今さら聞けない?ちゃんと知りたい!写ルンです使い方と撮影のコツ
はじめに
懐かしいと感じる皆さんにも、これから初めて使う皆さんにも「今」使ってほしいカメラの一つが「写ルンです」。いつでも、どこでも、誰にでも写せるレンズ付きフィルムとして誕生した「写ルンです」を長年愛用している写ルンです昭和女子、写ルンですの先生でもある筆者が、ちょっと歴史も振り返りながら写ルンですの使い方とコツを伝授します!
写ルンですを知ろう!
今年36歳になる写ルンです(うつルンです)は、1986年7月1日生まれ。同レンズ付きフィルムのパイオニア的存在で、世界では QuickSnap(クイックスナップ)と呼ばれています。写ルンですには、「多くの人に写真を好きになってほしい。」という願いが込められ、「カメラを持っていなくても写せる」「小学生でも写せる」というコンセプトの下に誕生しました。子どもたちだけでなく、当時はカメラを所有することのなかった女性や高齢者でも手軽に扱うことができ、キレイに写真を撮れることを考えられたユニバーサルな商品として世界中で愛され続けています。
かつては旅行先・観光地のタバコ屋さんや駅の売店、自動販売機などでも購入することができ、その種類も豊富で、ISO1600フィルムが入った「写ルンです 1600 Hi・Speed」やモノクロフィルムが入った「写ルンです BLACK & WHITE」、水中写ルンですと呼ばれる「水に強い写ルンです New Waterproof」などなど数々のヒット商品を世に送りだしてきたのですが、現在製造しているのは「写ルンです シンプルエース(ISO400 27枚撮り)」のみとなっています。
貴重な存在となり、残るべくして残った最後の写ルンですを楽しめるのは今。限られた条件下、制約付きで撮る面白さは、フィルム独特の〝エモい写り〟と言われ、改めて女子高生や若いカメラユーザーの間で写ルンですを中心としたフィルムカメラブームの火付け役になっています。
撮っても結果をすぐ確認できない不自由さ、ちゃんと写っているのかわからないドキドキ感、スマホでは加工できないフィルムの風合い(粒状)が個性的として人気を博しています。ちなみに…〝エモい〟とは、エモーショナル(emotional)から由来。感情的、情緒的で、なんとも言えない気持ちを表現する意味で使われています。その時の気持ちを写せるのが「写ルンです」なんです。
写ルンですにも「仕様」があります
写ルンですは、正しくは「レンズ付きフィルム」です。インスタントカメラではありません。インスタントカメラとは撮ったその場でフィルムが現像されてプリントが出てくるチェキやポラロイドのこと。写ルンですには35mm判フィルムを起用しており、ISO400のカラーネガフィルムが入っています。
フィルム | ISO400 135フィルム |
撮影枚数 | 27枚 |
レンズ | f=32mm F=10 プラスチックレンズ1枚 |
シャッタースピード | 1/140秒 |
撮影距離範囲 | 1m~無限遠 |
ファインダー | 逆ガリレオ式プラスチックファインダー |
フラッシュ | 内蔵(有効撮影距離:1m~3m) パイロットランプ付スライド式フラッシュスイッチ |
電池 | 単4形 1.5Vアルカリマンガン乾電池内蔵 |
寸法 | W 108.0×H 54.0×D 34.0mm |
重量 | 27枚撮:90g |
写ルンですが限られた条件下、制約付きでの撮影となるのは、この仕様からです。仕様を覚えておくことで撮影できるシーンがわかるようになります。
写ルンですの使い方・ポイント・操作
実は、写ルンですを手にして一番初めにしてもらいたことは、同じく写ルンですを持った友達のものと混同しないよう裏面に名前を書くこと。名前を書いて自分のものにすることで一層愛着も湧きます。
ストラップホルダーもあるので、お気に入りのストラップをつければもうマイカメラです!
