富士フイルム GFX100 II レビュー|小型×高速性能が中判とフルサイズの壁を溶かす!1億200万画素のオールランドモデル
はじめに
高速性能を実現する画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載したX-T5やX-H2、X-H2Sを使う度に明らかに富士フイルムのカメラが変わってきたことを実感していました。その「X-Processor 5」がGFXに搭載されることを夢のように考えていましたが、今回GFX100 IIでそれが実現された事にとても興奮したのを覚えています。ボディーサイズは従来モデルのGFX100に比べて、バッテリーグリップが無くなるなど大幅にダウンサイジングされたので、フルサイズとは言わないまでもそれに近しい大きさになり、8段分の手ブレ補正効果とあいまって手持ちで自由な撮影が楽しめる中判カメラに進化を遂げています。ポートレート撮影の場合、従来であればモデルに指示出しながらカット毎にポージングしてもらっていましたが、高速性に優れ手持ちで自由に扱えるGFX100 IIでは撮影の仕方が変わりました。動画撮影のようにモデルに動き続けてもらいながら撮影を行うようになり、より自然な動きを写し止める事が出来るようになりました。
従来モデルのGFX100を登場から4年間ずっと愛用してきた私が今回GFX100 IIの魅力について紹介して行きたいと思います。
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高速性能
富士フイルムの顔認識、瞳AF機能はX-T3に搭載されている2世代前のプロセッサから十分に効きが良かったと感じていました。その当時のAF枠はモニター上では少し大きく表示されていたので、一見他社と比べて効きが悪そうと感じる方もいらっしゃったと思いますが、実はピンポイントにAFが効いていました。その元々性能の高かった顔認識、瞳AF機能は「X-Processor 5」の登場で更なる進化を遂げ、今回GFX100 IIに採用されたことで中判カメラとは思えない速さで瞳にピントを合わせて追従してくれるようになっています。
その為ポートレート撮影では瞳へのピント合わせはカメラ任せに行えるので、撮影中はモデルの後ろの光の入り方や映り込みに意識を向けて撮影ができます。1億200万画素のカメラで動くモデルの瞳にピントを追従させて撮影しようと思うと、ちょっとずれただけでも目立ってしまいますが、このカメラでは開放で撮ってもピントがずれないところに凄さを感じています。今回のような逆光だったり難しい角度だったりしても、瞳AFが高精度に追従してくれるので顔がつぶれたり露出アンダーにならず、しっかりと被写体を捉えてくれます。
被写体検出は人物だけでなく動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンが検出可能ですので、様々な撮影ジャンルでこの高速性能を活かす事ができます。
小型、操作性能
従来モデルGFX100より小型・軽量になり、GFX100Sのようにフルサイズ感覚で手持ち撮影を行う事ができます。もちろん別売りのバッテリーグリップを付ける事で長時間撮影も可能なのですが、GFX100 IIで採用されたバッテリー「NP-W235」は長時間撮影する事ができ、今回のモデル撮影でも1本のバッテリーで撮影を行うことが出来ました。またPD対応になっていますので急速充電も可能になり、個人的にはバッテリーグリップは使わずに小型性能を活かしてこのカメラを使って行こうと考えています。
ボディーのラバー表面に「BISHAMON-TEX」という新開発のテクスチャーが採用されていて、グリップ性能の向上は勿論ですが、何といってもオシャレでとてもカッコいいですね。和を意識した模様になっており、富士フイルムのモノづくりへの細部への拘りを感じます。
カメラ天面のショルダー部分にあるサブ液晶は手前側に11度傾いていて、はじめてみるカメラの形状にとても驚きました。今までこの部分に傾きが欲しいとは考えた事も無かったですが、使ってみるとある感覚に近い事に気が付きました。それは車の運転席に座った時に感じるコックピット感で、視認性がよく意識しなくても設定情報を確認しながら撮影を行う事ができる優れモノでした。
従来モデルのGFX100を使って、様々な被写体を手持ちで撮影してきましたが、やっぱりフルサイズではなく、ラージフォーマットの中判カメラを使っていると気づかされるのはスローシャッターを切る事に戸惑いを感じる時でした。1億200万画素のカメラですので、どんなに慎重にシャッターを切ったとしても、微妙にブレるんじゃないかと感じていました。今回のGFX100 IIでは手ブレ補正効果が8段分あり、手持ちでも1/10のシャッタースピードでブレずに撮る事が出来ました。フルサイズでないと撮影しづらかった領域で中判カメラが使えるようになると今まで撮れなかった新しい写真表現が出来るのではないかとワクワクしています。
