ニコン D500 レビュー|DXフォーマットのフラッグシップカメラ
はじめに
2016年4月に発売されたニコンD500は、プロだけでなく多くのアマチュア写真愛好家に至るまで使われているDXフォーマットのフラッグシップカメラです。
特に、飛行機や野鳥など動き物の撮影には欠かせないカメラとしてその地位を確立しました。そこで、発売から3年経過しているニコンD500について、改めてその性能と魅力についてレビューしてみました。
ニコンD500
発売から約3年も経過すれば、最新カメラの方が性能が高くなるのはデジタルカメラの宿命です。そのような中で、現在もD500をメインに使っている人が多くいます。それは、飛行機や野鳥など動き物を撮影する人にとって欠かせないポイントがあるからです。
まず、DXフォーマットであること。これは、DXフォーマットの特徴でもある1.5倍の望遠効果があるからです。飛行機や野鳥の撮影において、望遠レンズは欠かせません。しかし、超望遠レンズになると大きく、重く、高価になります。ところが、300mm程度の望遠ズームでも最大450mm相当の望遠効果が得られるため、機材を軽量化することができます。
さらに、ファインダー内に広く配置されたフォーカスポイントは、被写体を確実に捉えることができました。また、連写機性能約10コマ/秒の高速連続撮影を可能にしているので、決定的瞬間を逃すことなく被写体を確実に捉えることができました。この他にも、カメラボディの堅牢性や防塵・防滴機能により、アウトドアでの撮影に必要な機能が十分に備わっています。
D500とD7500の違いはここ!
その後、2017年6月にD500の良いとこ取りをしたD7500が発売されました。D500と同じ有効画素数2088万画素のCMOSセンサーを搭載し、小型・軽量化されたボディとしっかりした基本性能で動き物の撮影にも対応できるカメラになっています。
当然、フラッグシップカメラという位置づけのD500とは細かな点で違いがあります。特に、D500のフォーカスポイントは153点あるのに対しD7500は51点です。しかも、D500はファインダーの端々までフォーカスポイントが配置されており動き物の撮影において強みが発揮されます。さらに、記録メディアについてはD500の場合、XQDカードとSDカードのダブルスロットに対して、D7500はSDカードのシングルスロットであることや、バッテリーパックのあるD500の方がシステムカメラとして確立されています。このようなことからも、ヘビーユーザーの支持が高いカメラだと想像することができます。
購入しやすいD500!
現在、D500の新品価格は10万円台後半となっています。DXフォーマットのフラッグシップカメラとしては、とてもリーズナブルな価格です。
中古品を調べてみるとカメラの状態によって価格差はあるものの、一番状態の良いものでも10万円台前半で購入することができる場合があります。新品との価格差が数万円の場合があります。状態の良い中古品を購入して差額を欲しいレンズに充当することも選択肢の一つだと思います。
D500の中古品はキタムラのホームページを見ても分かるように、潤沢にあるので予算に合わせて状態の良いものをじっくり選ぶことができます。D500は発売されてから約3年を経過しているため、新品、中古を問わず比較的購入しやすい価格帯に位置しています。
D500に最適なレンズ!
D500は、DXフォーマットの特性を活かすことによって、撮影する被写体に合わせたレンズ選択がポイントになります。風景を広角系で撮影するなら、DXフォーマットのAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR(35mm換算:15-30mm)はとてもコンパクトな設計で、とてもシャープな描写をする超広角ズームです。
さらに、使い勝手の良さという点でAF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR(35mm換算:24-120mm)は、風景やスナップ撮影に最適でとても優れた描写のレンズです。特に、海外で旅行しながらの撮影では、治安を考えると大きく目立つレンズは避けたいところ。このレンズはコンパクト設計なので、撮影旅行にはとても便利なレンズです。
そして、動物(野鳥など)や飛行機、鉄道、スポーツのように超望遠系のレンズが必要な場合、DXフォーマットの望遠効果(×1.5)を活かすことで遠くの被写体を大きく捉えることができます。例えば、AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRは、FXフォーマットにも対応しているレンズですがD500に装着すれば焦点距離は35mm判換算で300-750mm相当になります。価格も安くコストパフォーマンスに優れた人気のレンズです。
また、フレネルレンズを採用した300mmや500mmは従来のレンズよりも軽くコンパクトな設計で、とても人気のある望遠レンズです。FXフォーマット対応のレンズをD500に装着すると、望遠効果だけでなくレンズ中央の描写が優れた部分を切り出せるという特徴も見逃すことはできません。
ミラーレスとの違い!
