#07 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
はじめに
みなさん、こんにちは。フォトグラファーのコハラタケルです。
「なんでもないただの道が好き 街撮り講座」もとうとう7回目となりました。いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
今回は初歩に戻り、街撮りでのモデルさんに立ってもらう場所について解説していきます。
顔まわりの情報が少ないところに立ってもらう
#02 なんでもないただの道が好き 街撮り講座で話した隙間と枠の話に通ずる部分があるのですが、僕のひとつの基準としてモデルさんには顔のまわりの情報が少ないところに立ってもらうことがあります。
ただし、これは絶対というわけではなく、この街撮り講座で何度も解説している通りいろんなパターンを撮るためです。
こちらの2枚の写真をご覧ください。
1枚目が窓枠とモデルさんの頭が被っているのに対し、2枚目は被っていない場所に立ってもらいました。今回の説明で言うところの顔のまわりの情報が少ないところで撮っています。
顔のまわりの情報が少ないところに立ってもらうと、その人の顔・身体のラインを見せることが可能なため、モデルさんを目立たせることができます。
この方法を覚えておくと街中で好きな背景、撮る場所が決まったとき、どこにモデルさんを配置するのか、ひとつの指標となります。
ほかの作例もご覧ください。
どうでしょうか。モデルさんの顔のまわりの情報が少ないとスッキリとした印象に見えないでしょうか。
ただし、最初に話した通り、この撮り方はあくまでひとつの方法にすぎません。次の写真をご覧ください。
背景の建物のシーリングが頭の上から棒のように出ています。
今まで僕が話した説明からすると、この写真を失敗と思う人もいるかもしれません。しかし、このときの僕は顔のまわりの情報よりも、玉ボケの位置とモデルさんへの光の当たり方を重視しました。
玉ボケの大きなラインを左上から右斜め下へ落ちるように意識し、写真の光と影の面積が大体、半々になるようにしました。さらにモデルさんへの光は右目・鼻・唇は明るく、左目に関しては少し影が入っても良しとしました。
串刺しや首切りに関しては写真講座でダメな例として取り上げられることがあります。しかし、僕は串刺しや首切りになっていても、ほかのポイントや表情などが良ければ写真を出します。写真は技術的なマイナス面よりも、パッと見た印象のほうが大事だと考えているからです。
しかし、こうなってくると「結局、どういうふうに撮ればいいのか迷ってしまう」という方もいるかもしれないので失敗写真も見せていきます。
モデルさんの背景に滑り台があります。赤・ピンク・黄色・ミントグリーンです。
この写真の大部分を占める背景の色は「上部にある木の緑」「鳥居や石灯籠などのグレー」「茶系のレンガ(床面)」で構成されています。
その中で危険色である赤色や、黄色やピンクなどの彩度が高いものが入っているとそちらに視線を奪われてしまいます。
ほかの失敗写真も見ていきましょう。
モデルさんが着ている服の色、髪の色、そして手を添えている壁の色など、ほとんどがモノトーンで構成されています。
しかし、上部には赤色と紫色の看板が入っています。これだけボケていたとしてもモノトーンで構成された色合いのなかに別の色が入ると目立ってしまいます。
こちらは左の写真が失敗で、その後、修正して撮影した写真が右の写真になります。
実はこのとき、モデルさんが落ちているイチョウの葉っぱを拾い、髪飾りのように耳元に付けてくれました。僕はそのイチョウを目立たせたかったので、写真に入る黄色はモデルさんが付けているイチョウの黄色だけにしたかったのです。そのため修正後の写真は頭を切ることで失敗写真に入っていた黄色が入らないようにしました。
理想は現地で完成された状態に持っていくほうが良いと思うのですが、場合によってはトリミングでの対応も行います。今回は左の写真の表情も好きなので、残しておきたいと思いました。
トリミング後の写真がこちらです。
日の丸構図・シンメトリー構図・アルファベット構図など、写真には様々な構図がありますが、僕は構図のことはあまり考えません。色です。写真に入って欲しい色と入って欲しくない色で画角を決めています。
規則正しく並んでいる場所・モノを背景にする
モデルさんの顔まわりの情報が少ないところでの撮影について話してきましたが、ほかにも定番の撮影背景があります。それは”規則正しく並んでいる場所・モノ”です。
「金網」「ブロック(レンガ)」「レトロなガラス」など、同じものが規則正しく並んでいる場所を背景に写真を撮ると、自然と情報が整理された写真になりやすいです。
とくに金網やブロックは街を歩けば頻繁にあるので、見かけたら撮っておきたいですね。
ここからは番外編。
これは錆が壁に垂れているのですが、僕はこういうものも金網やブロックと同じ考えで撮影します。要するに似たような模様が並んでいると捉えるのです。
実際、撮影した写真がこちらです。
壁に特徴がある場合は敢えて顔を見えにくくすることがあります。以前も話したように人物の顔は視線が集中しやすいので、壁に視線を誘導させるためにも顔に影を落とすことで情報が見えないようにしています。
次の写真も人によっては失敗写真に見えるかもしれません。
この写真も顔の向きを変えれば、光を当てることは可能です。ただし、今回の僕の考えからすると下の写真は失敗写真なんです。
顔を光の方へ向けると、ちょっとポジティブな印象になってしまいました。この錆が垂れた壁の雰囲気や印象を考えると、暗い雰囲気の写真に仕上げたほうが良いと思いました。なので成功写真に関しては顔に影を落とし、明るくない表情にしています。
さいごに
今回、僕が失敗写真として見せたものでも、人によっては「この写真、良いのに……」と思う人もいるかもしれません。僕はそれで良いと思っています。重要なのは自分のなかにある”好き”を大切にすることです。
■モデル:五味未知子
■写真家:コハラタケル
1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。ライター時代に写真の勉強を始め、その後フォトグラファーに転身。企業案件の撮影ほか、セミナー講師や月額制noteサークルを運営している。ハッシュタグ#なんでもないただの道が好き の発案者。
コハラタケルさんの連載記事はこちら
#01 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483346238/
#02 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483447191/
#03 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484139215/
#04 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484640119/
#05 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485002016/
#06 なんでもないただの道が好き 街撮り講座|コハラタケル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485619414/