各部名称・操作
(1) パッケージを開けたらダイヤルが止まるまで回します(フィルムの巻き上げ)。
握ったとき右手親指部にあるダイヤルでフィルムを巻き上げ、シャッターボタンを押すだけで撮影できます。天面のカウンターにはフィルムの残り撮影可能枚数が示されます。
(2) フラッシュを使う場合には前面のスイッチを「入」にします。
ランプが点灯したらフラッシュの準備OKのサインです。その前にシャッターを切ると、光量が十分ではない可能性があります。連続でストロボを光らせたいときは注意が必要です。
(3) 電池を消耗してしまうので、撮り終わったらフラッシュスイッチを「切」にしておきます。
(4) 1枚撮影したら、フィルムを巻き上げてから次の撮影を行います。すぐに次の撮影をしない場合は、巻き上げずに持ち歩くのがおすすめ。カバンの中で不用意にシャッターが押されるのを防げます。
写ルンですには説明書はありません。それほど簡単で、誰にでも写せる製品なのですが、もし使い方に迷ったら写ルンです本体を確認してみてください。撮影の手順が書かれています。
写ルンです撮影のコツ
写ルンですは晴天時の日中・屋外の撮影に最適なレンズ付きフィルムなのですが、いつもお天気とは限りません。先に述べた「仕様」を理解することで失敗せずに撮影ができるようになります。また、その逆にあえて写ルンですらしい写りを狙った撮影もできます。
撮影時、一番初めに気を付けたいのはレンズに指がかからないこと。ファインダーの位置とレンズの位置には上下の視差(パララックス)がありますので気を付けます。撮影時も写ルンですを構えたときに多少上位置(1cmくらい)で撮影するとファインダーで見たように写すことができます。
パンフォーカススナップ撮影できる最短撮影距離1m
最短撮影距離は1m。画面全体にピントが合う記念撮影にちょうどいい距離で作られています。1mより手前にあるものはボケてしまいますので注意を。ファインダーでのぞいた時の中心部に一番きれいにピントが合います。
写ルンですは、観光写真・記念写真用にも考えられているレンズ付きフィルムなので、晴天時の日中・屋外で1m以上の距離があれば風景撮影もバッチリです。
フラッシュがあるから様々なシーンで楽しめる
暗い場所や悪天候、室内でもフラッシュがあれば安心です。最適なフラッシュ撮影距離は1~2m。ちょうどウエストアップが入る距離です。
フラッシュの強い光を当てるとトイカメラのように周辺が暗く落ち込み(周辺減光)ますが、これも写ルンですらしい写真です。
肉眼では見えてしまう薄暗い場所でも必ずフラッシュを。
「写ルンですらしい=エモい写真」を撮るのに不可欠なフラッシュですが、撮影時にフラッシュ使用禁止の場所もありますので確認をしましょう。また、撮影時に周囲を驚かせてしまったりすることもあるのでフラッシュを使うときには注意が必要です。
プラスチックレンズだから、ゴースト・フレアが出ます
高品位のレンズではないため、強い逆光を受けるシーンでは光あふれる写真が撮れます。強い光がレンズを通って光が乱反射することで生まれます。これも写ルンですならではの現象。
光の差し込む角度が変わるとモヤモヤした光に。出そうと思っても意図的には出せません。やはりエモい写真と言われるのが分かりますね。
瞬間を捉えるのに最適なシャッタースピード1/140秒
走っている人、動いているものを止めて撮影できるシャッタースピードに設定されています。フラッシュを合わせて使うとより効果的に被写体を止めて撮影できます。ちょっとブレてしまってもそれも写ルンですの味。
人物が陰になってしまう時や、背景をハッキリと見せたいときにもフラッシュを使うと鮮明に写すことができます。
撮影のコツは
(1) 撮影距離を1m以上に保つ
(2) 晴天時・日中以外はフラッシュを使う 基本的にはこの二つだけです。
失敗写真でさえエモい写真となる写ルンですだから、好きなもの・人をどんどん撮影してみてください。ちなみに、「写ルンですは3本使うと慣れてくる。」とは経験者皆さんの言葉です。
写ルンですの撮影が終わったら
撮影が終わり、巻き上げカウンターが「0」になったら、写ルンです本体をそのまま写真店に持ち込みます。不用意に本体を開けたりしないように注意してください。写ルンですはレンズ付きフィルムのため「現像」というプロセスが必要となります。レンズを通して撮影した「像」を現すために写真店さんが現像を行い、ネガシートとなって初めて、データ化やプリントして見ることができます。
仕上がりまで少し時間がかかりますが、それまで写っているかわからないドキドキも体験してくださいね。
※フィルム現像の仕上がり時間は店舗や混雑状況によって異なりますので直接店舗でお問い合わせください。
■新宿 北村写真機店WEBサイト
■カメラのキタムラ店舗検索
おわりに
写ルンですを使うたびに感じることは、撮影枚数に限りがある1枚1枚の大切さ。巻き戻せない、撮り直せない、あと何枚しか撮れない…というもどかしさは、他のカメラでは得られない体験です。細かなピント合わせや絞り調整、シャッタースピードなどの露出設定を変えたりせず、心が動いたまま素直に撮る。それはスマホカメラやデジカメを使い慣れると忘れてしまう感覚。シャッターを押すごとに感じる結果のわからない期待と不安、そして高揚感はかけがえのない楽しさだと感じます。
「やっぱりいいな写ルンです。」
そう思わせてくれる、誰でも気軽に撮影が楽しめる写ルンですで思いがけない写真、思い出の一枚を撮影してみませんか。
次回は、現像後の楽しみ方をご紹介いたします。
■モデル:もくれん(@m_ok_u_ren)
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。