今では、普通に撮影するなら小型で軽いミラーレスカメラでも全く問題ありません。しかし、動き物になると話は別になります。
ミラーレスカメラの中には、秒間数十コマを撮影しD500を凌駕するものもあります。しかし、連写をするとミラーレスカメラは、ブラックアウトするときに独特のストップモーション映像を見ているようで、違和感を覚える人も多いはずです。その点でD500のような一眼レフのファインダーは、連写をしてもブラックアウト時間が短く視認性に優れています。
その他、ミラーレスはバッテリー消費の早さが問題になります。バッテリー残量が少なくなったときでも、ファインダーで被写体を確認するにも電源を入れなければならず、バッテリーがいつ切れるかとても気になることがあります。
しかし、D500はバッテリーの保ちがとても良く、1本あれば一日余裕で撮影ができます。さらに、バッテリー残量が少なくなっても電源OFFの状態でファインダーを覗くことができるのは一眼レフの大きな利点です。
今では当たり前になっているD500のスペックですが、確実に被写体を捉える基本性能といかなる環境やシーンでも安心して撮影できるのがニコンD500なのです。
作例
■撮影環境:F14 1/160 +0.3EV ISO100 WBオート1
現在、デジタルカメラは高画素化が進んでおり、D500の有効画素数2088万画素は少ないタイプになります。しかし、D500のイメージセンサー(CMOS)はローパスフィルターが無いため、実際に風景を撮影してみると細部の解像感もとても高いです。
筆者自身、国内や海外の風景をD500で撮影してきましたが、クオリティが高く今でも通用する画像です。
■撮影環境:F18 1/50 ISO50(減感) WB晴天
これは、旅客機の離陸シーンを撮影したものです。流し撮りをするため、シャッタースピードを低く設定しています。動体に対するAF性能は、フラッグシップ機だけあってとても優れており、しっかりと機体を捉えることができました。
また、連写したときにミラー駆動アシスト機構の効果もあってファインダーのブラックアウト時間が短く安定した視認性を保っています。
■撮影環境:F8 1/800 ISO1600 WBオート1
この画像は、離陸するANAのB737の機首をアップで撮影したものです。離陸する機体をここまでアップで撮れるのもDXフォーマットカメラの望遠効果によるものです。
機体の繋ぎ目や汚れまではっきり見て取れます。陽が沈み薄暗くなる中、高感度で撮影をしているため若干のザラつきはありますがとても綺麗です。
■撮影環境:F5.6 1/30 ISO6400 WBオート1
この画像は、着陸したANAのB737を撮影したもので、夜の空港はかなり暗く滑走の照明や機体にあるライト、窓から漏れる客室内の灯りだけになるため、高感度撮影をしなければなりません。
当時D500は高感度に優れていましたが、現在のカメラの方が高感度に強く格段に進化しています。しかし、D500で撮影した画像を見るとザラつきはありますが、カラーノイズをうまく抑えているため機体の色をしっかり再現しています。
■撮影環境:F5.6 1/2500 ISO400 WBオート1
動く被写体として、飛んでいる野鳥は難しい撮影の一つです。画像は青空の中を滑空しているトビを撮影したものです。比較的狙いやすい野鳥ですが、速度や方向を急に変えたりするため、ファインダーを覗きながら追うのは大変です。また、機材もできる限り軽量化しないと飛んでいるところを一日中追いかけることができません。
そこで、この撮影において使用したのがフレネルレンズを採用した300mmです。とても軽くコンパクトな設計なので、手持ちで飛んでいる野鳥を追いかけることができました。また、望遠効果により35mm換算で450mm相当の超望遠レンズになります。
■撮影環境:F5.6 1/2500 ISO400 WBオート1
この画像も青空を滑空しているトビを撮影したものです。上空を旋回しながら獲物を探しているシーンで、半逆光に近い光線状態で撮影をしているので、輪郭部分にハイライトのエッジラインが入り際だっています。
この撮影でもフレネルレンズを採用した300mmレンズを使っていますが、D500に装着したときのバランスがとても良くとても振り回しやすいです。
■撮影環境:F6.3 1/3200 ISO400 WBオート1
この画像は、伊豆七島を結ぶ高速ジェット船(ジェットフォイル)を撮影したものです。波のある海上でも安定した高速航行ができる船ですが、少なからず上下の動きもあるため、速いシャッタースピードが求められます。このような被写体でも、フラッグシップと位置づけられているD500のオートフォーカスは、一度ロックオンすると船を確実に捉え続けてくれました。
■撮影環境:F6.3 1/3200 ISO400 WBオート1
この画像も高速ジェット船(ジェットフォイル)を撮影したものですが、船が遠ざかるシーンでAFがやや苦手とするケースです。しかし、D500は高速で遠ざかる被写体も一度ロックオンすると捉え続けました。
画像を見ても分かるように、ピントは正確で船の細かなディテールだけでなく波しぶきもはっきり描写しています。
さいごに
フラッグシップ機とは、メーカーが持っている最高の技術を集約して作り上げるカメラで、妥協が許されないものです。
D300やD300sの発売以降、「ニコンはDXフォーマットのフラッグシップ機は出さないのでは?」とまで言われていました。しかし、長い間沈黙を保ってきたニコンが満を持して発売したD500は、誰もが理想とする機能を搭載し今日に至っています。
カメラとは、写真を撮るための道具に過ぎませんが、道具としての完成度や安心感はカメラを持った時に伝わるものがあります。それが、D500のようにフラッグシップという位置づけなら、尚のこと感性に訴える部分も大いにあるのではないかと思いました。
2019年現在、カメラの主軸はミラーレスに変わりつつあります。その中でもニコンはミラーレスも一眼レフも作り続けると表明しています。
今や人気のミラーレスも完璧ではありませんし、一眼レフが優位な部分も多くあります。ミラーレスと一眼レフが作れるニコンだからこそ、今後どんなカメラを作るのか楽しみです!