富士フイルム GFX100S IIをカーレースとポートレートで試し撮り|もはやフルサイズとの垣根を感じない1億200万画素の中判カメラ

中西学
富士フイルム GFX100S IIをカーレースとポートレートで試し撮り|もはやフルサイズとの垣根を感じない1億200万画素の中判カメラ

はじめに

2024年6月28日に発売を予定している富士フイルム GFX100S IIでカーレースとポートレートを撮影してきましたので作例を交えてレビューして行きたいと思います。カーレースではGFX100S IIと同時発表されたGF500mmF5.6 R LM OIS WRを装着し、ポートレートではGF55mmF1.7 R WRを装着して撮影を行ってきました。

GFX100S IIは1億200万画素の新開発の中判フォーマット(ラージフォーマット)のセンサーと上位モデルGFX100 IIや最新Xシリーズでも採用されている画像処理エンジン「X-Processor 5」が搭載された事で描写力と高速性能が従来モデルから大幅に向上しています。中判カメラと思えないほど小型・軽量で取り回しの良さは従来モデルGFX100Sと同様ですが、GFX100S IIでは手振れ補正効果が2段分向上しており500mmのレンズを装着した状態での手持ち撮影を可能にしたり、AF追従性能の向上により動きものに強い中判カメラに仕上がっています。またフィルムシュミレーションではREALA ACEが新たに加わりました。


●本記事に掲載されている作例の内「★等倍でご覧頂けます。」と記載のある6枚はタップもしくはクリックすると等倍(オリジナルサイズ)でご覧頂く事が出来ます。

外観からみる特長

外観を一見すると従来モデルGFX100Sと同じようにも見えますが、GFX100S IIのグリップは「BISHAMON-TEX™」という和を意識した模様のテクスチャーが採用されていて、ホールド性能の向上は勿論ですが、何といってもオシャレでとても気に入ってます。この「BISHAMON-TEX™」のグリップは上位モデルのGFX100 IIでも採用されていて世界中のフォトグラファーからも高く評価をされているグリップです。

ボディー質量はバッテリー、 メモリーカード含み883gと従来モデルGFX100Sから僅か17g軽くなっただけではありますが、メカ的な容積を必要とする手振れ補正機構の効果が2段分向上していたり、質感のある「BISHAMON-TEX™」のようなグリップを採用してるにも関わらず質量を落としてきたことに凄いなと思いました。一歩一歩フルサイズカメラの質量に近づこうとする富士フイルム開発陣のひたむきな努力が垣間見れるような気がします。

メディアはUHS-II対応SDカードのダブルスロットとなっています。書込み性能を向上させたり大容量の撮影データを収録したい場合は外付けSSDへの記録も可能になっています。

EVFは従来モデルGFX100Sではファインダー倍率0.77倍の約369万ドットになっていて、GFX100S IIではファインダー倍率が0.84倍の約576万ドットに進化していていますので平面なのに奥行を感じる中判フォーマットの圧倒的な立体感をより楽しむことができます。また背面の液晶モニターは3.2型3方向チルト式になってますので横位置だけでなく縦位置においても自由度の高い撮影が可能です。モニターも非常にキレイに見えるので、モデルさんや一緒に同行している方にキレイに撮れた画の感動を伝えやすいと思います。

※BISHAMON-TEXは富士フイルム(株)の商標または登録商標です。

カーレースでの試し撮り

■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/125秒 f/8 ISO400
(C)FSW

GFX100S IIのAF性能を試す為にGF500mmF5.6 R LM OIS WRを装着して、富士スピードウェイで行われたカーレースを観客席から試し撮りしました。AFは上位モデルGFX100 IIの機能性を継承し、人物の顔・瞳に加えて、「動物」「鳥」「クルマ」「バイク&自転車」「飛行機」「電車」の被写体検出に対応するようになっていて今回は「クルマ」を選択して撮影を行いました。

