富士フイルム X-S20が登場|被写体検出AFを獲得した小型軽量ミラーレス

ShaSha編集部
富士フイルム X-S20が登場|被写体検出AFを獲得した小型軽量ミラーレス

はじめに

富士フイルムのミラーレスカメラ、X-S10の発売から2年半。ついに後継機となる「X-S20」が発表されました。一見、X-S10から変化がないようなルックスですが、外観はほぼ同じまま性能はしっかりパワーアップしています。「S」のモデル名に込められたスモール&スリムのコンセプトを、このX-S20もしっかり引き継いでいることが分かります。

注目は最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」が採用されたこと。X-H2やX-T5など上位機種と同じエンジンによって、高精度な被写体検出AFを始めとする性能向上を果たしています。

一方で、センサーは従来と同じAPS-Cサイズ、裏面照射型約2610万画素の「X-Trans CMOS 4」が採用されており、第4世代センサーと第5世代エンジンを組み合わせたことが分かります。この部分で上手い具合に上位機種と差別化してきたな、という印象を受けます。

販売ラインナップはボディとXC15-45mmレンズキットの2種類。X-S10であったXF18-55mmレンズキット、ダブルズームレンズキットの展開はありません。

日常使いに最適な小型ボディ

X-S20はX-S10を踏襲した小型軽量ボディを採用しています。サイズを比べてみても高さと奥行きは同じまま、わずかに横幅が大きくなっています。これはX-S20でバッテリーが上位機種と同じNP-W235に変更されたことに起因しています(X-S10は四角いタイプのバッテリーNP-W126S)。

重さも約491g(バッテリー、 メモリーカード含む)とX-S10からの質量増はたったの26g。小型なボディとともに500gを下回る軽さによって、どこへでも持ち歩きたくなるカメラに仕上がっています。

X-S20 X-S10
撮像素子 X-Trans CMOS 4センサー X-Trans CMOS 4センサー
画像処理エンジン X-Processor 5 X-Processor 4
サイズ 幅127.7mm×高さ85.1mm×奥行き65.4mm 幅126.0mm×高さ85.1mm×奥行き65.4mm
質量 約491g(バッテリー、 SDメモリーカード含む) 約465g(バッテリー、 SDメモリーカード含む)
バッテリー NP-W235 NP-W126S
撮影可能枚数 約750枚(ノーマルモード時) 約325枚(ノーマルモード時)
液晶モニター 約184万ドット、バリアングル式 約104万ドット、バリアングル式
手ブレ補正 5軸・最大7.0段 5軸・最大6.0段

 

バッテリーがより大容量のタイプになったことで、撮影枚数も従来機の325枚から750枚へと2倍以上に増え(ノーマルモード時)、予備バッテリーを持ち歩かずとも十分な枚数が撮影できるようになりました。また、X-H2やX-T5を使っている方のサブ機として購入しても、バッテリーが使い回せるのは嬉しいですね。

大きなバッテリーを配置するためにグリップの形状も若干変更され、握り比べてみるとより厚みを増した印象です。ワンハンドで持ち歩きやすい深めのグリップは健在で、大きなレンズを装着してもしっかりホールドすることができます。

上:X-S10 下:X-S20
特にISO/Qボタンの形状変更が目立つ

他に変更された箇所は、各種ボタンがエッジの立ったデザインになり押しやすくなっています。特に人差し指で操作するISO/Qボタン。より出っ張りが増したことで、ファインダーを覗きながらでも指先で探しやすくなったと感じました。加えて右手側の側面にイヤホンジャックが追加され、動画撮影時に音声をモニタリングしやすくなりました。

ファインダーはX-S10と同じ0.39型・約236万ドットのEVF。ファインダー倍率は0.62倍です。液晶モニターは自撮りもしやすいバリアングル式は変わらないものの、ドット数が約104万から約184万に増えています。

カードスロットはバッテリーと同室で、シングルスロット仕様なのは従来通りです。ただ、X-S20でSDカードのUHS-IIにも対応したことが改良ポイント。高速転送が可能なUHS-IIであれば、大容量のデータでも快適に扱うことができます。

X-S10で特徴的だった5軸ボディ内手ブレ補正にも磨きをかけています。X-S20は最大7.0段のボディ内手ブレ補正機能を搭載しており、X-S10の最大6.0段から性能向上を果たしました。夜景や夜のスナップ、暗い室内などでも安心して手持ちで撮影することが可能です。

快適な動体撮影

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影設定:F20 1/60秒 ISO160

第5世代機に特徴的な被写体検出AFでは、人物だけでなく動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンを検出することができます(昆虫の場合は「鳥」、ドローンの場合は「飛行機」で検出が可能)。

この被写体検出AFの搭載がX-S10との最大の違いと言ってもいいでしょう。カメラが自動で被写体を検出し、ピントを追い続けてくれるため、撮影者は今まで以上に構図に集中することができます。

この被写体検出AFを試すために、今回は飛行機を撮影してみました。コックピットにフォーカスするよう検出枠が自動で追尾してくれるため、飛行機の位置に合わせていちいちAFエリアを移動させる手間もなく、非常に快適に撮影を行うことができました。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影設定:F5.6 1/2000秒 ISO400
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影設定:F13 1/160秒 ISO160

