ニコン NIKKOR Z 28-75mm f/2.8|これ1本で開放F2.8の幅広い焦点距離をカバー
はじめに
こんにちは。この度、ShaShaで2回目の記事を担当させて頂きます相沢亮です。前回はマジックアワーの風景写真をメインの作例として、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRをご紹介させて頂きました(記事はこちら)。
今回は、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8という画角とF値に最初に向き合ったときに真っ先に室内および物撮りに挑戦してみようと思いました。このレンズのサイズ感、軽さ、焦点距離、F値を見たら真っ先に室内が思い浮かびました。今回は、Z 7IIとZ 6IIと組み合わせた作例をご紹介致します。
心地よいボケ感
このズームレンズでついつい室内の物撮りを試したくなって、久しぶりに花屋さんに行ってきました。店先で花を眺めていて、白い部分がどんな写りをするのか、背景がどんなボケ方をするのか、それぞれ気になり、淡いピンク色のチューリップにしました。作例に注目してほしいのですが、ピント面から心地よく滑らかにボケが広がり、主題の花びらが際立っています。茎に注目して頂ければ、ボケの広がり方がよくわかるかと思います。
35mmや50mmの単焦点レンズではいまいちボケない、足りないと感じた時にこのレンズは中望遠の75mmまでもっていけることができるのが嬉しい点です。それに加え、焦点距離75mmでも開放F値2.8をキープできるので、ふわっとした柔らかい描写を一本で表現することが可能です。
また、このレンズはものすごく寄ることができるのです。最短撮影距離は0.19mで、被写体に近づけるというだけで撮影の幅が広がります。この作例でも被写体に寄って撮影しました。
1本で複数の単焦点レンズを持っているような満足な写り
このレンズを使ってみて、さまざまな焦点距離の単焦点レンズがほしいけど予算の関係で手が出せない、という時に買いたい一本だと思いました。開放F2.8で35mmや50mmといった焦点距離を比較的リーズナブルな価格でカバーできるのは魅力的ですね。例えば単焦点レンズのNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sが約415gで、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は約565gと約150gほど重いですが、幅広い焦点距離を兼ね備えたこのレンズの方が、旅先で出会うさまざまなシーンでの活躍が見込めるのかなという印象です。
飲食店などでの料理撮影時で、意外ともう少し画角が広ければと思うことがあります。他のお客さんのことを考えたりすると、後ろに下がるなどして画角調整が難しい場面もあります。そんなときにこの焦点距離を調整できるのは助かります。もちろん、50mmの単焦点も開放F1.8でよりコンパクトな設計、手持ちでより暗所に強いといった良さがあるので、レンズの特徴に合わせて活躍する場面がそれぞれあります。
また、同じ標準ズームレンズで近いものとしてNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sがありますが、比較した時のこちらの良さは「軽さ」と「価格」だと思います。価格が2倍以上違うので「画質」はNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sの方が上かと思いますが、このレンズは重さが約805gと約240gの差があります。サイズもZ 24-70mmが約89mm×126mmなのに対し、Z 28-75mmは約75mm×120.5mmとよりコンパクトです。
レンズを選ぶ上でいろいろな要素があるかと思いますが、やはり少しでも軽いのは持ち運びのことなどを考えると助かります。旅先などでさまざまな焦点距離で光量の少ない室内で撮影をしたい、というときにお勧めできるレンズですね。
こちらのミモザの作例は、少し暗くなった室内で窓からの自然光のみで撮りました。ニコンのミラーレス機の手ブレ補正のおかげもあって、ブレを気にせずしっかりと写すことができました。72mmという焦点距離のおかげでピント面の花が浮き出て、背景の壁もしっかりとボケているような写りになりました。
室内の物撮り撮影に挑戦
