この夏に撮りたい!手持ち花火のポートレート撮影のコツ|yuki

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この夏に撮りたい!手持ち花火のポートレート撮影のコツ|yuki

はじめに

夏のポートレート撮影には欠かせない手持ち花火。特に夕暮れの海岸でモデルさんが手持ち花火をする姿はとても素敵である。ただ、日中の撮影とは違い、天候や時間帯など変化していくシチュエーションに対応しながらの撮影となり、なかなか思うように撮影できない事も多い。そこで今回は僕が意識しているいくつかのポイントについて紹介していきます。

佇まいとシルエット

花火をしている姿をシルエットで撮影するのは僕の一番好きな撮影スタイルである。モデルさんの佇まいをしっかり分かりやすくシルエットに残し、尚且つ手持ち花火も確実に映す事が大切なポイントとなる。手持ち花火の撮影と言うと、どうしてもモデルさんに寄りがちになってしまうが、敢えて空を広くとり、少し引き気味に撮影することで、ドラマチックな一面を引き出せる。例え小さな花火でもシチュエーションやタイミングを活かし、構図を工夫することにより、愉しさだけではない色んなストーリーを創り出せるのも手持ち花火撮影の魅力である。

■撮影機材:NIKON Z 5 + AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED
■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO800
■撮影機材:NIKON D700 + AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
■撮影環境:1/200秒 f/5.6 ISO200

足元花火で余韻を…

海岸での手持ち花火の撮影では足元を狙ったローアングルから撮影も常にイメージしておきたい。水溜りなどあれば波紋を起こし、波打ち際であれば波とのタイミングを合わせることにより、花火を余韻と感じる事が出来る。上部を狙ったアングルが多くなりがちな花火撮影なだけにバリエーションとして撮っておきたい構図である。

■撮影機材:NIKON Z 6 + NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct
■撮影環境:1/6400秒 f/1 ISO2800
■撮影機材:NIKON Z 5 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/80秒 f/1.4 ISO1000

手持ち花火と手持ち花火

通常の手持ち花火の撮影であれば当然モデルさんが花火をしている姿を撮影するのがメインとなる。そこで撮影者自身も手持ち花火をしながら撮影してみたらどうなるだろう?そんな思いから実際に撮影者自身も花火を持って撮影してみると、手前の玉ボケとモデルさんの姿が面影の様に感じられ、通常の撮影では創り出せない雰囲気を出してくれる。

■撮影機材:NIKON Z 5 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/5000秒 f/1.4 ISO220
■撮影機材:NIKON Z 5 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/5000秒 f/1.4 ISO180

リフレクション花火の撮影

海岸にある水溜りを利用してのリフレクション花火の撮影。撮影自体のテクニックとしては綺麗なものを綺麗に撮るだけなので難易度はさほど高くはない。ただ、空が綺麗な日に波がない水溜りがあるかどうかが一番のポイントになる。場所によっては常に水溜りがある海岸もあるかも知れないが、狙いとしては風が強く波が高い日の後に海岸線を車で走らせながら探し出す事が多い。

この様なシチュエーションに偶然出会えたらラッキーではあるが、予め狙って行く場合は細かな気象条件を把握している必要がある。自分がイメージする一枚を撮るには撮影技術以外にも意識し、興味を持たなければならないこともたくさんあったりする。

■撮影機材:NIKON Z 5 + AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED
■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 ISO18000
■撮影機材:NIKON Z 5 + AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED
■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 ISO20000

夕空とともに…

花火撮影には少し早い時間帯であるが夕空が綺麗な日は空の雰囲気も構図の中に取り入れておきたい。雲が少し残っている方向を合わせ、砂浜の質感や電柱などのロケーション情報もわかりやすく構図に取り入れる。この様な撮影を意識すると、撮影した写真の中にカメラマンの存在が見えにくくなり、写真を見てくれる人の居場所が作れる様な感覚になれる。カメラマンの努力や狙いは見せた方が良い時もあるが、僕の場合は出来る限りカメラマンの存在や狙いを消す構図を意識している。

■撮影機材:NIKON D700 + AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO200
■撮影機材:NIKON D700 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/200秒 f/1.4 ISO200

条件が良くないシチュエーションは…

海岸の天気は実際に海岸に行ってみないとわからないことも多い。綺麗な夕日を狙い、そんなイメージでの撮影を期待していたが海に着いたら曇り空という日もよくある。そんな時は予め狙っていた撮影が出来ない事でテンションを下げる事なく、その日の条件の良いところを見つけ、演出していくのも大切である。

この日はあいにくの曇り空だったので、動きのある手持ち花火を意識し、構図的には空の部分は少なくするように意識。夕空のような色がないため、波打ち際のリフレクションを利用したりすることで、この日しか撮れない写真たちになっていく。撮影前からイメージを創り上げ、狙い通りの撮影も大切だけど、週末の限られた時間にしか撮影出来ない場合は、その日の条件や状況に合わせたアドリブと臨機応変な対応も撮影者として大切になってくる。

■撮影機材:NIKON Z 5 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/500秒 f/1.4 ISO5600
■撮影機材:NIKON Z 5 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/500秒 f/1.4 ISO5000

曖昧なピントで面影を…

手持ち花火の撮影をしたことのあるカメラマンであれば分かると思うが、夕暮れや夕闇での撮影はとにかくボツが多くなりがちである。タイミングボツ、仕草ボツ、表情ボツ、などなど思い出以上にボツ写真も多くなってしまう。そこで僕の場合は予めボツ予備軍的な写真を必ず狙って撮影することにしている。ピントは予め甘めにし、求めるクオリティーも低めに設定し、気の向くまま自由に撮影する。花火を撮るとかモデルさんを撮るという意識ではなく、面影を残す様なイメージに近いかも知れない。

曖昧で少し抽象的にも見える写真は写真を見る側になった時、想像力を掻き立て、腑に落ちる写真になってくれる事が多い。『凄い写真』や『奇跡の瞬間』を狙うのも良いが、曖昧な面影を残す『なんとなく好き』くらいの一枚を残すのも大切だと思う。

■撮影機材:NIKON D700 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/320秒 f/1.4 ISO200
■撮影機材:NIKON D700 + AI Nikkor 50mm f/1.4S
■撮影環境:1/200秒 f/1.4 ISO200

終わりに

以上で『手持ち花火とポートレート』について僕の意識していることの話は終わります。いくつかのポイントを紹介させてもらいましたが、いかがでしたでしょうか?カメラの性能が格段に上がり、最近では技術面での個性より、センスやスタイルでの個性がより大切に感じることが多くなったので、そちら側の話しを多くさせてもらいました。この記事を読んで花火撮影がしたくなったり、少し参考になれたら嬉しいところです。

あっという間に終わる夏に手持ち花火が撮影出来る日は恐らく何日もないと思います。しかも、その何日もない貴重な日が天候など撮影条件が良い日になるとは限りません。だからと言って、テンション下げたり、モチベーションを下げることなく、その日の状況や雰囲気の良いところをいち早く見つけだし、その日にしか撮れない一枚を創り出すことでベストであり、最高の思い出になってくれると思います。

 

 

■写真家:yuki
新潟県の美しい四季の景色を求め、絶景から日常の見慣れた風景など、魅力を感じるロケーションでの撮影を中心に活動。構図や撮影方法など独自の視点で行い定番に拘らない事が基本スタイル。

 

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