ニコン ニコマート レビュー|初心者でもお手軽に買えるフィルムカメラ

種清豊
ニコン ニコマート レビュー|初心者でもお手軽に買えるフィルムカメラ

はじめに

ShaShaで初めて記事を書かせていただきます。よろしくお願いいたします。沼にどっぷりはまるようなことがないように自制しつつ、昔のカメラとレンズを使って撮影をたのしんでいます。

そりゃライカやコンタックス、ハッセルブラッド、ローライフレックスといった舶来のカッコいいフィルムカメラは憧れですが、そもそも敷居が高い感じは否めない。ってことで、比較的入手しやすい国産のフィルム一眼レフ、これからフィルムカメラを始めたいかたにもおススメできそうな機種をご紹介してみます。今回はニコンのニコマートです。

偉そうにご紹介とか言っていますけど、まあ好きなカメラを自分で探してお気に入りの一台を見つけて撮影を楽しむに尽きるので、実際はどんなカメラが良いとか、悪いとかってないですよね。また、機種選定に関しては僕の独断と偏見でセレクトしていること、加えて僕自身カメラに対する見識はまだまだ乏しく、私感を羅列するにとどまることをお許しください。

ニコン中級機の礎「ニコマート」

まず初めにニコマートについて。って有名なカメラですよね。名前はもちろん、持ってますよーって方も多いのでは。

ニコマートは1965年から1970年代後半までシリーズ化されたニコンのミドルクラス一眼レフ。ニコンFの発売までは主にプロユースを想定した高級機路線の日本光学(現ニコン)でしたが、販売拡大の機会を狙うために普及クラスへの製品展開を進めた中で登場したカメラです。

ニコマート以前にもニコレックスシリーズを投入するなどして低価格帯カメラへの参入を図った同社。しかしながら他社の低価格カメラへなかなか追いつくことは出来ず、その後登場したのが1965年7月発売のニコマートFTおよびFSでした。ネーミングは「ニコン」と「オートマチック」を組み合わせてニコマートとしました。一つ、ネームプレートに“Nikon”を採用していない点は個人的にちょっと意地悪な気がします。「マート系」なんて呼ばれたりしますが、事実ニコマートをぶら下げてると、「なんだニコマートか、やっぱりF一桁じゃないと」なんて多くのカメラ先輩たちからいつも揶揄されたことを鮮明に覚えています。NikonじゃないとNikonではないなんて平気で言われましたから。16.7歳の当時の僕は傷つきましたね。

まあそれはともかく、ニコマートはニコンFシステムのレンズはもちろん、共通のアクセサリー類の使用が可能、TTL測光方式の露出計内蔵という、ニコレックスシリーズとは異なるニコンFの姉妹機という位置付けでのカメラです。FシリーズがNikonブランドの花形フラッグシップ一眼レフとしてまだまだ高値の花だった時代に登場したニコマートは、露出計を標準仕様とし、1/1000までの縦走り金属シャッターを採用(コパルスクエアS)して、フラッグシップにも負けずとも劣らない仕様で登場したわけです。

シリーズはニコマートFTに始まり、1977年発売のニコマートFT3まで7機種が発売されました。プロからも評判はよく、カメラ拡販に大きく貢献したようです。電池がなくてもシャッターが動くフルメカニカル機のニコマートFT、FS、FTN、FT2、FT3、電子シャッターで絞り優先AE搭載のEL、ELWの7機種。FSとFT3の2機種が少し探しにくいですが、それ以外の生産数の多い機種、特にFTNであれば中古市場で比較的見つけやすいと思います。

「露出計」と「ガチャガチャ」

細かなスペックと変更点を述べると大変なんですが、共通点としてはFS以外の機種はすべて露出計搭載ということ。同時代のフラッグシップのFやF2はフォトミックファインダーを搭載しないと露出計は機能しません。

Fはプロ機だから露出計なんてなくても大丈夫。確かに報道分野ではストロボかフラッシュを使った撮影であれば、露出の相場は決まってきちゃうので必要ないのかもしれません。内蔵露出計不要論とまでは言いませんが、プロ機は露出計なしでもOK、でも中級機種は露出計搭載という不文律ができていて、それに沿った製品展開だったのかもしれません。はじめに中級機で試験的に露出計搭載機を発表して、様子をうかがっていくというマーケティングもあったようです。

そしてこの露出計というのが、あのニッコールレンズ特有の通称「カニの爪」と密接な関係があるのはみなさんご存知の通り。Fマウントは1959年のニコンFで採用されたレンズマウントですが、当初からレンズには「カニの爪」がついています。これ、外光露出計と連動させるための「露出計連動爪たるカニの爪」で、しかもこの「爪」がないと開放測光ができないわけです(1977年のAi方式化まで)。

ニコマートELマウント部のカニ爪連動ピン。FT~ELまでは連動ピンとカニ爪を合致させてレンズを装着。マウント基部のピンを正面から見て向かって右側へ回しておき、レンズの絞りをF5.6にしておけば簡単に取り付けることができる。
FT3のマウント部。1977年のAi方式導入以降は連動ピンがなくなる。非Aiレンズの装着も可能だが、露出は絞り込み測光になる。

