クモリがあるジャンク品を実写レポート|ライカ エルマーL 90mm F4 クローム

水咲奈々
クモリがあるジャンク品を実写レポート|ライカ エルマーL 90mm F4 クローム

はじめに

新宿 北村写真機店のジャンク品コーナーから宝探しをしてレビューをするこの企画。

今回は、備考欄にレンズキズあり、レンズ内大クモリあり、レンズ内カビありと記載された、やや難ありの「ライカ エルマーL 90mm F4 クローム」のスナップ作例をお送りします。

ジャンク品「ライカ エルマーL 90mm F4 クローム」スペック・外観編

本レンズは焦点距離90mmの単焦点レンズで、絞り開放値はF4、レンズ構成は3群4枚、絞り羽根枚数は15枚、クロームメッキ仕上げとなっています。前述のようにレンズ内にはキズやクモリ、カビがある王道的なジャンク品で、撮影時の価格は16,800円(税込)と、かなりお手頃な価格でした。

価格は取材時点の価格です。売り切れの場合がございます。

鏡筒に彫り込まれた「Germany」の文字が、ライカレンズを持つ喜びを一層盛り上げてくれます。全体にオールドレンズらしい小さなスレや、小キズはありますが、長い旅をしてここに来てくれた故のように感じられて、逆に愛おしく思えます。

ボディは筆者が愛用している「SIGMA fp L」です。小型・軽量で凹凸の少ないシンプルなボディは、どんな形状のオールドレンズとも相性がいいので、オールドレンズ遊びのときに一番出番が多い機種になっています。

マウントアダプターは、焦点工房オリジナルブランドSHOTEN(ショウテン)の「LM-LSL M (ライカMマウントレンズ→ライカSL.Lマウント変換) ヘリコイド付きマウントアダプター」を使用しました。それにプラスして、K&F CONCEPTのレンズマウントアダプターを付けて、スクリュータイプの本レンズを装着しています。

なかなか見ないようなバランスになりましたが、レンズ部分が長く突き出ているので持ちやすく、手動でのピント合わせがしやすかったです。細身のレンズなので、バッグにさっと入れられるのも便利でした。個人的に、ブラックとシルバーの配色バランスが、とても好みの組み合わせでした。

やや難ありは写りにどんな影響が?ジャンク品「ライカ エルマーL 90mm F4 クローム」実写編

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:スタンダード

普段、明るめの写真を好むことの多い筆者が、アンダー目の写真にグッと来る場合は、ライカのレンズで撮っていることが多いです。前ボケの柔らかさと、難ありには思えないピント面の意外としっかりとした描写が、逆にこちら側が覗かれているような、ドキッとするムードを作り出してくれています。

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/100秒 ISO100 AWB
カラーモード:ビビッド

レンズにクモリがある場合は、逆光での描写を必ず見るようにしています。白飛びギリギリの左上部は全体に滲みが見られるのと、ピント面である右の葉っぱや枝の柔らかい描写は、クモリやキズ、カビの影響を受けているように見えます。ここまで思いっきり光源を見上げるようなシチュエーションでは、全体に柔らかい描写になりますね。

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:風景

順光での撮影も、ピント面は今どきのレンズっぽいカリッとした描写にはならず、ソフトフィルターをかけたような、ふわっとした描写です。等倍しないとわからない程度ですが、二線ボケも少々見られます。そのせいもあり、F4にしてはボケが大きく感じられるので、柔らかい描写を好まれる方は、何を撮っても楽しいレンズになりそうです。

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:モノクローム

ふんわり感を楽しめるレンズだと思うと、積極的に前ボケを入れたくなります。また、明暗差のあるシチュエーションでモノクロ設定にして撮影すると、ニュートラルな画が得意なレンズでもコントラストが高く見えます。本レンズの特徴であるふんわり感と、ちょっと苦手な高コントラストを実現したい場合は、モノクロにして撮ると面白いでしょう。

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:風景

F4の開放値ながら、90mmの中望遠画角の働きもあって、比較的大きくてナチュラルなボケを得られます。レンズ内の様々な難要素が、被写体をふんわりとボケているように見せる効果もあるのでしょう。筆者は、このカットが撮れたときに、このレンズ好きだな!と思いました。

丸ボケは少し硬めの線が残るイメージながらとても出やすく、しかも綺麗な円形なので、ポートレートなどで使用すると派手な写真が撮れそうです。

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:スタンダード

ライカのレンズを使うとき、金属質のキラリと光る質感の被写体や、節目がわかるような木を好んで撮ることが多いのですが、今回もそんな被写体を見つけたので撮ってみました。

ピント面のカリッとした鋭さはありませんが、触ったときの感触が伝わってくる描写は、さすがのライカレンズだと感動しました。お手頃価格でこの描写が手に入ってしまうのですから、ジャンクレンズって楽しい!

■使用機材:SIGMA fp L + ライカ エルマーL 90mm F4 クローム
■撮影環境:絞りF4 1/125秒 ISO100 AWB
カラーモード:スタンダード

開放値がF4で中望遠の画角なので、暗い室内よりも、明るい屋外のほうが撮影しやすいレンズでした。太陽の光を直接レンズが受けるような撮影方法ですと、レンズ内のカビやクモリの影響を受けやすいですが、それをソフトな描写だと割り切ると、コンパクトでどこにでも持ち出せるサイズ感もあって、いつもバッグに忍ばせる楽しい相棒になりそうです。

ジャンクレンズは個体差が大きく、返品・交換が不可なことが多いので、いざ購入となると迷ってしまうかもしれません。ただ、やや難ありでもこれだけ楽しめるので、オールドレンズ好きな方はもちろん、これからオールドレンズデビューしたい方は、ぜひ一度、新宿 北村写真機店のジャンク品フロアーに足を運んで見ることをお勧めします。一期一会の出会いがあるかもしれませんよ。

 

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

ジャンクカメラ・レンズの取り扱い

新宿 北村写真機店をはじめ、ジャンクを取り扱っているカメラのキタムラ店舗ではご購入前に実際に手に取ってご確認いただけます。ぜひ自分にあった一品を見つけてみてください。

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