メニュー画面で被写体検出を「クルマ」に設定。

AFの追従ではディープラーニング技術を活用して被写体検出を行い追従してくれるのですが、この追従性能は従来モデルGFX100Sから大きく向上し上位モデルGFX100 IIに並ぶ性能になっていると感じました。今回のようなカーレースを撮影する場合ではGFX100 II同様にフォーカスエリアを横長にする事が出来るようになっていて、車の形にフィットさせて粘り強く追従させる事が出来るようになっています。

撮影中のスルー画。フォーカスエリアの形は正方形、縦長、横長など自由に調整が可能。ここでは横長に設定。
撮影中のスルー画。横長のフォーカスエリアが車の形にフィットして追従を行う。

任意の車に追従させたい場合に他のメーカーのカメラでは液晶画面で被写体をタップする必要がありますが、富士フイルムのカメラではタップする事なく、基本先頭の車にフォーカスが追従するようにアルゴリズムが作られていました。これはつまり細かい設定なしに狙った被写体を追い続けてくれるので、設定の煩わしさもなく狙い通りの瞬間を捉えてくれます。また被写体が見切れる寸前までしっかりとAFを合わせ続けることができました。

撮影中のスルー画。フォーカスエリアは画面の端まで追従してくれる。

連写コマ数は従来モデルの5コマ/秒→本モデルでは7コマ/秒と大きく向上していますが、このようなレースシーンでは少し物足りなさを感じる方もいるかもしれません。またブラックアウトフリーでの撮影は出来ませんので、より速いコマ数でブラックアウトフリーで撮影したい方はGFX100 IIの購入をオススメいたします。

夕方から夜に差し掛かった薄暗いレース会場でも、ピタッとAFを合わせて追従させることができ、このあたりの暗所性能性もGFX100 IIと同程度のように感じました。

■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO4000
(C)FSW

日の光がだいぶ落ちた状態で、ISO感度を4000に上げて撮影しましたがノイズを抑えたとてもキレイな画に仕上がっています。フィルムシミュレーションはすべてREALA ACEに設定して撮影を行いましたが、予想以上に魅力的な画となりました。

後ろの車のヘッドライトの光が前を走る車の側面に当たっている所の色味もしっかりと出ています。カメラによってはこの辺りの色味を出すのが難しく、カメラが勝手に白や黒と判断してしまい、この色味が出ない事があります。それに対して富士フイルムのカメラはこのような通常であれば飛んでしまう光が入ってきた時の色づくりが上手なんだと改めて感じました。この反射に加えて路面のヘッドライトの映り込みやスリップ痕の色味もとても気に入っています。

後ろの車のヘッドライトの光が前を走る車の側面に当たっている所の色味もしっかりと出ている
■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO4000
(C)FSW

GF500mmF5.6 R LM OIS WRについて

今回使用したGF500mmF5.6 R LM OIS WRは1,375g(レンズキャップ・フード・三脚座含まず)と中判用の超望遠レンズとしては驚く程軽いレンズになっています。


GF500mmF5.6 R LM OIS WRの焦点距離を35mm判換算にする際は焦点距離を1.26で割ってあげると算出できますので、本レンズの35mm判換算の焦点距離は約400mm相当※(1)になります。またF5.6なので暗いレンズと思う方もいるかもしれませんが、中判のセンサーサイズになるので数値以上に明るくなります。中判用のレンズのF値を0.77倍するとフルサイズ用のレンズのF値が算出できますので、この方法で算出すると本レンズのF値は35mm判用レンズではおおよそF4.3※(2)になります。
※(1) 500mm÷1.26=396.82mm(約400mm)
※(2) F5.6×0.77=F4.312(約F4.3)

焦点距離400mmでF値4.3と考えると、まあまあ明るいレンズですよね。勿論明るいだけでなく美しいボケを得ることが出来ます。手前のぼけ感もとても良いですし絞り込んだ時の光芒の出方も独特でとても気に入っています。下の2枚の作例はタップもしくはクリックで拡大頂くと等倍で見る事ができますので是非ご覧ください。

