銘匠光学 TTArtisan AF 27mm F2.8 レビュー|軽量ミラーレスに高性能・高コスパAFレンズはいかが?

鈴木啓太|urban
銘匠光学 TTArtisan AF 27mm F2.8 レビュー|軽量ミラーレスに高性能・高コスパAFレンズはいかが?

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は銘匠光学TTArtisanレンズシリーズの中でも、AFが使えてパンケーキレンズ並みに小さいTTArtisan AF 27mm F2.8を焦点工房よりお借りしましたので紹介したいと思います。筆者おすすめの富士フイルム X-E4常用レンズ、さっそく見ていきましょう。

小さな巨人 銘匠光学/TTArtisanという企業

※焦点工房オンラインストアより引用

銘匠光学(TTArtisan)と言えば、近年急激に力を伸ばし市場に低価格、高スペックのレンズを送り出している中国の光学機器メーカーです。2019年に設立された非常に若い企業にもかかわらず、単焦点レンズを中心にF0.95を超える超大口径レンズやアポクロマート設計の高性能レンズをリーズナブルな価格で提供している、今最も勢いのあるメーカーのひとつと言えるでしょう。各種マウントのレンズをリリースしているため、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

同じ中国に七工匠(7Artisans)という2015年に設立されたこれまた素晴らしい光学機器メーカーもありますが、こちらとは異なる企業です。とは言え銘匠光学も七工匠も今、波に乗っている中国光学メーカーとして、素晴らしいレンズを沢山提供していますので、今まで使ったことのないという方も、今後使う機会が増えてくるのではないかと期待しています。

銘匠光学は主にMFレンズを中心に製品ラインナップを拡充していたのですが、近年はAFレンズにも力をいれ、本レンズのほかにNikon Zマウント用TTArtisan AF 32mm f2.8という単焦点レンズもリリースしています。

本レンズのAF機構にはCanonレンズなどでよく採用されているSTM(ステッピングモーター)が搭載され、スムーズで静かなAFが特徴です。もちろん瞳AFにも対応しており、低価格帯のレンズながらカメラボディが持つ機能を十分に引き出してくれる非常に頼もしい存在。また、マウントは今回紹介する富士フイルムXマウントの他に、ソニー Eマウント、ニコン Zマウントもあり富士フイルムのカメラをお持ちでない方でも、参考になるかと思います。それではレンズのスペックを見ていきましょう。

サイズ 約 Φ61×31mm(E,Xマウント)、約 Φ63×33mm(Zマウント)
質量 約90g(E,Xマウント)、約100g(Zマウント)
焦点距離 27mm(35mm判換算:41mm相当)
フォーカス AF(オートフォーカス)
レンズ構成 5群6枚(高屈折レンズ2枚)
対応撮像画面サイズ APS-Cサイズ
最短撮影距離 0.35m
絞り F2.8-F16
絞り羽根 7枚
フィルター径 39mm
付属品 ドーム型フード

特徴はAF搭載ながら100gを切る超軽量設計!ですが、マウント部分には金属も使用し、いわゆる安っぽさは微塵も感じられません。レンズ長も3cmと非常にコンパクトで、旅行用、スナップ用として重宝すると考えています。

特に軽量ミラーレスと組み合わせた際の機動力はかなりのもの。筆者は富士フイルム X-E4と組み合わせ、X100シリーズの様なコンデジ機を模した使い方をしています。フィルムシミュレーションとの相性も抜群で、お散歩がてら撮った写真を加工せずjpegでそのままSNSにアップするといった軽快なワークフローもおすすめできる要因です。

※焦点工房オンラインストアより引用

また、ドーム型フードが付属しますが、こちらは常につけておきたいアクセサリー。耐逆光という意味ではそこまで大きな効果はないものの、これを付けることでレンズフィルターはつけなくても良いくらい、ほこりやゴミに対する効果は上がります。

デザイン性も重視されており、レンズ自体低価格ながらレンズの存在感を高めるフードも付属しているところに惚れてしまう人は多いのではないでしょうか。近年フードは別売りと言う形態をとっているメーカーが多い中、こういったワンポイントがユーザーを引き付けている魅力だと感じています。

軽快に使える換算40mmとその描写力

■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/400秒 ISO160 WBオート

さて、早速ですがその描写を見ていきましょう。レンズ描写の特徴を簡単にまとめてしまうと、高コントラストで解像力そこそこ、逆光耐性は強くないというものになります。と言ってもF2.8の開放描写でも十分な解像力を誇り、特にコントラストは絞ってもほぼ一定のバランスを保ち、淡くなりにくいのが特徴です。

開放描写は周辺の光量落ちが大きく、スナップをメインに撮影される方はやや気になるかもしれません。F5.6~F8程度で改善されますので、夜の撮影でない限りはF8程度まで絞ってスナップするという、基本に忠実な撮影を心掛けましょう。

中心に被写体を置く構図の周辺光量落ちは、視線誘導の効果があるため一概に悪いとは言えません。花や人物など周辺光量落ちの効果を活かしやすい被写体の場合は積極的に活用するのも良い選択です。

焦点距離27mm(35mm判換算:41mm相当)は昔からスナップに有効な焦点距離と言われており、レンズの小ささと軽さはカメラを外に持ち出しやすくなる=写真を撮る機会が増えるという点でも大きなポイントです。

