富士フイルム XFレンズコンパクトプライムシリーズ|XF35mmF2 R WR レビュー
はじめに
富士フイルムXマウントレンズの大口径プライムシリーズにXF33mmF1.4 R LM WRが加わり、標準単焦点レンズのラインナップはXF35mmF1.4 R、XF35mmF2 R WRと合わせて計3本になりました。
その中でも使い勝手のよいコンパクトプライムシリーズであるXF35mmF2 R WRは、筆者にとって発売当初より使ってきた使用頻度の高い愛着あるレンズです。都度XF35mmF1.4 Rと比較されることの多いXF35mmF2 R WRですが、その魅力は小さいだけでなく、確かな写り。今回はミニマルボディのX-E4と一緒にXF35mmF2 R WRを連れて街をスナップしながら歩いてみました。
■第二弾のXF23mmF2 R WR編はこちら
■第三弾のXF16mmF2.8 R WR編はこちら
取り回しやすいコンパクトサイズXF35mmF2 R WRの魅力
質量わずか170gの軽量コンパクトなXF35mmF2 R WRは、35mm判換算で53mmの画角に相当します。F1.4よりも絞り一段分暗いと言われますが、購入しやすい価格帯やサイズは大いに魅力的。開放F値2.0という明るさは大口径ではない分、性能面にも余裕があり光学設計を無理せず小型軽量化されています。6群9枚のレンズ構成を採用しており、そのうち非球面レンズは2枚で構成されています。
レンズ最大径60mm、全長45.9mmというコンパクトスリムなデザインは、撮影される被写体にとってもレンズの存在を意識させることがないという点で大きなメリットです。
鏡筒全面に金属を使用した上質な造りで、マニュアル操作を意識したピントリングと絞りリングのしっとりと重さを感じるトルクはマニュアルレンズのような上質で心地良い手応えと、操作感も抜群。
また、レンズの色が選べるという点もコンパクトプライムシリーズの良さで、筆者はシルバーレンズ×ブラックボディの組み合わせが好きなので迷わずシルバーを購入しました。今はX-E4との組合せでベストなサイズ感にも大満足しています。さらに、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造というXF35mmF1.4 Rにはなかった機能も盛り込まれおり、雨や埃、外気温を気にせず歩けるのでアクティブなシーン、スナップ撮影には最適です。
キビキビとしたストレスのないAF
AFスピードはインナーフォーカス採用により最速0.08秒という超高速を実現。何よりもステッピングモーターで駆動させるAFの速度が素晴らしく速いのが特長。私自身、スナップ撮影においてはタイミングを逃さずテンポよく撮影していきたいので、オートフォーカスの速さは重要視しています。
室内や光量が少なくなる夕刻、強い光を浴びたコントラストの高い被写体などでも、インナーフォーカスによってストレスのない合焦をしてくれるので、軽快に撮影ができる心地良さを感じています。撮影が捗るフォーカスの速さだけを見てもかなり優秀なレンズです。
しっかりと写し込む力強い描写
絞り開放から解像力があり、少し絞り込むだけで輪郭線が力強く描写されます。コントラストが高い描写で、明瞭感のある被写体をよりくっきりと見せる事が得意なレンズで、全体的に深みを感じられる発色は、レンズの発売当初ボディに搭載されていなかった有効画素数2,610万画素APS-Cサイズのセンサー「X-Trans CMOS 4」や画像処理エンジン「X-Processor 4」、新たなフィルムシミュレーション「クラシックネガ」「ETERNAブリーチバイパス」などが加わってより印象深い画作りとなり、レンズの解像力が益々引き出されたように感じます。
散歩をしながら撮影していると、日々の中でも突然思いがけないシーンに出会いシャッターを切ることも多いのですが、明暗のコントラストがあっても細部までしっかりと描写してくれる安心感があります。
夕陽が差し込むマンションはアドバンストフィルター「Pop」で陽射しの鮮やかさを引き出してみました。画面奥に行くほど細くなる電線もしっかり映し込んでいます。
開放F2のボケと最短撮影距離35cm
輪郭が溶けていくようにボケるXF35mmF1.4 Rに対し、XF35mmF2 R WRは輪郭を残しながらその場の雰囲気を感じさせてくれるボケです。もちろん、被写体との距離や、合焦面と背景の距離の関係によってボケ方も異なりますが、筆者はこのXF35mmF2 R WRの臨場感ある雰囲気が好み。X-E4でフィルムシミュレーション「クラシックネガ」を使うようになり、ピント合焦面のキレの良さとボケのバランスによって一層ネガフィルムらしい深みのある優しさが感じられるようになりました。
最短撮影距離は35cm。主にテーブルフォトで活躍しますが、近寄って撮影する被写体の大きさを考えれば十分すぎるほど。立体感を感じる質感描写には高い満足度が得られます。
雑草の中に咲く野花は背景から分離して浮き上がるように。小さなつぼみはかわいいボケとなってアクセントになりました。こうして画面全体にニュアンスが感じられるところも気に入っている理由の一つです。
散歩しながらご近所フォトでウォーミングアップ
在宅時間も増え、なかなか思い切って撮影に出かけられない時は日々の中で撮影を楽しんでいます。小さなバッグにも入り、持ち運びの負担にならないX-E4とXF35mmF2 R WRのサイズ・重量はベストバランス。
また、被写体の魅力を引き出す「寄り・引き・アングル・距離」の変化といった標準レンズの画角で身に付けたい基本的なレンズワークや、レンズの特長・風合いを感じるには〝ご近所フォト〟が最適です。動物たちとの出会いを楽しみながらお互いの距離感をつかんだり、アングルを変えてみたり、目に留まったものを切り取ってみるなど、旅写真と同じ感覚が養えるのでフラッと散歩に出掛けてウォーミングアップ。
素敵な店先に出会ったら、迷わずお店の方に声を掛けて撮影させていただくなど、コミュニケーションが必要なシーンでも威圧感のないコンパクトプライムシリーズならではの良さを感じられます。
カメラやレンズの操作慣れはもちろんですが、小さな発見も、出会ったときの会話も、日頃から心掛けておかないと忘れがちです。気持ちの良い撮影を行うためにも今から少しずつ積み重ねておきたいですね。
おわりに
私にとっては理屈抜きで純粋に撮影が楽しいレンズがXF35mmF2 R WRです。このレンズを購入してからというもの、代々所有してきたXシリーズのボディにはほぼXF35mmF2 R WRを付けて歩いています。
標準レンズの王道ともいえる仕様とクイックレスポンスのAFに加えて、サイズのコンパクトさは旅行時にも心強い味方。描写力の高さから見ても決して普及型レンズと言われるものではなく、むしろ優れているといえるでしょう。フィルムシミュレーションとの組み合わせによって益々魅力的な画作りが可能になったXF35mmF2 R WRは、被写体を限定せずどんなシーンでも活躍してくれるので、Xユーザーならぜひ手元に置いてもらいたい一本です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。