ニコン Z f レビュー|撮影という行為をより楽しくしてくれるカメラ
ニコン「Z f」とは
話題沸騰中のフルサイズミラーレス一眼、ニコン「Z f」。予約殺到で大人気となっています。このニコン「Z f」ですがアナログチックでレトロなルックスに、「Z 9」や「Z 8」顔負けの最新機能を存分に搭載したとても素晴らしいカメラに仕上がっていましたよ。
Z fの特徴
このカメラの特徴は何といってもそのスタイルでしょう。往年の名機ニコン「FM2」にインスパイアされたデザインは、高校時代にニコン「FM」を愛用していた筆者もググッと惹きつけられます。同じくクラシカルなデザインを採用したカメラに、デジタル一眼レフの「Df」やAPS-Cミラーレス一眼の「Z fc」もありますが、この「Z f」はFM2の面影をより強く反映させたカメラになっていると感じました。
使い勝手も良好です。シャッタースピードダイヤルなどは真鍮製になっており、その手触りと節度感が撮影する気分を高揚させてくれます。「カチカチカチ・・・」という感触がとても心地よいのです。また、控え目ながらホールド感が高いグリップも好印象です。単焦点レンズだけでなく、ズームレンズを装着した場合でも持ちやすく感じました。撮影という行為がより楽しくなるカメラになっていますね。見た目と使い勝手と写りがしっかりと「フュージョン(融合)」しているのがニコン「Z f」と言えるでしょう。
このニコン「Z f」はプロフェッショナルフォトグラファーに絶賛されている「Z 9」や「Z 8」と同様に、あらゆる被写体を美しく確実に捉えられるカメラになっています。人物やネコ、イヌ、鳥、クルマ、飛行機など9種類の被写体検出が可能な先進のオートフォーカス機能や、最大8段分ものボディ内手ブレ補正機能、最高常用ISO感度64000、シャッターを押す1秒前までさかのぼって記録できる「プリキャプチャー」、ボディ内VRを活用してのピクセルシフト撮影による高精細な描写、約30コマ/秒の高速連続撮影、先進の動画撮影機能など、クラシカルな装いからは想像もできないほど機能満載のカメラに仕上がっています。
その写りもバツグンです。懐深い2450万画素のフルサイズセンサーが生み出す写真は、低感度から高感度まで実に豊かなトーンを持っています。独特の雰囲気を表現できる「ピクチャーコントロール」や、新規に搭載された肌のディテールを美しく捉える「リッチトーンポートレート」も見逃せません。そして最大のニュースはモノクロームにフォーカスしたところではないでしょうか。
モノクロームの仕上がりがバツグンに素晴らしい
専用レバーでパッとモノクロームの世界に飛び込めるのがニコン「Z f」です。シャッタースピードダイヤルと同軸に設けられたレバーをカチッと「B&W」位置に動かすだけで、瞬時に上質なモノクローム写真の世界に移行できるようになっています。
そのモノクロームも3種類のモードが用意されており、それぞれ「モノクローム」、「フラットモノクローム」、「ディープトーンモノクローム」となっています。自分の好みや被写体によって自在に切り替えられるのがうれしいですね。その写りはこのようになっています。
▼モノクローム
シャープでダイナミックな印象
▼フラットモノクローム
ディテール感高く柔らかな印象
▼ディープトーンモノクローム
ハードで迫力のある重厚な雰囲気
どれもムーディーな描写でいい感じですね。気軽にモノトーンの世界を味わえるのがこのニコン「Z f」というわけです。
ブラブラ実写スナップ!
