富士フイルム XF23mmF1.4 R LM WR レビュー|大口径プライムシリーズの新標準レンズ
はじめに
将来的なXマウントボディにおけるイメージセンサーの高画素化を見据えた、高解像性能を有する新世代「大口径プライムシリーズ」。先に発売されたXF18mmF1.4 R LM WR、XF33mmF1.4 R LM WRに続き、XF23mmF1.4 Rのリニューアルモデルとしてシリーズ3本目となるXF23mmF1.4 R LM WRが加わりました。
スナップシューターに人気の高い焦点距離23mm(35mm換算35mm相当)で、様々な日常的シーンを撮影した感触をお伝えします。
前モデルとの比較 ボディバランスと描写
XF23mmF1.4 R LM WRには、大口径プライムシリーズの特徴であるAポジションロック機構を装備。リング動作時のクリック感と操作感が心地よく、取り回しの良さが安定しています。前モデルと比較すると全長は長くなりましたが、小さなX-E4ボディとのバランスは違和感がありません。X-E4ではむしろホールディングが良く感じられます。
前モデルは鏡筒が短く、くびれのあるデザインで、フォーカスリングをカメラ側にスライドさせることによりAF/MFが切替わるクラッチフォーカス機構があり、被写界深度目盛の表示もありましたが新モデルではその機能は省略されています。
花形フードが装備されていますが、新たに発売となった角型レンズフード LH-XF23 II(別売り)の装着も可能。この角型フードにはアルミ削り出しのパーツを採用し、剛性・質感を高めています。XF23mmF1.4 R LM WR / XF33mmF1.4 R LM WRの両レンズに装着可能です。
新・旧それぞれ描写も比較してみました。どちらも強い逆光の下、開放F1.4で撮影したものです。
上2枚の写真では光条の違いが分かります。下2枚の写真では中央部のボケの輪郭、右上のハイライト部に青いネットがしっかりと見えるなど、厳しい撮影条件ではわずかな違いながら光学性能の高さがはっきりと感じ取れ、今後の更なる高性能・高画素に対応するよう光学系が見直され、レンズ性能が向上していることを実感できます。
スナップ撮影のためのXF23mmF1.4 R LM WR
客観的な視野で撮影することのできる標準レンズとして位置づけ、私がかつてこのレンズを「スナップ撮影の基準として持ってもらいたい1本」と推奨してきたのがXF23mmF1.4 Rです。寄り・引き・奥行き・広がり、それらを自らの足で動き、画面に変化を付けられるまさにスナップのためのレンズ。視線を動かす先の視野に入り込む情報を包囲するように切り取ることができます。
XF23mmF1.4 R LM WRでは、変わらない画角と光学性能の向上によって描写力は鋭さを増し、特にパンフォーカスや遠景撮影での解像力の高さは、開放F1.4でどこまで写し込むのかと思うほど。スナップ撮影を楽しむなら外せないレンズとなるはずです。
少し絞り込んだ近接撮影では、材質の質感に加え、奥行きのある背景からも街中の様子がしっかりと伝わってきます。
F8まで絞り込んでみたところ、圧巻の写り。ビル上部まで細部に渡りしっかりと解像し、窓に写り込んだ空のグラデーションまで美しく再現されています。雲のディテールも表情豊か。
ガラス越しの撮影でありながらシャープさを失わず見事に写し込んでいます。車体の質感描写もかなりリアルです。
手ブレ補正なしでも安定の描写
さらに、大口径による光学性能の高さを薄暮時間に実感しました。X-E4のボディ側とレンズ側の光学手ブレ補正、両方とも搭載されていませんが、手すりなどの固定できる場所さえあればISO感度も効果的に作用し安定した撮影が楽しめます。
ADV.フィルターのPOPカラーを使用し、薄暮の空と人工光の美しさを引き出してみました。
美しいボケを堪能できる開放F1.4と最短撮影距離19cm
広角レンズとは思えないボケ表現が楽しめる開放F1.4&最短撮影距離19cmでは、ピントがシビアになりがちな小さな被写体もリニア駆動のインナーフォーカスで迷いなくしっかりとキャッチします。広角レンズとは思えない淡いボケと合焦面のキレの良さを両立し、わずかに芯のあるボケもその場の雰囲気が伝わり好ましい印象です。
XF18mmF1.4 R LM WRでの撮影の際にも感じたことですが、大口径プライムシリーズでは最短撮影距離がかなり短くなっておりマクロ的な撮影が可能で、撮影していると広角レンズであることを忘れてしまうほど近づいてしまいます。
日常にピッタリ。家の中でも外でも大活躍の1本
高画質になったレンズに加え、リニアモーターによって駆動させるインナーフォーカスも、大口径プライムシリーズの標準規格。オートフォーカス性能が向上し、スピードの素早さと正確さでピントの合焦が非常に静かで速く快適です。友人ご家族の撮影の際に大活躍してくれました。
予測できないほど素早く動く子どもの動作や自然な表情をキャッチ。広角レンズらしく、少しあおり気味に入った桜の枝ものびのびとしていて空間にゆとりがあります。
座っていても大人と子どもでは身長差があり画面に収まりにくいものですが、35mmの画角であればチルトモニターやバリアングルを活用し、カメラを意識させずに近くに立って、様子を伺いながら撮影してもしっかりと表情を捉えることができました。
広すぎない広角レンズは部屋の中でも画面が散漫にならず、周囲の様子も取り入れながら撮影が可能。子どもの成長とともに変わりゆくおもちゃも一緒に撮影しておくと本人が大人になったとき思い出深い一枚になるでしょう。
顔前面に位置したおもちゃ越しに瞳をしっかりキャッチしていました。こういう一瞬の動作にも反応してくれるAFに信頼を寄せられます。
アイスを美味しそうにほおばる瞬間、隣に座って撮影していても威圧感なく自然な表情。近くにいてもパースが付きすぎず余裕のある画角は、ちょうどいい感じにまとまります。
家の中でも、外でも汎用性が高く日常に寄り添うような感じが印象的なレンズです。
おわりに
使い慣れた前モデルを購入してから8年が経ち、新たに手にしたXF23mmF1.4 R LM WRはまったく別のレンズに生まれ変わっていました。X-Trans CMOS 4以前のセンサーでは表現しきれなかった領域までしっかりと写し込む解像力の高さと、ストレスフリーなAFスピードの素早さと正確さ。スナップ撮影ってこんなに快適だったっけ?と思わず自分を疑ってしまうほどです。
高解像するだけでなく、最短撮影距離の短さ、ボケの美しさもあり、様々な被写体を前に何でも撮りたくなってしまう欲張りな気持ちになります。日々の撮影のために欠かせない1本となることは間違いなしのレンズです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。