冬のアイスランドでオーロラを撮る|三田崇博 海外撮影記

三田崇博
冬のアイスランドでオーロラを撮る|三田崇博 海外撮影記

はじめに

こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今年3月に10年ぶりにアイスランドにオーロラの撮影に行きましたので、今回はその撮影記とオーロラ撮影の際の機材の選び方や撮影の注意点などについても触れたいと思います。

アイスランドでオーロラを撮るメリット

オーロラの観測地はオーロラベルト帯であれば世界中にありますが、旅行者が行きやすいところでいえば、カナダ・アラスカ・フィンランド・ノルウェーそしてアイスランドあたりがメジャーでしょう。そしてオーロラ観測は秋から冬が適した季節となります。

実はオーロラは年中出ているのですが、オーロラが見られる地域では夏場はほとんど太陽の沈まない白夜になってしまうので見ることができないという訳です。そしてこれらの地域は北緯65度~70度に達するため冬場の寒さは半端ありません。

そんな中でアイスランドは海流の関係で他の地域に比べると比較的暖かく、機材やバッテリーへの負担が少なく済みます。大体冬の北海道並みと思っていただければいいと思います。(それでも十分寒いですが・・・)

オーロラ撮影に必要な機材

比較的温暖とはいえカメラは防塵・防滴・低温度対応が望ましく、寒さで減りが早いためバッテリーも予備を2~3個は準備しましょう。そしてカメラボディ以上に重要なのがレンズ選びです。空いっぱいに広がるオーロラを捉えるためには(超)広角レンズが、そして薄いオーロラを捉えるには明るいF値を持つレンズが必要です。

今回はボディーに防塵・防滴・耐低温構造の富士フイルムX-T5、レンズをXF8-16mmF2.8 R LM WRとXF16mmF1.4 R WRの2本をメインに撮影に臨みました。XF8-16mmF2.8 R LM WRは特に星空やオーロラの撮影には最適なレンズで、フルサイズ換算で12mmという圧倒的な広い画角を得ることができます。以前にこのレンズのレビュー記事を執筆していますので参考にしてください。

その他に三脚・レリーズはもちろん、結露防止のためレンズヒーターなども用意しました。

XF16mmF1.4 R WR

フルサイズ換算で24mmの画角をカバーする単焦点レンズです。画角的にはオーロラ撮影には少し狭めではありますが、なんといってもF1.4という圧倒的な明るさと単焦点レンズならではの高画質が魅力です。防塵・防滴・耐低温構造なのでオーロラ撮影にも問題なく使用することができます。特に動きの激しいオーロラの場合にはシャッター速度を速めてオーロラの形を捉えることも可能です。発売されて10年が経っているので中古価格が買いやすくなっているのも魅力ですね。

左:XF16mmF1.4 R WR
右:XF8-16mmF2.8 R LM WR

オーロラ作例

アイスランドに滞在した7日間のうちオーロラの撮影ができたのは2日間のみでした。先ほどアイスランドでのオーロラ撮影のメリットを上げましたが、デメリットとしては冬のヨーロッパは天候が安定しないという点があります。しかし、そのうちの1日はこれまでに見たことのないようなすばらしいオーロラに出会うことができました。

まずは世界遺産「シンクヴェトリル国立公園」に現れたオーロラです。事前にチェックしていた世界遺産のギャウ(大地の割れ目)と雪山が見られるポイントに行きましたが、あいにくの曇り空。レンタカーを借りていたので雲レーダーアプリとにらめっこをしながら晴れ間が来るのを待ちました。ここは展望台になっているので、時々ツアーの人たちが来ては残念そうに(オーロラが見えないので)すぐに帰っていきます。そして誰もいなくなったときにオーロラショーが始まりました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS2秒 ISO1600 焦点距離8mm

最初に現れた一筋の線状のオーロラが徐々に左右に広がり8mmの画角全体を覆うようになりました。左側に月が出ていたので肉眼でオーロラの色は確認しにくいですがカメラには写っていました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS3秒 ISO1600 焦点距離8mm

その後カーテン状に広がり始めました。月と反対側の方角を撮影すると月あかりの影響も少なく撮ることができます。月はオーロラ撮影には邪魔だという人もいますが、月明かりがあるお陰で地上の景色も写し込むことができるのでそのメリットを活かした撮影をしてみました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS3秒 ISO1600 焦点距離8mm

この後のオーロラの動きをインターバル撮影したものをタイムラプス動画にしてみましたのでご覧ください。

次にオーロラが見られたのはアイスランド東部でした。移動中に急に空が明るくなったので急いで近くの駐車場に車を停めて撮影しました。この日は月がまだ昇っていない時間帯だったので空が暗く、オーロラをよりはっきりと撮影することができました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS10秒 ISO2500 焦点距離9mm

シャッター速度を長くして撮影しても背景が暗いままで撮影できるので、月が出ているときよりもはっきりと写し込むことができます。しかしシャッター速度があまり長すぎると、動いているオーロラが少しぼんやりとしてしまいます。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS8秒 ISO3200 焦点距離9mm

オーロラの動きが激しく、カーテン状になっている状態を捉えるには速いシャッター速度が必要でした。次の写真はXF16mmF1.4 R WRの開放F1.4でシャッター速度を速めて撮影したものです。オーロラがカーテン状になっている様子がよく分かると思います。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16mmF1.4 R WR
■撮影環境:F1.4 SS0.62秒 ISO6400 焦点距離16mm
■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16mmF1.4 R WR
■撮影環境:F1.4 SS1/4秒 ISO6400 焦点距離16mm