1億200万画素の魅力
画素数は従来モデルGFX100と同等の1億200万画素ではありますが、実際に撮影してみると色の階調に明らかに違いを感じています。ファインダーでの見え方が向上しているので階調豊かに見えるという事もあるかもしれませんが、PCで撮影した写真を見た時にもそれが感じられ、最新プロセッサーの採用や総合的なチューニングの結果、より豊かな階調表現が可能になったのかなと感じています。
フィルムシミュレーションに新たに加わった「REALA ACE(リアラエース)」はとても気に入りました。今までフィルムシミュレーションは使用頻度として1番にVelvia(ベルビア)、2番にClassic Chrome(クラシッククローム)、3番にClassic Neg(クラシックネガ)とEterna(エテルナ)の順に使ってきましたが、今回新たに追加されたREALA ACE(リアラエース)を試したところ、今後Velvia(ベルビア)を超えて1番使うフィルムシミュレーションになりそうな予感がしました。凄く気に入って今回のモデル撮影では全てこれで撮影しています。目で見たままに近い忠実な色再現が可能で、今回の撮影では赤、青、黄色など元々の色味をしっかり残しながら階調性に優れた画になっています。
撮影時には気づきませんでしたが、拡大すると目の中に撮影者の私が鮮明にに映り込んでいました(笑)
従来モデルのGFX100を使いはじめた理由の1つにスムーススキンエフェクトがありました。これは顔のしわやシミとかを補正する機能で、画素数が大きいGFX100ではレタッチを現場で行えないよね、ということで人物の肌のレタッチを自動で行ってくれる機能で、今回のGFX100 IIでも採用されています。効果は「オフ」「弱」「強」から選択でき、今回の撮影では全てスムーススキンエフェクトを「弱」にして撮影しています。顔の部分を拡大してみてもらっても、とても綺麗な仕上がりになっている事を見て頂けるかと思います。
ファインダー、モニター
ファインダーは約944万ドット、ファインダー倍率1.0倍とスペックが向上し、見え方もとてもクリアで格段の進化を遂げています。最新のミラーレスカメラではファインダーもモニターもどちらも綺麗に見えるのが当たり前になってきたので、この2つの差を感じる事はありませんでしたが、GFX100 IIではモニターも従来モデル同様に綺麗に見えますが、ファインダーを覗くと何だこれは?と思う程綺麗に見えて大変驚きました。
モデル撮影の仕事においてはファインダーで肌の色味をしっかりと確認しながら撮影できますので、フィルムシュミレーションを使って撮影しておくと色味確定を現場で行うことができ、後工程の作業が物凄く楽にできるようになります。また私の場合、動画だけでなくスチール撮影でも背面の液晶モニターを使った撮影ではファインダーを外して撮影しますので、従来モデル同様にファインダーの取り外しが出来て重宝しています。
背面の液晶モニターはGFX100、GFX100Sと同じく3方向チルト式が採用されていますので、光軸をずらさずに撮影する事も縦位置でのハイ、ローアングルでも便利に撮影することができます。また今回大きな進化点として、チルトの可動域が大きくなった事でGFXシリーズとしては初めて冷却ファンを装着する事ができるようになっています。今までバリアングル式モニターを採用していたX-H2、X-H2S、X-S20に装着する事が出来ましたが、まさかチルト式の液晶モニターのカメラに装着できるようになると思っていなかったのでとても嬉しく思っています。冷却ファンはカメラ本体から給電を行いカメラをしっかりと冷やしてくれます。熱による停止は無くなりますので、バッテリーかメディアのどちらかが無くなるまで動画を撮影し続ける事が出来るようになりました。
メディア、拡張性
SDカードのみ採用の従来モデルGFX100ですと、連写は出来るもののすぐに詰まってしまいましたが、GFX100 IIはCFexpress Type BとSDカードのデュアルスロットを採用していますので、CFexpress Type Bでは1枚1億200万画素の写真を秒間8コマでほぼエンドレスに撮影することが出来ました。私はメインの書き込みをCFexpress Type Bで行い、バックアップをSDカードにしています。今回富士フイルムのカメラでは初めてSSDにも対応していますので大容量のメモリを安価に用意する事もできます。
