コンパクトなレンズと出かけよう。富士フイルム X-T50 レビュー|こばやしかをる
はじめに
〝X-T2桁シリーズ〟といわれ、ミドルクラスに位置するFUJIFILM X-T50。人気を博し、入手困難となっていた本機ですが、私が愛用していたネガフィルムREALA ACE(リアラエース)のフィルムシミュレーションが搭載されていることから、早く撮影してみたい!と思わせる機種でした。
今回は、キットレンズとなっているコンパクト標準なズームレンズXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZと、X-T50に相応しい単焦点レンズ2本をセレクト。XF35mmF2 R WRとXF50mmF2 R WRをつけて出かけました。
X-T50のデザインと特徴
これまでのデザインとは異なり、新しく採用された丸みを帯びたボディデザインが特徴的です。ラウンド形状のグリップは手にピタリと馴染み、しっかりとしたホールド感があり、持ったときに小さく感じます。普段愛用しているX-E4が角ばっているからかもしれませんが、手のひらにカメラの角が当たらない感触に優しさを感じます。
軍艦部のダイヤル類がシンプルにまとめられ、なんだかフィルムカメラのようで、自然な操作感となっています。初めて使うのにすでになじみ深い感じの印象を受けました。
イメージセンサーは、すでに販売されているX-H2やX-T5、X100VIと共通となる約4,020万画素のX-Trans CMOS 5 HR、画像処理エンジンもこれらの機種と同じX-Processor 5です。細部まで捉える圧倒的解像感で、これまでよりも滑らかな階調表現が可能になっています。
従来機のX-T30 IIでは搭載していなかったボディ内手ブレ補正ですが、X-T2桁シリーズで初となる5軸・最大7.0段のボディ内手ブレ補正も搭載され、暗いシーンや動画撮影時でもブレの少ない映像を得られるようになりました。写真撮影にふさわしい光軸上に位置するチルトタイプの背面モニターと、内蔵フラッシュも健在です。
多彩な色表現が楽しめるフィルムシミュレーションダイヤル
X-T50で一番目を引く機能といえば、フィルムシミュレーションダイヤルです。瞬時にフィルムシミュレーションを切り替えられる上、多彩な表現が簡単に切り替えられてとても楽しいです。ダイヤルを回すと、モニター画面にも表示される仕様になっているので、見ているだけでもワクワクします。Xシステムを使う醍醐味が集約されたといってもいいでしょう。
大好きなREALA ACE(リアラエース)の描写
フィルムシミュレーションREALA ACE(リアラエース)の基となったフィルムは、フジカラーREALA ACE。1989年に発売されたカラーネガフィルムです。私自身も大好きなフィルムで、長い間愛用していました。
ネガフィルムでは、従来のRGB表現の受光層に加え、第4の感色層C(シアン)が加わり、より忠実で自然な色再現を行うことが可能となり、表現力が増しました。コントラストが高いのにハイライトトーンの階調の伸びが良かったと記憶しています。曖昧な中間色を自然に再現できることから、ペールトーンのような淡い色合いが得意です。
デジタルとなり、フィルムシミュレーションに加わったREALA ACEは、期待を裏切らず往年のフィルムを意識しながらも、その特徴が作画に活かされていることを感じさせてくれました。さっそく近所で撮影をしてみたところ、〝あぁ、やっぱりこの色好きだな〟と、あらためて実感しました。
キットレンズXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZの魅力を再認識
XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは、全長44.2mm(電源OFF時)、質量135gと、かなり軽量コンパクトな標準ズームレンズ。35mm判換算で広角23mmから中望遠69mm相当の画角をカバーし、最短撮影距離は広角端:13cm、望遠端:35cmと被写体に迫った撮影が可能になっています。
XFレンズと異なり、フォーカスレンズをステッピングモーターで駆動させ、マウント部がプラスチック製、絞りリングがないなどの大きな違いはあるものの、約4,020万画素となったイメージセンサーにより、これまでよりも高い解像感が得られコントラストも良好です。シャドーからハイライトまでのトーンの連なりもなめらかで、どんなシーンを撮影しても引き締まった描写です。写りはXFレンズに引けをとらないクオリティと言えそう。
特に、広角端15mm(23mm)と望遠端となる45mm(69mm)の焦点距離は活用シーンも多く、こうしたズームレンズはふらりと出かけることを躊躇せず、軽量さも手伝って、旅先でも便利で頼れる存在となってくれること間違いなしです。
相性のいいコンパクトプライム〝F2〟シリーズ
このサイズ感のカメラにはあまり重たいものを背負わせたくないな、というのが正直なところ。実際にXF35mmF2 R WRとXF50mmF2 R WRを装着してみると、あまりにもお似合いで、「すぐにでも撮影に出かけたいなぁ」と、思わせてくれました。普段からまち歩きしながらスナップ撮影を楽しんでいる方なら、そうした見た目も撮影意欲につながることでしょう。かくいう私もその一人。
残暑の厳しい休日でしたが、ラテンアメリカのカラフルでにぎやかな雰囲気に誘われて、イベントを訪れてみました。なかなか秋の涼しさを感じられない9月でしたが、確実に季節は進みます。この日も夕方の日差しが乾いた空気を運んできてくれました。こんな日は、フィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ」がお似合いです。
おわりに
ミドルクラスに位置しながら、上位機種と共通の約4,020万画素のX-Trans CMOS 5 HR、画像処理エンジンもX-Processor 5とあり、豊かな階調と自然な色合い、解像感も実に見事で気持ちのいい写りです。また、高いホールド感とコンパクトなレンズの組み合わせにより、気持ちよくシャッターを切りながらサクサクと撮影がはかどります。
いつも通りに撮影している中で、随所に最新の高画質・高性能を感じさせるX-T50。〝X-T2桁シリーズ〟と、ひとくくりにしてしまうのはもったいない気さえしました。
「いつもそばにあると嬉しい」そんな満足度を高めてくれること間違いなしのカメラです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。