第7回フィルムカメラを始めよう!ファーストフィルムライカはこれに決まり:Leitz Minolta CL/Leica CL編
- はじめに
- Leitz Minolta ダブルネームの意味
- Leitz Minolta CL/Leica CLにおすすめのレンズ紹介
- 宮崎光学(MS-Optics) Apoqualia-II 28mm F2
- 銘匠光学 TTArtisan 35mm F1.4 ASPH
- Leica Summilux-M 35mm F1.4 ASPH(FLE I)
- Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
- Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4 MC
- 銘匠光学 TTArtisan 50mm F1.4 ASPH
- Leitz Minolta CL/Leica CL購入のポイント
- まとめ
- この記事に使用した機材
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第7回として、M型フィルムライカの中では比較的購入しやすい、Leitz Minolta CL/Leica CLを紹介していきます。
M型フィルムライカはM3を中心にM4やM6の人気が高いですが、35mm、40mm、50mmを中心に使うのであれば、小型軽量の本機がおすすめ。僕のファーストフィルムライカにもなった、Leitz Minolta CLの魅力を紐解いていきたいと思います。
Leitz Minolta ダブルネームの意味
Leitz Minolta CL(以下「CL」とする)はその名が示す通り、Ernst Leitz社(現Leica)とMinolta社(現コニカミノルタ)が、互いの技術提携によって誕生したフィルムカメラです。日本ではLeitz Minolta CL(ライツミノルタCL)、ドイツではLeica CL(ライカCL)として1973年に発売されました。
1971年に発売されたLeica M5のようなアーム型CdS露出計を内蔵しているといった特徴があります。CLとLeica M5は他のM型Leicaと比べても異色で、好き嫌いがわかれる機種となりますが、CLはコンパクトかつ比較的安価で使い易いM型ライカと言えるでしょう。レンズの画角を決めるブライトフレームは40mm、50mm、90mmが用意され、レンズによって適切なフレーミングができるようになっています。
露出計はTTL中央部重点測光となりますが、スポット測光に近くピンポイントで露出を測れる優れもの。
僕が最も気に入っている点は、軽さです。重量375gのボディはLeica M6の575gと比較し200gも軽く、セットレンズとして売られたM-ROKKOR-QF 40mm F2も120gほど。ボディとレンズを合わせて500gという、小型軽量カメラ好きには最高のM型ライカと言えます。
ボディを小さくしたことにより、有効基線長と呼ばれるピント精度が犠牲になっており、特に50mm F1.4を超える大口径レンズやより望遠のレンズを開放で使ったときのピント合わせは中々苦しいものがあります。セットレンズが40mmとなっているのは有効基線長の短さ故、理にかなっているのです。
僕もLeica M6では50mmのレンズを中心に使用し、CLは主に28mm、35mm、40mmをメインに使用しています。28mmのレンズを使う場合は、外付けファインダーを使います。CLのファインダー枠は35mmと一致しているため、ファインダーを覗いて見える部分が大体写るという捉え方で良ければ、35mmのレンズを使用する際、外付けファインダーを付ける必要はありません。
40mmのブライトフレームはCLの専売特許(後年発売のminolta CLEにもありますが)のようなもので、M3、M4、M6と言った本流のM型機にはない独自性があります。
40mmのMマウントレンズは数少ないですが、どれも特徴的な物が多く、M-ROKKOR-QF 40mm F2を筆頭に、VoigtlanderのNOKTON Classic 40mm F1.4やNOKTON 40mm F1.2、2022年発売のHELIAR 40mm F2.8などオールドレンズテイストな物から非球面を贅沢に使った最新レンズまで様々。50mmと比較し、小型のレンズが多く安価で揃えやすいことからも、CLがファーストライカとして推せる理由にもなっています。ここで詳細のスペックを見ていきましょう。
発売年月 | 1973年 |
フォーマット | 35mmフィルム(135) |
標準レンズ | M-ROKKOR-QF 40mm F2 |
ファインダー | 連動距離計二重像合致式(40mm,50mm,90mmレンズの視野枠可変式、パララックス自動補正) |
シャッター | B – 1/1000 |
露出制御 | TTL連動露出計内蔵(中央部重点測光) |
フィルム感度 | ISO25~1600 |
電源 | 水銀電池H-D 1.3V 1個 |
大きさ | 横121mm 高さ76mm 奥行き32mm |
質量 | 375g(ボディのみ) |
電池はやや特殊なH-D1.3V(1.3~1.35V)を使用しますが、今は生産されていません。代替品として625G電池がありますが、1.5Vとなり露出計が0.5~1段程度オーバーとなってしまいます。ネガフィルムはあまり気にする必要はありませんが、ポジフィルムを使用する際はやや気になるところ。
対策として関東カメラからリリースされている電圧変換型MR-9(H-D)アダプターを使うことで、SR43電池を1.35Vに変換して使うことができます。アダプター単体で3~4000円程度と初期投資はかさみますが、ボディで正確な露出を測りたい方は購入を検討してみましょう。
Leitz Minolta CL/Leica CLにおすすめのレンズ紹介
