ニコン Z 30レビュー|硬派なボディでライトに動画撮影!

水咲奈々
ニコン Z 30レビュー|硬派なボディでライトに動画撮影!

はじめに

 ニコンとしては初めて動画向きを謳った、ミラーレスカメラ「Nikon Z 30」が発売されました。Z 7、Z 6と同じ画像処理エンジンEXPEED 6を搭載し、現在ラインナップされているZシリーズの中では、最小・最軽量のボディサイズとなります。今回は本機の動画性能と、静止画性能の両方をレビューいたします。

Z 30で撮影したショートムービー『PROLOGUE』

『PROLOGUE』
■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■使用アクセサリー:SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット/ SmallRig ウィンドマフ3859

 まずは、本機で一番重要な動画性能について、見ていきましょう。撮影可能な記録画素数とフレームレートは、3840×2160(4K UHD)は30p/25p/24p、1920×1080は120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p、1920×1080スローは30p(4倍)/25p(4倍)/24p(5倍)です。

 本機は電子手ブレ補正機能が搭載されており、あまり激しくない歩行などであれば、ジンバルがなくてもがくがくしない、スムーズな動きの動画撮影ができます。今回の撮影では、不規則に斜めに揺れる電車内のシーンにのみ、画面内の被写体がぐにゃぐにゃに見える、コンニャク現象が起こりました。
 
 いつもはジンバルを使用しているようなシーンでも、今回はトライポッドグリップを使用して撮影したので、ちょっと不安だったのですが、ストラップを首にかけて、グリップを前に押し出すようにストラップにテンションをかけて撮影することで、かなり手ブレを抑えられていました。

 電子手ブレ補正機能使用時は、画角が少し狭くなりますので構図に注意しましょう。また、1920×1080:120p/100pと、1920×1080スロー:30p(4倍)/25p(4倍)/24p(5倍)の撮影では、電子手ブレ補正機能は使用できません。

 今回は、編集時にスローモーションを使用したかったのと、電子手ブレ補正の効き方を確認したかったので、1920×1080:60pで撮影しました。Vlogを謳っている機種ですので、すべて自分で自分を撮影しています。

 三脚にリモコンが合体したような「SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット」は、使い始めは、カメラをチルトさせる三脚横のボタンを押す際に、爪が引っかかって苦労しました。ですが、大き過ぎず小さ過ぎないサイズ感と、三脚をさっと立てて、リモコンで素早く撮影できる便利さから、慣れてくると、カメラから取り外せないアイテムとして大活躍しました。

 音声は「SmallRig ウィンドマフ3859」を装着した、内蔵マイクを使用して録音しています。実際に同録したシーンは、車内や鳥の声、風鈴の音色など、こちらのサムネイルのシーンになります。

スッキリ、スマートに格好良くなったデザイン

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:絞りF10 1/320秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:ビビッド

 本機の撮像素子は23.5×15.7mmサイズCMOSセンサーで、DXフォーマット(APS-Cサイズ)です。有効画素数は2088万画素。手ブレ補正はレンズシフト方式、ISO感度は100-51200で ISO204800までの増感が可能。AFは位相差AFとコントラストAFのハイブリッド型、モニターは3.0型のバリアングル式、大きさは約128×73.5×59.5mm、重さは本体のみで約350gと、かなり小型・軽量です。

 ニコン機はファインダーの美しい見え方に定評がありますし、筆者もニコンのファインダーは敬愛しているのですが、今回、そのファインダーを取り除いたことで、カメラボディのデザインがすっきりと、格好良くなったと感じました。実際、Vlog撮影ではファインダーを覗くことはほとんどありませんので、動画撮影への支障は特に感じませんでした。

動画撮影中の静止画切り出し機能

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:絞りF6.3 1/100秒 ISO100 WB:5000K ピクチャーコントロール:フラット

 動画撮影中も、そのシーンの静止画の撮影が可能です。動画の画像サイズが3840×2160のときに撮影した静止画は、3840×2160ピクセルで記録されます。それ以外の動画画像サイズのときに撮影した静止画は、1920×1080ピクセルで記録されます。

