富士フイルム GFX100 IIと巡るフィリピンの世界遺産と絶景|三田崇博 海外撮影記
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今年(2024年)の1月にフィリピンへ2週間ほど旅をしてきました。フィリピンは4度目の訪問となりましたが、今回は富士フイルム GFXシリーズの最新機種である「GFX100 II」を使って撮影してきましたので、フィリピンの美しい風景とともにこのカメラの実力をチェックしていきたいと思います。
フィリピンへの行き方
フィリピンは大阪や東京から4~5時間のフライトで、他の東南アジアの国に比べると短時間で行くことができます(ちなみにバンコクだと約6時間です)。また、エアアジアやセブパシフィック航空などのLCC(ローコストキャリア)がたくさん飛んでいるのでとても安く行くことができます。時期にもよると思いますが韓国・台湾に次ぐ安さです。ちなみに今回は往復約3万円(受託荷物代は別途必要)で行くことができました。現地の物価は円安の影響を受けてはいますが、それでも日本に比べるとかなり安い感覚です。
GFX100 IIについて
2023年9月に発売されたGFX100 IIは、ラージフォーマットセンサー搭載のミラーレスカメラ GFXシリーズのフラッグシップモデルです。前モデル(GFX100、GFX100S)と比べて読み出し速度が2倍に向上したイメージセンサー「GFX 102MP CMOS II HS」(有効約1億200万画素)と、画像処理エンジンに「X-Processor 5」を搭載しています。AF性能や連写性能がアップしていますし、1億画素を手持ちで撮影できる強力なボディ内手ブレ補正も搭載。また、記録メディアがCFexpress Type Bカードに対応したことにより、書き込み速度も飛躍的に向上しました。
マニラに到着
マニラはフィリピンの首都で人口1348万人(マニラ首都圏全体)を抱える大都市です。旧市街地には1571年から1898年のスペイン植民地時代の建築物も多く残り、その植民地時代に作られたイントラムロスという城壁都市の中には世界遺産に指定されている「サン・アグスティン教会」があります。
この教会は1599~1606年に建てられたフィリピン初のスペイン建築様式の教会で、石造りの教会としてはフィリピン最古です。残念ながら訪れた時は結婚式の真っ最中だったので内部に入っての撮影はできませんでしたが、結婚式の様子を入口から撮らせてもらうことができました。これはこれでとても珍しい光景が撮れたのではないでしょうか。手持ち撮影だったのでかなり感度を上げて撮影しましたが、ラージフォーマットの高感度耐性とより強力になった手ブレ補正に助けられました。
次に向かったのはマニラのあるルソン島北部山岳地帯にある小さな町バナウェです。近くに空港がないのでマニラから夜行バスで約9時間かけて行きました。標高1,500mに位置するこの町は少し肌寒くもありました。早朝の到着時には周りの山々は霧に包まれていました。
ここに来た目的はバナウェの町ではなく、世界遺産に登録されている「フィリピン・コルディリェーラの棚田群」を撮影するためです。町の近くに点在する棚田もすばらしいのですが、世界遺産登録された棚田のあるバダッド村にやってきました。以前収穫期に来たことがあったので今回は田植え時期を狙いました。
あいにくの天気でしたが、霧に覆われたその姿はまるでペルーのマチュピチュ遺跡のようでした。このような状況下でもGFX100 IIは防塵・防滴・耐低温構造なので安心して撮影に集中できました。
徐々に霧が晴れてその全貌を望むことができました。急勾配の土地に作られているためひとつひとつの棚田は狭いのですが、それが無数に点在する様は圧巻でした。山岳民族のイフガオ族が、標高1,000mを越える高峰の山腹をほとんど人力だけで耕し、米を作り、昔ながらの生活を2,000年以上にわたって守り続けてきた光景です。