室内でテーブルフォトに挑戦してみました。全体に光が行き渡っている自然光のようなライティングをして撮影をしました。ピントが合っている面、パンの質感までしっかりと描写されています。俯瞰撮影の場面でも焦点距離を変えられることに助けられました。(単焦点で画角を調整する場合、カメラの焦点距離を変えるのではなく、自分が動くことになりますからね)
次に斜め俯瞰寄りの撮影にも挑戦してみました。前景のミモザと背景のボケ具合が柔らかい写りとなっています。
使っていてAFの速さに驚きました。そして、撮影時の作動音が静かですね。AFの音やレンズの動作音が静かなのは、正直嬉しいです。大きい音だといかにも撮っているって感じがして、室内で気になる場面が時々ありますので。カフェとかでは特に気になりますよね。
建物をシャープに捉える描写力
東京の国立新美術館で撮影してきた写真です。光と影の立体感や線が綺麗な建物でしたので、そのバランスを崩したくないと思いF5.0という設定で撮影しました。28mmという焦点距離のおかげで広く捉えることができ、光と影のコントラストや解像感など満足な写りです。さまざまなシーンで活躍することが期待できる広角28mmから中望遠75mmという焦点距離をカバーしながら、約565gという軽さでかつ全ズーム域で開放F2.8のズームレンズは助かります。加えて魅力的な要素としてサイズがコンパクトな点がありますね。
作例をご参照頂ければと思うのですが、とにかく隅々まで描写がしっかりしています。広角で絞りをF6.3以上にしたパンフォーカスを狙った風景撮影に関しても問題がないですね。ただ、ワイド端が28mmだともうちょっと広角で迫力を出したい、という時に物足りない場面が出てくるのかなと思います。
Zシリーズの他の標準ズームレンズでNIKKOR Z 24-70mm f/4 SやNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sといったレンズと比較した時に、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8はやはり室内や物撮りなどでより活躍が見込めるレンズなのかなと思いました。太陽光の入らないような暗めの室内などの状況下で、開放F2.8の明るさとレンズ自体の軽さという点で手ブレを抑えることも望めますし。
28mm以上の広角が必要な場面は限られていると思うので、これ一本で済む場面も多いかと思います。あらかじめどんな画角で撮りたいか想定して、より広角のレンズを持っていくか決めたいと感じました。
逆光の状況下でも鮮明な写り
まさに逆光という状況下で試してみました。手前の車のシャープさが損なわれていない鮮明な写りが良いですね。ハイライト、シャドウ部分のそれぞれの階調が綺麗に表現できています。
まとめ
室内の物撮りやポートレートなどの場面において、このレンズがカバーする焦点距離&最短撮影距離のおかげでさまざまな表現が可能になります。開放F2.8なので複数の単焦点レンズを一本に集約させたようなレンズに感じました。便利ですね。それに加え、コンパクトなサイズ感と軽さであるために、他のレンズと組み回せて2本を持ち歩いてもそこまで重さを感じないと思います。
旅などに行く際に単焦点の代わりに持ち歩きたいですね。ズームレンズなので焦点距離で小回りが利くのも嬉しいです。カフェなどでこれ以上下がれないという状況でも、少し広角寄りにすれば画角内に収まるという場面もあるかと思います。
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は「さまざまな焦点距離の単焦点レンズをリーズナブルに試してみたい」という方の要望に応えてくれるレンズだと思います。「まずはこのレンズを試してみて、自分の好きな焦点距離を見つけ、次の単焦点レンズを買うための参考にする」そんな使い方も面白いかもしれないですね。テーブルフォトを撮りたい方の最初の一歩としてもおすすめです。
■写真家:相沢亮
2020年より東京を拠点にフォトグラファー、ライターとして活動中。メーカーとのタイアップ記事、企業案件や広告撮影、雑誌への寄稿・執筆等、活動の幅を広げ、近年、地方創生や観光PRに力を入れる。2021年2月に写真家としてのインタビュー記事が朝日新聞WEBメディア「withnews」およびYahoo! JAPANで公開される。2022年春に単著「日常のフォトグラフィ」を出版。
「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」はこちらの記事でも紹介中
【水咲奈々】コンパクトながらボケ味の美しい標準ズームレンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485472846/