【オールドレンズ】ファンタジーな世界を写し出すソフトフォーカスレンズ「ケンコー MC SOFT 85mm F2.5」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ケンコーのソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 85mm F2.5」です。
この「MC SOFT 85mm F2.5」は、1987年に発売されたレンズです。ケンコーのソフトフォーカスレンズは、「MC SOFT 85mm F2.5」のほかに「MC SOFT 45mm F4.5」、「MC SOFT 35mm F4」がラインナップされていましたが、現在の中古市場であまり見かける事がありません。中古市場で比較的リーズナブルな価格で入手できるのは「MC SOFT 85mm F2.5」で、その数も多くあり見つける事も容易です。
そんなケンコーソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 85mm F2.5」の特徴とその写りをご紹介いたします。
ケンコー MC SOFT 85mm F2.5の魅力
ケンコーソフトフォーカスレンズ「MC SOFT 85mm F2.5」の魅力は、なんといっても現在の中古市場価格がとてもリーズナブルな事です。レンズ個体の程度にもよりますが、ソフトフィルターを購入する価格と同程度で購入できるものもあります。
今回筆者が使っている「MC SOFT 85mm F2.5」は、少し昔に入手したジャンク扱いのFDマウントのレンズで、当時2,000円弱の価格でした。筆者が使いやすいように、交換できるPマウントを、FDマウントからM42マウントに変更して使っています。
そもそもこの少し聞き慣れないこの「Pマウント」。「Tマウント」のネジピッチが1mmとなったもので、口径やネジピッチが「M42マウント」と共通ではあるのですが、フランジバックが「M42マウント」より長くなっている仕様のものです。
「Tマウント」同様に主に天体望遠鏡や軟焦点レンズなどの汎用マウントとして使われています。現在では、ケンコーから発売されている「ピンホールレンズ02」のアダプターとしてキヤノンEOS用、ニコン用が「Pマウント」アダプターとして販売されています。
ケンコー「MC SOFT 85mm F2.5」の基本的なスペックは、
焦点距離:85mm
最短撮影距離:0.80m
絞り開放:F2.5
レンズ構成:3群3枚
絞り羽根枚数:13枚
フィルター径:52mm
マウント:Pマウント交換方式(各マウントあり)
発売:1987年
発売当時の価格:定価 29,800円
「MC SOFT 85mm F2.5」の本体は、金属の鏡筒でしっかりとした高級感のある造りをしています。絞りリングはレンズの先端に位置して絞り操作もしやすい構造になっています。
レンズの構成は3群3枚のいわゆる3枚玉の「トリプレット」と呼ばれるレンズですが、巷で人気のあるバブルボケのトリプレットレンズとは大きく性格が異なるレンズです。
絞りは開放のF2.5~最小絞りF8までで、絞り羽根は13枚で綺麗な円形を維持しています。絞りのクリックは、F2.5~F4の間に3ステップ、F4とF5.6の間に1ステップあり、トータル8ステップの調整が可能になっていて、ソフト量を微妙に調整する事が可能です。
「MC SOFT 85mm F2.5」は絞りの設定でソフト量をコントロールするレンズです。絞りF2.5開放で最大のソフトフォーカス効果を得る事ができます。そして絞りを絞っていくことでソフトフォーカス効果は減少していきます。下の写真は同じ場所で、絞りをF2.5とF8で撮影したものになります。
F8に絞るとソフトフォーカス効果はかなり減少します。もう少し絞ることができる仕様であれば通常のレンズで撮影したものに近いモノが得られそうな気がしますが、「MC SOFT 85mm F2.5」は最小絞りF8なのでこのくらいが限界のようです。
基本的には、F2.5~F5.6の絞りの範囲でソフトフォーカス効果を調整しながら撮影するのがベストなレンズです。
今回はソニーα7R IIIに、焦点工房のマウントアダプター「K&F Concept KF-42E.P」(M42マウントレンズ → ソニーEマウント変換)を使用して撮影をしました。このマウントアダプターは実売価格で3,500円程度の価格で入手できるマウントアダプターです。
オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、基本的には下の記事「マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?」をご参照してみてください。特にソフトフォーカスレンズのピント合わせは、少し難しくコツもいるので、必ず拡大しながらピント調整をして撮影をしましょう。
ケンコー MC SOFT 85mm F2.5で花の撮影
早速、「MC SOFT 85mm F2.5」を持って花の咲いている撮影スポット数か所をまわってみました。ソフトフォーカスレンズの滲みを最大限に発揮できるお天気の良い光の強い日に撮影をしています。特に輝度の高い白い部分では大きな滲みを発生させて、ソフトフォーカス効果を強調してくれます。
観光地のお花畑などではたくさんの観光客が訪れて撮影などを楽しんでいますが、撮影しているとそういった人が構図の中に入ってくることも多くあります。そんな時でも、ソフトフォーカス効果でいいアクセントになる場合があります。特に白い服を着た人がいるとソフトフォーカス効果でファンタジーな感じに仕上がります。
ソフトフォーカス効果をより効果的に表現するには、被写体と背景に輝度差があるようなシーンや背景になる部分に明るいモノが入るようにしたり、強い光が入る構図を狙ってみたりするのがおすすめです。
絞りを開放にしてソフトフォーカス効果を最大限にする撮影のピント合わせは少し難しいので、ピント合わせの際は必ずカメラ側で拡大してピント合わせをする事をおすすめします。後は保険として同じ構図でピント位置を少し前後にずらして撮影をしておくのも良いと思います。
ケンコー MC SOFT 85mm F2.5でスナップ撮影
街中や公園でのスナップでは、反射して光るもの・白い被写体を探しながら散策して撮影をしてみました。何気ない街中でも光を見つけファインダーを覗くと、ファンタジーの世界が見えてきます。普段使う通常のレンズでは味わえない世界観が楽しめます。
公園での撮影や鯉のぼりの撮影では、カラフルさを強調する為にカメラ側の「クリエイティブスタイル」設定で彩度を上げるモードの「ビビッド」のモードで撮影をして、少し鮮やかさを強調してみました。
まとめ
ソフトフォーカスレンズを使う時は、ある程度頭の中で撮影後のイメージを思い浮かべながら被写体を探して撮影をしていきますが、実際に撮った画像はほとんどがイメージを超えたファンタジーな世界感を表現してくれています。もちろん失敗するシーンも結構あったりしますが……
普段とは違った世界が味わえるソフトフォーカスレンズは、少し癖があって慣れるまでは難しい事もありますが、ミラーレス機で使えば難易度も飛躍的に下がります。少し写真に変化をつけてみたい方、ファンタジーな雰囲気の世界を撮ってみたい方におすすめのレンズです。
中古市場に出回っているレンズは、そのレンズ個々の状態によって価格も異なりますが、「ケンコー MC SOFT 85mm F2.5」は比較的安く購入できるものあるレンズです。場合によってはソフトフィルターを購入するよりも安く購入できるものもあったりするので、気になる方は一度チェックしてみてくださいね。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。