トラベルカメラ「富士フイルム X-S20」と楽しむ、小樽さんぽ

渡邉真弓
トラベルカメラ「富士フイルム X-S20」と楽しむ、小樽さんぽ

はじめに「そうだ、旅に出よう」

記録的な暑さが続いた今年の夏。

日中は外出を控える注意報も出たりして、北海道も驚くほど暑かった。
とはいえ、早朝なら、きっとまだ暑すぎないのでは。そんな風に期待して、ある晴れた日の朝、札幌6時28分発の列車でカメラと一緒に出かけることにした。

本日の相棒は、富士フイルム X-S20。
X-S20は「トラベルカメラ」と呼ばれている。
それには、理由がある。

X-S20がトラベルカメラと呼ばれる理由

旅に持っていくカメラは小さくて軽いものが良い。
X-S20は一目見るとわかるように、とてもコンパクト。サイズは、幅127.7mm高さ85.1mm、重さは491g。なんとペットボトル1本分より軽い。そして小型軽量に加え、グリップが特徴的で握りやすいので、長時間持ち歩いても苦にならない。

さらに、X-H2S、X-H2、X-T5などと同じ大容量バッテリー「NP-W235」で、撮影可能枚数はX-S10のなんと2倍! 約750枚(エコノミーモード時は約800枚)も撮影ができるとは嬉しい進化。その上、被写体検出AFや7.0段分の手ブレ補正機能など、いろいろ充実。
まさに、旅に持っていきたくなるカメラ = トラベルカメラだ。

レンズはXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZと単焦点1本をセレクト。
XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは135gと軽く、35mm判換算で23mm~69mm相当。電動ズームなので動画にもおススメ。X-S20のキットレンズでもある。もしX-S20で初めてXシリーズを購入するのであれば、最初のズームレンズとしてぜひ揃えたい1本。

もうひとつの単焦点は、お気に入りのレンズを選んだ。描写がとても好きな1本。のちほど写真と一緒に紹介するので、お楽しみに。

さて、そんなことを話しているうちに、列車は今日の目的地・小樽に到着。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/400秒 f/11 15mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/3500秒 f/5.6 30mm ISO640

小樽市は札幌市の隣にある。といっても、JR札幌駅からJR小樽駅まで普通列車だと約50分、快速エアポートで約30分と、実は程よく距離がある。小樽には漁港があるので海鮮が美味しく、また小樽運河や歴史的な建物などフォトジェニックな場所が多いので、写真旅におススメ。

まずは、手宮線跡地までのんびりと

小樽で私がお気に入りの場所へまず向かう。駅からまっすぐ行くと約10分で着く「手宮線跡地」。でも、せっかくだから、気になる路地を曲がりながら、のんびり行く。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/110秒 f/5.6 45mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/850秒 f/5.6 22mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/550秒 f/5.6 32mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/55秒 f/8 41mm ISO640

「まだ焼けてないから、これは昨日のパン」と準備を進める地元のパン屋さん。
色違いが可愛い双子のミニトマト。
朝の光が美しい路地。

軽くて持ちやすいX-S20だから、歩きながらの撮影が楽しい。壁に映る繊細な光も白飛びせずしっかり捉え、期待に応えてくれる。

手宮線跡地に到着

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/550秒 f/5.6 41mm ISO640

手宮線跡地は、北海道で初めて開通した鉄道「官営幌内鉄道」の一部。石炭の採掘が盛んな頃に幌内(三笠市)から港のある小樽市へ石炭を運ぶために敷かれた鉄道。その一部が整備され、散策路として楽しめる。佇まいが好きで、小樽に来たら、ここを歩くことが多い。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/500秒 f/5.6 45mm ISO640

線路を覆うくらいに元気な緑。
XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZで45mmにして撮影した。コンパクトなレンズだけど、描写も良い。手前の暗いところと奥の明るいところもそれぞれしっかり表現できている。

よく見ると、下に紫陽花が咲いていた。
ぐっと寄って撮ってみる。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/105秒 f/5.6 15mm ISO640

XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは実はすごいスペックを持っている。なんと、広角15mm側だとレンズ先端から5cmまで接写できる。おかげで紫陽花の繊細さがしっかり表現できた。最短撮影距離が短いと表現の幅が広がる。これがX-S20のキットレンズとは、本当にすごい。

もう1本のレンズ登場

手宮線跡地の線路沿いに咲く花も、そろそろ夏の終わりの雰囲気。
終わりかけの花たちもあって、すこし切ない。
レンズを交換して、その切ない雰囲気をF1.4で切り撮ってみた。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/22000秒 f/1.4 ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/22000秒 f/1.4 ISO640

ピントが合ったところの描写はシャープだが、周辺はうっとりするような美しいボケ感。
ああ、やっぱりこのレンズが好きだな、と思った。
そのレンズとは、XF33mmF1.4 R LM WR。

XF33mmF1.4 R LM WRは35mm判換算で50mm相当。一度撮影すると虜になる高い描写力が特徴。リニアモーターを搭載し、インナーフォーカスを採用することで0.04秒の高速・静音AFを実現している。びしっと正確にピントが合うのはとても気持ちが良い。しかも防塵・防滴。重さも360g。
X-S20のグリップの持ちやすさもあり、ボディバランスも気にならず、撮影がしやすい。

しばらくX-S20とXF33mmF1.4 R LM WRで手宮線跡地を歩いてみた。
何気ない場所が物語になる。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/8500秒 f/2.8 ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/3000秒 f/1.4 ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/30000秒 f/1.4 ISO640

そんな風に歩いていたら、小樽運河に出た。

旅は意外な展開に

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/600秒 f/8 45mm ISO640

運河で撮影をしていると、急に港の方から放送が聞こえてきた。

「もうすぐ祝津行の船がでます。乗船希望の方は乗り場までお越しください。」

わ、船!
そうか、小樽は海の街だもの。
祝津までは車で行くものと思っていたけれど、船でも行けるんだ!
そう思ったら、急になんだかワクワクして、思わず、そう思わず乗ってしまった。
祝津行きの海上観光船「あおばと」に。

船での出会い、そして祝津へ

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/70秒 f/8 45mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/850秒 f/5.6 45mm ISO640

出発してすぐ後ろのデッキに出てみた。
ライフジャケットを着たらデッキでも撮影できるよ、と乗務員さん。それでは、ライフジャケットをお借りしますと話していると、カモメがやってきた。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/1100秒 f/5.6 45mm ISO640

わ!カモメ!
思わず声が出た。

サッとモードダイヤルをC1に回して、カモメを撮る。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/1600秒 f/10 36mm ISO640

伸びやかで気持ちよさそう!
小樽の街を背景にさっそうと船を追い越していった。

X-S20はモードダイヤルにC1~C4の選択がある。これはカスタム設定と連動していて、C1~C4に自分の好みの撮影設定をしておくと、瞬時に呼び出すことができる。

今回はC1にオリジナルの動体撮影設定を仕込んでおいた。
カスタム設定では、シャッタースピード優先などの撮影モード選択、AFの設定、単車・連写、フィルムシミュレーションなど細かな設定ができる。そうそう、動体撮影で欠かせない機能も忘れずに設定しなければ。

その機能とは、「被写体検出AF」設定。
動物、鳥、車、電車、バイク&自転車、飛行機の選択があり、その選択にあわせて、動体を検出。さらにピントを合わせたまま自動的に追尾をしてくれるという、とても便利な機能だ。遠くにいる時点から追尾が始まるので、構図とシャッターチャンスに集中して、撮影ができる。動体撮影が楽しい。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/1600秒 f/11 28mm ISO640

そして、X-S20だからこそおススメしたい撮影モードがもうひとつある。
それは、AUTOモード。AUTOモードを勧めるとは、と意外に思う方もいると思う。

実はX-S20のAUTOには、「AUTO被写体検出機能」が搭載されている。動物・鳥・車・バイク&自転車・飛行機・電車などをカメラが自動で検出し、ピントをあわせ追尾するという優れもの。さらに、シーンに応じてフィルムシミュレーションやカラークロームなどもシーンにあわせて組み合わせてくれる。

こんな風に。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/2400秒 f/6.4 40mm ISO640

AUTOモード、すごい!

