トキナー SZ 500mm F8 Reflex MF レビュー|小型軽量・手のひらサイズの超望遠レンズ
はじめに
今回紹介するのはケンコー・トキナーから2022年2月25日に発売された、ミラーレンズ「SZ 500mm F8 Reflex MF」。ミラーレンズは、フィルム一眼レフ全盛期の1970年代~1980年代に、比較的手軽な価格で超望遠の世界が楽しめるレンズとしてお使いになったユーザーも多いのではないでしょうか。ミラーレンズは一般的な光学レンズとは違って、ミラーを使用した反射光学系でレンズ自体を非常にコンパクトにできる構造をしています。
小型軽量という大きなメリットがあるがあるミラーレンズですが、独特の癖のある写りをするレンズなので、好き嫌いの好みがハッキリするレンズなのかもしれません。そんなミラーレンズ「SZ 500mm F8 Reflex MF」がどんな写りをするのか、早速使ってみました。
トキナー SZ 500mm F8 Reflex MFの魅力
「SZ 500mm F8 Reflex MF」は、トキナー「TM500」を現代に合わせて再設計し現代によみがえったミラーレンズです。当時発売されていたミラーレンズの中でも、トキナー「TM500」はとても小さな超望遠レンズだった事は筆者の記憶の中に残っています。
トキナーTM-500 |
SZ 500mm F8 Reflex MF |
|
レンズ構成 |
2群7枚 |
7群7枚 |
フィルター径 |
35.5mm(マウント側) |
72mm(前側) 30.5mm(マウント側) |
最近接距離 |
1.5m |
1.7m |
全長×最大径 |
88.2×78mm |
89×74mm |
重量 |
532g |
310g(Tマウント除く) |
トキナーTM-500のマウントは固定式でしたが、今回発売されたトキナーSZ 500mm F8 Reflex MFはTマウントを採用しており、マウント部分をユーザーで交換する事が可能になっています。Tマウント自体は新しいものでは無く、カメラボディーを天体望遠鏡などに装着するためのアダプターとして従来から使用されているアダプターです。
上記の表で重量を記載しましたが、SZ 500mm F8 Reflex MFにはマウント部分が含まれていません。SZ 500mm F8 Reflex MFにソニーEマウント対応のTマウントを装着して計ったところ、約400gでしたので、マウント部も含めて「トキナーTM-500」よりも軽量化されています。
小型軽量なミラーレンズですが、その構造によって写りに独特な特徴があります。レンズの正面からみれば、その特徴が発生する理由が分かるのですが、通常のカメラレンズで使用する光学レンズではなく、ミラーを利用して光を収束するレンズです。レンズ内の奥の主鏡で一度反射させ、レンズ中心部にある副鏡に反射して像を収束する構造です。
この反射を利用することで、レンズが短い筐体でも望遠レンズを作ることが可能になっています。
このレンズの中心部にある副鏡が、ミラーレンズでの写りの特徴を表す要因になっています。ミラーレンズでは「リングボケ」と言われる独特なボケがあらわれます。
名前の通り、点光源などでボケが発生すると中空のリング状のボケが発生します。これは副鏡が入射光の中心部を遮っていることが原因になります。
このリングボケが、ミレーレンズの好き嫌いの好みがハッキリするところの一番の要因になっています。ちなみに筆者は、ボケはそのレンズの最大の個性の現れの一つとして考えているので、ミラーレンズの「リングボケ」は大好きなボケの一つです。
ミラーレンズは小さくて軽く比較的お値段も手頃な価格の超望遠レンズなのですが、ちょっと扱いが難しいレンズでもあります。ほとんどのミラーレンズがそうなのですが、このトキナー「SZ 500mm F8 Reflex MF」はマニュアルフォーカスで絞りもF8固定です。
