LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APO レビュー|米粒がアップで撮れるレベルのマクロ性能を実現
はじめに
今回は、LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOという高いマクロ性能を持つレンズをご紹介します。まずは、その驚異的なマクロ性能を実感してもらうために、お米を撮影しました。米粒を、このサイズのアップで撮影でき、しかも風景まで撮影できるレンズは、ほぼ存在しないでしょう。それでは、LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOの特長について、ご説明していきましょう。
マイクロフォーサーズ用最大撮影倍率2.0倍のスーパーマクロ
今回紹介するLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOは、ラオワが得意とする最大撮影倍率2.0倍のマクロレンズで、マイクロフォーサーズ(以下、MFT)用となっています。焦点距離は50mm、MFT用なので装着時の画角は35mm判フルサイズの100mm相当となります。開放F値は2.8で、35mm判フルサイズにおける100mmF2.8の定番マクロレンズに相当するレンズです。ただし、最大撮影倍率は2.0倍、最短撮影距離は13.5cmと、一般的な100mmマクロレンズの2倍の最大撮影倍率を誇ります。実際には、それ以上のインパクトなのですが、詳細はのちほど解説させてください。
レンズ構成は10群14枚、APO(アポクロマート)設計を採用し、色収差を最小限に抑えているということです。なお、絞り羽根枚数は7枚です。撮像素子サイズの小さなMFT用ということもあるでしょうが、非常に軽量でコンパクトなレンズに仕上がっています。大きさは最大径53.5mm、長さは79mm、質量はわずかに約240g。コンパクトで軽量なレンズではありますが、金属パーツが多用されており、堅牢でビルドクオリティも高いレンズです。
操作系について注目したいのは、LAOWAレンズとしては珍しくカメラ本体と情報をやりとりするための電子接点が搭載されている点。おかげで、絞りの操作はレンズの絞りリングではなく、カメラ本体の電子ダイヤルなどで操作が可能となっています。また、フォーカスリングを回すとフォーカス拡大機能が自動的に有効になります。さらにはレンズデータがExifに記録されるようになったのは、個人的には非常に歓迎したい機能です。残念ながら、AF機構は搭載されていないのでMFレンズですが、ピントリングの感触は非常に滑らかで、ピント合わせは快適です。
今回は、最大撮影倍率2.0倍でMFT向けに設計された世界初のレンズというLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOを入手し、電子書籍『LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APO レンズデータベース』を制作する際に、解像力、周辺光量落ち、最短撮影距離と最大撮影倍率の実写チャートを撮影しましたので、その結果から本レンズの性能を詳細に解説したいと思います。
100mmマクロらしい開放から周辺部まで高い解像力
気になる解像力からチェックしていきます。今回のテストでは有効画素数約1,600万画素のパナソニック LUMIX GX7 Mark IIを使用しました。そのため解像力の基準となるチャートは1.3で、1.2が解像すれば上出来といえます。ですが、LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOは、絞り開放のF2.8から、さらに小さなチャートの1.1を大部分解像していました。
中央部分から詳細に見ていくと、絞り開放のF2.8からチャートの1.2どころか、さらに小さなチャートの1.1まで、ほぼ解像しています。非常に高い解像力を持っているといえる結果です。ただし、絞っても解像力の大きな変化は観察されず、チャートの構成する白と黒のラインがはっきりして多少コントラストが上がるため、F5.6からF8.0あたりが中央部の解像力のピークのようです。
周辺部についても、実は絞り開放から解像力は良好です。こちらでも解像すれば上出来といえるチャートの1.2は十分に解像し、チャートの1.1を大部分解像しています。非常に優秀です。しかし、周辺光量落ちの影響だと思われますが、開放付近では中央部分に比べやや暗く描写されるため、チャートを構成する白と黒ラインのコントラストが弱まり、解像力が低く見える傾向。絞っていくほどの改善し、F5.6ではほぼ中央部と変わらない解像力が得られます。
少し気になるのは、マクロレンズにしては発生する糸巻き型の歪曲収差が強いことです。Adobe Camera Rawなどでは内蔵のレンズプロファイルを適用されていても、歪みが目立つので必要のシーンでは手動で、さらに補正するとよいでしょう。
最短撮影距離で画面に写る範囲は、なんと約8.7mm×約6.5mm
LAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOの最大特徴は最大撮影倍率2.0倍です。このときの撮影距離は13.5cmとなります。作例を見てもわかるように、一般的なマクロレンズの等倍に比べても圧倒的な近接撮影性能です。しかし、本レンズがMFT用ということを正しく理解すると、さらにそのマクロ性能の圧倒的さに驚くでしょう。
35mm判フルサイズで等倍のマクロレンズは36mm×24mmの範囲を画面いっぱいに写すことができます。これが最大撮影倍率2.0倍になると35mm判フルサイズでは18mm×12mmの範囲を画面いっぱいに撮影できるのです。
対してMFT用のマクロレンズでは等倍で17.3mm×13.5mmの範囲を画面いっぱいに撮影することができます。そしてLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOのようなMFTの最大撮影倍率2.0倍のレンズは8.7mm×6.5mmの範囲を画面いっぱいに撮影できるのです。
同じ最大撮影倍率2.0倍で画面いっぱいに写る範囲は35mm判フルサイズでは18mm×12mm、MFTでは8.7mm×6.5mmなので、約1/4の範囲を画面全体にアップで写すことができるわけです。まさに驚異的なマクロ性能といえるでしょう。
だからこそ、米粒のアップといったレベルの撮影が可能なわけです。とはいえ、超近接撮影になるため、被写界深度は極めて浅く、ピント合わせは非常にシビアなので、最大撮影倍率の2.0倍での撮影は、それなりに難易度の高いものになります。
必要なシーンでは後処理でさらに補正するのがおすすめ
LAOWAのレンズとしては珍しく、カメラ本体と情報をやりとりするための電子接点を搭載したLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APO。これによって、RAW画像にも内蔵のレンズプロファイルが適用されています。驚異的にマクロ性能の高いレンズですが、無限遠も普通に撮影できるので、寄れる高性能な中望遠レンズと考えると、小さな赤ちゃんの撮影にも便利です。
絞り開放付近ではハッキリとした周辺光量落ちが観察されますが、絞るにつれて改善。F4.0あたりでほぼ気にならないレベルになり、F5.6以降は気になることはないでしょう。
しかしながら、マクロレンズの場合は開放のF2.8で大きくボカしたいシーンも多く、そんなときは絞って周辺光量落ちに対応するのではなく、RAW画像も撮影しておき、RAW現像時などの後処理で対応することをおすすめします。
Adobe Camera RawなどではRAW画像にも内蔵のレンズプロファイルが適用されますが、それでも開放付近では周辺光量落ちが目立つこともあるので、手動でさらに補正するとよいでしょう。
もっとマクロを極めたいユーザーにおすすめの超マクロレンズ
最大撮影倍率の2.0倍を活用すると、わずか8.7mm×6.5mmの範囲を画面いっぱいに撮影できるLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOは、LAOWAの最大撮影倍率2.0倍のウルトラマクロシリーズのなかでも、飛び抜けてマクロに強いレンズをいえます。また、電子接点でカメラ本体と情報のやり取りができるため、絞り値をカメラ側の電子ダイヤルなどで操作でき、使い勝手もよいレンズです。
価格はMFT用のマクロレンズとしては、決して安いとはいえませんが、等倍マクロレンズでは実現できないスーパーマクロが撮影可能なため、他のレンズにはマネできないマクロ撮影が可能になると考えれば高いとはいえないでしょう。
また、絞り開放から中央部はもちろん、画面周辺まで優秀な解像力。滑らかで素直なボケと、レンズとしての基本性能も高く、マクロレンズとしてだけでなく、高性能な中望遠としてポートレート撮影などにも活躍してくれます。
あえて弱点を挙げるなら、歪曲収差と周辺光量落ちでしょう。ただし歪曲収差と周辺光量落ちは、今回テストしたLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOとパナソニック LUMIX GX7 Mark IIの組み合わせではRAWファイル自体に内蔵されたレンズプロファイルが組み込まれているためか、Adobe Camera Rawの手動で簡単に補正できるので、あまり気にする必要はないでしょう。
軽量コンパクトで驚異的なマクロ性能、高い解像力、美しいボケを実現するLAOWA 50mm F2.8 2X Ultra Macro APOはMFTユーザーだけでなく、マクロ撮影好きにとって非常に魅力的な選択肢といえます。ぜひ、一度“米粒のアップすら可能にする”、その圧倒的なマクロ性能を試してみてください。
■写真家:齋藤千歳
カメラ・写真関連の電子書籍「ぼろフォト解決」および「Foton」シリーズの出版者。レンズやカメラをみると解像力などの実写チャートを撮影したくなる性質があります。千歳市在住で北海道各地を撮影しています。
■技術監修:小山壯二