富士フイルム GFX100RF レビュー|シリーズ最軽量、1億画素のハイエンドコンデジ

ShaSha編集部
富士フイルム GFX100RF レビュー|シリーズ最軽量、1億画素のハイエンドコンデジ

はじめに

富士フイルムの中判デジタルカメラ、GFXシリーズで初となるレンズ一体型コンパクトカメラとして登場した「GFX100RF」。35mm判の約1.7倍の面積を持つラージフォーマットセンサーを、同社のX100シリーズのような見た目のコンパクトなボディに搭載したGFXシリーズ最軽量カメラだ。

中判のコンパクトカメラと言えば同社「GA645」シリーズを思い浮かべる往年のファンもいるかもしれないが、デジタルカメラでは過去に類を見ない機種といえるだろう。気軽に持ち歩ける小型ボディながら、他のGFX100シリーズと同じ1億画素の圧倒的な高画質を体験できる魅力的な1台に仕上がっている。

GFX史上最軽量

GFX100RFの質量は約735g(バッテリー・メモリーカード含む)。これまでのGFXシリーズで最も軽かったGFX50R(約775g)を凌ぐ軽量性をレンズ一体型のカメラで実現している。同じ1億200万画素で比べるなら、GFX100S IIが約883gなのでそれよりも100g以上軽い。しかもここにGFレンズの重さが加われば全体で1.5kg前後になるので、GFX100RFなら半分近い質量で撮影に臨めることになる。

実際にGFXと思って持つと拍子抜けするほど軽い。重厚感あるGFXならではの「中判カメラを使っている感」はないものの、これでラージフォーマットカメラだと思うと感動するレベルだ。ただ、コンデジとして考えたときには大きくて重い部類になるのでそこは注意してほしい。参考までにAPS-Cセンサー搭載のX100VIは約521gだ。

高品位なデザインと独自の操作性

一見したときのデザインや操作系はX100シリーズと似ておりクラシカルなデザインが特徴的。ラージフォーマットセンサー搭載とあって、ボディサイズはX100シリーズよりはひと回りほど大きいイメージだ。特に縦方向へのサイズアップが顕著で、X100VIと比べると高さが約1.5cm大きい寸法となっている。ただ、その分グリップのスペースに余裕があり、右手で握り込んだときに小指が余ることなくホールドできたのは好印象だった。

モデル名にある「RF」はレンジファインダーを意味するものであり、EVFが背面の左上に配置されているのも特徴の一つ。レンジファインダースタイルのGFXと言えば2018年登場したGFX50Rのみだったので、それ以来2機種目ということになる。

願わくばX100シリーズのようにOVFが搭載されて、富士フイルムが誇るハイブリッドビューファインダーとして使えたら最高だったのだが、今作はボディの小型化を優先したためだろうか、EVFのみの搭載となっている。それでも576万ドットの高精細なEVFが採用されたことで撮影におけるストレスは全くなかった。

GFXで久々となるレンジファインダースタイルのカメラ

また、このカメラで最も特徴的なのが「アスペクト比切換ダイヤル」だろう。多彩なアスペクト比を搭載しているのが従来からのGFXの強みでもあったが、今作は背面上部に搭載された物理ダイヤルで素早くアスペクト比を切り換えることが可能になった。

新たに「3:4」と「17:6」を加えた全9種のアスペクト比から選択することができ、撮影意図に合わせて比率を変えるという操作を楽しめるようになっている。フィルムメーカーとして多彩なフォーマットをカバーしてきた歴史がここに詰まっていると言っても過言ではないだろう。
※9種のアスペクト比…4:3、3:2、16:9、65:24、17:6、3:4、1:1、7:6、5:4

背面上部に搭載されたアスペクト比切換ダイヤル

ダイヤル類を含め、ボディの軍艦部やレンズリング、底面プレートなどは全てアルミ削り出しでできており、カメラ全体での統一感のある見た目、高級機にふさわしい洗練されたデザインを感じることができる。

さらには同梱アクセサリも充実しており、被せるタイプのレンズキャップ、専用のアダプターリングとレンズフード、プロテクトフィルター、クラシカルなルックスを引き立てるロープタイプのショルダーストラップという豪華な仕様で、ここも所有欲を一段と高めてくれること間違いなしだ。

背面モニターは3.15型の210万ドット、2軸チルト式液晶のためロー/ハイアングルも撮りやすい仕様だ(ただ縦位置方向には可動しない)。GFXといえばどのモデルもセンサーサイズに合わせて4:3比率のモニターだったが、今作は3:2比率のモニターが採用されているのが従来機との違いとなっている。

記録メディアはSDカードのダブルスロット
バッテリーは既存モデルでも使われている「NP-W235」

35mmF4の専用レンズ

GFX100RFのために新規開発されたレンズは35mmF4というスペック。薄型のパンケーキスタイルで、ズームレンズではないため伸び縮みすることもなく高い携帯性を実現している。しかもレンズシャッター方式が採用されており、シャッターを切った時のショックがほとんどなく、手ブレしにくいというメリットもあるだろう。シャッター音も控えめな「パチッ」という感じで非常に静粛性は高い。

