富士フイルム XF27mmF2.8 R WR レビュー|日常使いに最適 クリアで質感際立つ描写力の小型・軽量レンズ
はじめに
解像性能とコンパクト設計を両立し、特にスナップシューターの間で人気の高いXF27mmF2.8が発売されたのは2013年。今までXFレンズの中で唯一絞りリングのないレンズでした。「XFレンズなのになぜ絞りリングがないのか」というユーザー、ファンの声がある中、XFレンズの中で初めてリニューアルされ、2代目となる XF27mmF2.8 R WRの登場です。先日発売となったばかりのX-E4にこのレンズを装着し、その魅力を探りながら街中を歩いてみました。製品レビューと合せてご紹介いたします。
XF27mmF2.8 R WR主な仕様
XF27mmF2.8 R WRは、35mm判換算で41mm相当の焦点距離であることから、自然な遠近感で描写できる汎用性の高いレンズとなっています。XFレンズの最新ラインナップのなかで最薄・最軽量となる長さ23mm、質量約84gのコンパクト設計。
●非球面レンズ1枚を含む5群7枚のレンズ構成
● レンズ前群5枚を繰り出すフォーカス方式の採用により撮影距離による収差変動を抑制し、画質面のほかAFでも高速・高精度な動作を実現
● AF駆動はパワフルなDCモーターによる高速・高精度AF
ここまでは前モデルと同様になっており、光学系にも変更はありません。新たに追加されたのは指標付き絞りリングと防塵・防滴・-10℃の耐低温構造となります。
日常的に持ち歩くためのレンズ
XFレンズシリーズの中で最も薄いパンケーキ型レンズであるXF27mmF2.8 R WRは、X-E4に取り付けると、まるでコンパクトカメラのような外観です。
このサイズ感は街中でのスナップやポートレート撮影でも威圧感を与えることなく自然な表情を捉えることができます。X-E4となら単焦点レンズで歩くカメラと言い切れるほど、相応しい組み合わせ。
“写真を撮る者、いつもカメラを持っていること” を大切にしている筆者にとって、日常的に持ち歩ける嬉しいサイズ感は、通勤バッグなどにも忍ばせておけます。
A(オート)ポジションロック&指標付き絞りリング
注目すべきは、23mmという薄さを変えずに絞りリングを加えたこと。A(オート)ポジションロックを採用し、撮影時に絞りリングが不用意にAポジションから動かないようロックすることができます。指標付き絞りリングは、絞り値を確認し素早く変更できるため、瞬時に撮影設定を調整することが求められるスナップ撮影などで威力を発揮します。
絞りステップ段数は1/3ステップ。クリック感も程よく軽快。ロック解除ボタンを押しながらAポジションから最少絞りF16方向に回すことでロックが解除されます。逆に絞りリングをF16からAポジションに回すとロックされます。
レンズの大きさとボディバランスの比較
手持ちのXF35mm F2 R WR(左)とXF27mmF2.8 R WR(右)を比較してみました。コンパクトだと思っていたXF35mm F2 R WRが大きく見えてしまうほどXF27mmF2.8 R WRは薄くて小さいことに驚きます。
筆者が所有しているX-T3にXF27mmF2.8 R WRを取り付け、X-E4にXF35mm F2 R WRをつけるとX-T3が想像以上に小さく感じ、X-E4はその逆に。
この写真を見れば、X-E4とXF27mmF2.8 R WRがいかにバランスの良い組み合わせであるか、また、XF27mmF2.8 R WRがいかにコンパクトかがわかるはず。
XF27mmF2.8 R WRであれば、従来機種でも気軽にスナップ撮影ができそうな雰囲気さえ感じます。レンズを装着したままカバンの中にしまえるサイズ感は、レンズ数本の持ち運びを考えたときに重要なポイントになります。前モデルの時からボディキャップ代わりに付けているというユーザーも少なくないとか。
質感の良いレンズフードとレンズフードキャップ