さて、このニコン「Z f」に「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」と「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」を装着してブラブラとスナップ撮影を楽しんできました。このカメラは手にするだけで「撮りたい!」という気持ちを盛り上げてくれる感じがします。高品位なルックスだけでなく、オートフォーカスも連写性能もモノクロームも素晴らしくて、本当に心からエンジョイして撮影できましたよ。
ニコン「Z f」を持って歩くと、見るもの全てが魅力的な被写体に見えてきます。なぜならその写りがクリアでシャープだからです。竹の表面を実によくキャプチャーできました。ホワイトバランスも日陰ながら的確でいい色合いになりました。
お供え物を撮りました。餅、梨、柿、芋のリアルな感じがいいですね。オートでもディープラーニング技術によって最適な設定で撮影できます。カメラの初心者でも安心ですね。
カメラの起動も速く、シャッターチャンスに強い点もこのニコン「Z f」の特徴でしょう。シャッターボタン同軸の電源スイッチはスナップ撮影で役立ちます。風に揺れるビニールシートを瞬時に撮影できました。
「Z 9」、「Z 8」譲りの高速で正確なオートフォーカス性能も魅力です。豊富なオートフォーカスモードとAFエリアで、飛んでくるカモメも合焦し続けてくれました。個人的には「3D-トラッキング」が好きで多用しています。動体撮影でも頼りになるモードだと思います。
波打ち際でのワンシーンです。水と砂のきらめきが美しいですね。「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」との相性もバッチリでした。約369万ドット、1.27cm/0.5型 Quad-VGA OLEDのEVFは見やすくてフレーミングも容易です。またオールドレンズを使用してのマニュアルフォーカス撮影でも拡大機能を使えば安心ですね。
ニコン「Z f」のレンズキットになっている「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」はアイコニックなデザインでよく似合います。軽量コンパクトなので常時装着しておくのにピッタリです。絞り開放での描写とボケも雰囲気があって、まずはこのキットを購入しておけば間違いないでしょう。
モノクロームですが「ディープトーンモノクローム」が気に入りました。秋の公園を撮り歩きましたが、強いメリハリの中に深いディテール描写がいい印象です。人の少ない寒空の雰囲気が表現されています。
手水舎のひしゃくを絞り開放で浮かび上がらせました。重厚感あるコントラストが魅力的です。ローアングルでの撮影も「バリアングル式画像モニター」で楽チンですね。
このカットは「フラットモノクローム」です。お供えされた線香の感じをやさしく捉えることができました。ポートレート撮影にも向くモードでしょう。
噴水を再び「ディープトーンモノクローム」で。飛沫ひとつひとつをしっかりと解像しつつ、白から黒へのトーンが豊かですね。「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」の前ボケもとてもいい感じです。
ニコン「Z f」はオートフォーカスも速く、今回のようなブラブラスナップ撮影にピッタリだと感じました。歩いている人も難なくキャプチャーできます。
また大人が持っていても浮かないルックスはどんなファッションにも合い、日常から仕事の撮影までオールマイティーに活躍できるカメラになっていると思います。
ニコン「Z f」のスペック
レンズマウント | ニコン Z マウント |
有効画素数 | 2450万画素 |
撮像素子 | 35.9×23.9mmサイズCMOSセンサー、フルサイズ/FXフォーマット |
手ブレ補正 | ボディ手ブレ補正:イメージセンサーシフト方式5軸補正 |
記録媒体 | SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード、microSDメモリーカード、microSDHCメモリーカード、microSDXCメモリーカード |
ファインダー | 電子ビューファインダー、1.27cm/0.5型 Quad-VGA OLED、約369万ドット、明るさ調整可能(オート、マニュアル13段階)、カラーカスタマイズ可能、視野率約100%、倍率約0.8倍 |
連続撮影速度 | ・低速連続撮影:約1~7コマ/秒 ・高速連続撮影:約7.8コマ/秒 ・高速連続撮影(拡張):約14コマ/秒 ・ハイスピードフレームキャプチャー+(C30):約30コマ/秒 |
ISO感度 | ISO 100~64000 |
オートフォーカス | ハイブリッドAF(位相差AF/コントラストAF) |
フォーカスポイント | 273点 |
モニター | バリアングル式8cm/3.2型TFT液晶モニター(タッチパネル)、約210万ドット、視野角170°、視野率約100%、明るさ調整可能(マニュアル15段階)、カラーカスタマイズ可能 |
使用電池 | Li-ionリチャージャブルバッテリー EN-EL15c |
寸法(幅×高さ×奥行き) | 約144×103×49mm |
質量 | 約710g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く) 約630g(本体のみ) |
まとめ
ズバリ「買い」のカメラでしょう。レトロで使いやすいルックスと最新の機能が見事にフュージョンしたニコン「Z f」は、発売前から人気なのが実感できました。マグネシウム合金製ボディと、上位機種と同等の防塵防滴性能、マイクロSDカードとのデュアルスロットなど長く安心して使える充実した基本性能も魅力です。先行して試用するチャンスに恵まれましたが、本当に欲しくなってしまったカメラです。APS-Cミラーレス一眼の「Z fc」との2台持ちも良さそうですね。久しぶりに写真を心から楽しめる一台だと思わせてくれた最高のカメラでした。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。