ニコン D780 レビュー|D750とD780の徹底比較!(性能編)

ShaSha編集部

雪と青空を撮影した写真.JPG

一眼レフとミラーレスのハイブリッド

 前回は開封編として、前モデルの一眼レフカメラD750と比較しながら外観をチェックしました。
 D750は当時のFXフォーマット一眼レフカメラとして、初の試みとなる機能を搭載した機種ですが、D780ではより扱いやすく進化したことがお分かり頂ければ嬉しいです。

 もちろんD780は外観だけでなく性能も大きく進化しました。一眼レフカメラならではの、ファインダーを使用した撮影はもちろん、ミラーレスカメラのようにライブビューを使用した撮影も得意なハイブリッドカメラになりました。

 今回もD750と比較しながら、変わった部分や性能をご紹介したいと思います。ぜひご覧ください

FXフォーマットならではの描写力

シャドー部とハイライト部のある写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/400秒 F8 ISO 200(105mmで撮影)

 D780は35mmフルサイズ(FXフォーマット)で、裏面照射型CMOSセンサーを搭載しています。
 センサーはローパスフィルター搭載の有効約2450万画素のもので、D750(有効約2450万画素)と比較すると画素数が僅かに向上しています。
 ダイナミックレンジも広いためシャドー部からハイライトの部分まで高く描写してくれるのは、さすがFXフォーマットというところでしょうか。

暗所もより撮影しやすく

暗いカフェで撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/80秒 F4 ISO 6400(75mmで撮影)

 D750は当時のニコンFXフォーマット一眼レフカメラの中でも高感度耐性の高いカメラですが、裏面照射型のセンサーではありませんでした。
 裏面照射型CMOSセンサーを搭載したことで、常用ISO感度はISO100-51200となり、D750の拡張最高ISO感度を常用感度として使えるほど、高感度耐性の高いカメラに進化しました。(D750は常用ISO100-12800)

 低照度のAFはD750が-3EVまで対応していましたが、D780では条件※さえ揃えば7EVまで対応します。
 作例では暗いカフェの店内を撮影したものですが、AFもスムーズにピントが合いました。ノイズも少ないクリアな仕上がりになっていると感じます。

 -7EVと言えばもはや暗闇といっても過言ではないほどの暗さですが、それも対応できるとなると星や夜に撮影する場合でもより撮影がしやすくなることでしょう。

※ライブビュー撮影時、ローライトAFを設定。シングルAFサーボ(AF-S)絞りF1.4設定時

ライブビューの進化で、もっと撮りやすく。

ローアングルで撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/500秒 F6.3 ISO 100(100mmで撮影)

 前モデルのD750はFXフォーマット一眼レフカメラで初となる、チルトモニターを採用したことは前回の記事でもご紹介しました。
 チルトモニターを採用したことで、ローアングルやハイアングルの撮影でも楽な姿勢で撮影することができるようになったことで、いつもと違った表現をより簡単に撮影できるようになりました。
 DXフォーマットではバリアングルモニターを搭載したカメラもあるため、FXフォーマットにもチルトかバリアングルモニターを搭載してほしいと思っていただけに、発売当時凄いと感じた記憶があります。

ハイアングルで撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/160秒 F5 ISO 100(52mmで撮影)

 凄いと思ったものの、コントラストAFによるAFスピードと、十字ボタンを使用したカーソル移動のスピードは、用途によっては遅く感じることもあり、気になるときもありました。
 しかし、D780ではタッチパネルを搭載したことで、AFポイントを直感的に選択することができるようになりました。

 また、位相差AFを使用したことで、ピントが合う速さも非常に速くなりました。
 作例は、ゆっくりと歩きながら浅草寺の仲見世を通った時に、ハイアングルで撮影したものです。多くの人が通る場所で、撮影する時に立ち止まれずに周りに注意しながら撮影しました。
 モニターを見ることができる時間も限られているため、ライブビュー撮影は非常に便利で、位相差AFのおかげも相まって歩きながらでも撮影することが出来ました。

像面位相差AF搭載のセンサーで高速なAFが可能に!