 この作例のように、自分ではない風景などを撮影しているときは、液晶モニターを折りたたんで撮影しますが、たとえば、トライポッドグリップを三脚型にして、テーブルなどに置いて自撮りするときは、液晶モニターをレンズ面の自分の方に向けることで、「自分撮りモード」に切り替わって、液晶を見ながらメニュー操作などができます。

 ですが、そのままリモコンを使用すると、リモコンの録画ボタンとシャッターボタンしか動作しません。カメラ本体のメニュー画面から、「自分撮りモード」をOFFにすれば、リモコンのすべての機能が使用できるのですが、AFの枠を移動させる矢印は、向かい合っているので逆の方向に動いてしまいます。この辺りは、ファームアップでの改善を期待したいです。

静止画はいうまでもない高い描写性能

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:絞りF6.3 1/40秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:風景

 丁寧で美しい静止画の描写性能は、さすがのZシリーズです。安定のある画を生み出してくれます。また、今回は動画以外の撮影はスナップが多かったのですが、あまり存在感を出したくない街なかのスナップに、最適のサイズとデザインに仕上がっていると実感しました。

 AF機能は人物、犬、猫の顔や瞳を検出する瞳AFと、動物AFが搭載されています。顔以外のところに素早くピントを合わせたいときは、タッチAFを使用して、液晶画面のピントを合わせたい被写体をタッチすると、素早くピントを合わせられます。

筆者愛用のピクチャーコントロール機能も搭載

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:絞りF5.6 1/200秒 ISO200 AWB ピクチャーコントロール:風景

 ニコンのカメラではお馴染みの画作り設定「ピクチャーコントロール」も、もちろん搭載されています。被写体を見た目よりもほんの少し、でも派手すぎない程度に鮮やかに表現したいときは、このピクチャーコントロールを風景モードにすると、色濃くこってりと描き出してくれます。筆者がスナップで多用しているモードでもあります。

使いやすいキットレンズ

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:絞りF8 1/200秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール:風景

 キットレンズの「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」は、広角端の歪みも少なく、望遠端の描写も丁寧ですので、レンズ交換を頻繁にしたくないような、旅のシーンで活躍してくれます。

 DXフォーマットなので、自撮りをするにはもっと広角側が欲しいかなと思ったのですが、Vlog撮影で、手にカメラを持ったまま自分を撮影するシーンはそれほど多くなく、ほとんどがトライポッドグリップを付けた状態なので、その分、カメラと顔との距離ができたり、三脚として台に置いた状態で撮影しているので、不都合は感じませんでした。

マイクロレンズとの組み合わせ

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
■撮影環境:絞り開放 1/500秒 ISO6400 AWB ピクチャーコントロール:風景

 筆者お得意の水族館にも、持って行って撮影してみました。レンズは「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」で、水槽の向こうの魚に、かなり近付いて撮影しています。連写は高速連続撮影は約5コマ/秒が可能ですが、いつもどおり使用せずに、1コマレリーズで撮影しています。水槽のなかのクラゲの、向こう側に照明がある逆光の状態ですが、タッチAFを使用してスムーズな撮影が行えました。

ライトな動画機としてGOOD!

■撮影機材:Nikon Z 30 + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
■撮影環境:絞り開放 1/800秒 ISO6400 AWB ピクチャーコントロール:風景

 いつもは水族館の作品は、Nikon Z 6IIで撮影しているのですが、夏休みで混んでいる水族館で使うには、少々ボリューミーなボディですので、手のひらサイズで主張の激しくない本機と、コンパクトなマイクロレンズとの組み合わせは、気持ち的に撮影がしやすかったです。

 いつもはスチールを撮っているけど、動画撮影にチャレンジしてみたい方、大きな動画用カメラはあるけど、もっと気軽に持ち歩ける動画機が欲しい方は、本機を一度使ってみると、ライトに動画が撮れる、けど安っぽくないボディデザインに惚れてしまうと思います。

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

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