次に訪れたのはバギオ。ここも標高1,500mの過ごしやすい町で「サマーキャピタル(夏の首都)」とも呼ばれています。町の中心には湖を含む公園があり、大きな町でありながらとても緑豊かなところでした。夕方にはたくさんの人たちがボートに乗っていました。
公園の近くには大きなマーケットがあり朝から晩まで賑わっていました。オートフォーカスのスピードが向上したおかげで、動く人々が入ったような構図でもストレスなく撮影ができました。またCFexpressカード採用で書き込みスピードが速くなったのも助かりました。
バギオは山間に作られた町で、急斜面に家が張り付くように建てられています。望遠レンズの圧縮効果で密集して建つ雰囲気を出してみました。持参したレンズの最望遠が200mm(フルサイズ換算158mm相当)だったので少しトリミングしています。1億画素あるのでトリミングしても高画素を維持させることができます。
ルソン島を後にして飛行機で次に向かったのはボラカイ島。この島は長さ7.5km、幅は最も狭い場所で2kmしかない小さな島ですが、フィリピン有数のリゾート地です。全長4kmの白砂のホワイト・ビーチが有名です。この島には空港がないので隣接するパナイ島の空港から船に乗り換えて向かいます。
ここは観光業で成り立っている島で、近年はオーバーツーリズムの影響でしばらく島が閉鎖になったりコロナ禍の影響を受けたりと大変な時期もあったようですが、ようやく観光客も戻ってきたようで夕日の時間帯には多くの人で賑わっていました。あえて人が入る構図で撮影してみました。
ボラカイ島を訪れたもう一つの目的は、空港からバスで2時間余りで行くことができるカリボという町で行われるお祭りに参加することでした。アティアティハンと呼ばれるこの祭りは、毎年1月に開催されるフィリピンで最も有名なお祭りのひとつです。
参加者は顔と体をススで黒く染め、極彩色のはなやかな衣装を身にまとい、ドラムやタムタムという銅鑼(ゴング)を叩きながらフェスティバルを盛り上げます。
伝統的なものから近未来的なものまで様々なスタイルがあり見ていて飽きません。このような祭りの撮影が中判サイズのセンサーを持つカメラで手持ちでできるということは、少し前までは考えられないことでした。
最後に同じパナイ島内にある世界遺産の「ミアガオ教会」を訪ねました。最初に紹介したマニラのサン・アグスティン教会とともに、バロック様式教会群のひとつとして、1993年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。到着が午後になり逆光での撮影となりましたが、Dレンジ優先機能(明暗差が大きいシーンで白飛び黒つぶれの両方を抑えるように階調を補正してくれる機能)を使うと、空の青色を残しながら教会も黒つぶれすることなく撮影することができました。
教会内部はシンプルでしたが威厳漂う空間でした。特に教会中央の祭壇の赤と金色の組み合わせがとても美しかったです。
こちらはイロイロという町の近くにあるモロ教会です。この教会は世界遺産ではありませんが、1831年スペイン統治時代に建てられたゴシック様式の美しい教会で、イロイロで最も賑わうモロ広場に隣接しています。夜にはライトアップされ、ちょうど教会の中央部に月が昇っていました。
まとめ
フィリピンといえばビーチやダイビングの印象が強いと思いますが、自然や文化的な見どころも多くあります。また円安の昨今でも航空券代や滞在費なども他の国々に比べるとまだ安く感じられたので、行きやすい海外旅行先のひとつではないでしょうか。
GFX100 IIについては、先日発表されたGFX100S IIも含めAFの被写体検出や追従性能などが大幅に進化しており、祭りなどのイベント撮影でもかなり使えるようになりました。何度も行くことができない海外の絶景をラージフォーマットの最高画質で記録するために多少荷物は増えますが、それ以上の満足感が必ず得られるはずです。
【今回撮影した世界遺産】
・フィリピンのバロック様式教会群(文化遺産・1993年登録)
・フィリピン・コルディリェーラの棚田群(文化遺産・1995年登録)
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師