MOZA mini-P レビュー|いつでもどこにでも持ち歩けるコンパクトなジンバル
はじめに
今回レビューする「MOZA mini-P」は、映像制作業界において革新的な製品を開発・販売しているGudsen社の主力商品「MOZA」ブランドのジンバルで、ラインナップ上ではかなり小型軽量の部類です。
レンズ交換式カメラを乗せるには、ジンバル本体の大きさもそこそこ必要ですし、3軸の形状上、どのように折り畳んでもカメラバッグ内のスペースを取りがち。筆者も乗せるカメラの大小に関わらず、大きいなと感じる(ジンバルとしては普通サイズ)ジンバルを持ち運んで使用していたのですが、株式会社ケンコー・トキナーが、このGudsen社の「MOZA」シリーズを取り扱い始めたと聞き、手に入れやすくなったことも手伝ってぐっと興味を惹かれた結果、今では一番活躍しているジンバルとなりました。
今回は、「MOZA mini-P」の基本的な使用方法と、本製品を使用して撮影したポートレート・ショートムービーをご覧いただきながら、お勧めポイントも交えてレビューしてまいります。
「MOZA mini-P」を使用して撮影したポートレート・ショートムービー
本製品のペイロード(耐荷重)は最大900gです。この動画を撮影した機材は「Nikon Z fc(約445g)」と「NIKKOR Z 28mm f/2.8(約160g)」のセットで、レンズフードの重量も少しプラスされますが、ペイロード範囲内の積載可能機材となります。
筆者はミラーレスカメラでの動画撮影がメインですが、本製品にはアクションカメラやコンパクトカメラを乗せることも、もちろん可能です。スマホ用のフォルダーも付属しており、L字ブランケットを付け替えれば、横位置だけではなく縦位置の撮影も可能。さらに、同じく付属のミニ三脚を使用すれば、縦位置で配信したいライブチャットやインスタライブにも利用できます。
連続動作時間は20時間、可動範囲はパン360°、ロール330°、ティルト330°です。充電はUSB-TypeCで行います。ジンバル自体の重さは694gで、なんと言っても折り畳みサイズが198×166×102mmと、ランチバッグに収まってしまうほど小さいことが、筆者の一番のお勧めポイントであります。
デジタルカメラ業界もどんどん進化して、カメラボディもレンズも小型・軽量化されてきています。乗せられるのであれば、ジンバル自体も小さなものを持ち歩きたいですよね。
今回のポートレート・ショートムービーは、本製品でよく使用するコントロール機能を使って撮影しています。モデルはゆっくりとした動作が主なので、カメラ側はいつもよりも素早く動かして、映像にメリハリを付けました。小型のジンバルと小型のカメラシステムだからこそ、このようにフットワークの軽い撮影がしやすいとも言えます。
オートチューニングとモーターバランスチェック
どんなジンバルでも必要なバランス調整は、ミニ三脚を使用して通常のジンバルと同じように丁寧に行います。折り畳んであるジンバルの展開方法は、本体に貼ってあるステッカーを見て確認できます。ロール軸、ティルト軸、ヨー軸のバランス調整を行ったら、ジンバルの電源を入れて、スマホアプリ「MOZA Master」でオートチューニングを行いましょう。
アプリでスマホとジンバルを連携したら、メニューの「ジンバル設定」から「モーター設定」、「オートチューニング」を選択します。ジンバルがブルブルと震えて、カメラが正面、上、正面の順に動いたらチューニング終了です。
続いて、各モーターのパワーバランスを測りましょう。メニューの「バランスチェック」を選択し、「チェックの開始」をタッチすると、ジンバルがブルブルと震えてカメラが上を向きます。これで、クイックリリースプレートと、チルト軸、ロール軸のバランスをチェックできます。バランスが取れていれば、アプリに正常なバランス状態であると表示されます。
小型のジンバルほど、しっかりとバランス調整を行ったほうが、後の撮影がスムーズになりますので、このオートチューニングとバランスチェックを、スマホアプリから気軽にできるのは大変便利でした。また、アプリとジンバル本体との連携も素早くスムーズで、アプリの作動スピードにストレスを感じることはありませんでした。
通常モードと上下モード
本製品で使用できるコントール機能は数種類ありますが、筆者が多用しているのはヨー軸(水平)が制御される通常モードです。ハンドルを左右に振る、いわゆるパンの動きをすると、カメラがゆっくり左右に動きます。
人物を被写体とするポートレート・ショートムービーでは、顔や体が歪んだり不自然に見えたりしないように、撮影箇所に対してカメラを水平に維持したいことが多く、どの作品でも必ずと言っていいほど使用するモードです。
上下モードは、ジンバル前面にあるトリガーを長押しすると機能します。チルト軸とヨー軸が制御されるので、ハンドルを上下に振るとカメラも上下にゆっくり動きます。水平を維持したまま、上下左右斜めにカメラアングルを変えられる自由度の高いモードです。
カメラで被写体を見つめる第三者の視線として、見たい箇所に視線を動かしていくシーンを再現するのに最適なモードです。ゆっくりと目線が動き、顔もそれに付随して上下、斜めに動くイメージで撮影すると面白い映像になります。
オールロックモードとジョイスティック操作
トリガーを一度押してから長押しすると「オールロックモード」になります。カメラの向きを固定するので、まっすぐ歩きながら撮影したり、カメラを横にスライドしながら撮影したりすると、ドローンで撮影したような動画になります。
筆者は、このモードで床に近いところから前に進みながら被写体に近付いたり、通り越したりするカットが好きで、作品を見返してみるとあちこちで使用していることに、今更ながら気が付きました。
本体のジョイスティックを操作すると、上下左右にカメラアングルを変えられます。水平ではなく俯瞰などの位置から撮影したいときに、ジョイスティックでカメラの向きを変えたり、ミニ三脚を付けて固定した状態で撮影したりする場合など、手動でカメラの向きを調節するよりも細かい調節ができて動きもスムーズですので、こちらも多用しました。
リセンターと自撮りモード
「リセンター」は、トリガーを素早く2回押すと、カメラが正面をまっすぐに向くモードです。カメラが変な方向を向いたまま撮影をスタートしてしまうと、後で修正が効かなくなったりするので、カットごとにこまめにリセンターを行って撮影しています。同じようにトリガーを素早く3回押すと、カメラが操作者の方を向く「自撮りモード」になります。
回転モードとFPVモード
回転モードは、丸ボタンの下を3回押すことで作動します。まずカメラが上を向くので、ジョイスティックを左右どちらかに倒すとその方向に回転します。ハンドルを垂直にしたまま回転モードを使用すると、空が回るような映像が撮れますし、ハンドルを水平や斜めにして回転モードを使用すると、さらに面白い映像を撮れます。
丸ボタンの左を2回押すと「FPVモード」になります。このモードはハンドルを上下、左右、斜めに動かした場合、カメラも人間の頭のように機敏に動くモードです。水平から斜めへの切り替えがスムーズに行えるので、スピード感のあるダイナミックなカットが撮れます。
おわりに
カメラやレンズはもちろん、ジンバルも持ち運びに難があるサイズや重量だと、購入しても持ち歩かなくなってしまう可能性があります。よく使用する機材がペイロード内でしたら、本製品は動画撮影の初心者の方から本格的に撮影されている方まで、幅広くお勧めできるジンバルです!
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。