ニコン Z 8 ポートレート レビュー|水咲奈々

水咲奈々
ニコン Z 8 ポートレート レビュー|水咲奈々

はじめに

2023年5月26日に発売された「Nikon Z 8」は、Z 9の中身をそのままギュッとコンパクトにしたようなボディサイズが魅力的で、発表と同時に予約をして発売日に入手しました。今回は、ポートレートのスチールとムービーで、本機の人物撮影に着目してレビューいたします。

積極的に使いたくなる「美肌効果」

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO400 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

やはり人物撮影で気になるのは、新たに搭載された「美肌効果」でしょう。今回はすべて「強め」の設定で撮影しました。結果、肌の調子を自然かつなめらかに仕上げてくれて、現像後の肌レタッチはどのシーンでもほとんど必要ありませんでした。

全体にぬめっとボカすのではなく、ピントが合っている目やマツゲ、髪の毛は一本一本数えられるくらいシャープにキリリと描いています。十分実用に耐えられる機能として、積極的に使っていきたいと思いました。

ショートムービー

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S

ショートムービーは「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のボケを活かしたくて、全編開放で撮影しました。AF性能も見たかったので、マニュアルフォーカスは使用せず。ベッドに飛び乗るような素早い動きや、瞳の位置が大きく変わるシチュエーションでは、AFに若干戸惑いも見られましたが、修正するが如く瞳にピントを合わせてくるので、筆者がメインで使用していた「Nikon Z 6II」よりも格段に性能が上がっていると実感しました。

電子手ブレ補正を使用したかったので、動画記録ファイル形式は「H.265 10-bit(MOV)」、画像サイズは3840×2160、フレームレートは60pで撮影しました。電子手ブレ補正は120p、100p、8K UHD、RAW、ハイレゾズームONには非対応で、使用時には装着レンズの焦点距離の約1.25倍相当の画角になります。

今回は手ブレ補正の恩恵を受けたいのと、編集時にスローモーションを使用したかったので、60pで撮影して編集時に24pにして書き出しています。

性能が上がったAFと強力な電子手ブレ補正のお陰で、これからはジンバルがなくても気軽に動画撮影ができるようになりそうです。このボディサイズにプラスしてジンバルを使用するとなると、それほどコンパクトにならないジンバルがカメラバッグの中を占領した結果、「何泊するの?」くらいのリュックを使用することになってしまうので、ちょっとしたシーンなら手持ちで撮れる性能を有しているのはとても有難いです。

強い逆光にも強い被写体検出機能

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO200 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

本機の人物の被写体検出は、顔、瞳、頭部、胴体を検出し、ワイドエリアAF(S)、(L)、(C1)、(C2)、オートエリアAF、3D-トラッキングで動作します。筆者は、複数人ではなく一人のモデルを撮影するときは、モデルが構図のどこにいても検出されやすい、オートエリアAFを使用することが多いです。

強い逆光での撮影では、機種によってはAFが迷子になることもあるのですが、本機は顔が影になるくらいの強い逆光時にも、顔の検出は素早く行われていました。さすがに影が強すぎて肉眼でも瞳が見えにくい状況では、瞳の検出までは難しいシーンがありましたが、肉眼で見える範囲であれば検出率は高いと感じました。

ちらつきを抑えてくれる高周波フリッカー低減機能搭載

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO400 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

こちらの白い階段は、最初にシャッターを切った段階ではフリッカーが出てしまっていたのですが、シャッタースピードを調整することで、すぐに消すことができました。

動画でも、フリッカーが出たときはシャッタースピードで調整しますが、それでもなかなか消えないフリッカーもあったりします。今回、他の機種を持っていなかったので撮り比べはできなかったのですが、本機に搭載されている高周波フリッカー低減機能のお陰で、素早くフリッカーを抑えることができたのかもしれません。

さらに改良されたAWB

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO160 AWB ピクチャーコントロール:ポートレート

本機はZ 9よりもAWBの性能が改良されて、人物撮影時に被写体の顔情報を活用することで、構図全体の色かぶりを抑えた自然で美しい色調を再現してくれるとのこと。

こちらのシチュエーションでも、室内の照明と窓からの自然光のミックス光のなか、肌はもちろん、後ろのレースのカーテンのグラデーションまで、綺麗な色味で描き出してくれました。

綺麗な見え方のEVF!やっぱりいいわ、ニコン

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO500 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:ポートレート

筆者は撮影状況によって、ファインダーを覗く撮影と液晶画面を見ながらの撮影を使い分けています。撮影に集中したいときや、周りが明るくて液晶画面が見にくいときなどは、ファインダーを使用して撮影します。

本機のEVFは3000cd/m2対応のQuad-VGAパネルを採用しており、視認性が高いことが魅力のひとつです。ニコンのEVFは、Zシリーズが出た当初から群を抜いて素晴らしい見え方をしていましたので、ぜひこのままパワーアップを続けてもらいたいです。

Z 9と同様に静かなシャッター音

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO200 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

画像処理エンジンはZ 9と同じEXPEED 7、有効画素数は4571万画素で、積層型CMOSセンサーもZ 9と同様のものを搭載しています。メカシャッターレス機構なので、シャッター音が静かなのも特徴のひとつ。何気ないシーンを収めたいときなど、シャッター音が主張しないほうがいいときもあります。

また、音が響きやすい場所でのポートレート撮影では、自分のカメラのシャッター音がやけに大きく感じてしまうこともあるので、TPOに合わせた撮影ができるのもメリットですね。

D850を使っていた方なら絶対好きになっちゃう機種!

■撮影機材:Nikon Z 8 + NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
■撮影環境:絞りF1.2 1/200秒 ISO500 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

実は、昨年の5月に同じスタジオでZ 9のレビュー撮影をしています。レンズの画角は違いますが、開放F値は同じF1.2でした。そのレビュー撮影時にZ 9の性能の高さを実感してかなり購入を迷ったのですが、ネックとなったのがその大きさ。私の手と、水族館や街なかの撮影、旅スナップという撮影フィールドにはちょっと大きすぎたんですよね……。

今回、その大きさを払拭してくれた手頃なサイズ感と、一眼レフ時代に筆者のメイン機種だったD850のイメージに近そうだと思い、実機を触る前に購入を決意した珍しい機種だったのですが、このレビュー撮影を通しても、購入して良かったと思わせてくれる機種でした。

 

 

■モデル:実嶺
Instagram/Twitter

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

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