGF23mmF4 R LM WRは今後もGFレンズ群の中で唯一無二の存在として君臨し続けることと思います。

 今回の撮影に際して、リニアモーターの駆動で高速・高精度・静音のAFも魅力的で、目まぐるしく変わる自然環境の中で撮影する私にとって強い味方となってくれました。また、撮影しながら実感したことがですが四隅までしっかりと解像し且つ、しっかりと抑制されたディストーションも自然風景以外に建築物などを撮影される方々にも強い味方となってくれるはずです。GF23mmF4 R LM WRは、あなたにとって異次元の視点をもたらす最高の相棒になってくれるはずです!

※最後に自然風景を撮影する上で撮影ルールを守り、安全に撮影することを第一に考えて撮影されて下さい。今回の作例は、青森県八甲田・十和田湖周辺域を中心にご紹介させて頂きました。どの作例も無理をせずに安全に撮影できる場所を選んで撮影しています。カナディアンカヌーでの十和田湖の撮影に関しても「十和田湖ガイドハウス櫂(かい)」の早朝・十和田湖カヌーツアーに参加し、ガイドの安全なサポートのもと撮影をしています。

■写真家:八島和浩
1979年福島県生まれ、埼玉県在住。2016年より仕事で訪れるようになった青森県の情景に魅了され独学で写真を始める。主に青森の風景を撮影している。

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