【オールドレンズ】標準画角のソフトフォーカスレンズ「ケンコー MC SOFT 45mm F4.5」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ケンコーのソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 45mm F4.5」です。この「MC SOFT 45mm F4.5」は、以前に紹介した1987年にケンコーから発売されたレンズ「MC SOFT 85mm F2.5」の標準レンズの画角バージョンとして1995年に発売されたレンズです。
ソフトフォーカスレンズは、もともとポートレートなどの人物撮影などに使われることが多かった為、この焦点距離45mmのソフトフォーカスレンズは、当時としては少し風変りなレンズだったかも知れません。
そのせいもあったのか分かりませんが、レンズのオートフォーカス化も進んだ時代なので、2001年には生産中止になっています。標準レンズ画角のソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 45mm F4.5」の特徴とその写りを紹介いたします。
ケンコー MC SOFT 45mm F4.5の魅力
ケンコーソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 45mm F4.5」の魅力は、やはり標準レンズ画角の45mmのソフトフォーカスといったところでしょうか。ソフトフォーカスのレンズの多くがポートレートで使う事を前提としている事が多いため、中望遠(70mm~100mm)程度の画角のものがほとんどで標準や広角のソフトフォーカスレンズは少ないのです。
広角系のソフトフォーカスレンズは、このケンコー「MC SOFT 45mm F4.5」が発売された後に、「MC SOFT 35mm F4」や「smc PENTAX FA 28mm F2.8 SOFT」などが発売になっています。
「MC SOFT 45mm F4.5」のマウントは「Pマウント」方式で、交換式で各メーカーのものに対応していました。この「Pマウント」は「Tマウント」のネジピッチが1mmとなったもので、口径やネジピッチが「M42マウント」と共通なのですが、フランジバックが「M42マウント」より長くなっています。
「Tマウント」同様に主に天体望遠鏡や軟焦点レンズなどの汎用マウントとして使われています。現在では、ケンコーから発売されている「ピンホールレンズ02」のアダプターとしてキヤノンEOS用、ニコン用が「Pマウント」アダプターとして販売されています。
ケンコー「MC SOFT 45mm F4.5」の基本的なスペックは、
・焦点距離:45mm
・最短撮影距離:0.35m
・絞り開放:F4.5
・レンズ構成:1群2枚+保護ガラス
・絞り羽根枚数:10枚
・フィルター径:52mm
・マウント:Pマウント交換方式(各マウントあり)
・発売:1995年
・発売当時の価格:定価 31,000円
「MC SOFT 45mm F4.5」の本体は、金属の鏡筒でしっかりとした高級感のある造りをしており、横からレンズをみているとパッと見た目では普通の標準レンズにしか見えません。
レンズ正面から見ると、このレンズの特徴をみることができます。正面から見て見えるレンズは、絞り羽根を保護する為の保護ガラスの仕様になっており、前面からみると保護ガラス→絞り羽根→1群2枚のレンズという風になっています。
この構成は以前紹介した「キヨハラ ソフト VK70R 70mm F5」と同じベス単の構成になります。「キヨハラ ソフト VK70R 70mm F5」は絞り羽根が最前面に露出していたので少々扱いづらい仕様になっていましたが、このケンコーの「MC SOFT 45mm F4.5」は最前面に保護ガラスを組み込んだ安心して使用できるベス単タイプのソフトフォーカスレンズになっています。
絞りは開放のF4.5~最小絞りF22まであり、絞りリングはシームレスに動いてソフト量を微妙に調整する事ができるようになっています。
「MC SOFT 45mm F4.5」は絞りの設定でソフト量をコントロールするレンズです。絞りF4.5開放で最大のソフトフォーカス効果を得る事ができます。そして絞りを絞って行くことでソフトフォーカス効果は減少していきます。下の写真は同じ場所で、絞りをF4.5とF5.6、F22で撮影したものになります。
