新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.013 ライカQ3
はじめに
皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。さて、今日はどんなライカにお目にかかれるのか楽しみです。
コンシェルジュのお薦めは?
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの中明昌弘さん。プロのフォトグラファーだった経歴を持ち、毎回実用的な視点を持ちながら趣味性も高いセレクトをしてくれる中明昌弘さんが用意してくれていたのは、現行品のライカQ3でした。
ライカQシリーズの第3世代モデル
「今、ライカQ3がすごい人気です」とカウンター越しにカメラを差し出しながら少し前のめりに説明を始めてくれた中明昌弘さん。いつもと微妙にテンションが違うかもしれないと感じさせたのには理由がありました。「先日、オーダーしていたライカQ3が、やっと手元に来ました。自分のカメラとして購入したんです」と語る口調に嬉しさが滲み出ています。やはり、新しいライカを手に入れると人は幸せになるものですね。
ライカQ3は、フルサイズセンサーを搭載したコンパクトなデジタルカメラ、ライカQシリーズの第3世代モデルです。初代から大口径の広角レンズであるズミルックスf1.7/28mmASPH.を固定装着し、高画素のセンサーを搭載することで画面をクロップしてズームレンズのような使い方を可能にしています。前期種ライカQ2の4730万画素もすごかったですけれど、ライカQ3では6000万画素にパワーアップしています。
バリアングル搭載の実用機
ライカQ、Q2、そして今回紹介するQ3と世代を追うごとに撮像素子のスペックは上がっているのですが、固定装着されたレンズはズミルックスf1.7/28mmASPH.のままで、その優秀さゆえに変更されていません。レンズ交換できないことはシステムの拡張性にとって不利であると考えがちですが、個々のボディとレンズを最適な位置に調整・組み立てできることから、画像品質の担保と製品の均質性という点では大いに有効です。こういうストイックな考え方がライカ的だと思います。
ライカQシリーズは各世代で大きく印象を変えず、外装デザインを一貫して保っているのもドイツ的で好感が持てます。そのようなコンセプトを保持しつつ、使い勝手に関しては改良を積み重ねるという方針でライカQシリーズは進化してきました。ライカQ3がバリアングルのモニターを採用しているのもその一例です。
右手で完結する操作ボタンの配置
ライカQ2とライカQ3を並べてみました。後ろ姿はほとんど同じように感じるのですが、右のライカQ2では液晶モニターの両サイドに十字キーとボタンが配置されているのに対し、左のライカQ3では物理キーがすべて液晶モニターの右サイドに集約されているのがわかります。
「ボタンが全部右側になったので、片手が埋まっていてもAFポイントの移動などの操作が右手だけでできるのが大きな違いだと思います。そういった部分でもフットワークが違う、より実用的な、使い倒せるライカになりました」と使用実感を語る中明昌弘さんの表情が満足そうで羨ましい。具体的には、オプションのグリップ&フィンガーリングに右手の指4本をグッと回し込んでカメラを保持できるように固めて親指をフリーにして、右手だけで使えるようにしているそうです。
シャッターボタンのレトロな意匠
ライカQ3がライカQ2から変更された部分といえば、シャッターボタンが銀色になり、ライカM型を想起させるような意匠になったこともあげられます。昔からカメラを使っている人ならレリーズソケットだねと思うかもしれませんが、ねじは切ってあるもののケーブルレリーズでシャッター操作をすることはできません。その理由は、ライカQ3が防塵防滴の仕様であることが関係しているのかもしれません。
「でも、レリーズボタンをねじ込むことはできます(笑)。ただドレスアップするためだけのねじ穴とも言われていますが、レリーズボタンによってシャターのフィーリングも変わるので、見た目だけではない効果もあると思います」
使い勝手を考慮した小さな改良点
中明昌弘さんのユーザー目線でのライカQ3解説はさらに進みます。指をさしているのはカメラ底面の接続端子の近くにある小さな穴です。オプションのQ3用グリップには突起があって、それがこの穴と噛み合って、カメラとグリップがビシッと固定されるそうです。
「ライカQ2用グリップはQ3と同サイズでネジの位置も同じなので、ワイヤレス充電の機能はないけれどこれでいいと思って買ってみました。しばらく使ってみるとねじ込みが少しでも緩むとグリップがズレてしまうことがあり、時折キツく締めなおす必要があってQ3用グリップを買い直しました(笑)。Q3用の方が価格は高いですけれど安心安全で、より片手だけで使えるライカになると思います」
被写体の自動認識に「人・動物」を追加
AFに関しては、顔認識だけでなく“人・動物”認識が追加され、用途に応じたAFの速写性が向上しています。中明昌弘さんの使用法としては各種のAFに加えて近距離の被写体や手前ボケを使ってみたい時にはMFの方がむしろ早く撮れる場合もあるので、モニターを見ながらMFを使うこともあるとのこと。開放がF1.7あるのでピーキングで充分にピント位置の移り変わりが分かりやすいからMFの拡大アシスト表示はあまり使わないそうです。
ライカQ3だけの機能としては“ライカルックス”という仕上がりのプリセットがあり、アプリのLEICA FOTOSでダウンロードするとコンテンポラリー、クラシック、ブルー、セレニウム、セピアの5種が使えるようになります。中明昌弘さんのお気に入りは、モダンな印象で、ほのかに赤みを帯びた自然な色合いがカラーネガフィルムっぽい雰囲気のコンテンポラリーとのこと。
まとめ
これが中明昌弘さん私物のライカQ3です。出勤する時も持ち歩いていて、今日も朝に子供を保育園に連れていくとき、ちょっと家の前を歩いたりするのでそれをバシバシ撮っていたそうです。ちなみに新生児時代にはフィルム機のライカM7でピントの深度は浅めで雰囲気のある写真をメインにしていたそうですが、すくすく育ち元気に走り回るようになってライカQ3の導入を決断したとのこと。その選択に本人も大満足の様子です。
28mm広角レンズと6000万画素のセンサーという組み合わせにより、35mm 、50mm、75mm、90mm相当の画角にクロップできるので、5本のレンズを瞬時に切り替えるのと同じような撮影を可能にするライカQ3は、撮影だけに集中することが難しい状況下でもライカ品質の写真が撮れるというユニークな特性を持ったカメラだと思います。
■ご紹介のカメラとレンズ
ライカQ3 :919,600円
※価格は取材時点での税込価格
■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:中明昌弘
1988年生まれ。愛用のライカはQ3
■写真家:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。
新宿 北村写真機店 6階ヴィンテージサロン
新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。