★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO4000
(C)FSW
★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO4000
(C)FSW

今回のレースでは中判の他にフルサイズのカメラを用意してサンニッパ(焦点距離300mmのF値2.8のレンズ)とテレコンを装着して420mm F4にして撮影してみましたが、GFX100S II+GF500mmF5.6 R LM OIS WRと比べてもシステム全体の重量はほぼ同じになり、取り回し性能は殆ど変わらないように感じました。

■撮影機材:GFX100S II + GF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO4000
(C)FSW

タイヤの回転が分かるようにシャッタースピードは少し遅めにしているので、レンズ側も6段分の手振れ補正に対応していることはとても心強かったです。

ポートレートでの試し撮り

GFX100S IIにGF55mmF1.7 R WRを装着すると旅行にも出かける事ができる中判カメラになります。今までそんな中判カメラは考えられなかったですよね。今回はモデルさんと一緒に横須賀の無人島「猿島」に出かけて撮影を行いました。

■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/4000秒 f/1.7 ISO100
■モデル:宮 捺加

手持ちでの自由な取り回しが可能なので、このような臨場感のあるモデル撮影も簡単にできます。水しぶきが凄かったのですが防塵防滴カメラなので安心して撮影できました。

■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/250秒 f/1.7 ISO640
■モデル:宮 捺加

GF55mmF1.7 R WRは35mm判換算で約44mm※(3)くらいになるのですが、私はこのあたりの焦点距離がモデルとの距離感を撮りやすいと感じていますので普段からこのレンズを愛用しています。またF値は35mm判換算ではおよそf/1.3※(4)とめちゃくちゃ明るいレンズで、ボケ感も光の入り方も好きですし、全体的にゆがみがなく目で見た通りに写しとめることができるのでとても重宝してます。
※(3) 55mm÷1.26=43.65mm(約44mm)
※(4) F1.7×0.77=F1.309(約F1.3)

■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/50秒 f/1.7 ISO250
■モデル:宮 捺加
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/640秒 f/1.7 ISO500
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/250秒 f/1.7 ISO500
■モデル:宮 捺加

私がGFX100シリーズを使いはじめた理由の1つにスムーススキン・エフェクトがあります。これは顔のしわやシミを補正するエフェクトで、画素数が大きいGFX100シリーズではレタッチを現場で行うのは難しいので人物の肌のレタッチを自動で行ってくれる機能で、今回のGFX100S IIでも採用されています。効果は「オフ」「弱」「強」から選択でき、今回の撮影では全てスムーススキン・エフェクトを「弱」にして撮影しています。

下の4枚作例はタップもしくはクリックで拡大頂くと等倍で見る事ができます。顔の部分を拡大しても綺麗な仕上がりになっている事を見て頂けるかと思います。こちらは撮影後の編集は一切行っていない、いわゆる撮って出しの画になります。今回ご紹介しているカーレースもモデル撮影の殆どが撮って出しの作例になります。

★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/60秒 f/1.7 ISO250
■モデル:宮 捺加
★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/50秒 f/1.7 ISO250
■モデル:宮 捺加
★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/2500秒 f/1.7 ISO200
■モデル:宮 捺加
★等倍でご覧頂けます。
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/1250秒 f/1.7 ISO200
■モデル:宮 捺加

顔・瞳検出AFのアルゴリズムが改良され進化して、従来モデルGFX100SよりもAF性能が向上し、GFX100 II同等の性能のように感じました。

■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/50秒 f/1.7 ISO250
■モデル:宮 捺加

このように虹が出るのもGF55mmF1.7 R WRが好きなところです。写りはオールドレンズのようになっているにも関わらず、瞳にピントがしっかりと合っているのでこのレンズならではの画になっていると感じています。