F22に絞るとソフトフォーカス効果はほぼ無くなり、普通の写りをするレンズになります。開放での撮影は標準領域でありながらもソフトフォーカスの滲みがかなり大きい状態です。程よいソフトイメージを好みのであれば、F5.6~F8程度の絞り設定が良いかもしれません。
今回はソニー α7R IIIに、焦点工房の「K&F Concept KF-NFE2 マウントアダプター」(ニコンFマウント → ソニーEマウント変換)を使用して撮影をしました。このマウントアダプターは実売価格で3,000円程度の価格で入手できる商品です。
オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、基本的にはこちらの記事をご参照してみてください。特にソフトフォーカスレンズのピント合わせは、少し難しくコツもいるので、必ず拡大しながらピント調整をして撮影をしましょう。
ケンコー MC SOFT 45mm F4.5で花の撮影
ケンコー「MC SOFT45mm F4.5」でローズガーデンと紫陽花の撮影スポットで撮影をしてみました。45mmという標準画角のレンズですが、最短撮影距離が0.35mと寄れるレンズなのでお花などを少しアップ目に撮影するにも十分に対応できるレンズです。
逆光の木漏れ日を背景に入れる事で、ベス単の特徴である絞りを開いて撮影する時に発生する大きな球面収差で幻想的なソフトフォーカス効果を描写します。
ソフトフォーカス効果をより効果的に表現するには、被写体と背景に輝度差があるようなシーンや背景になる部分に明るいモノが入るようにしたり、強い光が入る構図を狙ってみたりするのがおすすめです。
焦点距離が45mmのソフトフォーカスレンズで開放F値4.5なので、85mmなどのソフトフォーカスレンズほど大きなボケや滲みが期待できませんが、45mmの画角で最短撮影距離も短いため、非常に使い勝手も良くレンズです。また、ピント合わせも中望遠のソフトフォーカスレンズより合わせやすい感じです。
曇りの日に撮影すれば、全体的にニュートラルでフラットなイメージに。晴れの日に撮影すればメリハリのある滲み、ソフトフォーカス効果が楽しむことができ、いろいろな表現が楽しめるレンズです。
ケンコー MC SOFT 45mm F4.5でスナップ撮影
今度は「MC SOFT45mm F4.5」で街中スナップ撮影を楽しんでみました。ぶらぶら気になったものを切り撮って歩くお散歩撮影ですが、ソフトフォーカスレンズは日常の見慣れた風景をアレンジしてくれるのでとても新鮮な気持ちになります。
木漏れ日を見つけると、「ベス単」の特徴の大きな球面収差の描写を撮影したくなってしまいます。
日の当たらない場所での撮影では、被写体の明るいものを選ぶことによってソフトフォーカスの滲みを程よい感じで表現する事ができます。
強い逆光がレンズに入ってくれると虹色のゴーストが発生します。正直あまり綺麗なゴーストではありませんので、できればゴーストが出ないように撮影したいところですね。
少し沈んだ風景や建物などを、そのままの表現をするものいいのですが、ソフトフォーカスレンズを使いやや明るく撮ることで、肉眼でみた少し暗い感じのする風景を、柔らかくファンタジー風の世界に映し出す事ができます。
ただ、建物などを撮影する場合には大きな樽型の歪みが目立ちますので、RAWデータで撮影をしてRAW現像の際に歪みの補正をする方がいいでしょう。
街中スナップでは人が構図に入ってくるパターンが多くなりますが、ソフトフォーカスレンズを使うことによって、ほどよく人物が背景と中和される感じになり使い勝手は良いと感じます。
まとめ
肉眼でみる景色と違った世界が撮影できるソフトフォーカスレンズ。少し癖があってレンズを使いこなすまでに時間がかかるかも知れませんが、イメージ通りに撮れた時は格別です。このケンコー「MC SOFT 45mm F4.5」は標準価格で中望遠のソフトフォーカスレンズよりも日常に使える範囲も広いレンズです。
「ベス単」を標準画角で楽しめるレンズは、現代のレンズでは味わえない魅惑の世界です。気になった方は是非、中古市場で探してみてください。
オールドレンズ関連記事はこちら
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。