ライブビューで船を撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/2500秒 F4 ISO 1000(105mmで撮影)

 一方でD780は、ニコンFXフォーマット一眼レフカメラとして初となる、像面位相差AFを採用したセンサーとなっています。
 像面位相差AFを搭載したことで、ライブビュー撮影時でも状況に応じて高速な位相差AFとコントラストAFを使用することができ、AFエリアもZ 6と同様の273点と広い範囲でピントを合わせることができます。

 Z 6と同じAFエリアであることはもちろん凄いのですが、それ以上に私が凄いと思ったのは、ライブビュー撮影時の瞳AFが使用できることで、ポートレートをよく撮る方は嬉しいのではないでしょうか。

ピーキング機能でMFも簡単に!

ピーキングを使用して撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/2500秒 F4 ISO 100(70mmで撮影)

 また、ライブビュー撮影時のみですが、ピント位置に色を付けるピーキング機能が使用できるようになりました。
 MFレンズの使用時はもちろんですが、花の撮影などAFではなかなかピントが合わせにくいこともある被写体を撮影する際に、ピント位置を色付きで教えてくれるので非常に便利な機能です。

ピーキング設定画面.JPG
 ピーキング機能は最近のミラーレスカメラには搭載されていることが多く、以前の記事でも良さについてご紹介しました。
 一眼レフカメラでは、光学ファインダーを使用する構造上、撮影者の目とフォーカスエイド機能を頼りに撮影していましたが、どうしてもピントを外してしまうこともありました。
 もちろん、ピントを合わせることの楽しさもあるのですが、どうしても外したくないときや暗い場所ではより正確なピント調整が必要な場合もありますよね。
 
 光学ファインダーでピントを合わせる楽しさを味わうのも良し。ピントを外したくないときはライブビューでピーキング機能を使用する。
 撮影者の意図に合わせて、どちらの良さも味わえるのって良いと思いませんか?

筆者が歓喜した1/8000秒のシャッター

新幹線を撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/6400秒 F5.6 ISO 2000(120mmをDXクロップに設定して撮影)

 一番と言っても良いくらい嬉しかったのは、シャッタースピードの設定できる幅が広がったことです。
 D750では最高シャッタースピードが30秒から1/4000秒でしたが、D780では900秒(撮影モードをMモードに設定した場合)から、1/8000秒で撮影できるようになり大進化しました。

 マニュアルモードの設定時に900秒まで撮影できれば、滝や渓谷、星の撮影などの長時間開けて撮影する場合に、ロック機構付きのリモートコードを忘れてしまった場合でも安心して撮影に臨めそうです。

 また、1/8000秒の高速シャッタースピードですが、動体撮影はもちろん単焦点レンズをよく使用する方にとっても嬉しいと思います。
 特にポートレート撮影では、単焦点レンズの開放F値付近で撮影する方も多いと思いますが、晴天時の屋外で絞り開放付近で撮影すると白トビしてしまうこともあります。
 NDフィルターを使用するのも良いですが、シャッタースピードで調整できれば、より楽に撮影ができるので嬉しいポイントだと思いました。

連続撮影性能

 D780は、ファインダー撮影かライブビュー撮影によって最高連写枚数が変わります。ファインダー撮影では最高約7コマ/秒で、D750(6.5コマ/秒)と比較すると僅かな進化に感じます。
 しかしライブビューを使用した撮影では、AF/AE追従でありながらも約12コマ/秒のサイレント連写ができます。被写体によってはローリングシャッターによる歪みが発生する可能性もありますが、速く動く被写体でも撮影できる可能性も上がることでしょう。

キタムラ公式チャンネルもチェック!

 キタムラYouTubeチャンネルでは、ローリングシャッターについて取り上げた動画を公開しています。概要欄にはローリングシャッターについての説明もありますので、ぜひご覧ください。

やっぱり見やすい光学ファインダー

除雪車をモノクロで撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
■撮影環境:1/60秒 F16 ISO 1250(ピクチャーコントロール:モノクロで撮影)

 ライブビューを使用した撮影性能が上がり、ミラーレスカメラZ 6のように便利に撮影できますが、D780はファインダーを使用した撮影も進化しています。

 AFポイントは51点とD750と変わらないものの、ニコンフラッグシップ一眼レフカメラD 5相当となるAFアルゴリズムを採用したことで、被写体検出の精度が向上しました。