動体撮影が苦手な方や初めて撮る、という方もきっと楽しめる。そして、これをきっかけにいろいろな被写体を撮ってみたい!とワクワクすると思う。
また、動体撮影の設定をしていないときに、撮りたい動体が突然現れるということもあるだろう。とっさのときにAUTOにすれば、こんな風に撮影ができる。先ほど話したカスタム設定に仕込むのもひとつの方法だけど、AUTOも選択肢となる。

ある程度、撮影技術を習得すると、AUTOモードはほぼ使わないという方が多いだろう。しかし、X-S20のAUTOは「AUTO被写体検出機能」が搭載されているという点で、活用できる機会があるのではと思う。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/4700秒 f/5.6 28mm ISO640

風が気持ち良い。祝津までの20分があっという間だった。
祝津の漁港をすこしだけ巡ってみた。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/2000秒 f/5.6 17mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/2500秒 f/5.6 40mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/2400秒 f/5.6 45mm ISO640
■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/3000秒 f/5.6 26mm ISO640

少し高台に上がって、海を見た。
祝津も気になるところがたくさん。また、来よう。

ランプのカフェへ

小樽駅に戻り、最後は北一硝子三号館 北一ホールへ。
167個の石油ランプの灯りだけで過ごす、雰囲気のあるカフェ。
暗い中に浮かび上がるランプの灯りがなんとも幻想的。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/50秒 f/3.5 15mm ISO6400

薄暗い中でも、ピントが迷うことはない。低輝度環境下における高いフォーカス機能が発揮された。これは楽しい。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XF33mmF1.4 R LM WR
■撮影環境:1/55秒 f/1.6 ISO3200

XF33mmF1.4 R LM WRでひとつ奥のランプを撮ってみる。
F1.6で手前のランプにぐっと寄って前ボケにする。壁際のランプが玉ボケになり、暗い背景のアクセントに。ランプの灯りの暖かい雰囲気をぎゅっと閉じ込める。

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/25秒 f/3.5 15mm ISO6400

XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZに変えて、天井のランプをバックにテーブルのランプを煽るように撮る。背面液晶モニターがバリアングルなので、ローアングル・ハイアングルも自由自在。

そして忘れてはならないのが、手振れ補正。5軸・最大7.0段と強力な手振れ補正が、薄暗い中での撮影もしっかりサポートしてくれた。

おわりに「トラベルカメラX-S20と素敵な旅を」

■撮影機材:FUJIFILM X-S20 + XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
■撮影環境:1/640秒 f/8 23mm ISO640

気が付いたら、すっかり午後も遅い時間になっていた。

海を見ながら今日を振り返る。手宮線跡地からのまち歩きのはずが、思いがけず船に乗ったり、ランプのカフェに寄ったり、そのときの閃きで予想外の出会いがたくさんあった。

それはきっと、X-S20と一緒だったから。

小型軽量なのに多機能。スナップはもちろん、動体撮影も暗所も、あらゆる撮りたい気持ちに応えてくれる。だからどんどん撮りたくなる。そしてどんどん旅が楽しくなる。

トラベルカメラ、X-S20。
人生を旅と例えることがあるけれど、X-S20は旅以外のシーンだって大活躍する。
そう思えば、旅を含めた日々の彩りの全てに寄り添ってくれるのが、X-S20なのかもしれない。

 

 

■撮影協力:北一硝子 三号館 北一ホール
北海道小樽市堺町7-26
https://kitaichiglass.co.jp/kitaichihall/

 

■写真家:渡邉真弓
写真家。札幌在住。日常をモチーフに「時の有限性」「薄れゆく記憶」について考察する作品を制作。「写真と一緒にくらしを楽しむ」をキーワードに、写真教室、写真にまつわる執筆・企画提案、撮影など幅広く活動している。北海道カメラ女子の会代表、フォトフェスCuiCui 事務局代表、京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。富士フイルム公認X-photographer。地方自治体と地域振興プロジェクトも展開中。

 

 

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