また、XF16mmF1.4 R WRで4K動画を撮影してみました。オーロラの実際の動きがよく分かると思います。動画の場合はシャッター速度を遅くできないので、F1.4の明るさがなければ撮れなかった映像です。

その後少し雲が出てしまいましたが、ロケーションのいい場所に移動して少し撮影しました。オーロラはそのものを撮るのもいいですが、どのようなロケーションで撮るかということがとても重要だと個人的には思います。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS5秒 ISO3200 焦点距離8mm
■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F2.8 SS5秒 ISO2500 焦点距離8mm

その他のアイスランドの絶景

オーロラ以外にも撮りどころ満載なのがアイスランドの魅力でもあります。まずは冬限定(11月~3月)の絶景でもあるブルーアイスケイブです。ガイド付きのツアーでしか訪れることができないのでゆっくり撮影できないのがネックですが、氷河の下にできた青く光る氷の洞窟は世界中でもここでしか見られない絶景です。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF8-16mmF2.8 R LM WR
■撮影環境:F3.2 SS6秒 ISO6400 焦点距離8mm

アイスランドを代表する景勝地でもあるスナイフェルス半島。この独特の山の形は面白いですね。ここでのオーロラを期待していましたがあいにくの悪天候で見られず。トンガリ帽子のような形のキルキュフェットル山はアイスランドの紹介で最近よく出てくる名所です。

■撮影機材:FUJIFILM GFX50S II + GF20-35mmF4 R WR
■撮影環境:F16 SS1.4秒 ISO100 焦点距離22mm

世界遺産の「ヴァトナヨークトル国立公園」です。氷河の塊が湖に浮かぶ光景は大自然の驚異を感じました。特に夕日を浴びて輝く姿がフォトジェニックでした。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/900秒 ISO160 焦点距離38mm

どこまでも続く雪原に昇る満月。真っ赤に染まる空とのコラボレーションが印象的でした。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/28秒 ISO200 焦点距離41mm

アイスランド北部にあるゴーザフォス(フォスは滝の意味)。逆光に照らされた滝は神秘的でしたが、遅いシャッター速度で流れを表現するためにフィルターを駆使して撮影した一枚です。

■撮影機材:FUJIFILM GFX50S II + GF20-35mmF4 R WR
■撮影環境:F20 SS1/4秒 ISO50 焦点距離35mm

最初にオーロラを撮影した「シンクヴェトリル国立公園」を夕方に撮影したものです。夜には見えないギャウと言われる大地の裂け目が眼下に広がります。

■撮影機材:FUJIFILM GFX50S II + GF20-35mmF4 R WR
■撮影環境:F14 SS1/9秒 ISO400 焦点距離20mm

ヘプンという町の近くにある海岸では、引潮時に現れるリフレクションが見事でした。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/200秒 ISO200 焦点距離16mm

フロインフォッサルの滝。アイスランドには迫力のある滝がたくさんありますが、この滝は無数の流れが糸のように流れる珍しいものでした。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F18 SS1/3秒 ISO80 焦点距離48mm

これはアイスランド東部を走行中にたまたま見つけた場所です。有名な場所でなくてもアイスランドは絵になる絶景が至る所に点在しているので、その都度止まって撮影してしまい目的地にたどり着くのに思った以上に時間がかかりました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F7.1 SS1/13秒 ISO1250 焦点距離16mm

アイスランド第二の都市アークレイリを望む展望スポットです。第二の都市とはいってもこじんまりした町で、少し離れると眼下には大自然が広がります。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/480秒 ISO200 焦点距離34mm

アイスランドでは馬を見かけることは多いですが、羊の大群がいたので車を停めて撮影しました。レンタカーで回ると「いいな」と思ったところで停車して撮影できるのがいいですね。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/250秒 ISO800 焦点距離78mm

冬のアイスランドは天候が目まぐるしく変化します。オーロラ撮影には晴れがいいですが、変わりやすい天気だからこその自然現象もたくさん目にすることができました。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/320秒 ISO400 焦点距離16mm

ゲイシール間欠泉周辺の地熱地帯ではいたるところから蒸気が噴き出し、アイスランドが火山島であることを実感させてくれます。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F8 SS1/170秒 ISO320 焦点距離39mm

アイスランドでも最大規模の滝、グトルフォス。内陸部にあるので一部凍結して氷瀑になっているところもあり、冬ならではの絶景を作り出しています。

■撮影機材:FUJIFILM X-T5 + XF16-80mmF4 R OIS WR
■撮影環境:F10 SS1/280秒 ISO160 焦点距離80mm

まとめ

2024年から2025年にかけてはオーロラの当たり年だと言われています。オーロラは太陽の活動周期の11年ごとに強弱を繰り返すのでちょうど今が活動期にあたるようです。基本はXF8-16mmF2.8 R LM WRのようなF2.8の超広角ズームレンズがあればオーロラは撮れますが、F1.4やF1.8のレンズがあれば、シャッター速度を速くしてオーロラの形をより鮮明に捉えることができます。

ぜひこのビッグチャンスに、一生に一度は見てみたいと誰もが言うオーロラ撮影にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。特にアイスランドはオーロラ以外にも大自然の見どころがたくさんあるので、時間をかけてじっくり回るのがおすすめです。

 

 

■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。世界遺産撮影をライフワークとし現在までに100を超える国と地域で400か所以上の世界遺産を撮影。定期的に全国各地で開催している写真展は100回を超える。各種雑誌やカレンダーへの作品掲載も多数。主な著書に「世界三十六景」「生駒の火祭り」がある。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer

 

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