XF27mmF2.8 R WRの発売に合わせて、39mmのフィルター径に対応したレンズフードLH-XF27とレンズフードキャップLHCP-27も同梱されています。別売も用意されており前モデルのXF27mmF2.8にも取り付けることが可能で、装着すると見た目のカッコよさが格段にアップするので、これはかなりおススメです。
フジツボ型のレンズフードはアルミ製で、塗装も美しく質感の良さが際立ちます。持ち運びにも邪魔にならない厚みと、フードキャップはソフトプラスチック製ながらもフードにしっかりとフィットし、外れにくい設計に。少し昭和っぽいレトロな雰囲気を感じさせるデザインにユニークさも感じます。
様々なシーンで高画質な写真撮影を楽しめる1本
焦点距離27mm(35mm判換算で41mm)という標準とも広角とも言い難い、人の視野に近い画角は、見たままのシーンを素直に捉える事ができます。
真っ直ぐ向き合うのが心地よい風景。枯れすすきの解像感も薄っすらした雲も、しっかりと写し込めました。風が吹いて砂埃が舞うような場所や急に小雨が降っても防塵防滴だから安心です。
AFも高速で、高精度な動作を感じます。サクッと切り取っていく感覚が気持ちよく、出会った瞬間を撮り逃したくないスナップ撮影に最適。遠景のビルまでしっかりと写し込めており、シャドー部のつぶれもなく、ボディ側の機能であるトーンカーブ補正の効果もよく効いています。
X-E4に手ぶれ補正は装備されていませんが、片手だけで撮影しても問題ないくらい軽快なシャッターと、被写体に素直に向き合える焦点距離。そんな感覚とフットワークの軽さが心地よく、街歩きにはピッタリ。
画面奥までしっかりと写し込め、このレンズをつけた日はスナップ撮影に集中する。そんな風に決めてもよいのではないでしょうか。クラシックネガの雰囲気との相性の良さはこのレンズならでは。「レンズが変われば撮るモノが変わる。」そんなことを体感できるはずです。
ここでは、あまり絞り込まず水面にピントを合わせていますが、水面の写り込みと実像両方に解像力の高さを感じられました。
35mmほど遠近感やゆがみがつき過ぎず建物なども撮影しやすい画角。狭い路地では一歩引いて。時には寄って。自分自身が動くことで様々な切り取り方ができる絶妙な焦点距離は、旅先での撮影なら1本のレンズで撮ることで写真に統一感を出すことができます。
最短撮影距離での撮影
深度が深いため最短撮影距離(撮像素子から34cm)で撮影しても、ボケはほどほどになりますが、その分周囲の雰囲気を取り込んで撮影するのが適切と言えます。ぼかしたいときは背景との距離を取ることが必須。
テーブルフォトも撮影してみました。こんなシーンでは大げさにならないサイズ感のカメラが相応しいもの。お皿の位置は食べる時よりも少し奥へ置いた方が撮りやすい距離となるので、テーブルを囲む楽しい雰囲気を一緒に切り取るのにピッタリ。
前モデルで高い評価を得ている解像性能をそのまま引継ぎ、被写体の細部までとらえることが可能で、さらには「X-Processor 4」による描写性能と、「X-Trans CMOS 4」のフォーカス性能によって画質が格段に向上していることを実感。クリアで質感も際立つ描写と小型・軽量さを持ち合わせ、様々なシーンに対応し、見たままを素直に捉える事ができます。
おわりに
筆者にとって使用頻度の少ないレンズでしたが、改めてその解像感の良さ、描写性能の高さに魅了されました。寄っても引いてもいろいろな撮り方ができるレンズであり、幅広いシーンに対応し、そして何より「小さくて軽い」は正義。と言えるほどスマートな感覚で気負わず撮影できる楽しさを感じます。また、これぞスナップ撮影のための定番レンズ。気が向いて「少し外を歩きたいな。」なんて思ったら迷わず一緒に連れていく相棒のような一本です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。