ニコン NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 レビュー|スチールにもムービーにも大活躍の超広角ズームレンズ
はじめに
2022年10月28日発売の「NIKKOR Z 17-28mm f/2.8」は、小さくて軽いボディにF2.8の明るい開放F値を備えた、普段使いしやすい超広角ズームレンズです。今回はこのレンズを、スチールとムービーの両方でレビューいたします。
キリッとシャープな描写性能
本レンズの全長は約101mm、重量は約450gと、広角レンズとしては、かなり小型・軽量の部類に入ります。しかも、F4ではなくF2.8の開放F値なので、スナップ、風景、テーブルフォト、ポートレートと、幅広い被写体で楽しめそうなスペックです。
まずはこの小型・軽量性能を活かして、街歩きのスナップから。描写の切れ味を見たくて、反射や縦横のラインが多い場所を狙ってみました。
光のにじみもなく、ピントが合っているところはキリッとシャープに、写り込んでいる被写体も、反対にガラスの向こう側の被写体も、しっかり綺麗に描写されています。薄暗い館内で歩きながらの撮影でしたが、高速なAFで思ったところにピントが合い、スナップらしく素早くシャッターボタンを押し込めました。
ショート・ムービー
動画撮影時にピントを合わせる箇所を前後に移動させた場合、画角が変わったようなカクっとした動画になることがあります。本レンズには、そのような画角変動(フォーカスブリージング)を抑制してくれる機能が搭載されています。
特に、今回撮影で使用したNikon Z 6IIのように、タッチAFでフォーカス位置を簡単に変えられるカメラボディの場合、このフォーカスブリージング抑制機能があると、気軽に主役の被写体が変えられるので、動画の撮り方にバリエーションが生まれます。
今回は、ピントを合わせるのが難しい水槽の中の魚で、この効果を試してみました。ショートムービー内ではわかりにくいと思いますので、フォーカスブリージングの効果が見えるところだけを抜き出した動画を別途作成しました。こちらをご覧ください。
フォーカスブリージング抑制効果の作例動画
AF性能が高いのでピント合わせが速くて、シュッとピントが切り替わるので、そのまま動画に活かすにはかなりスローモーションにしないと不自然ですが、タイムラグも画角の変動もなく、ピント位置を前後に変えられるのは、いい瞬間を撮り逃がさないために大変ありがたいです。
また、ズームレンズながら、ズーミング時は鏡筒の長さが変化しない設計なので、ジンバルを使用している撮影時に、ズームしたからバランスを取り直さなくちゃ……というひと手間がなくなり、ズームに関わらず撮影ができるのが楽でした。
こんなに近付かれてもシャッターが切れる!
焦点距離17mmの撮影最短距離が0.19mと、Zマウントの広角ズームレンズのなかでは最短(執筆時現在)なので、超広角のパースペクティブと、F2.8の大きなボケの両方を活かした撮影ができるのが、このレンズの楽しいところでしょう。
通常なら、水槽の向こう側の魚がカメラの方に近付いて来てくれても、撮影最短距離を超えてしまうため、自分が下がって距離を取る……なんて、本末転倒的な悲しい状況も多々あるのですが、本レンズは、「え、こんなに近いのに、まだピント合うの?」というくらい、被写体に近付いて(近付かれて)撮ることができます。
柔らかい玉ボケ
望遠の28mm側では、浅い被写界深度がもたらしてくれる深みのあるボケと、9枚の円形絞りが作り出す柔らかい玉ボケを味わうことができます。構図の端の方にある玉ボケも優しい丸さを保っており、これからの季節には、イルミネーション撮影でも活躍しそうな描写能力です。
力強く、シャープな描写力のレンズ設計
レンズ構成はEDレンズ2枚、スーパーEDレンズ1枚、非球面レンズ3枚からなる11群13枚で、どの焦点距離でも力強いシャープな描写をしてくれます。四隅はストレスを感じるような無駄な歪みもなく、明暗の差が大きいシーンでも、高いコントラストを維持したまま、撮影者が感じた情景を描き出してくれます。
暗所でも素早く合う高性能なAF機能
スナップでも水族館でも、暗いところや明暗の差があるところでの撮影が多かったのですが、肉眼でも暗いなと感じるシチュエーションでも、素早いAFでシャッターチャンスを逃すことなく撮影できたのが、本レンズの一番の感想です。
静かなレンズ駆動音はスチールでもムービーでもありがたい!
AF性能の高さはここまでもお話してきましたが、静かさにも言及したいです。STM(ステッピングモーター)を採用しており、スチールもムービーも、レンズの駆動音を気にすることなく素早いピント合わせが行なえます。
暗くて静かな水族館で、レンズの駆動音がジーコジーコと響くのは結構恥ずかしいことなので、自分の耳にもストレスにならない消音設計のレンズはとても便利ですね。
今回は屋外と屋内、両方で撮影をしてみましたが、切れ味の鋭いシャープな描写性能の高さに驚いたことと、コンパクトなボディでどんなシーンでも持ち出しやすいことが、特に印象に残った製品でした。レンズ交換をあまり頻繁にしたくない旅行などは、このレンズ1本で事足りてしまいそうですね。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。