今回低感度のISO80から撮れるようになったのはとてもありがたいと思います。中判フォーマットのカメラでISO100切って撮影できるなんて本当に素晴らしいですね。

被写体検出を「鳥」に合わせて撮影
■撮影機材:GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR
■撮影環境:1/2000秒 f/1.7 ISO160

被写体検出を設定するとこんな小さい鳥でもしっかり追尾して撮影することができました。

動画性能

4K30Pの動画撮影を楽しめます。8Kのような大きいサイズを撮りたい方は上位モデルGFX100 IIがお勧めですが、AFの追従性能などはGFX100 II並みですので、4Kで十分という方にはこちらがオススメです。4Kにした時のフレームレートは30PまでとなりますがDaVinci Resolve等の動画編集ソフトを使えばAIでフレームレートを補完して60Pにする事もできます。プロの現場でもフレームレート補完はよく行われておりクオリティーも折り紙つきです。

私なりのメイン機とサブ機の考え方

GFX100 IIをメイン機に使ってGFX100S IIをサブ機に使う事がありますか?と質問されることがありますが、そのような使い方はしません。GFX100 IIもGFX100S IIのどちらもメイン機になる性能を持っているので、どちらかをメイン機にすると思います。現在私はGFX100 IIをメイン機としていますが、サブ機としてX-H2とX100VIを使っています。GFXシリーズで撮ろうがXシリーズで撮ろうが富士フイルムのカメラは色づくりが統一されているので編集がスムーズにできます。

一見するとこれらのメイン機とサブ機が、中判とAPS-Cの組み合わせになっていてフルサイズが一つ飛んでいるようにも感じると思いますが、フルサイズは中判をクロップして使えますので、常に3つのフォーマットで撮影する事ができます。GFX100S IIでフルサイズの画角にクロップして撮っても6000万画素という高画素であるのと、富士フイルムのクロップは一番いいところだけ使うので画像劣化がなく高画質な画を得る事ができます。

またサブ機のX-H2とX100VIの両方がAPS-Cの理由は、高速性能を生かして撮りたい時はX-H2を使い、気軽にオシャレに撮影したい時やREALA ACEを使いたい時はX100VIを使うなど被写体や状況に合わせて使い分けているからになります。

さいごに

GFレンズはまだラインナップ数が少ないという声を聞くことがありますが、私はラインナップにない焦点域のレンズはマウントアダプターをかえしてフルサイズの一眼レフ用レンズを使って撮影しています。めちゃくちゃキレイに写るレンズが沢山あるのと、AFが効くマウントアダプターもあります。今やこれらのレンズは中古でかなりのお値打ち価格で販売されていますので本当にオススメの使い方になります。

GFX100S IIの登場により、取り回し性能に加え、AF性能や価格の部分でも中判とフルサイズの垣根はほぼ無くなってきているように感じています。今までフルサイズで楽しまれていた方がGFX100S IIを使ってみると、実際にそれを凄く感じるのではないでしょうか。またアダプターをかえして互換性のあるフルサイズ用レンズをお持ちでしたらそれらを有効に使う事もできます。是非一度1億200万画素の魅力を体験してみてください。

■協力:
富士スピードウェイ
猿島(株式会社トライアングル)

 

■モデル:宮 捺加
Instagram @natsuka_miya

 

■写真家:中西学
岡山県出身。一般企業に勤めながら、独学で写真&動画を始める。フリーランス転向後、2011年からは自らの個展も開催。いち早くドローン技術を取り入れ、日本の絶景写真を撮り始める。2020年開催の個展「躍動」では富山県高岡市の伝統文化やそれを後世に受け継ぐ人々を中心とした撮影を行う。富山に限らず、日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現するを常に意識し活動を行っている。2022年にはNetflixで展開中のULTRAMAN写真展「Inhnritance」開催。

​・Microsoft(MCT)
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・dji CAMP Specialist
・SONYαアカデミー講師
・FUJIFILM Xフォトグラファー
​・DavinchResolve18 CertifildTrainer

 

 

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