富士フイルム XFレンズコンパクトプライムシリーズ|XF23mmF2 R WR レビュー
はじめに
富士フイルムのミニマムボディX-E4とXマウントコンパクトプライムシリーズ単焦点レンズと歩く第二弾。今回はXF23mmF2 R WRを連れて冬の街角を歩いてみました。シャッターチャンスを逃さず軽快に撮影が捗るスナップシューター必携のXF23mmF2 R WR。記憶に残したい日常を忠実に再現してくれる信頼度の高さ、その魅力をお伝えします。
■第一弾のXF35mmF2 R WR編はこちら
■第三弾のXF16mmF2.8 R WR編はこちら
小型軽量のXF23mmF2 R WRについて
XF23mmF2 R WR(35mm判換算:35mm相当)は2016年10月に発売されたレンズ。非球面レンズ2枚を含む6群10枚の光学設計を採用し、ステッピングモーター駆動による最速0.05秒の高速AFを実現しており、進化したXシリーズボディに相応しく作られ、単に小型軽量なだけではなく、機能も充実した高画質な単焦点レンズに仕上がっています。
インナーフォーカスによる静音かつ高速なAFに加えて、XF23mmF1.4 R LM WR同様に防塵・防滴・-10℃の耐低温構造を採用していることもあり、雨や埃、外気温を気にせず歩けるのでアクティブなシーン、スナップ撮影時に安心して活用できるのも嬉しい点です。
XF23mmF1.4 R LM WRと比較されることが多いと思いますが、AFの静粛さと俊敏さを最優先に考える撮影ならXF23mmF2 R WRが優れています。
XF23mmF1.4 R LM WRは開放絞りが1段分明るい大口径レンズですが、質量300gとなり、X-E4とのボディバランスは前傾になり少々不安定。バランスを考えてレンズ選択することも大切なので、スナップ撮影の場合は単焦点レンズを数本持ち歩くことも考慮したい点です。見た目の小ささは撮影のしやすさにも繋がります。
標準レンズとなる35mmの画角
「標準レンズが1本欲しい。」と思う時に悩むのが、35mm換算で50mmか35mmだと思います。肉眼の視野に近いと言われ、議論されることの多い「標準レンズ」ですが、画角差はもちろん、被写体との距離の取り方によって大きく異なるのが標準レンズです。被写体に近寄って撮ることの多い筆者は32mm~35mm位を標準レンズとしています。
広がりか、奥行きか。引けるのか、寄れるのか。このあたりを基準にして「標準レンズ」を持つのが良いでしょう。個人差があるので一概に言えませんが、画面の隅々まで状況を把握する点から見てもXF23mmF2 R WRはスナップシューターの標準レンズと言えそうです。
今までズームレンズしか使ってこなかったという方は、EXIF情報で一番撮影していることの多い焦点距離を探ってみると自分自身の「標準レンズ」が分かるはずです。
パースを活かした力強い描写を楽しむ
客観的な視野を持つ広角レンズらしく、パースペクティブを活かした撮影を楽しみたい。そんな時こそXF23mmF2 R WRの持ち味が活かされます。
広すぎず、狭すぎない広角レンズは、被写体との立ち位置やカメラを構えた時のちょっとした手首のスナップによるアングルや角度でパースの付き方を変化させながら楽しむことができ、さらにその迫力をX-E4ボディの有効画素数2,610万画素APS-Cサイズのセンサー「X-Trans CMOS 4」と画像処理エンジン「X-Processor 4」によって、しっかりと余すところなく写し込む解像感あふれる描写を堪能することができます。
階段を上りながらふと見上げた視線の先に消火栓の赤が目に留まってサッと撮った一枚。手すりへ写り込んだ青色のグラデーションもキレ良く冴えています。
旅先を想像しながら建造物を見上げて写した一枚は、陰影の深さと建材の細やかなディテールまで細部にわたり描写されていて見事です。カラークロームブルーによる濃い青空の色も美しい。
周囲が高層ビルに変わりゆく中で残された建物を照らす光と影が印象的でした。誇張されすぎないパースは視野に近い臨場感があります。道路を挟んで対角から全景を捉えることができました。
このレンズは細く狭い場所でも威力を発揮してくれます。旅先でもこうした場所に出会いそうだなと思い撮影した一枚。
角度を付けて奥行きを活かした撮影では、東京の狭い路地を強調してくれました。
駐車場ではフロントガラスに写り込んだ小さな空によってこの場所の狭さが伝わります。車一台がすっぽりと収まるように近づいて切り取ってみました。
窮屈になりそうな路地でも、パースの活かし方によってこのレンズ持ち味を楽しむことができ、足取りも軽やかにテンポよく撮影が捗る、そんな撮影スタイルまで考えられたレンズであることを感じます。
最短撮影距離とボケによる表現
最短撮影距離は22cm。パンフォーカスだけではなく、開放F値でボケの表現も楽しみたいならグッと被写体に迫ってみるのが条件。深度の深い広角レンズでは、むしろ近づかないとボケの効果や魅力が半減してしまいます。
その反面、ボケを積極的に取り入れる柔らかい描写の甘い表現よりも、画面の中にアクセントとして取り入れることで柔らかい雰囲気が活きてきます。
X-E4のチルトモニターを活用すれば座ったままでも気軽なテーブルフォトが撮影でき、カメラを構えて大袈裟にならないのでマナーとして気配りができるのも魅力のひとつ。会食や旅先で頂く料理などの撮影時も役立ちます。
ボケがキレイというだけではなく、近寄ることで活かされる奥行きによって周囲の雰囲気や背景・画面奥までを取り込むことができるので、余韻が伝わる表現ができるのもこのレンズの良さです。
日常を切り取る心地よさCandid Photoを味わう
周囲との関係性や人との距離感をリアルに感じられ、ストレートに切り取ることができるまさにCandid Photo(キャンディッド・フォト)のためのレンズ、XF23mmF2 R WR。何か特別なことがなくてもふらりと散歩に出かけて〝いつも〟を切り取る・記録するのに相応しく、「力を抜いた素直な気持ちで撮ろう。」と言われているよう。記憶に残したい日常を忠実に再現してくれる信頼感を抱きます。
懐かしい、面白い、楽しい、美味しい。そんなそんな日常を純粋な気持ちでそっと写真に収める。まさにそんなレンズです。
おわりに
客観的視点に立ち、気負わず被写体との距離を保ちながら自分自身の視界を伝えることのできるXF23mmF2 R WRは、心が動いた瞬間にテンポよくシャッターを押していることが快感であり、「考えるより先にシャッターを切りたい」そんな気持ちに寄り添います。また、俊敏なAFによって同行者のいる旅先でもペースを乱さずに撮影が楽しめると感じました。
一瞬にして撮影した一枚、素直な気持ちで切り取った写真には、後に心に響くものが写し出されている気がします。XF23mmF2 R WRは、旅に、日常に必携の一本であることは間違いありません。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。