焦点距離としては35mm判換算28mm相当となり、スナップなどが撮りやすい広角レンズということになる。X100シリーズが35mm判換算35mm相当のレンズだったので、それより広く撮れるというわけだ。

1億200万画素の高画素を活かした「デジタルテレコン機能」も搭載されているが、今作はその機能が専用で割り当てられたデジタルテレコン切換レバーも備わっている。画面をクロップする形で焦点距離を疑似的に伸ばすことができ、45mm(35mm判換算36mm相当)、63mm(35mm判換算50mm相当)、80mm(35mm判換算63mm相当)の画角へ3段階にわたって切り換え可能だ。

電源レバー、フロントコマンドダイヤル、デジタルテレコン切換レバーが縦に重なった独特なデザイン

また、GFレンズというとあまり近接撮影に強いイメージはない中で、GFX100RFはレンズ先端20cmまで被写体に近づいて撮影が可能。カフェなどで目の前の料理を撮りたいシーンでもストレスなくピント合わせをすることができた。

今回はあいにく雨天での撮影だったため逆光時の描写は試すことができなかったが、GFX100RFのレンズに合わせて新規で開発された「ナノGIコーティング」が施されているとのことで、いかなるシーンでも光の反射を抑え、高い解像度を維持した撮影ができそうだ。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/125秒 ISO2000
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/125秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

圧倒的な高画質

GFX100RFは1億200万画素の「GFX 102MP CMOS II」センサーと画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載。センサーはGFX100S IIと同じものということで、コンデジではあるもののGFXならではの圧倒的な描写力を味わうことができる。

ちなみにラージフォーマットセンサーは対角線が55mm(横43.8mm×縦32.9mm)、35mm判の約1.7倍の面積を持つセンサーであり、1画素あたりの受光面積が大きいことで豊かな階調表現や緻密な色再現、幅広いダイナミックレンジをもたらしてくれる。GFXで撮った写真はパッと見て繊細さや重厚感に違いがあり、これこそがGFXを使う最大の理由と言えるだろう。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F8 1/300秒 ISO80
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F8 1/250秒 ISO80
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

レンズは開放F4ということで、程よく背景の情報が分かるくらいのボケ感という印象だ。中判らしい極薄の被写界深度とはならないものの、それでもピント面の解像感が凄まじいので、F4で撮っても被写体の立体感を顕著に感じられる。

また、F8~F10くらいまで絞った時の解像感は圧巻。コンパクトなレンズ設計なので少しくらい画質の低下があるのではないかと考えていたが、歪みも無く画面端まで非常にシャープな像を結んでくれた。被写体の質感が手に取るように伝わってくるリアルな描写によって、思わず目を奪われる没入感の高い作品撮影が可能だ。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/125秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:リアラエース
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/125秒 ISO200
■フィルムシミュレーション:リアラエース
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F8 1/125秒 ISO320
■フィルムシミュレーション:ACROS
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F10 1/125秒 ISO500
■フィルムシミュレーション:リアラエース

フィルムシミュレーションは最新のリアラエースを含む全20種類を搭載。今回の撮影では雨の暗い雰囲気を強調するためにコントラストの強い「クラシックネガ」を多用しつつ、見たままの空気感を伝えたいシーンでは自然な発色の「リアラエース」を選択してみた。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F8 1/125秒 ISO200
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/150秒 ISO80
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

被写体検出AFに関してはアルゴリズムが刷新されて性能アップを果たしているとのこと。人物はもちろん、動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンを検出することができ、今回電車を撮影した際も先頭部分にピントが合うようスムーズにAF追従してくれた(昆虫の場合は「鳥」、ドローンの場合は「飛行機」で検出が可能)。

■撮影機材:FUJIFILM GFX100RF
■撮影設定:F4 1/680秒 ISO80
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

1億画素がより気軽に

直近のGFXはフルサイズ機と肉薄するサイズまで小型化されてきたものの、それでもちょっとしたお出かけに持ち出すような気軽さはなく、スタジオ撮影や風景・ポートレート撮影など「本気の1枚」を撮るためのプロ機材という印象がどうしてもあった。ラージフォーマットセンサーを搭載すれば必然的にカメラのサイズは大きくなる。大きいからこその高画質と言って納得してきた訳だが、そこを覆す革新的な1台が登場したと言っていいだろう。

X100シリーズに倣ったクラシカルなデザインも相まって、ついつい身につけたくなるようなカメラに仕上がっており、1億画素の高画質や撮る楽しさを味わえる操作性とともにユーザーに新たな撮影体験をもたらしてくれるのがこのGFX100RFだ。

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