超望遠レンズのマニュアルフォーカスは、広角レンズや標準レンズをマニュアルフォーカスで扱うのとは違ってピント合わせが非常にシビアで難しい撮影になります。よって、手持ちで撮影するのはかなり難しい事が想定されます。絞りもF8固定なので、絞って被写界深度を少しでも稼ぐことはできません。
普段からマニュアルフォーカスを使用していないユーザーには少しハードルが高いポイントになってしまいます。扱いこなすには少し慣れが必要になるのではないでしょうか。
トキナー SZ 500mm F8 Reflex MFで都内をスナップ撮影
500mの焦点距離のレンズを持ってスナップ撮影なんて過去にしたことはありませんが(笑)、カメラに装着した「SZ 500mm F8 Reflex MF」は見た目に500mmのレンズには見えませんし、一日持っていても苦にならない重さなのでどんなスナップ撮影ができるかワクワクしながら散策してみました。
特徴である「リングボケ」を演出した写真を撮りたかったので、最初は海辺の公園に行って撮影してみました。
リングを被写体に「リングボケ」とネタの様な写真ですが、水面に反射する太陽の光が大量のリングボケを発生させてくれました。メインの被写体までの距離が近く、点光源部分の距離が離れていると、リングボケの大きさも大きくなり特徴的な写真になります。
被写体まで距離が離れてくると、特徴である「リングボケ」はあまり目立たなくなります。
動いている被写体でも、飛行機ぐらい大きいとマニュアルフォーカスでのピント合わせも少し余裕ができます。
小さな鳥がいたので、カメラ側の設定をAPS-Cモードにして焦点距離750mm相当で撮影してみました。手持ちでの撮影でしたが、あまり鳥が動かなかったのでなんとか撮影できました。小さな鳥にリングボケは可愛らしさを演出してくれますね。
「SZ 500mm F8 Reflex MF」の最短撮影距離は1.7mなので、花などのアップ撮影も得意な被写体です。
撮影場所を変えて街中へ。車のテールランプや信号の「リングボケ」を狙ってみました。
焦点距離500mの強い圧縮効果を活用したシーン。こういった奥行き感のあるシーンでは超望遠レンズは魅力的なアイテムです。
メインのレンズとして使う事は少ないレンズになると思いますが、小型軽量というメリットを活かしカメラバッグに常備しておくと面白いレンズです。
トキナー SZ 500mm F8 Reflex MFで動物園撮影
超望遠レンズが活かせるフィールドを探して動物園に撮影に行ってみました。500mmの焦点距離は動物園で動物の表情をアップで撮るのに、とてもいい焦点距離です。
オウムのキレイな羽根をアップで撮ってみました。もともと「SZ 500mm F8 Reflex MF」の発色は少しニュートラルなので、少し彩度を上げて撮影してみました。
鳥の場合、被写界深度が浅いので被写体の正面から狙うと口ばしは大きくボケてしまいます。少し横からの撮影の方が良い感じですね。
激しく動き回る動物にマニュアルでピントを合わせるのはなかなか難しいですが、動きのおとなしい動物は手持ち撮影でも十分に対応できます。
しかし、少し注意しなければいけないポイントがあります。このレンズは非常に軽いので、軽すぎるゆえ手ブレを起こしやすくなります。手ブレ防止の為にもISO感度は高めに設定して、シャッター速度は1/1000秒以上を目安に撮影した方がよい感じです。
背景によっては、やはり「リングボケ」がうるさく感じる場合があります。レンズの特性と理解した上で撮影に臨めるといいですね。
まとめ
とにかく軽い・小さい超望遠のトキナー「SZ 500mm F8 Reflex MF」レンズ。決して扱いやすいレンズではありませんが、「リングボケ」が特徴的なレンズです。使い方次第では他のレンズでは撮れない個性ある写真を撮ることが可能です。
小さなカメラバッグにも忍ばせる事ができる500mmのレンズは、他のレンズにない魅力的なポイントである事は間違いありません。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。