富士フイルム「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」と一緒に、金沢を歩く。
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はじめに
「一本勝負」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
辞書を引くと、柔道や剣道に由来し一回で勝負が決まることをいう。やり直しがきかない、替えの効かない勝負、それを「一本勝負」という。
写真の世界で「一本勝負」というと、例えばレンズを1本だけ持って撮影に出かけるときに使ったりする。どんなシーンに出くわすかはわからないけれど、そのレンズだけで撮り切らなければならないという、チャレンジングな撮影だ。スキルアップしたい・いつもと違う撮影がしたいときにおススメの手法で、ズームよりは単焦点レンズを選ぶと学びが多い。
2023年12月。私は石川県金沢市に5日ほど滞在した。金沢とのご縁は2023年春から始まって、まだ1年にも満たないのに、すっかり身近な場所となった。そんな金沢でやってみようと思った。そう「一本勝負」を。
相棒に選んだのは、XF30mmF2.8 R LM WR Macro
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金沢一本勝負の相棒には富士フイルムのXF30mmF2.8 R LM WR Macroを選んだ。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、2022年11月25日に発売したレンズ。長さ69.5mm、重さ195gと小さくて軽いのが嬉しい。35mm判換算で46mm相当と、目で見るような感覚で撮影できる焦点距離。しかも等倍マクロ。さらに開放F2.8。まちスナップから小さきものまで、これ一本でいろいろな撮影が楽しめる、まさに一本勝負に適したレンズ。
よし、XF30mmF2.8 R LM WR Macroと金沢まちスナップに出かけよう。
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■撮影環境:1/1600秒 f/2.8 ISO500
金沢駅前のホテルからブラブラと歩く。
まち歩きは、朝早い時間から歩くのがおススメ。
朝の「これから始まる」という雰囲気を感じることができるし、そこに住む人々の生活が垣間見えるのも好きなので、なるべく早起きをして歩く。
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■撮影環境:1/640秒 f/2.8 ISO500
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■撮影環境:1/3200秒 f/5.6 ISO500
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■撮影環境:1/1600秒 f/2.8 ISO500
椿にぐぐっと寄ったり、
屋根から見える白いラインは何だろう、青空に映えるなぁと観察したり、
道の奥に尾山神社を見つけて嬉しくなったり。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは最短撮影距離が10cmと短いから、撮りたいものを撮りたい距離で写真にすることができる。インナーフォーカスと精度の高いリニアモーターを搭載し、高速でかつ静穏なAFのおかげで、撮影が楽しい。
嬉しい偶然の出会い
そんな風にXF30mmF2.8 R LM WR Macroと歩いていたら、ふと素敵なお店を見つけた。
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■撮影環境:1/1250秒 f/3.2 ISO500
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■撮影環境:1/1000秒 f/2.8 ISO500
この蔦の感じ良いなぁ。ぐぐっと見上げて撮影してみる。
中からはパンの良い香りがする。そういえば、前に「素敵なモーニングのお店があるんです」と教えてもらったことがあったなぁと思いだす。
これも何かの縁。入ってみよう。
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■撮影環境:1/40秒 f/3.6 ISO1000
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■撮影環境:1/100秒 f/2.8 ISO1000
「おはようございます」「いらっしゃいませ。あっ、カメラ!僕も撮るんです」と店員さん。「撮影してもよいですか?」「どうぞどうぞ、たくさん撮って!」
そのフレンドリーさにほっこりしながら席に座る。
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■撮影環境:1/80秒 f/2.8 ISO1600
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■撮影環境:1/200秒 f/2.8 ISO1600
パチリ。
席に座って、同じ場所から向きを変えて2つのシーンを撮った。1枚目は丁寧に置かれたテーブルセッティングと灯りの映り込み。2枚目はお客さんを待つテーブルとその奥にある鏡。30mmは「広すぎず、狭すぎない」ちょうどよい焦点距離。その場の雰囲気をまるごと捉えてくれる。開放F2.8なのでボケ感のコントロールもしやすい。
よし、モーニングセットの中から、アボカドが美味しそうなメニューを選んだ。本日のスープもつけちゃおう。
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■撮影環境:1/125秒 f/2.8 ISO1600
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■撮影環境:1/125秒 f/2.8 ISO1000
しばらくして、スープとオープンサンドがやってきた。
すかさずXF30mmF2.8 R LM WR Macroで撮ってみる。自分の目の前に置かれた食事を見たままの距離感で撮影できるのが良い。食べ物の撮影ではXF30mmF2.8 R LM WR Macroの最短撮影距離10cmという特徴が活躍する。遠慮は無用。ググっと寄って撮ってみよう。こんな風に。
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■撮影環境:1/125秒 f/3.2 ISO1000
最短撮影距離でピンクペッパーにググっと迫る。最短撮影距離だとレンズ先端から被写体の距離は1.2cmとかなり近づいて接写ができる。真ん中のピンクペッパーはしっかりとピントが合ってほしかったのでF3.2にした。柔らかなボケ感も味わい深い。