ニコマートは当初外光式露出計搭載を見込んでいたようですが、時代の流れとしてTTL開放測光の露出計を開発途中で採用決定した経緯があります。そこでニッコールの爪を連動させるピンがマウント周辺部に突出する形になりました。ちなみにニコマートFTは平均測光ですが、ニコマートFTNからは中央部重点測光に変更されていますね。

マウント周囲に見えるピンが目立つのはデザイン的に賛否ありますが、レンズをつけちゃえば不思議なほど目立たなくなります。しかも、ピンを連動させる操作がなんとも機械を触っている感がして楽しかったりします。そしてニコマートFTN以降の機種で行うレンズの開放F値をカメラ側に認識させる動作、通称「ガチャガチャ」がまたいいわけです。ただ絞りリングを往復させるだけなんですけど・・・。今のカメラがいかに不自由なく使えるかを実感できるいい機会ですよね、フィルムカメラって。

ちなみに今回作例用に使用した機材はELとFT3の2機種です。セレクトの理由は特にないんです。AEが使えてシャッタースピードがダイヤル式のELが使いやすいので。FT3はあえてカニ爪のないレンズを使用するのに使いました。

FT系とEL系のシャッターダイアルの違い。FT系はマウント外周部でシャッター速度の切り替えを行う。EL系は絞り優先オートが採用され、ボディ上部にシャッターダイアルが設けられている。

撮影してみました

手持ちのボディは露出計含め動作が比較的良好なので、撮影結果は問題なしでした。ポジフィルムとあわせて超久々にカラーネガでも撮影してみました。レンズ交換のたびに連動ピンにあわせてレンズを装着するのが若干面倒だなと思いますが、まあカメラ好きなのでそこはそれほど苦にはならず。

ただシャッター速度が1/1000秒というのが少々ネックだと思う人はいるかもです。多くのフィルムカメラが抱える問題なんですが、特に絞りを開けた撮影が難しくなってしまうから。古い機材を使うときの制約というか、そういうもんだと知って使わなきゃいけないので文句はなしなんですが、とはいいつつ、レンズの個性を知るためのひとつとしては開放での撮影もしてみたいですよね。そして、いろんなニッコールレンズを揃えていって撮り比べ・・・。そうこうしているうちに沼にはまるんでしょうか。

個人的には仕事の撮影はズームばかり、良くてF2.8、F4開放のレンズで撮影しているわけで、大口径にはあまりこだわらず、かつ絞り開放で撮影する機会が極端に少ない僕にとって1/1000秒でも大丈夫です。交換レンズも増えることはないでしょう。

■撮影機材:Nikomat FT3 + Micro-Nikkor-PC Auto 55mm F3.5
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Zoom Nikkor 35~70mm F3.3~4.5 
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Zoom Nikkor 35~70mm F3.3~4.5 
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Zoom Nikkor 35~70mm F3.3~4.5 
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Nikon LENS SERIES E Zoom 36~72mm F3.5  
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160

■撮影機材:Nikomat FT3 + Nikon LENS SERIES E Zoom 36~72mm F3.5  
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Nikon LENS SERIES E Zoom 36~72mm F3.5  
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat FT3 + Zoom Nikkor 35~70mm F3.3~4.5 
■フィルム:Kodak Professional PORTRA 160
■撮影機材:Nikomat EL + Nikkor -UD Auto 20mm F3.5  
■フィルム:Fuji PROVIA100F
■撮影機材:Nikomat EL + Nikkor -UD Auto 20mm F3.5  
■フィルム:Fuji PROVIA100F

フィルムカメラアドバイス

さて、最後にカメラ好きおじさんからアドバイスです。この記事をお読みの読者には釈迦に説法と思いますが、もしかしたらフィルムカメラで撮影してみたいっていうフィルムカメラビギナーの方もいるかもなので。とにかく中古機材のフィルム室だけは確認しておいてください。

特にフィルムを押さえる部分の圧板は一番大切ですね。傷がついていることはまあそれほど多くないですが、傷ついていたらご想像の通りです。これを確認するのは通販だとちょっと難しいんですが、実際カメラを手に取って選ぶ際は要チェックポイントですね。遮光用のウレタン(通称モルト)の劣化はほぼ間違いないと思われますの、きれいに清掃してからフィルムを入れてあげてください。出来ればモルト交換するのが望ましいんでしょうけど・・・。いろいろと確認事項はあるものの、自分にとって最良な機材と出会って、写真を楽しんでいただけたらなーなんて思います。

 

 

■写真家:種清豊
1982年大阪生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
2004年より3年半、写真家竹内敏信氏のアシスタントを経て、2007年よりフリーランス。
企業商品撮影のほか、雑誌、Webなどに作品、写真関連記事を掲載している。
国内及び海外の街並みをテーマにしたスナップを撮影中。個展、グループ展等で作品を発表している。

キヤノンEOS学園講師 
JCII(日本カメラ財団)フォトクリニック講師 
カメラのキタムラ フォトカルチャー倶楽部講師 
銀座写真会主宰
公益社団法人 日本写真家協会会員

 

 

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