GFX100 IIはファイルトランスミッターを内蔵しているので、USB Type-C経由で5Gのスマホ端末に接続してネット環境につなぐ事が可能で、アドビ社のFrame.ioを使えば撮影したデータをサーバーに飛ばし、リアルタイムでディレクターやクライアントなどに確認してもらう事ができます。また5Gでの転送が難しい場合でもEthernetポートを装備していますので有線LANでの高速データ転送が可能になりました。
私はFrame.ioが使える事もGFX100 IIの魅力の一つだと考えています。Frame.ioはレッドなどの限られたカメラしか使う事が出来ませんが、その対応カメラの中にX-H2、X-H2Sに加えGFX100 IIも加わりました。またGFX100 IIはカメラ内にファイルトランスミッターを内蔵していますので、外付けのファイルトランスミッターが必要なX-H2、X-H2SよりもFrame.ioを手間なく使うことが出来ます。
GF55mmF1.7 R WR
今回の撮影では、GFX100 IIと同時に発表されたGマウント用のレンズ「GF55mmF1.7 R WR」を使用しました。中判カメラはフルサイズに比べて1段分くらいボケるので、GF55mmF1.7 R WRの場合だとフルサイズ換算でf/1.2~1.4くらいのボケ感で、とても綺麗なボケ味を楽しむことができます。35mm換算で50mm相当の焦点距離だと少し画角が狭かったり、モデルとの距離が遠いと感じていましたので、それより少し広い44mm相当だと丁度良い画角となりモデルとの距離感も理想のものとなりました。
今までポートレートを撮る時に連写すると撮りたい瞬間から画がズレるのを感じていて、いつも単写で撮影していました。しかしGF55mmF1.7 R WRとGFX100 IIの組み合わせで撮影すると連写で撮っても撮りたい瞬間を撮ることができ、AF時の高速性能を感じています。
またGFXレンズの中では群を抜いて軽く取り回しが良いので、今回のような手持ちでのモデル撮影やスナップ撮影に最適なレンズです。AF時の駆動音もとても静かですので動画撮影にもお勧めのレンズです。
8K/30p記録
GFX100 IIは8K/30p記録、4:2:2 10bitでの4K/60p記録ができるのでとても重宝しています。特にAIで8K/30pで撮影したものを8K/120pへと足りないフレームレートを補完して生成できるようになってからは、8Kでの多彩な表現が可能になりましたので、私自身8Kでの撮影が主流になってきました。また同じ8Kでもフルサイズで撮影したものと中判のGFX100 IIで撮影したものを比べると階調が断然違うように感じるので中判での8K撮影を心がけています。
さいごに
GFX100 IIはいかがでしたでしょうか。私は発売前から富士フイルムさんにGFX100 IIをお借りして「ウルトラセブン55周年記念写真展」の作品撮りなどを行ってきましたが、今回記事で紹介した通り様々な魅力を感じましたので発売日に購入しました。また購入のポイントとして今回お話ししたこと以外のベースとなる部分としては、富士フイルムの色に関する考え方が大きく影響しています。これは、私の場合同じカメラを2台買う事がないので、それぞれのカメラの色味が異なるとRAWで撮らないといけなくなったり、とにかく編集に時間がかかってしまうのですが、富士フイルムのカメラはXシリーズで撮ろうがGFXシリーズで撮ろうが色味が統一されているので編集を楽に出来ることがあります。
私はこれからポートレートに加え、高速性能を活かして車レースの撮影にもチャレンジしてみたいと考えています。1億200万画素の中判カメラに高速性能と機動性が加わり、撮影可能なジャンルは大きく広がりましたので、是非ご自身が得意する撮影ジャンルで、超高画素の魅力ある写真や動画にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ボディー価格もチャレンジングですが。。。
■写真家:中西学
岡山県出身。
一般企業に勤めながら、独学で写真&動画を始める。
フリーランス転向後、2011年からは自らの個展も開催。いち早くドローン技術を取り入れ、日本の絶景写真を撮り始める。
2020年開催の個展「躍動」では富山県高岡市の伝統文化やそれを後世に受け継ぐ人々を中心とした撮影を行う。富山に限らず、日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現するを常に意識し活動を行っている。2022年にはNetflixで展開中のULTRAMAN写真展「Inhnritance」開催。
Microsoft(MCT)
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
dji CAMP Specialist
SONYαアカデミー講師
FUJIFILM Xフォトグラファー
DavinchResolve18 CertifildTrainer