カフェや旅先での食事は、食事はもちろん、お店や周りの雰囲気も一緒に写しこみたい。でも、美味しそうな部分に寄って撮ったりもしたい。そんな欲張りな想いにXF30mmF2.8 R LM WR Macroはしっかり応えてくれた。
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■撮影環境:1/100秒 f/2.8 ISO1000
紅茶を飲み終わって、ふとソーサーに目をやると、小さなサプライズ。薄緑色の小さな紙に切り抜かれた四葉のクローバー。「素敵な一日を」というお店の素敵な心遣い。ああ、好きだなぁと思ってアップで撮った。
俯瞰撮影は、場合によっては立ち上がって撮影する必要があり、お店ではできないことも。でも、XF30mmF2.8 R LM WR Macroならお手のもの。最短撮影距離が短いから、すこし手を伸ばせば俯瞰撮影もできる。とにかく最短撮影距離が短いということは、それだけいろいろな撮影ができるということなのだ。
ちなみに、パンくずはあえて取り除かなかった。そのほうが、この時の臨場感が伝わる気がして。
お気に入りの道へ
金沢に初めて来たときにまち歩きをしたのが尾山神社周辺。メインから一本外れたところにあるこの道が好きで、来るたびに歩いている。
佇まいの良い理容室とサインポール。今日は近くに黄色の車が止まっていた。
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■撮影環境:1/1000秒 f/2.8 ISO500
尾山神社を挟んで反対側も雰囲気のある場所。
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■撮影環境:1/640秒 f/2.8 ISO500
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、木漏れ日など繊細な光も丁寧に描写する。
どちらの写真もその繊細さがあるからこそ成り立つ。
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■撮影環境:1/2500秒 f/2.8 ISO500
背景の要素も多く一見雑多になりがちなシーンだが、F2.8ならではの主役の引き立て感、描写の良さが際立つ。
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■撮影環境:1/160秒 f/5.6 ISO500
階段の途中にあった小さな実にぐっと寄ってみる。奥の光のキラキラ感がドラマチック。
あかり坂を目指し、主計町茶屋街へ。
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■撮影環境:1/2000秒 f/2.8 ISO500
尾山神社周辺から歩いて25分ほどの主計町(かずえまち)茶屋街を目指してみる。その途中にあるのが、「あかり坂」。「あかり坂」は2008年に主計町にゆかりのある作家の五木寛之氏が名付けたそう。すぐ近くには「暗がり坂」もある。
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■撮影環境:1/160秒 f/8 ISO500
なかなかの急な坂道(階段)なので、下新町側から入り下るほうがおススメ。
急な階段とその奥の道まで入れることで、迫力ある写真になった。
階段を降りきったところで、印象的な光を見つけた。
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■撮影環境:1/1250秒 f/2.8 ISO500
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■撮影環境:1/100秒 f/5.6 ISO800
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■撮影環境:1/640秒 f/3.2 ISO500
ぐっとしゃがんでローアングルに。あかり坂までの道を感じさせる余韻のある1枚になった。近寄ったり、引きで撮ったり。XF30mmF2.8 R LM WR Macroならではのまちスナップが楽しめる。
ちなみに、望遠レンズが必要なシーンも諦めないで、発想を変えてみよう。
途中で、川の向こうに白くて大きな鳥がいるのを発見した。望遠レンズがあればアップで捉えることができるが、XF30mmF2.8 R LM WR Macroではアップで捉えることは難しい。しかし、例えば、レンズ特性と構図の工夫で写真にすることはできる。
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■撮影環境:1/2500秒 f/2.8 ISO500
F2.8で枝を前ボケにし画面の大部分を覆うようにする。さらにトンネル構図にし、白い鳥が画面のなかで小さくてもしっかり目がいくようにした。こうすることで、35mm判換算46mmの表現として成り立たせることができる。
今持っているレンズで、出会った被写体をどう撮るか。希望の焦点距離ではないレンズだとしても、発想しだいで写真にすることはできる。
おわりに
今回は、XF30mmF2.8 R LM WR MacroとX-T5の組み合わせで撮影した。
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どちらも防塵防滴なので、シーンを選ばず撮影ができるのが嬉しい。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroは、実に汎用性の高いレンズ。マクロ撮影はもちろん、35mm判換算46mmという焦点距離を活かすことで、まちスナップもしっかり楽しめる。
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■撮影環境:1/640秒 f/2.8 ISO500
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■撮影環境:1/1250秒 f/5.6 ISO500
ぐっと近づいたり、遠くを眺めてみたり。
この2枚が1本で撮れるのだから、その器用さに驚く。手元にあるとついつい使いたくなるレンズ、それがXF30mmF2.8 R LM WR Macroだなぁと思う。
さて、次はどんなカメラやレンズと旅に出よう。
きっとたくさんの出会いが待っている。
みなさんも、カメラやレンズと良い旅を。
■撮影協力
金沢・せせらぎ通り 『ひらみぱん』
https://hiramipan.co.jp/
■写真家:渡邉真弓
札幌在住。日常をモチーフに「時の有限性」「薄れゆく記憶」について考察する作品を制作。「写真と一緒にくらしを楽しむ」をキーワードに、写真教室、写真にまつわる執筆・企画提案、撮影など幅広く活動している。北海道カメラ女子の会代表、フォトフェスCuiCui 事務局代表、京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。富士フイルム公認X-photographer。地方自治体と地域振興プロジェクトも展開中。