NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRレビュー | 旅行に最適の望遠ズームレンズ
はじめに
昨年、Z 50のダブルズームキットの望遠レンズとして登場した「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」は、中望遠から望遠の広い範囲をカバーする、手ブレ補正搭載のDXフォーマット望遠ズームレンズです。
Z 50登場時には、繰り出し式のコンパクトな標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のインパクトが大きくて、陰に隠れがちな本レンズでしたが、気軽に持ち出せる高性能なズームレンズとしてぜひ手にして欲しいお勧めのレンズの一本ですので、ここで紹介したいと思います。
250mmの望遠と短い最短撮影距離でドリーミーな桜に
今回紹介する「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」は、Z 50に装着すると35mm判換算で約75~375mmの画角になります。作例のように、高いところに咲いている花を構図いっぱいに写したいとき、メインの花以外を大きくボカしたいときは望遠側が活躍します。
また、背景のボケは、ピントを合わせた被写体に近付けば近付くほど大きくなるので、望遠端の最短撮影距離が1mと短いのは、ボケを生み出しやすく、望遠効果を強調した花撮影が好きな筆者としては、嬉しい限りです。
こちらの桜は、伊豆の河津桜です。川沿いに続く桜並木は満開を少し越えたくらいでした。元気のない花もちらほらと見えたので、元気な花だけにピントを合わせて、背景はふんわりとピンク色にボケるように仕上げました。優しいムードにしたかったので、全体を温かい暖色系にして、暗い部分をより明るくしてくれる、クリエイティブピクチャーコントロールのドリームを使いました。
グラデーションの美しさでわかるレンズ性能
伊豆ではこの時期、菜の花も見ごろを迎えていました。所狭しと咲き誇る菜の花を、前ボケを大胆に入れて描いてみました。このレンズの特徴として、ボケの柔らかさがあります。絞り開放で、しっかりとグラデーションを描き切ったふんわりとしたボケは、前ボケを作り出すと、より一層その美しさがわかります。
近距離のボケから、ピントを合わせた被写体の細部、その奥に続くボケのグラデーションと、四隅までしっかりと描いていることでレンズの性能の良さが感じられます。この性能のレンズがキットレンズでお得に所持できるので、筆者はいつもZ 50を購入する方には、後から買い足すよりも断然お得なダブルズームキットでの購入をお勧めしています。
筆者は普段は単焦点レンズでの撮影が多いのですが、旅行や子供の運動会などで、望遠のズームレンズが欲しいときが必ずあります。その為にも、自身のZ 50購入時もダブルズームキットを購入したのですが、本レンズが思っていたよりもボケのグラデーションが美しいので、普段の花撮影によく持ち出すようになりました。
ここでは、黄色と黄緑色の印象をぐっと強めるために、クリエイティブピクチャーコントロールのサンデーを使用しました。コントラストを強めて、全体に明るく元気な印象に仕上げてくれます。
素早いAFで一瞬の表情を逃さない!
河津桜の素敵なところは、上にはピンクの桜が咲き、その下には菜の花の黄色い絨毯が敷き詰められている素敵なシチュエーションです。ここでは、低めの桜の枝に咲く花を前ボケに、菜の花を主役にしてみました。
このように、ピントを合わせたい被写体の前にボケとして使用したい被写体があって、しかも風で揺れているようなシーンは、ピントが合いにくかったりするのですが、このレンズはオートフォーカスが速いので、ライブビュー撮影時は違うところにピントが合ってしまっても、合わせたい被写体をタッチするだけで、さっとピントを合わせ直してくれます。
望遠レンズに必要不可欠な機能は、何と言っても素早いオートフォーカスです。「今!」と思った瞬間にピントが合ってこそ、いい写真をカメラに収めることができます。動きモノではないように感じられる花も、風で揺れて一瞬、一瞬の表情は変わるので、自分好みの表情になった瞬間にシャッターが切れる、つまりオートフォーカスが働いていてくれることが、とても大切な事になります。
こちらではピンク色と黄色をより鮮やかにするために、クリエイティブピクチャーコントロールのポップを使用しました。明るく華やかに仕上げてくれるので、かわいらしいイメージに仕上げたいときによく使用しています。
5.0段の高い手ブレ補正効果
こちらも高いところに咲いている桜ですが、ちょうど背景に丸ボケができたので構図に入れ込みました。焦点距離は望遠端の250mmで、絞りは開放です。驚くべきはシャッタースピードが1/50秒な点です。
レビューということで、どこまで遅いシャッタースピードでブレないかも見てみようと思ったのですが、思った以上の手ブレ補正効果でした。このレンズの手ブレ補正は5.0段の光学式VR機構で、手ブレが起きやすい望遠レンズには嬉しい、高い効果を実感できました。
物理的に近付けないときは、やっぱり便利なズームレンズ