 オートエリアAF、3Dトラッキング時には、人物の顔と瞳を検知することで、ポートレートの撮影でもより精密なピント合わせがしやすくなります。

より見やすくなったクロップ撮影

 クロップ撮影はFXフォーマットのセンサーから一部分を切り出すことができるもので、D750にも搭載されている機能です。
 メリットとしてはFXフォーマットの焦点距離が300mmのレンズであれば、焦点距離をAPS-Cセンサーと同じく450mm相当として使用できるため、少ない機材で運用できます。

 実は先ほどお出しした新幹線を撮影した写真もクロップを使用しました。

新幹線を撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/6400秒 F5.6 ISO 2000(120mmをDXクロップに設定して撮影)

 クロップ撮影自体はD750もできるのですが、ファインダーの内側で枠が太くなるだけでした。
 注意すれば失敗することはないのですが、切れていても見えてしまっているだけにシャッターを押してしまい、写っていなかったなんてことも起こる可能性がありました。
 D780ではマスク表示ができるようになり、クロップ撮影時に写らない部分にグレーがかかり写る範囲がより分かりやすくなりました。
 細かい部分ですが、クロップ撮影を多く使用しているだけにとても見やすくなったと感じました。

よりイメージ通りの写真へ。表現力も進化

AWBで木を撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/200秒 F4 ISO 100(24mmで撮影)
■使用したピクチャーコントロール:ビビッド

 D780は外観・性能共に性能が向上しましたが、写真の表現力も進化しました。
 例えばD750では、AUTOホワイトバランスの優先が“標準”と“電球色を残す”の2種類でした。しかし、D780では、AUTO0に“白を優先する”、AUTO1に“雰囲気を残す”、AUTO2に“電球色を残す“の3種類に細分化され、あらゆる環境の光源でもより自然な色再現がしやすくなります。

豊かになったピクチャーコントロール

ピクチャーコントロールレッドで木を撮影した写真.JPG
■使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
■撮影環境:1/200秒 F4 ISO 100(27mmで撮影)
■使用したクリエイティブピクチャーコントロール:レッド

 絵作りの中でも大きく表現力を変えるピクチャーコントロールには、Z 6やZ 7に搭載された20種類のクリエイティブピクチャーコントロールを搭載しました。

 これまでのピクチャーコントロールは自然な色味でありながらも、それぞれのピクチャーコントロールが持つ特徴に寄っている印象ですが、クリエイティブピクチャーコントロールでは、よりイメージ通りの写真を作りやすくすることはもちろんですが、雰囲気をがらりと変えることも可能です。

 作例はホワイトバランスと同じシーンで撮影した写真で、クリエイティブピクチャーコントロールのレッドを使用して撮影しました。
ホワイトバランスの作例と同じシーンで撮影したものですが、簡単ながらもかなり表現が変わりました。
 通常のピクチャーコントロールではなかなか出せない表現が簡単にできるので、ピクチャーコントロールではできないけど、RAW現像は面倒だと感じる方にぜひ使っていただきたい機能です。

ネガフィルムデジタイズ搭載

ES2と60mmを撮影した写真.JPG
 D780では、35mm判のネガフィルムをJPEGにデータ化するネガフィルムデジタイズ機能が搭載されました。
 使用するためには、AF-S NIKKOR 60mm f/2.8G EDを装着した状態で、専用の別売りアダプター“ES-2”と取り付けることで撮影が可能になります。

ネガフィルムデジタイズ機能はD850のみ搭載されており、斎藤勝則さんによるレビュー記事もございますので、こちらもぜひご覧ください。

撮影後記

せんべいを撮影した写真.JPG
雪と青空を正面から撮影した写真.JPG
モノクロで暖簾を撮影した写真.JPG
逆光で葉を撮影した写真.JPG

 D750を普段から使用している筆者ですが、D780はD750の後継機でもありながら、D850やZ 6との中間に位置する“全部入り“の機種に感じました。

 もちろんD750も非常に良い機種なのですが、ファインダー使用時、ライブビュー撮影時にたまに感じる「もっとこうだったらな」もありました。
 しかし、D780ではファインダー使用時、ライブビュー撮影時ともに、感じていた「もっとこうだったらな」がなくなっており、より撮影がしやすくなったと思います。
 感覚になってしまい申し訳ありませんが、ファインダーの時はD850を使用して、ライブビュー撮影時はZ 6を使っている感じでした。

 D750を使用されている方はもちろんですが、一眼レフカメラならではの見やすい光学ファインダーと、ライブビュー撮影時の便利さをお求めになられている方はぜひお試ししてみてください!

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