一方で逆光耐性は強いとは言えず、太陽など強い光源を構図に入れた場合に大きなフレアが発生します。逆光耐性の低さは一概にデメリットとは言えず、順光時に撮れるシャープな写真と、逆光時に撮れるフワッと幻想的な写真の両面を表現できることにもつながります。とは言え、フレアが強すぎるのもあいまいな写真になりがちですので、そこは太陽の光を手で遮る、木や構造物などで隠すといったハレーションコントロールを上手に活用していきましょう。

開放中距離の描写です。周辺光量落ちが比較的目立ちます。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/250秒 ISO160 WBオート
ある程度距離があってもピント面からなだらかにボケるレンズです。特に中心の立体感はこのクラスのレンズとは思えない描写を叩き出します。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/40秒 ISO160 WBオート
F5.6まで絞ると光量落ちはあまり目立たなくなり、風景でも十分通用する描写になります。このコンパクトさは旅行の強い味方です。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f5.6 1/105秒 ISO160 WBオート
開放最短撮影距離での描写です。周辺光量落ちと、ぐるぐるボケにも近いざわついたボケが特徴。赤の色表現は難しいですが、破綻せずにしっかりと描いています。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/320秒 ISO160 WBオート
フィルム時代からコントラストの高い明暗描写が得意な富士フイルム。モニタ越しでもわかる明暗のグラデーションは撮影のテンションを上げてくれます。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/160秒 ISO160 WBオート
最短撮影距離0.35mはテーブルフォトも難なくこなせます。クラシックネガなど一部のフィルムシミュレーションと食べ物の写真の相性は良くないので、気をつけたいところ。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/30秒 ISO640 WBオート
逆光耐性が低い本レンズですが、シチュエーションによってはその描写を活かすことが可能です。花やポートレートなどで狙ってみると幻想的な写真を撮ることができます。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/2200秒 ISO160 WBオート
一方で、屋内の逆光シーンは得意分野のひとつ。逆光特有のフレアの発生が見込まれるものの、ハイライト周辺だけにとどまり、オールドレンズを使っているかのような柔らかい描写となります。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/105秒 ISO160 WBオート
ポートレートにおいても開放2.8を使うことで十分なボケ量を得ることができます。F1.4の様にボケ過ぎるわけではないのが、使い易いと感じるポイントでもあります。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/340秒 ISO160 WBオート
40mmと言う画角はこの様にザ・ポートレートと言うよりはスナップに近いポートレートに適していると言えます。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/500秒 ISO160 WBオート
明暗を使ったシンプルなポートレートですが、2万円台のレンズで撮ったとは思えないほどの描写力です。髪の毛の描き方、服のグラデーション、肌の色味などバランスよく仕上がっています。
■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f2.8 1/1000秒 ISO160 WBオート

ファームウェアアップデートに対応したリアキャップ

※焦点工房オンラインストアより引用

素晴らしいと感じたポイントに、このファームウェアアップデートに対応したリアキャップが付属するという点が挙げられます。レンズ自体にUSBポートなどが内蔵されているレンズもありますが、カバーなどをつけておかないと汚れで認識しなくなってしまうというリスクがあります。

リアキャップであれば、普段は代替品のリアキャップを使用し、アップデートの際にのみ使うということもできますのでこれは理にかなったデザインだと言えるでしょう。こういったリーズナブルな価格帯のレンズにも妥協せず、アップデートを展開してくれるところが銘匠光学の人気を後押ししている理由に違いありません。

つい先日の2023年10月7日に本レンズのファームウェアアップデートが公開されましたので(https://stkb.co.jp/info/?p=27149)、このレンズをお持ちの方、今後購入される方は是非アップデートを行ってみましょう。筆者も早速アップデートしましたが、USBでPCと接続し、ファイルを置くだけでアップデートが完了できるのは本当に手軽です。

まとめ

■撮影機材:富士フイルム X-E4 + TTArtisan AF 27mm F2.8
■撮影環境:f5.6 1/320秒 ISO160 WBオート

富士フイルムから純正レンズとしてXF27mmF2.8 R WRが発売されていますが、半額程度の価格で購入できるのは強みと言えるでしょう。もちろん純正レンズには防塵・防滴性能など、本レンズにはないポイントも持ち合わせていますので、利用シーンによってどちらを選ぶかが重要と考えます。

純正レンズは非球面レンズの採用、TTArtisanは高屈折レンズの採用とレンズ構成も異なる仕様となっていますので、違いを比べるのも面白いでしょう。同じ画角、F値でもユーザーがいくつかの候補から選択できるという点はとても嬉しい悩みです。

スナップ以外にもポートレートでも問題なく活用でき、特にその携帯性で旅行には重宝するレンズですので、1本追加してみるのも良いでしょう。そういった際にコストパフォーマンスの高いレンズがラインナップされていると、ちょっと試してみようかなという気にさせてくれるのが嬉しいところ。小型ミラーレスカメラに最適な高性能・高コスパAFレンズ、是非使ってみてください!
それでは、また次の記事でお会いしましょう。

 

 

■モデル:あまね(Instagram:amane._.0324

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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