従来機種のAFモード「トラッキング」や「ゾーン」を使っても、動いている飛行機のコックピットを狙ってピントを合わせ続けるのは至難の業でした。X-S20では被写体の検出だけでなく追尾精度も上がっているため、動く被写体で起こりがちなピント抜けの心配もありませんでした。

また、X-S20で新しい機能がAUTO被写体検出。モードダイヤルをAUTOモードにしておけば、カメラが自動で被写体を判別してピント合わせが可能になりました。Pモードなどでは検出する被写体をメニューから選ぶ必要がありましたが、そういった操作も不要になり、あらゆる被写体をより手軽に確実に撮影できるようになります。

連写性能はX-S10から変わらず、メカシャッターで最高約8.0コマ/秒、電子シャッターを使えばクロップなしで約20コマ/秒、1.25倍クロップで約30コマ/秒の撮影が可能です。

富士フイルムこだわりの「記憶色」

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF35mmF1.4 R
■撮影設定:F1.4 1/2400秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

画像処理エンジンが変わっても、富士フイルムが大事にしてきた色づくりには変化ありません。画素数も従来通りとあって解像度も差はないように感じます。高画素センサーを搭載したX-H2やX-T5では、その解像度をフルで活かせるレンズに限りがありましたが、このX-S20はそういった心配もないのはいいですね。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影設定:F8 1/350秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影設定:F8 1/900秒 ISO250
■フィルムシミュレーション:ACROS

フィルムシミュレーションに関しては「ノスタルジックネガ」が追加され全19種類に。ノスタルジックネガは1970年代のアメリカンニューカラーを想起させる、やや暖色がかったノスタルジーな表現が可能です。どこか懐かしいような風合いを手軽に出すことができますね。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF35mmF1.4 R
■撮影設定:F11 1/140秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF8mmF3.5 R WR
■撮影設定:F8 1/100秒 ISO640
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

キットレンズのXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは非常に軽くコンパクトなので、X-S20と組み合わせると機動力は抜群。下の作例はテレ端45mmで開放のF5.6ということで、単焦点レンズのような大きなボケは得られませんが、23~69mm相当の標準画角は気になった瞬間をパッと切り取れる便利さがあります。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影設定:F5.6 1/220秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

Xシリーズ初期からある神レンズXF35mmF1.4 Rも、最新機種と組み合わせたところで、その素晴らしい描写に変わりはありません。とろけるようなボケ味、奥深さのある色合い、嫌みのない優しい質感再現などが感じられると思います。X-S20はボディ内手ブレ補正も強化されたので、レンズ内手ブレ補正のない単焦点レンズも安心して使うことができます。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF35mmF1.4 R
■撮影設定:F2 1/1250秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF35mmF1.4 R
■撮影設定:F2.8 1/300秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF35mmF1.4 R
■撮影設定:F1.6 1/680秒 ISO160
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

富士フイルム初のVlogモード

最新の画像処理エンジンによって動画の機能も進化しています。センサーがX-S10と同じにも関わらず、X-S20では6.2K/30Pが撮影できるようになりました。もちろん6.2Kでもカメラ内SDカード記録が可能です。4K/60PやフルHD/240Pにも対応、よりデータ容量を抑えられる「フルHD LP (1.29x クロップ)」も新しく追加されています。

X-S10であった動画の連続記録30分制限もなくなり、より長時間の収録も可能に。別売りの冷却ファン「FAN-001」も装着できるようになり、バリアングルモニターを開くとX-S10にはなかったネジ穴も確認できます。

注目すべきは新規搭載された「Vlogモード」。モードダイヤルを「Vlog」に合わせるだけで、特にセルフィー(自撮り)の動画撮影で簡単に設定を変更できるようになります。設定パネルを開くアイコンがモニターの端に表示されるので、あとはタッチで使いたい機能を切り替えるだけ。セルフィーで役立つ機能として「商品撮影モード」と「背景ボケモード」の2つが新搭載されています。

商品撮影モードは、自分の顔の前に料理や商品をもってきたときにスムーズにフォーカスが切り替わってくれる機能。背景ボケモードはONにすると自動で絞り開放になり、背景をボカした撮影が可能になります。

自分の方を向けて歩き撮りをする際もボディが軽いので疲れにくいですし、優れた被写体検出AFによって瞳にピントが合い続けてくれるとあって、旅先でのVlog撮影も今まで以上にやりやすくなっています。

さいごに

コンパクトなボディで人気を博したX-S10からサイズを変えずに、これだけの性能進化を果たしたのは本当に驚きです。上位機種と遜色ない機能を搭載しているので、小さいサイズに反して非常に頼れるカメラに仕上がっています。動画も撮るからバリアングルモニターがいい、でもX-Hシリーズほどの性能は必要ない、というユーザーにもぴったりです。もちろん高速で動く被写体も今まで以上に撮りやすくなり、バッテリー持ちも良くなった、グリップも非常に握りやすいとあって、本当に弱点のないカメラになったと思います。

また、X-Tシリーズとは違ってモードダイヤル仕様なので、他社カメラユーザーや初めて一眼カメラを手にする人にも使いやすいと思います。持ち歩きやすい高性能ミラーレスをお探しなら、ぜひおすすめしたい1台です。

 

 

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