筆者は旅先に行くと、その土地のネコをよく撮っています。なんだか、その土地の空気を身にまとっているような気がして、そのムードを撮らせてもらっている感じでしょうか。こちらは器用に柵を抜けていく様子がかわいらしくて、その後姿を撮影しました。
全体にノスタルジックな街並みだったので、さびた茶色の質感がさらにレトロなイメージなるように、全体の彩度を上げて、暖かみと落ち着きのあるくすんだ青味を足してくれる、クリエイティブピクチャーコントロールのトイを使用して仕上げました。
写真には写っていませんが、この手前は川で、川の向こうにネコがいるシチュエーションでした。物理的に被写体に近付けないときには、やっぱり望遠ズームレンズの便利さを感じます。
画角調整のしやすいスムーズなピントリング
動いている被写体を撮影しているときに、地味に気になるのがレンズのズームリングの滑らかさだったりします。被写体の移動に伴って、レンズを繰り出したり、縮めたりする必要があるときに、ズームリングに引っ掛かりを感じたり、逆にゆるすぎて思った位置を通り過ぎてしまうと、思い通りの画角になるのに時間がかかってしまいます。
このトルク部分は、適度な重さとスムーズな動きがあると、撮影はとても楽になります。筆者はズームレンズのこのトルクにはかなりこだわりがあるのですが、キットレンズでここまで適度な重さとスムーズさに仕上げてくれるなら、十分だと思いました。
こちらは沖縄の鳥園で水辺の鳥を撮影したのですが、南国らしい黄緑色の葉を背景だけじゃなく手前にも入れたくて、ちょうどいい場所に鳥が歩いてきたタイミングでシャッターを押しました。そう思っても、そこに鳥が来ない可能性は高いし、来ても希望の向きではなく、すぐに飛び立ってしまうかも知れません。筆者は、こういうときは理想の構図を作ってから、ひたすら祈ります! 来るように念じます!
そうすると、意外と来てくれるんですよ。その瞬間に素早くオートフォーカスが合ってくれて、シャッターを押せると、とても気持ちがいいですよね。
STM搭載で静かな作動音
本レンズはSTM(ステッピングモーター)を採用しています。このSTMは、パルス電力に同期して動くAF用のモーターで、機動性の高さと駆動音の静かさが特徴です。つまり、本レンズは素早くて静かなオートフォーカスが可能ということです。STM搭載の望遠ズームレンズは他のレンズも使用したことがありますが、舞台やコンサートなどの周りが静かなシーンや、音に敏感な動物や小さな子供を撮影するときにとても重宝しました。
作例のシチュエーションは、こちらをじっと見つめているかのような鳥の表情を逃さず撮りたかったので、駆動音が静かなのはとても助かりました。液晶面をタッチし、鳥の左目にピントを合わせて、ポッコリと丸い目がしっかりと描かれるように、ピントにとても注意をして撮影しました。
そのような意図があるときに少しでもピントがずれてしまうと、肝心の目玉の輪郭がはっきりしなくて、あまり美しくない描かれ方をしてしまうので、動きモノでも慌てないで、しっかりピント合わせをするようにしています。
このレンズの描写性能の良さが、目玉周辺の毛並みや、クチバシの質感がしっかり描かれていることでも見て取れると思います。これは撮影時に液晶画面で再生しただけでは気が付かず、大きなモニターで確認して改めてびっくりしました。
クリエイティブピクチャーコントロールはサンデーを使用して、鳥の体全体の白さをさらに白とびギリギリまで明るくして、黒とグレーの目玉のコントラストが印象的になるように仕上げました。
望遠ズームレンズだから、ここまで寄れる!
さて、これはなんでしょう? 正解は、キリンの顔です。柵越しですが、動物たちにエサをあげられるところで撮影しました。ざらざらした長い舌で、結構な勢いでエサを手から取っていくので、ちょっと迫力のあるエサやりです。その舌が入る構図でも撮ったのですが、つぶらな瞳が大きく写っているこちらのカットのほうが、筆者の好みでした。
近付くと大きくてちょっと怖い雰囲気もあるキリンですが、顔の模様に愛嬌があって、毛並みもとても綺麗に見えたので、そこを柔らかく描けるように、クリエイティブピクチャーコントロールのメランコリックを使用しました。全体が少し暖かい色味になって、彩度が低く、輪郭の協調も行われないモードなので、優しくて、どこか懐かしいムードの作品に仕上げることができます。
ダブルズームキットは旅行に最適にセット
菜の花畑の向こうにいる子供を主役にして、菜の花をボケさせて黄色いカーテンのようにして撮影しました。子供のフードに入っているのは、この少し前にクレーンゲームで獲得した恐竜の子供のぬいぐるみです。まるで巣で口を開けてエサを待っている小鳥(子恐竜?)のように見えたのが面白くて、あえて後ろを向いてもらいました。
クリエイティブピクチャーコントロールのモーニングは暗いところを少し明るく持ち上げてくれて、全体を透明感のある青味がかった色にしてくれます。清涼感のある画になるので、よく使用しているクリエイティブピクチャーコントロールのひとつです。菜の花の黄色の色味を大きく崩さずに、清涼感のある画に仕上げてくれました。
今回の作例はいずれも沖縄と伊豆で撮影してきましたが、コンパクトでズーム域の広い本レンズは、持ち運びにも便利でとても重宝しました。荷物を軽くしたい旅行なら、Z 50のダブルズームキットを、そのままそのセットで持って行くとちょうどいいですね。