本体機能の紹介はここまでにして、僕が実際に愛用しているMマウントレンズからCLにぜひ使っていただきたいレンズを紹介していきます。
ブライトフレームには90mmが表示されますが、先述した有効基線長の関係から開放値F4を下回る明るいレンズのピント精度はかなり厳しく、同時にリリースされているM-ROKKOR 90mm F4がベストです。75mm~135mmまでの望遠レンズを使う場合は、大人しくM3などの有効基線長の長いボディで使用してください。CLはあくまでもコンパクトボディにふさわしいレンズで活躍させたいものです。
さていくつかレンズを紹介していきましょう。
宮崎光学(MS-Optics) Apoqualia-II 28mm F2
宮崎光学/MS-Opticsは主に海外を中心に絶大な人気を誇るメーカー・ブランドです。宮崎貞安氏が個人で制作しているMマウントレンズはどれも強烈な個性を持ち、特に軽量&大口径レンズを得意としています。今回紹介するApoqualiaもそのひとつで、長さ僅か9.8mmにもかかわらずF2という明るさは、多くの軽量&大口径レンズ好きを虜にしてきました。開放では収差も残り、オールドレンズ好きにもたまらない1本です。
銘匠光学 TTArtisan 35mm F1.4 ASPH
2019年、中国深圳のレンズメーカー銘匠光学からリリースされたTTArtisan 35mm F1.4 ASPHもCLと相性の良いレンズで、後述するTTArtisan 50mm F1.4 ASPHと共に、僕のCLライフを長年支えてくれました。非球面レンズを使った現代レンズにも関わらず、どこか柔らかさを残した描写は本家Leicaレンズにも勝るとも劣らないそんな印象を持ちます。
Leica Summilux-M 35mm F1.4 ASPH(FLE I)
続いて、本家Leicaの35mmです。こちらは現行の寄れるSummiluxの前のモデルでFLE(フローティングエレメント)化されたレンズ。市場では第4世代などと呼ばれたりもしています。独特の色気があるのがSummiluxの素晴らしいところで、使うたびに惚れ直してしまう罪深いレンズ。値段もだいぶ落ち着いてきているので、狙ってみるのも良いでしょう。
Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
Leitz Minolta CLのセットレンズとなるROKKORです。Leica CLにはSummicron-C 40mm F2という同一設計のレンズがセットレンズとなり販売されました。Summicron銘はやや高額なため、ROKKOR銘がねらい目。次に紹介している写真がCLで初めて撮影した1枚なのですが、柔らかくも艶のある描写に(ROKKORですが)これがライカレンズなのか…!と感動した記憶があります。
Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4 MC
40mmのベストレンズともいえるのが、本レンズ。開放ではオールドレンズの様なクラシカルな描写となりますが、F5.6~8程度まで絞ることで途端に現代レンズが顔を出す、二面性を持つレンズです。F1.4と大口径ながら175gと軽く、良デザインにもかかわらず安価と最高のレンズ。唯一の欠点は純正フードで二重像がケラレる場合があることぐらいでしょうか。気になる場合は外すなど臨機応変に対応しましょう。
銘匠光学 TTArtisan 50mm F1.4 ASPH
最後に紹介するのは、銘匠光学の50mmです。このレンズも先に紹介した35mmと同様、なんでこの価格でこの描写が出せるのかと不思議に思ったものです。今でこそ中国の新興メーカーの活躍が目覚ましいですが、銘匠光学はその先駆けとなったに違いありません。こちらもLeica純正のSummiluxに匹敵する描写で人気となったレンズ。CLで使うには有効基線長の関係で開放のピント精度はやや厳しいですので、少し絞ってF2をメインに使うのがおすすめです。
Leitz Minolta CL/Leica CL購入のポイント
中古市場には比較的潤沢に流通しているCLですが、購入の際に必ず確認しておきたいポイントがあります。ひとつは露出計の状態です。使用されている露出計はCdS露出計という、劣化しやすい(特に精度が狂いやすい)もので、現在では動かない、数段アンダーやオーバーに振れている、等の不具合が多くみられます。
露出計が動かないボディは比較的安価に買えますので、ホットシューに外部露出計を付けて代用するなどで良ければかなり購入しやすくなるでしょう。露出計を含めて完動品を狙うのであれば、そこそこの値段になってしまうので、お財布と相談して、状態を見極めましょう。露出計が動いてさえいれば、修理で調整することは可能です(僕のCLも露出計調整の修理に出しています)。
ふたつ目は上記画像でも紹介されている、フィルム先端を嵌めるプラスチックの白い巻取り軸の状態です。このパーツは特に力がかかる部分にも関わらず、比較的薄いプラスチックでできており、ヒビが入っているものが多くみられます。替えのパーツはだいぶ昔に払底しているとのことですので、状態を確認できるのであれば必ずチェックしておきたい部分です。
その他ボディにあたりがある等、細かな傷で値段も変わるため予算に合った状態の機種を選ぶのが良いと考えます。
まとめ
ざっとですが、Leitz Minolta CL/Leica CLの特徴に触れてみました。Mマウントのボディは、バルナックライカ等で使用されるLeica LマウントのレンズもMマウントアダプター経由で使用することができますので、ボディひとつ持つことで様々な銘玉たちを使用することができます。M型ライカ本流の機種ではないものの、そんなものは気にならないくらいレンジファインダーの楽しさを体験することができますので、ぜひファーストライカに選んでいただければと思います!
実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。